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「コロナ疲れ」が単なる疲労で済まされない理由

 コロナ禍において、日本でも「コロナ不安」「コロナ疲れ」という言葉がメディアやSNS上で散見される。現在、米国では国民の約半数がこの状況下でメンタルヘルスに支障をきたし、ワシントンポスト紙の調査によれば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行拡大によるストレスレベルは2009年のリーマン・ショック時よりも高くなっているー。2020年6月18日、2020年度第1回メディアセミナーがWeb開催され、堀江 重郎氏(順天堂大学大学院医学系研究科泌尿器外科学教授/日本抗加齢医学会 理事長)が「Stay Homeのアンチエイジング」と題し、コロナ疲れがDNAレベルにもたらす影響やその対策法を語った(主催:日本抗加齢医学会)。コロナ疲れの回避策として心のアンチエイジング 「コロナ疲れ」とは、COVID-19というストレッサー(脅威)に対して心理的な闘争・逃走反応が続くことで、次第にネガティブ感情が増幅して生じる状態である。堀江氏はコロナ疲れの原因の1つに在宅勤務(テレワーク)を挙げ、「『3密』(密閉、密集、密接)を回避した新しい生活様式を遂行するうえで推奨されているが、テレワークの増加に伴い、プライベートと仕事の空間が混在し、長時間労働になることでワーク・ライフ・バランスに悪影響を及ぼすことが研究報告されている1)」と問題点を指摘した。この研究結果によると、ワーク・ライフ・バランスが崩壊することで、燃え尽き症候群になりやすく、仕事や人生への満足感が減ることが明らかになっていることから、コロナ疲れの回避策として「心のアンチエイジングが重要」と同氏は述べた。 一般的なアンチエイジング対策には、加齢に伴い増加する酸化ストレスをいかに抑制させるかが鍵となるが、心のアンチエイジングを保つための有用な方法として、同氏はセルフ・コンパッションを推奨。セルフ・コンパッションとは、「あらゆる人の幸せを願う」「あらゆる人の苦しみがなくなることを願う」「あらゆる人の幸せを喜ぶ」「偏りのない平静で落ち着いた心」という、ダライ・ラマ14世の教えである。これにより、他人のために何かをしようとする前に自分自身を労ろうという考え(自分への優しさ、共通の人間性の認識、マインドフルネス)を意識することで、幸福感や打たれ強さ、つながり感が増幅し、ストレス・うつ・不安になりにくい体質が形成されることが明らかになってきている。セルフ・コンパッションの効用をまとめると、1)幸福感を高める、2)ストレスを減少させる、3)レジリエンス(回復力、弾性)が高い、4)自己改善のモチベーションが高く自分らしい人生を送れる、などがある。近年、セルフ・コンパッションの概念を持つ人はテロメアが長いことも報告されており、抗加齢医学の研究でも重要な役割を果たすとされている。「コロナ疲れ」だけで済ませてはいけない理由 遺伝子の老化度を示すテロメアの長さはセルフ・コンパッションにより保たれる。その一方、コロナ疲れのような心理的ストレスの影響を大きく受けている人ほどテロメアは短縮し、動脈硬化や心臓病の発症リスクが高くなる。過去に性差を比較した研究2)では、男性のほうが女性よりも早くテロメアが短くなることも報告されている。これらを踏まえ、テレワークをする男性が、寿命延伸やテロメアの長さを死守するため「コロナ疲れ」を単なる「疲れ」で済ますのは、リスクが大きいのかもしれない。 最後に同氏は「テレワークの増加により中年期以降のうつの増加も懸念される。酸化ストレスが免疫を抑制し、心理的ストレスがそれを助長することから、自宅でもハツラツと過ごすために、まずは自分自身をいたわるセルフ・コンパッションを学んでほしい」と締めくくった。

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急性期統合失調症における抗精神病薬の投与量~メタ解析

 急性期統合失調症における抗精神病薬の最適な投与量については、あまり知られていない。慶應義塾大学の竹内 啓善氏らは、急性期統合失調症における抗精神病薬の最小有効量(MED)について調査を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2020年5月16日号の報告。 これまでのシステマティックレビューより、各抗精神病薬のMEDを特定した。次に、急性期統合失調症における固定用量の抗精神病薬単剤療法を含む二重盲検プラセボ対照ランダム化試験を特定し、同一薬剤でMEDと高用量の比較を行った。研究の選定は、第2世代抗精神病薬とハロペリドールの用量反応性を調査した最近のメタ解析より行った。研究中止、精神病理、錐体外路症状、治療に伴う有害事象に関するデータを抽出した。各抗精神病薬のMED、MEDの2倍量、MEDの3倍量を比較するメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・26研究、5,618例が解析に含まれた。・MEDと高用量(2倍量、3倍量)との有効性の違いにより、研究中止について有意な差が認められた。・精神病理については、高用量はMEDと比較し、陽性症状および総症状の改善効果が優れていた。・副作用については、MEDと比較し2倍量でパーキンソン症状、下痢が多く、3倍量でアカシジア、傾眠、嘔吐が多かった。 著者らは「急性期統合失調症に対する抗精神病薬の使用において、臨床医は、MEDの2倍量または3倍量の投与が可能であるが、副作用については注意深くモニタリングする必要がある」としている。

