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睡眠改革で睡眠上手な日本へ

 9月3日の「睡眠の日」にちなみ、目覚め方改革プロジェクト主催のメディアセミナーが、2018年8月29日に都内で開催された。 今まで、わが国でも語られることが少なかった「睡眠」にスポットを当てた目覚め方改革プロジェクトは、「目覚め方および体内リズムを整えることの重要性の啓発」を目的に設立され、医師をはじめとする有識者で構成されている。今後はウェブサイト「目覚め方改革プロジェクト」を通じて睡眠や体内リズムに関連するさまざまな情報を発信していく。先進国で一番睡眠時間が短い日本 はじめにプロジェクトリーダーの内村 直尚氏(久留米大学 医学部 神経精神医学講座 教授)が、「『目覚め方改革プロジェクト』設立について」をテーマに、日本人の睡眠の現状と本プロジェクト設立の意義について説明した。 平均睡眠時間の国際比較によると、日本人の平均睡眠時間は7.4時間とOECD諸国の中でも一番短い。また、日本人の5人に1人は「日中、眠気を感じた」「睡眠時間が足りなかった」「夜間、睡眠途中に目が覚めて困った」など睡眠の問題を抱えている(厚生労働省 平成25年国民健康・栄養調査)と現状を報告した。 「良質な睡眠とは『リズム、量、質』が充足された睡眠である。そして、この睡眠のリズムには、すっきりした目覚めが深く関係しているとして、このプロジェクトを立ち上げた」と内村氏は経緯を述べ、「今後、このプロジェクトのウェブサイトから、『目覚めと体内リズムの重要性』に関する情報発信をしていく」と抱負を述べた。睡眠関連で約15兆円の経済損失 次に「睡眠の基本、睡眠の乱れによる健康問題と生活への影響」をテーマに、岡島 義氏(東京家政大学 人文学部 心理カウンセリング学科 准教授)が、睡眠のメカニズムと睡眠不足、不眠がもたらす弊害を説明した。 睡眠には、疲労回復、エネルギー保存、身体の成長、免疫機能増加などの役割があるが、睡眠不足や不眠になると倦怠感や頭重感、交通・産業事故の誘因、仕事・学業の能率や生産性の低下などを来し、さらには生活習慣病やうつ病の誘因・増悪、認知症発症の誘因を起こすとされている。米国の研究では、わが国の経済損失は約15兆円といわれ、GDPに占める割合ではワースト1位となっているという。 とくに仕事などのパフォーマンスに注目すると、慢性的な睡眠負債では眠気を自覚しにくく、徐々にパフォーマンスを低下させるとし、たとえば17時間覚醒では、血中アルコール濃度0.05%のパフォーマンスに相当し、24時間覚醒では血中アルコール濃度0.10%に相当するという1)(血中アルコール濃度0.05~0.10%はビール1~2本、日本酒1~2合に相当)。 最後に岡島氏は「睡眠の最大の役割は、心と体のメンテナンスにある。充実した1日を過ごすためにも、睡眠の役割を正しく認識することが重要」と述べ、説明を終えた。夜のブルーライトは体内リズムに影響 次に「体内リズムの重要性~睡眠負債とソーシャルジェットラグ~」をテーマに、駒田 陽子氏(明治薬科大学 リベラルアーツ 准教授)が、睡眠と体内リズムの重要性について説明を行った。 体内時計は、さまざまな生理現象を調節する機能を持ち、体内リズムを作り出している。そのため睡眠においても、「メラトニン分泌→睡眠→深部体温低下→コルチゾール分泌→覚醒」の順番を保つリズムが重要であるという。また、体内リズムと光の関係につき、朝の強い光はリズムを進行させ、夜の光はリズムを遅らせるとともに、夜の青い光(ブルーライト)は体内時計に強く作用することから、夜のスマホやゲームは体内リズムに影響を与えると警告する。 続いて最近問題となっている「ソーシャルジェットラグ(社会的時差ボケ)」に触れた。ソーシャルジェットラグとは、蓄積した平日の睡眠負債を返済するために、休日に寝だめなどを行った結果、体内リズムが乱れ、起床困難、入眠困難、蓄積疲労などが起こる現象である。そして、ソーシャルジェットラグは、心身の健康に影響を与えることから、これを避けるためにも、「起床時間を休日でも変えない」「6~8時間の睡眠時間の確保」「朝日を浴びて、体内時計をリセットする」など体内リズムを整えることが重要だと説明する。 最後に駒田氏は「昼間、生き生きと過ごすために、朝、すっきりと目覚めることが大事」と語り、説明を終えた。 体内リズムを整えるアスパラプロリン 次に協力企業から只野 健太郎氏(大塚製薬株式会社) が、「『目覚め方改革プロジェクト』協力にあたって」をテーマに、今回のプロジェクトへの期待を語った。 一般的に食事や運動に気を付ける人が多い中で、睡眠に気を配る人は少なく、睡眠に起因する健康被害も多数ある。「今後協力企業として、たとえば体内リズムを整えるアスパラプロリンなどの食品素材の開発・提供を通じて良い睡眠をサポートしていきたい。こうした食品を使うことで、覚醒と睡眠の良循環を作っていきたい」と述べ、講演を終えた。■文献1)Dawson D, et al.nature.1997;388:235-237. ■参考目覚め方改革プロジェクト■関連記事CareNet.com特集「睡眠障害」診療よろず相談TV 第33回「不眠症」 回答者:日本大学医学部精神医学系 内山 真氏