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恥ずかしいけど口に出したら幸せになるカード【これで「コロナ離婚」しなくなる!(レクリエーションセラピー)】Part 1

今回のキーワード「ポジティブ合戦」社会的報酬ピグマリオン効果認知(マインドセット)健康(ウェルビーイング)幸福感(主観的ウェルビーイング)マズローの動機(欲求)のピラミッドポジティブ心理学コロナ禍の中、親の在宅勤務や子どもの自宅学習が増え、家族が家にいる時間が増えたことで絆が強まる…と思ったら、実際は、逆でした。その距離感に戸惑い、夫婦げんかや親子げんかが増えています。そして、モラハラやDVが社会問題となり、「コロナ離婚」という言葉が生まれています。このようにならないためには、どうすれば良いでしょうか?その答えが、今回紹介するカードゲーム「恥ずかしいけど口に出したら幸せになるカード」です。今回は、いつもとは違い、シネマセラピーのスピンオフバージョン「レクリエーションセラピー」をお送りします。このゲームは、一言で言うと、ファミリーやカップル向けの「ポジティブ合戦」です。それでは、なぜポジティブなセリフを言い合うとポジティブになるのでしょうか? なぜポジティブになると幸せになるのでしょうか? そもそもなぜ私たちは幸せになりたいのでしょうか? これらの答えを、このゲームに触れながら、進化心理学的に解き明かします。ネガティブになりがちな今だからこそ、ポジティブになることについて考え、「コロナ離婚」しない、幸せな夫婦のあり方、家族のあり方を一緒に探っていきましょう。 なんでポジティブなセリフを言い合うとポジティブになるの?このゲームのアイテムは、ポジティブなセリフが書かれた48枚のカードと30枚のチップを使います。ルールは、プレイ人数2~4人で、毎朝1~5枚ずつカードを引いて、そのカードに書かれたセリフを1日の間で「対戦相手」にどれだけ言えるかを1週間単位で競います。また、自分が引いたカードを「対戦相手」にアピールしてそのセリフを言ってもらうと、お互いにポイントになります。毎日の夕食の時など一緒にいる時に「対戦結果」を集計し、ポイントのチップをゲットして、勝敗を決めます。このゲームをし続けるうちに、プレイヤーはだんだんとポジティブになっていきます。ここから、この心理メカニズムを3つに分けて、ご説明しましょう。(1)言われると心地良く感じるたとえば、「素敵だね」というカードがあります。こう相手から言われると、どうなるでしょうか?1つ目は、私たちが美味しいものを食べた時と同じように、ポジティブなことを言われると心地良く感じるからです。これを心理学では、社会的報酬と言います。さらに、相手からポジティブに見られると、自分も相手をポジティブに見るようになります。これを心理学では、魅力の返報性(互恵性)と言います。(2)言われるとその良さを再認識するたとえば、「思いやりがあるね」というカードがあります。こう相手から言われると、どうでしょうか?2つ目は、ポジティブなことを言われるとその良さを再認識するからです。これを心理学では、リソースの発見と言います。これは、自尊心や自信を高めることにつながり、ポジティブになります。また、期待されるという暗示的な効果によって、その良さを生かすことに意識が向いて、実際にそのようになっていきます。これを心理学では、ピグマリオン効果と言います。なお、ピグマリオンとは、ギリシア神話に登場する彫刻家です。彼に恋をした石像が、その彼の期待に応えようと本物の人間の女性になったというストーリーにちなんでいます。日本のことわざの「ひょうたんから駒」や「嘘から出た真」にも通じます。(3)言い続けると癖になるたとえば、「一緒にいられて嬉しいな」というカードがあります。こう自分が言おうとすると、どうなるでしょうか?3つ目は、ポジティブなことを言い続けると癖になるからです。これは、カードのセリフを言うタイミングを見極めようと、そのセリフが頭の中を占めるようになることです。そして、相手の良さを探し出す発想が自分自身にも向き、自分も自分の良さに気付き、ポジティブ思考の「癖」が身に付きます。この考え方の「癖」を心理学では、認知(マインドセット)と言います。ある心理学者(ジェームズ・ランゲ)が、「悲しいから泣くのではない。泣くから悲しい」という名言を残しています。言い換えれば、「楽しいから笑うのではない。笑うから楽しい」です。これは、「笑う門には福来たる」という日本のことわざにも通じます。つまり、私たちは行動を変えることで、思考パターン(認知)を変えるができます。この思考パターンは、まさにスポーツや楽器演奏と同じく、練習すればするほどうまくなります。これは、心理カウンセリングでよく行われる認知行動療法です。認知とは、心のあり方そのものです。もっと言えば、どういう生き方をしたいのか、生き方そのものとも言えるでしょう。 なんでポジティブになると幸せになるの?幸せとは、健康(ウェルビーイング)と言い換えられます。ここから、ポジティブになると得られる健康を3つに分けて、紹介しましょう。(1)精神的な健康たとえば、「いつもそばにいるよ」というカードは、「自分は大丈夫」という自尊心(自尊感情)を高めます。「センスがいいね」というカードは、「自分はできる」という自信(自己効力感)を高めます。そして、「ワクワクするね」というカードは、「自分はこうしたい」という積極性(内発的動機付け)や目標意識(自己実現)を高めます。これの心理によって、たとえストレスにさらされても、解決しようと働きかけるようになります(ストレスコーピング)。これは、裏を返せば、心が折れにくくなります(レジリエンス)。1つ目は、うつ病などの精神障害を発症しにくくなる、つまり精神的な健康です。なお、レジリエンスの詳細については、末尾の関連記事1をご参照ください。(2)身体的な健康精神的な健康によって、ストレスを減らすことは、脳血管疾患や心血管疾患のリスクを減らします。また、免疫力を維持して、がんのリスクも減らします。2つ目は、寿命が延びる、つまり身体的な健康です。実際に、「修道女研究」によって、若年期にポジティブであることは長寿の傾向になることが示されています。これは、アメリカのある教会の修道女180人の若年期の日記の中にあるポジティブワードの割合を分析した研究です。結果として、順位付けた4つのグループの間で明らかな生存率の違いが判明しました。なお、修道女である理由は、質素な食事量、適度な運動、喫煙や飲酒などの嗜好品の禁止などが徹底されており、生活習慣が完全にコントロールされているからです。(3)社会的な健康たとえば、「あなたがいてくれて良かった」というカードは、「自分は周りから大切にされている」という自尊心(集団的アイデンティティ)から「周りを大切にしたい」という愛他性(利他性)を高めます。また、「人の心を動かせる人だね」というカードは、「自分たちは社会の役に立てる」という自信(集団的効力感)を高め、「自分たちは世の中の役に立ちたい」という社会貢献(向社会性)につながります。これが制度化されたものが、ソーシャルサポートであり福祉です(コミュニティ・レジリエンス)。3つ目は、ソーシャルサポート(福祉)が充実する、つまり社会的な健康です。実際に、宗教に入信している人は、一般の人よりも寿命が平均7年長いことが分かっています。その理由として、宗教というコミュニティに属することで、精神的な健康だけでなく、助け合いによるソーシャルサポートも得られることが指摘されています。また、対人魅力の研究によると、結婚相手に選ばれるのは、ネガティブな人よりもポジティブな人であることが分かっています。つまり、ポジティブであることは、それだけ社会、そして子孫が繁栄することが示唆されます。次のページへ >>

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『コロナのせいにしてみよう。シャムズの話』~気鋭の医師が提唱する未病の新たな概念

 医学書の範疇に収まらないユニークな著書を数多く持つ國松 淳和氏(医療法人社団永生会南多摩病院 総合内科・膠原病内科)の最新作は『コロナのせいにしてみよう。シャムズの話』。6月下旬に行われた出版記念セミナーにおいて、國松氏がコロナ禍の中で本書の執筆に至った経緯や読者に伝えたいポイントについて語った。 本の主題となる「シャムズ(CIAMS: COVID-19/Coronavirus-induced altered mental status)」は國松氏の造語。新型コロナウイルス感染症の流行下にあって、コロナに感染していないのに、不安から実際に体調を崩したり、他者に攻撃的になったりといったマイナスの変化が生じている人が増えたことに気づいた氏が、そうした状況と人を総称するために名付けたという。「よく間違われるのですが、シャムズは医学用語でも病名でもなく、概念に近いもの。『あれ、この人いつもと何か違うな』と周囲の人が気づくものであり、病気ではないので医師が診る必要も医療機関に行く必要もない」と國松氏は解説する。 コロナにまつわる不安が精神的加重となり、心身に変化が起きている状態がシャムズであり、その対応法は「周囲の人が気づき、話しかけること」に集約される、という。普段通りの何気ない会話が不安を取り除き、本来のその人に戻る手助けとなる。「シャムズが疑われる人だけでなく、周囲の人に誰かれ構わず話しかけてみて欲しい。そもそも職場にも家庭にも雑談が足りなさ過ぎる」(國松氏)。さらに、自己のメンテナンスとしてテレビからの過剰な情報を遮断し、ラジオや音楽を聴くことを推奨する。「シャムズは病気ではないものの、放置しておくと精神疾患、とくに重いうつと自殺につながる可能性がある。多くの人にこの概念を知ってもらい、他者への目配りと自分のケアをはじめてもらえたら」と國松氏は語る。 本書は、一般向けに平易にまとめられているが、最前線で新型コロナの対応にあたる医療者も読者として想定されており、診療現場と自らのケアの両面で役立つ内容が含まれている。章末には「医療従事者のみなさんへ」として、シャムズについて医学的な理解を助けるための章も付加されている。『コロナのせいにしてみよう。シャムズの話』(國松 淳和、金原出版、2020年6月)セミナーのご案内 ケアネットでは、7月8日(水)に國松氏と札幌厚生病院病理診断科の市原 真氏の対談をライブストリーミング配信します。◆Dr.國松とDr.ヤンデルの『また来たくなる外来』トーク◆ 配信日:7月8日(水)20~21時 (事前申し込み不要・どなたでも視聴いただけます) ※7月9~15日までCareNeTVにて無料配信予定 詳細はこちら 過去の配信 Dr.國松とDr.ヤンデルの大真面目コロナトーク(会員登録不要・無料公開中)