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心不全への遠隔管理の併用で予後が改善/Lancet

 明確に定義された心不全患者(心不全による最近の入院歴あり、大うつ病なし)では、通常治療に加えて構造化された遠隔患者管理による介入を行うと、予定外の心血管系の原因によって病院で過ごす時間が短縮し、全死因死亡も低減することが、ドイツ・ベルリン大学附属シャリテ病院のFriedrich Koehler氏らが行った「TIM-HF2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年8月25日号に掲載された。心不全患者の遠隔患者管理は、心代償不全の早期の臨床所見の検出に役立ち、それゆえ代償不全に陥った心不全が完全に出現する前に、適切な治療や処置を迅速に開始することが可能になるという。通常治療への追加による予後改善効果を評価 TIM-HF2試験は、ドイツで実施された非盲検(割り付け方法は隠蔽)の多施設共同無作為化並行群間比較試験であり、データの収集にプラグマティックな要素が導入され、病院および心臓病診療施設で患者登録が行われた(ドイツ連邦教育・研究省[BMBF]の助成による)。 対象は、NYHA心機能分類II/IIIの心不全で、無作為割り付け前の12ヵ月以内に心不全による入院歴があり、左室駆出率(LVEF)が45%以下(またはLVEF 45%以上で経口利尿薬が処方)の患者であった。大うつ病の患者は除外された。被験者は、遠隔患者管理+通常治療の群または通常治療のみを行う群に無作為に割り付けられ、最長393日のフォローアップが行われた。 遠隔患者管理のシステムや介入には、(1)遠隔医療センターに体重、血圧、心拍数、心調律、末梢毛細血管の酸素飽和度(SpO2)、自己評価による健康状態(1~5点)のデータを毎日送信、(2)患者教育、(3)遠隔医療センターと、患者のかかりつけ医、心臓専門医との連携などが含まれた。 主要評価項目は、予定外の心血管疾患による入院あるいは全死因死亡で喪失した日数の割合とし、解析は最大の解析対象集団(FAS)で行った。「予定外の心血管疾患による入院あるいは全死因死亡で喪失した日数の割合」とは、これらの理由で失われたフォローアップ期間の割合であり、喪失日数を目標フォローアップ期間で除した値とした。主な副次評価項目は、全死因死亡および心血管死であった。喪失日数が約6日減少 2013年8月13日~2017年5月12日の期間に1,571例が登録され、1,538例がFASに含まれた(遠隔患者管理群:765例、通常治療群:773例)。全体の平均年齢は70歳(SD 10)、70%を男性が占めた。 予定外の心血管疾患による入院あるいは全死因死亡で喪失した日数の割合の加重平均値は、遠隔患者管理群が4.88%(95%信頼区間[CI]:4.55~5.23)と、通常治療群の6.64%(6.19~7.13)に比べ有意に優れた(加重平均値の比:0.80、95%CI:0.65~1.00、p=0.0460)。失われた日数の加重平均値は、遠隔患者管理群が17.8日/年(95%CI:16.6~19.1)と、通常治療群の24.2日/年(22.6~26.0)よりも約6日減少した。 全死因死亡率は、100人年当たり、遠隔患者管理群は7.86(95%CI:6.14~10.10)であり、通常治療群の11.34(9.21~13.95)に比し、有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.70、0.50~0.96、p=0.0280)。心血管死亡率の差は、統計学的に有意ではなかった(0.67、0.45~1.01、p=0.0560)。 12ヵ月時のミネソタ心不全質問表(MLHFQ)によるQOL評価では、ベースラインからの変化には両群間に差はなかった(平均差:-1.11、95%CI:-3.01~0.80、p=0.26)。 著者は、「この総体的な治療コンセプトの主要な要素は、遠隔医療センターが、1日24時間、毎日、個々の患者のリスクプロファイルに従って迅速に対応可能な医師および心不全専門看護師を擁していることである」とし、「本試験では、参加施設の所在地の違いによる影響はなかったことから、遠隔患者管理により、適切な心不全治療へのアクセスの地域差が低減する可能性がある」と指摘している。

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双極性うつ病に対するコエンザイムQ10の二重盲検臨床試験

 双極性障害(BPD)は、躁病、軽躁病、大うつ病性障害エピソードによって特徴付けられる慢性的かつ再発性の気分障害である。利用可能なエビデンスでは、BPDの病態生理においてミトコンドリア機能不全、酸化ストレス、炎症が、重要な役割を担っていることが示唆されている。それは、ミトコンドリアモジュレーターであるコエンザイムQ10(CoQ10)、抗酸化薬、抗炎症薬が、BPDの病態生理の経路を調節するために有用であることを意味している。イラン・Hamadan University of Medical SciencesのMaryam Mehrpooya氏らは、BPD患者のうつ症状に対し、補助的なCoQ10治療がプラセボと比較し、どの程度有用であるかについて調査を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2018年8月14日号の報告。 抑うつ症状を伴うBPD患者69例を対象に、補助的CoQ10(200mg/日)群またはプラセボ群にランダムに割り付けた。気分安定薬および抗うつ薬による標準的な薬物治療は、本試験の2ヵ月前および試験中に一貫して行われた。ベースライン時、4週目、8週目の各患者のうつ病重症度は、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)を用いて評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・両群において、うつ症状が時間とともに減少した。・補助的CoQ10群は、プラセボ群と比較し、8週目のうつ症状の改善が認められた。・補助的CoQ10群は、プラセボ群と比較し、試験終了時の治療反応者がより多く観察された。・CoQ10は、副作用が少なく、忍容性が良好であった。 著者らは「BPD患者に対する補助的CoQ10治療は、プラセボと比較し、8週間にわたるうつ症状改善効果が認められた。これは、CoQ10の抗酸化・抗炎症作用によるものであると考えられる」としている。■関連記事双極性うつ病に対するドパミン作動薬の効果は双極性うつ病に対する抗うつ薬補助療法による再入院率に関するコホート研究双極性障害のうつ症状改善へ、グルタミン酸受容体モジュレータの有用性は

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統合失調症入院患者における措置入院と自殺に関するコホート研究