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混合性の双極性うつ病の小児・青年に対するルラシドンの有用性

 混合性(亜症候性躁病)の双極性うつ病の小児および青年の治療に対するルラシドンの有効性と安全性について、米国・スタンフォード大学のManpreet K. Singh氏らが、事後分析により評価を行った。Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology誌オンライン版2020年5月8日号の報告。 DSM-Vで双極I型うつ病と診断された10~17歳の患者を対象に、6週間のランダム化二重盲検試験を実施した。対象患者は、ルラシドン20~80mg(フレキシブルドーズ)またはプラセボを1日1回投与する群にランダムに割り付けられた。混合性(亜症候性躁病)は、ベースライン時のヤング躁病評価尺度(YMRS)5以上と定義した。評価項目は、ベースラインから6週目までのChildren's Depression Rating Scale-Revised(CDRS-R)スコア(主要評価項目)および臨床全般印象度-双極性障害 重症度(CGI-BP-S)スコアとし、反復測定分析による混合モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時に亜症候性躁病が認められた患者の割合は、54.2%であった。・ルラシドン治療は、亜症候性躁病の有無にかかわらず、6週間後のCDRS-Rスコアを有意に減少させた。 ●亜症候性躁病あり:ルラシドン(-21.5)vs.プラセボ(-15.9)、p<0.01、エフェクトサイズd=0.43 ●亜症候性躁病なし:ルラシドン(-20.5)vs.プラセボ(-14.9)、p<0.01、d=0.44・ルラシドン治療は、亜症候性躁病の有無にかかわらず、6週間後のCGI-BP-Sスコアを有意に減少させた。 ●亜症候性躁病あり:ルラシドン(-1.6)vs.プラセボ(-1.1)、p<0.001、d=0.51 ●亜症候性躁病なし:ルラシドン(-1.3)vs.プラセボ(-1.0)、p=0.05、d=0.31・治療中に認められた軽躁病および躁病の発生率は、ルラシドンとプラセボで同等であった。 ●亜症候性躁病あり:ルラシドン(8.2%)vs.プラセボ(9.0%) ●亜症候性躁病なし:ルラシドン(1.3%)vs.プラセボ(3.7%) 著者らは「ルラシドンは、混合性の双極性うつ病の小児・青年の治療に有効であり、治療に伴う躁病リスクを含む安全性プロファイルは、プラセボとの差が認められなかった」としている。

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日本の実臨床におけるアリピプラゾール長時間作用型注射剤による統合失調症治療

 統合失調症患者のマネジメントでは、抗精神病薬治療の継続が重要である。藤田医科大学の岩田 仲生氏らは、日本の実臨床においてアリピプラゾール長時間作用型注射剤(アリピプラゾール月1回製剤、AOM)がアリピプラゾール経口剤(OA)と比較し、より長期間の治療継続に寄与できるかを評価するため、JMDCのレセプトデータベースを用いて検討を行った。Advances in Therapy誌オンライン版2020年6月4日号の報告。 2015年5月~2017年11月にAOMまたはOAで治療を開始した統合失調症患者を対象に、データ分析を行った。年齢、性別、抗精神病薬のクロルプロマジン換算量、精神科への入院回数で調整した後、AOMとOAの治療中止のハザード比(HR)を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・分析対象患者数は、AOM群198例(平均年齢:38.4±11.9歳)、OA群1,240例(平均年齢:39.3±12.4歳)であった。・AOM群は、OA群と比較し、治療中止の可能性が有意に低かった(調整HR:0.54、95%CI:0.43~0.68)。・忍容性を有するOA群(983例)とすべてのAOM群を比較した場合、AOM群の治療中止の可能性は有意に低下した(調整HR:0.67、95%CI:0.53~0.86)。 著者らは「日本の実臨床における統合失調症患者へのAOMの使用は、より長期間の抗精神病薬による治療継続に寄与する可能性がある」としている。

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薬理学的精神科治療の必要性に対する患者と医師のギャップ~横断的研究

 統合失調症患者には精神薬理学的治療が不可欠であるが、患者の薬物療法についてのニーズ、好み、不満に関するデータは限られている。さらに、これらの問題に対する精神科医の意識の程度(ニーズのギャップ)を評価する研究はこれまでなかった。東京都済生会中央病院の高橋 希衣氏らは、薬理学的精神科治療の必要性に対する患者と精神科医とのギャップについて調査を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年6月3日号の報告。 日本人統合失調症患者97例を対象に、精神薬理学的治療に関する必要性や不満、剤形、投与頻度、投与タイミングの好みに関連する多肢選択式の質問から構成された質問票による回答を求めた。さらに、担当の精神科医には、上記質問に対する患者の反応を予測するよう依頼した。 主な結果は以下のとおり。・精神薬理学的治療の必要性(軽減したいと思った症状)について「とくに何もない」と回答した患者が14例(16.7%)であった。この反応を正しく予測できた精神科医は23.1%であった。・精神薬理学的治療に関する不満について「とくに何もない」と回答した患者が17例(20.2%)であった。この反応を正しく予測できた精神科医は15.4%であった。・投与頻度、投与タイミング、剤形に対し患者に最も好まれたのは以下のとおりであった。 ●1日1回:56例(65.1%)、正しく予測できた精神科医59.8% ●就寝前:53例(61.6%)、正しく予測できた精神科医54.9% ●錠剤:51例(59.3%)、正しく予測できた精神科医64.6% 著者らは「精神科医が精神薬理学的治療に関する患者のニーズや不満を把握するためには、改善の余地が大きいことが示唆された」としている。

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COVID-19に関連する医師のメンタルヘルスやストレス

 COVID-19のアウトブレイクによる医師の不安やストレス、抑うつレベルへの影響について、トルコ・Istanbul Medeniyet UniversitesiのRumeysa Yeni Elbay氏らが調査を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2020年5月27日号の報告。 COVID-19アウトブレイクにおける医療従事者の心理的反応と関連要因を評価するため、オンライン調査を実施した。調査内容は、社会人口統計学的データ、個別の労働条件に関する情報、Depression Anxiety and Stress Scale-21(DAS-21)のセクションで構成した。 主な結果は以下のとおり。・調査対象442人中、各症状が認められた人数は以下のとおりであった。 ●うつ症状:286人(64.7%) ●不安症状:224人(51.6%) ●ストレス:182人(41.2%)・スコアの高さと関連していた要因は、女性、若年、独身、実務経験の少なさ、最前線での診療であった。・一方、子供がいることは、各サブスケールスコアの低さと関連していた。・最前線での診療に当たっていた医師において、DAS-21合計スコアの上昇と関連する要因は以下のとおりであった。 ●毎週の労働時間の増加 ●ケアするCOVID-19患者数の増加 ●同僚や上司からのサポートレベルの低さ ●後方支援の低下 ●COVID-19関連タスクでの技量に対する不安 著者らは「本調査結果は、世界中の社会に多大な影響を与える災害と闘う中で、医師のメンタルヘルスを守るために注意すべき要因を強調するものである」としている。

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血清葉酸レベルと統合失調症の性別に基づく関連性

 血清葉酸濃度に性差があることはよく知られているが、血清葉酸レベルと統合失調症の関連性を性別に基づいて調査した研究はこれまでなかった。徳島大学の富岡 有紀子氏らは、日本人を対象に、性別で層別化した統合失調症患者と精神疾患でない健康な対照者における血清葉酸レベルの違いを調査した。以前の研究データを用いて、血清葉酸レベル、血漿総ホモシステイン(tHcy)、血清ビタミンB6(ピリドキサール)レベルとの関係も調査した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年5月23日号の報告。 統合失調症患者482例および精神疾患でない健康な対照者1,350例の血清葉酸濃度を測定した。性差に基づく両群間の血清葉酸レベルの違いを調査するため、共分散分析を用いた。葉酸、 tHcy、ビタミンB6レベルとの関係を評価するため、スピアマンの順位相関係数を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対照群では、男性よりも女性において、血清葉酸濃度が高かった。・統合失調症群では、男女ともに血清葉酸レベルが低かった。・血清葉酸レベルとtHcyとの逆相関、血清葉酸レベルとビタミンB6との弱い正の相関が認められた。 著者らは「性別に関係なく、低血清葉酸レベルと統合失調症が関連していることから、統合失調症治療において、葉酸の投与が有益であると考えられる。血清葉酸レベルが低い統合失調症患者に対して葉酸の投与を行うことで、高tHcyおよび低ビタミンB6レベルが改善する可能性がある」としている。

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統合失調症外来患者における抗精神病薬の高用量処方に関連する要因

 抗精神病薬は、複数の向精神薬と併用し、高用量で処方されることが一般的である。京都大学の高橋 達一郎氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬の高用量処方に焦点を当て、患者の特徴および向精神薬併用との関連を特定するため調査を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年5月26日号の報告。 2014年10月~2015年3月の全国都道府県からの請求データを用いて、統合失調症成人外来患者の抗精神病薬処方を調査した。客観的変数は、高用量処方の有無とした。説明変数には、性別、年齢(カテゴリー)、併存疾患の有無、精神科医による治療を含めた。 主な結果は以下のとおり。・除外後の対象患者は、1万3,471例であった。・高用量処方の頻度は男性で高く、クロルプロマジン換算量が最も多かった年齢範囲は、男性で45~54歳、女性で35~44歳であった。・65歳未満の脳血管疾患患者では、高用量処方が少なかった。・65歳未満の患者では、向精神薬の併用頻度が高かった。 著者らは「統合失調症患者では、高用量の抗精神病薬が向精神薬と併用されることが少なくない。症状が改善した患者のケアのために、抗精神病薬の高用量処方を避けるべく、医師の処方行動を評価する必要性がある」としている。