 台湾・台北医科大学のChing-En Lin氏らは、2007~13年の統合失調症入院患者の自殺リスクの分析およびリスク因子の特定を目的とした検討を行った。Suicide & Life-Threatening Behavior誌オンライン版2018年8月6日号の報告。 本研究は、全国人口ベースのコホート研究として実施された。対象は、初回措置入院の精神科入院患者2,038例(措置入院群)およびマッチさせた任意入院患者8,152例(対照群)。統合失調症患者のみを研究に含めた。2005年の台湾全民健康保険データベースのデータをもとに、台湾の全人口から100万人の受給者をランダムに抽出して検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中に自殺が認められた患者は、措置入院群で23例、対照群で75例であった。・カプランマイヤー曲線からは、入院患者の累積自殺発生率は、措置入院と任意入院との間で有意な差は認められなかった(log-rank検定のp=0.206)。 著者らは「本結果は、措置入院には、任意入院と比較し、統合失調症入院患者の自殺リスク低減に対する保護効果がないことを示唆している。臨床医は、統合失調症入院患者の自殺予防により注意し、入院第1週目に患者の自殺リスクを詳細に監視する必要がある」としている。■関連記事措置入院後の統合失調症患者における再入院リスク要因入院から地域へ、精神疾患患者の自殺は増加するのか日本人統合失調症患者の自殺、そのリスク因子は:札幌医大

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アトピー性皮膚炎が、うつ病、不安および自殺念慮と関連

 アトピー性皮膚炎(AD)は不安やうつ病と関連しているが、その重要性については知られていない。デンマーク・Herlev and Gentofte HospitalのAmalie Thorsti Moller Ronnstad氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析から、AD患者の治療の際は、医師がうつ病、不安および自殺念慮について考慮しなければならないことを示した。著者は、「ADの改善にはこれらのリスク軽減が明白であることから、これを優先すべきである」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌2018年9月号掲載の報告。 研究グループは、小児および成人におけるADと、うつ病、不安および自殺念慮との関連について、PubMed、EmbaseおよびPsycINFOのデータベースを用いて論文を検索し、システマティックレビューとメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・成人のADは、うつ病(統合オッズ比[OR]:2.19、95%信頼区間[CI]:1.87~2.57)、および不安(同:2.19、95%CI:1.75~2.73)と有意に関連していた。・小児においてもADはうつ病(同:1.27、95%CI:1.12~1.45)と関連していたが、不安に関しては解析に利用できるデータがほとんどなかった。・成人および青少年において、ADは自殺念慮と顕著な関連があることが認められた(同:4.32、95%CI:1.93~9.66)。・自殺既遂のリスクを調査した研究は少数であったが、多くは自殺既遂とADとの間に明らかな関連があることを示していた。・ただし、本研究にはうつ病と不安について異なる定義の研究が組み込まれており、また、ADの重症度を調べた研究はほとんどなかった。

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双極性障害における自殺リスク因子に関するコホート研究

 双極性障害は、自殺リスクが高い。そのため、リスク因子の特定は重要である。スウェーデン・ヨーテボリ大学のC. Hansson氏らは、双極性障害患者の大規模コホートにおける自殺のリスク因子を特定するため、検討を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2018年8月3日号の報告。 本研究は、双極性感情障害のためのSwedish National Quality Register(スウェーデン国家品質レジストリ)の臨床データを用いたプロスペクティブコホート研究として実施した。アウトカム変数は、2004~14年のCause of Death Registerの自殺とした。ハザード比(HR)は、Cox比例ハザードモデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害患者1万2,850例(男性:4,844例、女性:8,006例)のうち、1~10年間の追跡期間中に90例(男性:55例、女性:35例)が自殺した。・統計学的に有意な自殺のリスク因子は、以下のとおりであった。 ●男性(HR:2.56) ●独居(HR:2.45) ●自殺企図歴(HR:4.10) ●精神疾患の併存(HR:2.64) ●最近の感情エピソード(HR:2.39) ●犯罪歴(HR:4.43) ●精神科入院治療(HR:2.79) ●措置入院(HR:3.50)・双極性障害における自殺の統計学的に有意なリスク因子は、男女間で異なるものがあった。 著者らは「双極性障害における自殺のリスク因子は、一般の自殺に関連する因子だけでなく、疾患特有の因子も含まれる」としている。■関連記事双極性障害の自殺企図、“だれ”よりも“いつ”がポイント自殺予防の介入効果はどの程度あるのか統合失調症患者における自殺のリスク因子に関するメタ解析

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日本人双極性うつ病患者に対するクエチアピン徐放性製剤の多施設二重盲検ランダム化比較試験

 クエチアピンフマル酸塩は、さまざまな精神疾患に適応を有する非定型抗精神病薬であるが、日本人双極性うつ病患者に対する研究は行われていなかった。CNS薬理研究所の村崎 光邦氏らは、日本人双極性うつ病患者に対するクエチアピン徐放性製剤(XR)の有効性および安全性を評価するため、検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2018年8月1日号の報告。 双極I型障害または双極II型障害を有する日本人成人患者431例を対象とした多施設二重盲検ランダム化プラセボ対照固定用量試験を実施した。効果判定には、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)総スコアのベースラインからの平均変化量を分析した。副次的エンドポイントは、MADRSの治療反応率および寛解率、17項目のハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D17)、臨床的全般改善度-双極性障害(CGI-BP)スコアとした。安全性は、有害事象および臨床評価をモニタリングすることで評価した。 主な結果は以下のとおり。・クエチアピンXR300mg/日単独療法群では、プラセボ群と比較し、8週間後のMADRS総スコアの統計学的に有意な大幅減少が認められた(-12.6 vs.-10.1、p=0.034)。・MADRSの治療反応率(44.1% vs.35.6%)、寛解率(38.0% vs.26.6%)ならびにHAM-D17スコア、CGI-BPスコアにおいても、プラセボ群と比較し、改善が認められた。・サブグループ解析において、プラセボ群と比較したMADRS総スコアの調整平均変化量は、双極I型障害患者で-2.3、双極II型障害患者で-2.1であった。・有害事象の発生は、クエチアピンXR300mg/日群149例(83.2%)、プラセボ群81例(45.8%)であった。・最も一般的な有害事象は、眠気および口渇であり、以前に報告された安全性プロファイルと同様であった。 著者らは「クエチアピンXRによる1日1回の単独療法は、日本人双極性うつ病患者に対し効果的かつ忍容性に優れた治療法である」としている。■関連記事急性双極性うつ病に対する非定型抗精神病薬の信頼性は双極性うつ病に対するドパミン作動薬の効果は双極性うつ病に対する抗うつ薬補助療法による再入院率に関するコホート研究

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統合失調症に対する第2世代抗精神病薬持効性注射剤の治療結果

 統合失調症患者における、第2世代抗精神病薬(SGA)の長時間作用型持効性注射剤(LAI)による治療と、再発、精神科への入院、入院日数、故意による自傷行為の回数および入院関連費との関連について、デンマーク・オールボー大学のRene Ernst Nielsen氏らが、調査を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2018年7月10日号の報告。 本調査は、SGA LAI開始前後におけるミラーイメージモデルを用いた、全国人口ベースのレトロスペクティブ研究として実施された。 主な結果は以下のとおり。・調査母集団には、1万509例が含まれた。分析対象患者は、6ヵ月間で2,223例、12ヵ月間で1,383例、24ヵ月間で713例であった。・LAI開始後、再発回数の減少が認められた。発生率比(IRR)は、6ヵ月間で0.60、12ヵ月間で0.64、24ヵ月間で0.64であった(すべてp<0.001)。・精神科への入院の回数も、同様に減少が認められた。IRRは、6ヵ月間で0.59、12ヵ月間で0.60、24ヵ月間で0.64であった(すべてp<0.001)。・精神科への入院日数においても、6ヵ月間で58日、12ヵ月間で100日、24ヵ月間で164日の減少が認められた(すべてp<0.001)。・LAI開始患者におけるCox回帰モデルでは、診断時の年齢が高く(HR:0.99、95%CI:0.98~0.99、p<0.001)、診断された年が遅くなる(HR:0.99、95%CI:0.98~1.00、p<0.05)と再発率がより低かった。また、主に精神医学的合併症(HR:1.07、95%CI:1.04~1.11、p<0.001)や心血管疾患(HR:1.12、95%CI:1.01~1.26、p<0.05)では、再発との関連が認められた。 著者らは「本デザインが因果関係に関する推論を考慮していないとしても、本知見は、SGA LAIの使用を支持するものである」としている。■関連記事2つの月1回抗精神病薬持効性注射剤、有用性の違いは統合失調症薬物治療、LAIは早く使うべきなのかパリペリドン持効性注射剤、国内市販後の死亡例分析結果

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シフト勤務と認知症発症リスクに関するコホート研究

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のKathleen Bokenberger氏らは、Swedish Twin Registry(STR)より2つの集団ベースコホートにおけるシフト勤務と認知症との関連について調査を行った。European Journal of Epidemiology誌オンライン版2018年8月3日号の報告。 対象は、STR1973サンプルおよびScreening Across the Lifespan Twin(SALT)サンプル。STR1973サンプルの参加者(1926~43年生まれの1万3,283人)には、1973年時点でのシフト勤務状況(経験あり/なし)と期間(年)について、郵送によるアンケートを実施した。SALTサンプルの参加者(1900~58年生まれの4万1,199人)に対しては、1998~2002年の夜間勤務状況と期間について、電話による聞き取りを行った。 認知症診断は、Swedish Patient Registerより行った。Cox比例ハザード回帰を用いて、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。調整モデルには、年齢、性別、教育、糖尿病、心血管疾患、脳卒中などの潜在的交絡因子が含まれた。遺伝子型サブサンプル(STR1973:2,977例、SALT:1万366例)においては、APOEε4の状態を考慮した。 主な結果は以下のとおり。・STR1973サンプルでは、追跡中央期間41.2年後に983例(7.4%)の認知症症例が確認された。・SALTサンプルでは、追跡中央期間14.1年後に1,979例(4.8%)の認知症症例が確認された。・シフト勤務(HR:1.36、95%CI:1.15~1.60)および夜間勤務(HR:1.12、95%CI:1.01~1.23)は、認知症発症の上昇と関連が認められた。・用量反応関係がわずかに認められ、長期間のシフト勤務や夜間勤務により認知症リスクが増加することが予測された。・APOEε4キャリアでは、シフト勤務や夜間勤務を20年以上行った人は、日中勤務者と比較し、認知症リスクが高かった。 著者らは「夜間を含むシフト勤務を行っている人は、そうでない人と比較し、認知症発症リスクの増加と関連が認められた。本調査結果は、さらなる確認が必要である」としている。■関連記事長時間労働やシフト作業は認知症発症に影響するか小児期のストレスと将来の認知症発症との関連季節農家の労働者はうつ病になりやすいのか

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世界61ヵ国のタバコ依存症治療ガイドラインの調査

 英国・ノッティンガム大学のKapka Nilan氏らは、世界保健機関(WHO)のタバコ規制枠組み条約(FCTC)第14条およびそのガイドラインに従って、各国のタバコ依存症治療ガイドライン内容を評価し、その内容と国の所得水準との関連性について評価を行った。Addiction誌2018年8月号の報告。 本研究は、2016年3月~7月にオンライン調査にて実施された横断研究。対象国は、以前の調査においてガイドライン策定を表明していた、またはこれまで調査されていなかった77ヵ国(FCTC締約国:68ヵ国、署名国6ヵ国、非締約国:3ヵ国)。ガイドラインの内容、主要な提言、執筆、普及に関する9項目のアンケートを実施した。 主な結果は以下のとおり。・63ヵ国(82%)から回答が得られた。そのうち、61ヵ国はガイドラインを有していた。・大半は、医師(93%)、プライマリケア(92%)、看護師(75%)のためのものであった。・すべてにおいて短時間支援(brief advice)が推奨されており、主な内容は、医療記録に喫煙歴を記録(82%)、ニコチン置換療法(98%)、クイットライン(電話での無料禁煙相談)(61%)、テキストメッセージ(31%)、専門医の集中的な支援(87%)、医療従事者による喫煙しないことの重要性の強い主張(54%)であった。・普及戦略は57%でしか認められず、62%は5年以上更新歴がなかった。・高所得国と比較し、高中所得国のガイドラインでは、クイットラインが推奨される傾向が低く(OR=0.15、95%CI:0.04~0.61)、低中所得国では、専門医の集中的な支援が推奨される傾向が低かった(OR=0.01、95%CI:0.00~0.20)。・ガイドラインの更新は、国の所得水準と正の相関が認められた(p=0.027)。 著者らは「2016年に評価された61ヵ国のタバコ依存症治療ガイドラインのほとんどは、WHO FCTC第14条に則っており、国の所得水準による有意差は認められなかった。しかし、ガイドラインの更新、優れた執筆者の起用、普及戦略の推進において、改善が必要である」としている。■関連記事禁煙補助薬として抗うつ薬は有用なのか統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか青年期の喫煙、電子タバコ使用開始とADHD症状との関連