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うつ病、不安症、PTSD歴と認知症リスク~メタ解析

 うつ病、不安症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)は認知症と関連しているといわれているが、これらが認知症のリスク因子(因果関係または前駆症状)、併存疾患、後遺症(2次的影響)であるのかはわかっていない。これまでのメタ解析では、すべての原因による認知症、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VaD)とうつ病や不安症との関連は調査されているものの、PTSDやレビー小体型認知症(DLB)、前頭側頭型認知症(FTD)との関連は考慮されていなかった。オーストラリア・アデレード大学のJ. K. Kuring氏らは、精神疾患と認知症との関連をより理解する目的で、臨床的に有意なうつ病、不安症、PTSD歴を有する人とそうでない人におけるAD、VaD、DLB、FTD、すべての原因の認知症発症リスクを調査するためのメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年5月21日号の報告。 PubMed、EMBASE、PsycINFO、CINAHLを検索し、適格研究36件を特定した。 主な結果は以下のとおり。・うつ病歴がある人は、ない人と比較し、すべての原因による認知症、ADの発症リスクが高かった。・不安症歴のある人は、ない人と比較し、すべての原因による認知症の発症リスクが高かった。・PTSD歴は、その後の認知症発症リスクとの関連が認められなかった。・なお、不安症、PTSD、DLB、FTDに関するデータは限られていた。 著者らは「うつ病や不安症は認知症のリスク因子の可能性があるが、このリスクの因果関係または前駆症状を評価するためには、成人期(若年成人、中年、高齢)にわたる縦断的研究が必要である。精神疾患の新規発症および既往歴のある高齢者における認知機能変化の定期的なスクリーニングは、認知症の早期発見に役立つ可能性がある」としている。

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日本における抗精神病薬の使用調査~JMDC Claimsデータベース

 日本における臨床ガイドラインとヘルスケアの実践とのギャップを明らかにするため、大阪医科大学附属病院のHata Takeo氏らは、抗精神病薬の使用状況について調査を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2020年5月13日号の報告。 2005~16年のJMDC Claimsデータベースよりデータを使用した。ATC分類でN05Aと分類された薬剤を抗精神病薬として定義した。抗精神病薬を処方された患者数に基づき、年間変化率を算出した。 主な結果は以下のとおり。・408万1,102人のデータベースより、除外基準(抗精神病薬未使用、処方日または用量のデータなし、入院患者、抗精神病薬の頓服処方、長時間作用型[LAI]を除く抗精神病薬注射剤のみの処方、主疾患が統合失調症以外、クロルプロマジン換算75mg/日未満、18歳未満)に該当した患者を除く1万2,382人のデータを抽出した。・第2世代抗精神病薬の使用が増加しており、第1世代抗精神病薬の使用は減少していた。・2016年の時点で、最も処方された抗精神病薬はアリピプラゾール(31.9%)であった。・クロザピンの処方率は、0.2%であった。・LAIが処方された割合は、5%未満であった。 著者らは「日本の統合失調症に対する抗精神病薬の使用は、さまざまな臨床ガイドラインに対応しているが、クロザピンおよびLAIの使用は限定的であった。活用が不十分なこれらの抗精神病薬の処方に影響する要因に焦点を当てた研究が、統合失調症に対する薬理学的治療の進歩に役立つであろう」としている。

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リスペリドンからルラシドンへの切り替え~6ヵ月間のオープンラベル試験

 統合失調症患者は、メタボリックシンドローム(MetS)発症リスクが高い。このことは、心血管疾患の有病率や死亡率の増加と関連している。統合失調症治療に一般的に使用される抗精神病薬は、MetS発症リスクを増加させる可能性が示唆されている。米国・ワシントン大学のGreg W. Mattingly氏らは、抗精神病薬ルラシドン(商品名:ラツーダ)の継続使用またはリスペリドン(商品名:リスパダールほか)からの切り替え使用におけるルラシドンの安全性について評価を行った。また、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)に基づいたルラシドンの長期的な効果についても評価を行った。BMC Psychiatry誌2020年5月5日号の報告。ルラシドン継続使用またはリスペリドンからの切り替え使用のアカシジア発生率 対象は、ルラシドンまたはリスペリドンによる12ヵ月間の二重盲検比較試験を終了した臨床的に安定した統合失調症患者223例。すべての対象患者は、ルラシドンによる6ヵ月間のオープンラベル試験へ移行した。安全性および忍容性のパラメータには、体重、プロラクチン、代謝関連を含めた。 ルラシドンの安全性について評価を行った主な結果は以下のとおり。・ルラシドンの忍容性は高く、パーキンソニズム(4.5%)およびアカシジア(3.1%)の発生率は低かった。・重篤と評価された有害事象の発生率は4.9%と低く、有害事象による治療中止率は、ルラシドン継続群で3.7%、切り替え群で6.9%であった。・各パラメータのベースライン時から6ヵ月後までの変化は以下のとおりであった。 ●平均体重:継続群-0.6kg、切り替え群-2.6kg ●総コレステロール中央値:継続群-4.0mg/dL、切り替え群+4.5mg/dL ●トリグリセライド:継続群-4.5mg/dL、切り替え群-5.5mg/dL ●グルコース:継続群0mg/dL、切り替え群-3.0mg/dL ●プロラクチン(男性):継続群+0.15ng/mL、切り替え群-11.2ng/mL ●プロラクチン(女性):継続群+1.3ng/mL、切り替え群-30.8ng/mL ●PANSS総スコア:継続群+1.0、切り替え群-1.0 著者らは「6ヵ月の延長試験において、ルラシドン治療は一般的に忍容性が高く、体重、代謝パラメータ、プロラクチンに対する影響は最小限であった。リスペリドンからルラシドンへ切り替えた患者では、過去12ヵ月間で増加した各パラメータ値が低下した」としている。

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高齢者へのアスピリンにうつ病予防効果なし

 うつ病は炎症の増加に関連しており、とくに高齢者においてはうつ発症前に炎症が生じる可能性がある。いくつかの前臨床データはアスピリンの潜在的な抗うつ効果を示唆しており、アスピリン治療を受けた人はうつ病の発生率が低いことを示唆する限定的な観察データもある。オーストラリア・The Institute for Mental and Physical Health and Clinical TranslationのMichael Berk氏らによる、低用量アスピリン(100mg)が健康な高齢者のうつ病リスクを低下させるかを見た研究の結果によると、リスク低下の効果は見られなかったという。JAMA Psychiatry誌オンライン版2020年6月3日号掲載の報告。 この二重盲検プラセボ対照ランダム化試験は、高齢者におけるアスピリンが認知症と障害のない健康寿命を延長するかどうかを調べたASPREE試験のサブ解析で、事前に指定された二次転帰はうつ病だった。オーストラリアにおける70歳以上の全人種/民族、米国における70歳以上の白人および65歳以上黒人/ヒスパニック系が含まれた。参加者は、アスピリン(100mg/日)群とプラセボに群に無作為に割り付けられた。追跡期間中央値は4.7年(四分位範囲:3.5~5.6)、主要評価項目は大うつ病性のプロキシでうつ病自己評価尺度スコア(CES-D-10)の8以上だった。 主な結果は以下のとおり。・1万9,114例が登録され、9,525例がアスピリン、9,589例がプラセボ群に割り付けられた。平均年齢はアスピリン群で75.2(SD4.0)歳、プラセボ群で75.1(4.5)歳であった。・女性が9,531(56.4%)で、参加者の人口統計とベースラインにおける臨床的特徴はグループ間で類似していた。・年間7万9,886回のCES-D-10測定が行われ、参加者1人あたり平均4.2回の測定が行われた。・年1回の通院においてCES-D-10スコア8以上となった患者の割合は、アスピリン群とプラセボ群で有意差はなかった。・CES-D-10スコア8以上の新たな発生率(/1,000人年)は、アスピリン群で70.4、プラセボ群で69.1〔ハザード比:1.02(95%信頼区間:0.96-1.08、p=0.54)〕でこちらも有意差はなかった。

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統合失調症発症に関連する小児期の緑地環境と遺伝的要因

 小児期における緑地環境との接点が、後の統合失調症発症リスクを低下させることは、これまでの研究で示唆されてきた。この関連に遺伝的要因は関係するのか、または2つのリスク因子が相加的に作用するのかは、よくわかっていない。デンマーク・オーフス大学のKristine Engemann氏らは、統合失調症発症に対する小児期の緑地環境と遺伝的要因との関連について調査を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2020年5月16日号の報告。 ランドサット衛星画像からの正規化植生指数(NDVI)に基づく住居レベルの緑地との小児期の接点推移値と、デンマークのiPSYCHサンプルから得られた1万9,746の遺伝子型の多遺伝子リスクスコアに基づく遺伝的易罹病性推定値を組み合わせることにより、統合失調症発症のハザード比(HR)を調査した。デンマーク国内の健康、居住地、社会経済的地位(両親の社会経済的地位、精神疾患の家族歴)に関するデータを用いて、交絡因子で調整後のHRを推定した。 主な結果は以下のとおり。・調整HRは、NDVIの最低位と比較し最高位では統合失調症発症リスクが0.52倍(95%CI:0.40~0.66)に低下し、多遺伝子リスクスコアが最高位の小児では、統合失調症発症リスクが1.24倍(95%CI:1.18~1.30)であることを示した。・NDVIは、遺伝的易罹病性尺度の分散の1.45%(95%CI:1.07~1.90)で説明でき、統合失調症の多遺伝子リスクスコアは1.01%(95%CI:0.77~1.46)であった。・遺伝的および環境的要因を組み合わせた場合の多遺伝子リスクスコアは、2.40%(95%CI:1.99~3.07)であった。両要因の相互作用は示唆されなかった(p=0.29)。 著者らは「統合失調症発症リスクは、緑地環境との接点と遺伝的要因の相加的な関連が認められ、NDVIと統合失調症との間には、遺伝的および環境的な相互作用は認められなかった」としている。

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新型コロナ、医療者のメンタルヘルスをどう守る?/日本精神神経学会提言と会員アンケート