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小児うつ病治療のランダム化プラセボ対照試験のアップデート

 大うつ病性障害(MDD)に対する抗うつ薬治療は、過去10年間に多数のプラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)が報告されており、引き続き関心が集まっている。米国・ハーバード大学医学大学院のMartha J. Ignaszewski氏らは、2007 Bridgeメタ解析以降に更新された文献レビューを行い、治療緊急性の高い自殺傾向の予兆について、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS:Columbia Suicide Severity Rating Scale)を用いて、安全性データの再評価を行った。Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology誌オンライン版2018年7月31日号の報告。 PubMedより、2007年以降に報告されたRCTの論文とその補足資料を検索し、文献レビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・治療群およびプラセボ群の治療反応率の高い7つの試験(企業スポンサー:5件、NIMHによる助成:1件、その他:1件)が、本システマティックレビューに含まれた。・fluoxetineとエスシタロプラムによる治療のみが、統計学的に有意であった。・fluoxetineは、プラセボ群と比較し、継続治療によるMDD再発予防のオッズ比が3.2であり、再発予防効果が認められた。・CSSR-Sをシステマティックに用いて自殺率を測定した試験では、抗うつ薬治療による治療緊急性の高い自殺傾向の増加は認められなかった。 著者らは「小児うつ病患者では、抗うつ薬治療群とプラセボ群において同様の反応が示されており、最近の研究においても、より新しい抗うつ薬治療がプラセボよりも明らかに有用であるとの結果は認められなかった。これらのエビデンスでは、fluoxetineとエスシタロプラムを第1選択治療薬として支持し続けており、再発予防効果も実証されている。これまでの有害事象データを用いた自殺の予兆増加を示唆する研究とは対照的に、治療緊急性の高い自殺傾向は、抗うつ薬治療群とプラセボ群で同様であることが、新しい評価尺度により明らかとなった。抗うつ薬治療は全般的に安全であり、小児において十分に許容される」としている。■関連記事思春期の少年少女における自殺念慮の予測大うつ病と自殺念慮に関する治療抵抗性うつ病研究グループの報告うつ病診断後の小児および青年における12ヵ月間の治療経過の変化

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統合失調症における不眠症の治療選択

 不眠症は、統合失調症に共通する特徴である。いくつかの研究において、統合失調症患者の睡眠に対する特定の薬剤の影響について報告されているが、実臨床における不眠症治療に関して十分に根拠のある推奨はない。ポルトガル・コインブラ大学のPedro Oliveira氏らは、統合失調症患者の不眠症に対する有効な治療法の経験的エビデンスを特定し、その安全性および有効性の評価を行った。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2018年7月30日号の報告。 統合失調症患者における不眠症の治療効果を調査するため、臨床試験のシステマティックレビューを実施した。データは、MEDLINE、PubMed、Embase、PsycINFO、Cochrane Libraryより検索を行った。個々の研究において、選択バイアス、実行バイアス、検出バイアス、症例減少バイアス、報告バイアスに関するバイアスリスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・包括基準を満たした研究は4件であった。・その内訳は、メラトニン治療2件、パリペリドン治療1件、エスゾピクロン治療1件であった。・すべてのポジティブな結果は、以下のとおりであった。●メラトニンは、睡眠効率および総睡眠持続時間を増加させた●パリペリドンは、入眠潜時を短縮させ、総睡眠時間および睡眠効率を増加させた●エスゾピクロンは、不眠症の重症度を低下させた 著者らは「統合失調症患者の不眠症に対し、メラトニン、パリペリドン、エスゾピクロンによる治療は有効な選択肢であると考えられる」としている。■関連記事統合失調症への睡眠薬使用に関するメタ解析:藤田保健衛生大統合失調症患者の睡眠状態を検証抗精神病薬誘発性傾眠、薬剤間の違いは

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第2回 プラバスタチンの処方/カモスタットの処方/クエチアピンの処方と検査/肝硬変での検査【レセプト査定の回避術 】

事例5 プラバスタチンの処方脂質異常症の重症患者に、プラバスタチン10mg 2錠を処方した。●査定点プラバスタチン10mg 1錠が査定された。解説を見る●解説添付文書で、年齢・症状により適宜増減し、重症の場合は1日20mgまで増量できることになっていましたが、レセプトに「重症」のコメントが追記されていませんでした。コメントとして「重症」が求められます。事例6 カモスタットの処方逆流性食道炎の患者に、カモスタット100mg 6錠を処方した。●査定点カモスタット100mg 6錠が査定された。解説を見る●解説(1)カモスタットの添付文書で「カモスタット100mg 6錠」の傷病名は「慢性膵炎における急性症状の緩解」のため査定されました。(2)「逆流性食道炎」では、カモスタットの処方は認められていません。「術後」の「逆流性食道炎」では認められています。なお、「術後逆流性食道炎」では、カモスタット100mg 3錠の処方となります。事例7 クエチアピンの処方と検査統合失調症でクエチアピン錠25mg 3錠を継続処方している患者に、HbA1c検査を施行した。●査定点HbA1c検査が査定された。解説を見る●解説統合失調症にクエチアピン錠を投与すると、添付文書の「重要な基本的注意」で「著しい血糖値の上昇から、糖尿病検査」が求められています。このような場合には、糖尿病の疑いを追記するのではなく、「患者は『クエチアピン錠投与により著しい血糖値の上昇』を受けやすく、添付文書の【重要な基本的注意】によりHbA1c検査施行を必要とした」と症状詳記することが望ましいといえます。事例8 肝硬変での検査肝硬変でヘパプラスチンテストを施行した。●査定点ヘパプラスチンテストが査定された。解説を見る●解説ヘパプラスチンテストの保険請求では、「他の検査で代替できない理由を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること」となっています。コメントの記載がないため査定されています。

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日本におけるクロザピン使用の安全性分析

 CNS薬理研究所の稲田 健氏らは、日本の統合失調症患者におけるクロザピン使用とそれに伴う副作用について調査を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2018年8月号の報告。 2009年7月~2016年1月に、クロザリル患者モニタリングサービスに登録されたデータを分析した。クロザリル患者モニタリングサービスは、2009年に日本に導入され、クロザピンの処方を受けたすべての日本人患者を登録している。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、3,780例であった。・治療中止率は、23.9%(869例)であった。・平均投与期間は234.9±306.9日(中央値:115日)、平均投与量は186.41±151.6mg/日であった。・治療継続率は、1年後で78.2%、2年後で72.9%であった。・好中球減少症/白血球減少症の発生率は、5.4%(206例)であった。・投与中止前の平均投与量は、233.36±168.15mg(中央値:200mg、範囲:4~600mg)であった。・耐糖能異常の発生率は、15.4%(583例)であった。・耐糖能異常が発生した患者は、クロザピン投与前後で98例(2.67%)、クロザピン投与後で485例(12.8%)であった。・投与開始から耐糖能異常が発生するまでの平均期間は、382.2±420.2日(中央値:216日、範囲:4~2,053日)であった。 著者らは「本研究で得られたデータ(とくにクロザピン誘発性の有害事象の発生データ)は、日本人の治療抵抗性統合失調症患者における、最適かつ安全なクロザピン使用を可能とするだろう」としている。■関連記事治療抵抗性統合失調症は、クロザピンに期待するしかないのかクロザピン関連遅発性ジスキネジアへの低用量アリピプラゾールクロザピン誘発性好中球減少症、アデニン併用で減少:桶狭間病院

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日本人統合失調症患者に対するオランザピン使用と安静時心拍数への影響

 抗精神病薬(ATP)が頻脈を引き起こすことは、ずいぶん前から知られていたが、ATPの違いによってどのような変化が生じるかなどの詳細は、よくわかっていない。近年、一般集団において、安静時心拍数(RHR)の上昇と死亡リスクの増加との関連が注目されている。新潟大学の田尻 美寿々氏らは、オランザピン(OLZ)とアリピプラゾール(ARP)がRHRに与える作用の違いについて調査を行った。PLOS ONE誌2018年7月17日号の報告。 研究1では、統合失調症外来患者19例を対象に、OLZからARPへの切り替え時のRHRの変化を評価した。研究2では、統合失調症外来患者29例を対象に、OLZ開始用量からOLZ最終用量時のRHRの変化を評価した。RHRの分析には、心電図測定値を用いた。また同日に、BPRS(簡易精神症状評価尺度)を評価し、電解質検査を行うために、1晩絶食(8時間以上)後の空腹時血液サンプルを採取した。両研究は、新潟大学倫理審査委員会の承認を得て実施され、新潟大学医歯学総合病院の精神科外来で治療が行われた。すべての患者は、DSM-IV-TRに基づき統合失調症と診断された。 主な結果は以下のとおり。・研究1では、OLZ用量(平均±SD)14.6±9.2mgからARP用量20.8±8.1mgへ切り替えられた。・ARPに切り替え後、平均RHRの有意な減少が認められた(73.7±9.7回/分 vs.65.8±10.9回/分、p=0.008)。・研究2では、OLZ開始用量(平均±SD)7.2±3.2mgであり、最終的に用量は18.3±7.4mg増加した。・OLZ増量後、平均RHRの有意な上昇が認められた(69.7±14.0回/分 vs.75.6±14.3回/分、p=0.004)。 著者らは「OLZはARPと比較し、RHR増強作用がより強く、その作用は用量依存的であることが示唆された。RHRの上昇が統合失調症患者の死亡率を増加させるとするならば、強力な抗コリン作用を有する第2世代抗精神病薬やフェノチアジン系抗精神病薬のRHRに対する作用に関して、ATP間での差異をさらに調査する必要があるだろう」としている。■関連記事第二世代抗精神病薬、QT延長に及ぼす影響:新潟大学オランザピンの代謝異常、アリピプラゾール切替で改善されるのか統合失調症、心臓突然死と関連するプロファイルは

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精神的危機に直面した人々へのセルフマネジメント介入は有効か/Lancet

 英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのSonia Johnson氏らは、精神的危機(mental health crisis)に直面し、在宅での集中的治療を提供する精神的危機解決チームによるサポートを終えた人々について、ピアサポート専門員の助けを借りたセルフマネジメント介入が、急性期ケアの再入院率を低下するかを検証した。精神保健サービスにとって、回復サポートに焦点を合わせ、急性期治療へ高度専門治療を提供することは課題の1つとなっている。精神的危機に直面した人々の再発は一般的となっており、そのような再発予防に対して、セルフマネジメントの介入効果を支持するエビデンスはあるが、危機を脱した人の再入院に関する効果は検証されていなかった。Lancet誌2018年8月4日号掲載の報告。ピアサポート専門員の支援有無で無作為化、1年以内の再入院率を評価 研究グループは、英国の6つの精神的危機解決チームから参加者を募り、無作為化優越性試験で検討した。適格参加者は、精神的危機解決チームにより1週間以上対象者として登録されており、インフォームド・コンセントに応じられる人とした。 参加者は、非マスキングのデータ管理者によって介入群または対照群に無作為に割り付けられた。被験者のデータ収集・解析者は割り付けをマスキングされたが、被験者は承知していた。 介入群には、ピアサポート専門員のサポートの下で受ける計10回(毎回1時間)のセッションが提供された。そこでは、ピアサポート専門員による、ワークブックを用いたパーソナル・リカバリー(パーソナル・リカバリーの目標設定や、危機後のコミュニティ機能やサポートネットワークを再構築するプラン作成など)を完了するサポートが行われた。一方、対照群には郵送でパーソナル・リカバリー・ワークブックが提供された。 主要評価項目は、1年以内の急性期ケア(急性期入院病棟、危機解決チーム、クライシスハウス、急性期デイケアサービスなど)への再入院率であった。副次評価項目は、再入院の日数および初回再発までの期間で、4ヵ月時点と18ヵ月時点で評価した。1年以内の再入院率、介入群が有意に低下 3,288例について適格性の評価が行われ、441例が介入群(221例)または対照群(220例)に無作為化された。被験者は両群ともに女性が60%で平均年齢は40歳、英国生まれ(各群80%、75%)の白人(両群ともに65%)が大勢を占め、独身者は介入群63%、対照群67%であった。臨床的診断歴は、その他/明確な診断記録なし(30%、27%)を除くと、うつ病が最も多く(23%、25%)、次いで統合失調症/統合失調感情障害(13%、15%)、双極性障害(13%、12%)。精神科入院歴は、なしが最も多く(35%、40%)、1年が24%、19%、2~5年が24%、27%などであった。精神的危機解決チームから受けたサポート期間は、1週間が最も多かった(各群50%、47%)。 本試験では、441例のうち40例はパイロット試験で登録され(2013年5月14日~11月12日)、残り401例は2014年3月12日~2015年7月3日に登録された。最終評価(18ヵ月時点の評価)は2017年2月23日に行われた。 主要アウトカムデータは、介入群218例、対照群216例から得られた。 1年以内の再入院率は、対照群(83/216例[38%])と比べて介入群(64/218例[29%])で有意に低かった(オッズ比:0.66、95%信頼区間[CI]:0.43~0.99、p=0.0438)。また、介入群は対照群と比べて再入院までの期間が有意に延長したが、再入院日数について有意差はみられず、記述的分析では介入群平均8.6日vs.対照群平均2.9日と、予想に反した結果が示された。 確認された重篤有害事象は71例(介入群29例、対照群42例)。うち55例が再入院で、11例は自殺企図、1例は殺人未遂で起訴、4例は死亡(全例対照群)であった。 著者は、「予想より入院率が低く信頼区間値がかなり広範だったが、ピアサポート専門員提供によるセルフマネジメントは、再入院率を減らすことが示された」とまとめる一方、「試験介入の複雑さが結論を限定的にしているが、この介入をルーチン設定に適用することで再入院が減るかどうかという評価は間違っていない」と述べている。

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ゾルピデム処方と自動車事故リスク

 ゾルピデムは世界で最も使用頻度の高い睡眠薬の1つであるが、自動車事故などの深刻な問題を伴う可能性が報告されている。韓国・ソウル大学病院のBo Ram Yang氏らは、自動車事故の状況を考慮したうえで、ゾルピデムの処方と致死的な自動車事故との関連について評価を行った。CNS Drugs誌2018年6月号の報告。 韓国道路交通公団より得られた2010~14年の致死的な自動車事故に関するデータと健康保険データを結び付け、ケース・クロスオーバー研究を実施した。ケース期間は、致死的な自動車事故の前日と定義し、90日間隔で4つのコントロール期間をマッチさせた。条件付きロジスティック回帰分析を用いて、ゾルピデム処方に関連する致死的な自動車事故のオッズ比を算出し、オッズ比は、交絡薬物の経時的処方で調整を行った。年齢層(65歳未満または65歳以上)、チャールソン併存疾患指数(Charlson Comorbidity Index)、新規ゾルピデム処方について層別分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象者714例において、前日のゾルピデム処方に関連する致死的な自動車事故の調整オッズ比は、1.48(95%CI:1.06~2.07)であった。・層別分析においてオッズ比が有意に増加したのは、チャールソン併存疾患指数が高い(オッズ比:1.81、95%CI:1.16~2.84)、65歳未満(オッズ比:1.62、95%CI:1.03~2.56)、新規ゾルピデム処方(オッズ比:2.37、95%CI:1.40~4.00)であった。 著者らは「本研究では、前日のゾルピデム処方は、致死的な自動車事故リスクの有意な増加と関連していた」としている。■関連記事睡眠薬使用は自動車事故を増加させているのか自動車事故リスク、うつ病や抗うつ薬ではどうか車両運転事故、とくに注意すべき薬剤は

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研究方法に疑問(解説:野間重孝氏)-898

 まず評者は精神疾患の専門家ではないので、うつ病そのものに関しての踏み込んだ議論はしないことをお断りして、この論文評を始めることをお許しいただきたい。 この問題を考える場合、2つの方向があることをまず考えておく必要がある。第1は、まずうつ病は冠動脈疾患(CAD)のリスクファクターであるのか否かという問題。そして、もしそうであったとしたなら、それは予後規定因子としてどのくらいの重みを持っているのか。第2は、急性冠症候群(ACS)の患者はどの程度の割合でうつ病を発症するのか。そして、うつ病を発症することが、その予後にどのような影響を与えるのかという問題の立て方である。つまり、両方向から問題が立てられるのである。ただ、ここで注意を促しておきたいのは、第1の問いが真であったとして、うつ病患者でCADに罹患したものを無作為に振り分けて、片方にうつ病の治療を続行し、もう片方にプラセボを投与するといった研究は倫理的に許されるものではなく、大規模な疫学研究の結果を待つか、結果として治療が行われたり行われなかったりしたretrospective studyのメタアナリシスを待つしかないということである。こういうところに臨床研究の限界がある。 うつ病とCADを巡る問題は、1990年代から議論が始まったが、議論は混乱するばかりでなかなか結論が得られなかった。最大の原因は一言で言えば、うつ病をどう定義するかの問題でなかなか一致点が見いだされなかったことである。確かに狭い意味ではDSM-IVにmajor depressive disorder(大うつ病と訳される)が定義されているが、抑うつ状態やいわゆる仮面うつ病まで含めて、うつ病をどの範囲でどう定義すべきかには議論が多く、現在でも一致をみていない。上記第2の問題にしても、ACSになれば将来のこと、家族のことを考えて誰しも抑うつ的になるだろう。それと持続的なうつ病とをどう区別するのか。また自分がACSを経験したことは、大抵の人には大きな心の傷となっているだろう。それをうつ状態と呼んでよいのか。問題は尽きない。 そうした混乱の中で疫学研究のまとめ、メタアナリシスにより一応の勧告に当たるものが出されたのが、2014年の米国心臓病学会によるstatementである。しかしその表現は“American Heart Association should elevate depression to the status of a risk factor for adverse medical outcome in patients with acute coronary syndrome”と、決して歯切れのよいものではなかった。実際、他の学会・団体は、まだはっきりとしたstatementを発表するには至っていない。この論文評を書くに当たって調べてみると、CADにうつ病を合併すると、心事故および致死的不整脈による死亡が3~4倍になるとの記載を見つけて、評者自身驚いている。つまり、まだ結論が出ていない問題なのだが、そういった極端な発言をする専門家(?)もいるのである。 そこでもう1つの問題として持ち上がるのが、それではACS後の抑うつ状態を含めたうつ病への治療はACSの予後改善をもたらすのか否かという観点からの問いである。この問題については、すでに二度にわたって比較的大きな臨床研究が行われており(van Melle JPら. 2007年、Glassman AHら. 2009年)、いずれにおいても有意な改善効果は認められなかった。今回は、韓国のJae-Min Kimらが中心となって、一連の研究の中でも有望視された選択的セロトニン再取り込み阻害薬エスシタロプラムを、ACS後の抑うつ状態にある患者に無作為に投与してこの効果を確かめたものである。結果、MACEの発生でp=0.03、個別イベントでは心筋梗塞の発生でp=0.04とわずかではあるが改善が認められたが、その他の項目(全死因死亡、心臓死、PCI)には差がみられなかったと報告された。 著者らは「さらなる研究で、今回の所見の一般普遍化について評価したい」と述べているが、評者にはその前に研究方法に問題があるように思えてならない。まず、著者らはMACE(彼らの使用法ではmajor adverse cardiac events)を全死因死亡、心筋梗塞、PCIとし、追加的評価項目に心臓死を挙げて定義しているが、それでよいのだろうか。主要心血管イベント(MACE:major adverse cardiovascular events)といえば、通常は血管死(中枢神経系外の出血死を除く心血管/脳血管起因)、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中(虚血性、出血性および不明な脳卒中)と定義される。今回の場合、心臓に問題を絞っているから脳卒中を問題にしないとするなら、全原因心臓死、非致死性心筋梗塞、狭心症の再発などとすべきで、全原因死亡やPCIは不適当ではなかったか。まず心臓以外の疾患での死亡が、なぜ問題にされなければならないのか。とくにうつ病を対象とした場合、自殺死なども含まれてしまうことも指摘しておきたい。さらにPCIを行うか否かは相当程度、主治医の恣意的な判断が加わるもので、こういった研究のエンドポイントとしては不適切である。研究方法そのものに問題がある以上、この研究をこれ以上続けられても、評価のしようがない。 議論のある分野に思い切って踏み込んだこと自体は評価したいが、その研究方法は評価できず、また、その結果もこの分野の議論に大きな一石を投じる内容ではないと言わざるを得ないと考えた。

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SNRI中止後の離脱症状に関するシステマティックレビュー

 セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)は広く用いられており、SNRIの中止は幅広い症状との関連が認められている。イタリア・ボローニャ大学のGiovanni A. Fava氏らは、SNRI中止後の離脱症状の発生、頻度、特徴について検討を行った。Psychotherapy and Psychosomatics誌オンライン版2018年7月17日号の報告。 PRISMAガイドラインに沿って、システマティックレビューを実施した。PubMed、コクラン・ライブラリ、Web of Science、MEDLINEを用いて、それぞれのデータベースの初めから2017年6月までの文献を検索した。検索キーワードは、デュロキセチン、ベンラファキシン、desvenlafaxine、ミルナシプラン、levomilnacipran、SNRI、第2世代抗うつ薬、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、および中断、離脱、リバウンドを組み合わせた。英語で公表された試験のみ抽出した。 主な結果は以下のとおり。・包括基準を満たした研究は、61件であった。・その内訳は、二重盲検ランダム化比較試験22件、オープンフェーズと二重盲検ランダム化フェーズを用いた試験6件、オープントライアル8件、自然主義的研究1件、レトロスペクティブ研究1件、ケースレポート23件であった。・各種SNRI中止後に、離脱症状が認められた。・離脱症状の発生率は、各報告で変化していたが、ベンラファキシンではより高率であると思われる。・典型的に、症状発現は中止後数日以内に認められ、徐々に漸減しながら数週間継続していた。・遅発性の障害や長期間の持続も同様に認められた。 著者らは「臨床医は、投与中止後に離脱症状を誘発する可能性のある薬剤リストに、他の向精神薬と共にSNRIを追加する必要がある」としている。■関連記事SSRI中止は離脱症状に注意をSSRI/SNRIへの増強療法、コストパフォーマンスが良いのはSSRIなどで効果不十分なうつ病患者、新規抗うつ薬切り替えを検証

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