 日本精神神経学会は、新型コロナウイルス感染症に関連し、学会員を主な対象としたメンタルヘルス関連の提言を行っている。これまでに出された提言は以下の3つ。1)親子・学校・女性のメンタルヘルスのサポート役割を担う学会員向け2)働く人のメンタルヘルスケアや産業保健体制に関する提言3)「コロナ関連自殺」予防について 精神科・心療内科を専門とする学会員に向け、新型コロナウイルス感染症がメンタルヘルスにおよぼす影響や、診療にあたっての注意点をまとめている。産業医として企業に対して感染予防対策や新しい働き方に関連するアドバイスをする際に役立つ内容も多い。「メンタルヘルスの専門家として今知っておくべきこと」を中心にまとめられているが、提言には「医療者自身のメンタルヘルスをいかに保つか」という内容も多く含まれている。 2)の提言内では「特に医療や介護現場などではメンタルヘルス不調の発生が強く危惧される」とし、個人防護服(PPE)を着たままの診療による身体的疲労や緊張の継続による精神的疲労の双方が懸念され、さらに新型コロナの専門病棟ではこれら疲労に加え、対応人員不足やPPE不足などへの危惧が継続的に発生している、と指摘。「当初は責任感や緊張感から普通に勤務できているように見えていても、対応期間が長引くにしたがい心身の疲弊症状として、抑うつ症状などの精神症状や不眠や頭痛などの身体化症状が顕在化」する、と警告している。こうしたメンタルヘルス不調を念頭に置いた産業保健活動が求められるが、そうした体制の確立が難しい小規模事業者などに対しては、早期から行政が介入・支援することが必要だ、と訴えている。 3)の提言内でも「このたびの感染防止対応は、ほとんどの医療スタッフにとって通常経験したことのない、複雑に絡み合う複数のストレス要素を伴っています。心身の不調が起きるのが当然といえば当然です。(略)会員の皆様も、精神医学やメンタルヘルスに精通しているからといって例外ではないのだということを忘れないでください」と注意を促している。会員アンケートでもストレス傾向が明らかに 2020年5月中旬、ケアネットが医師会員1,000人を対象に行ったメンタルヘルスをテーマにしたアンケート(新型コロナは日常診療にどう影響?勤務医1,000人に聞いたストレス・悩みの理由)からも、医療者が大きなストレス下に置かれていることが明らかになった。「COVID-19感染リスクに自身・スタッフがさらされることに不安を覚える」と答えた回答者は57.4%と6割近く、「COVID-19感染リスクに自身・スタッフがさらされることに不安を覚える」(57.4%)、「学会や勉強会などの直接的なコミュニケーションの機会が失われた」(55.6%)といった回答も半数を超えた。 医療現場のストレスマネジメントに詳しい国際医療福祉大学大学院 心療内科学教授の中尾 睦宏氏は、この結果を踏まえ、専門家の立場からアドバイスを寄せた。「アンケートには『臨床心理士を配置した』『メンタル相談の専門窓口を設けた』といった回答が寄せられており、医療現場の素早い対応は評価できる。しかし、医療者には責任感が強く、弱音を吐くことが苦手な人も多い。オンラインのミーティングや勉強会などの正しい情報共有に加え、カジュアルなコミュニケーションや愚痴を吐き出しやすい環境づくりが長期的なメンタルヘルス対策につながるはず」と述べている。【会員医師アンケート】新型コロナは日常診療にどう影響?1,000人に聞いたストレス・悩み【アンケート結果を解説】今、医療者が知るべき・やるべきメンタル対策

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出産前後のうつ病を予防するための心理的介入~メタ解析

 出産前後のうつ病は、有病率が高く、深刻な影響を及ぼすため、その予防は重要である。これまでのシステマティックレビューおよびメタ解析では、周産期うつ病リスクを有する女性に対する心理学的介入の有効性が示唆されている。しかし、出産前の一般的な予防に焦点を当てた研究は、あまりなかった。東京大学の安間 尚徳氏らは、周産期うつ病に対する出産前の心理学的介入の影響(とくに一般的な予防に焦点を当て)を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年5月12日号の報告。 2019年1月28日までの公開されたランダム化比較試験を、4つの電子データベース(Cochrane Controlled Register of Trials[CENTRAL]、Embase、PubMed、PsycINFO)より検索した。まず、12人の研究者がタイトルとアブストラクトのスクリーニングを行い、独立した2人の研究者が、それぞれ全文レビューを行った。メタ解析については、Review Manager 5.3 for Windowsを用いてランダム効果モデルを実施した。サブグループ解析は、認知行動(CB)療法をベースとした介入に関する研究について実施した。 主な結果は以下のとおり。・最初に検索された研究は、1万3,026件であった。・重複を削除した後、9,919件がスクリーニングされ、最終的に18件が選択基準を満たした。・メタ解析では、出産前の心理学的介入は、出産前後のうつ病に対し有意な効果を示した(不均一性は中~高レベル)。 ●出産前のうつ病:SMD=0.28(95%CI:0.11~0.44)、不均一性I2=61%(p=0.01) ●出産後のうつ病:SMD=0.37(95%CI:0.08~0.66)、不均一性I2=84%(p<0.001)・サブグループ解析では、出産前のCB療法ベースの介入は、出産前のうつ病に対し有意な効果が認められたが(不均一性は高レベル)、出産後には認められなかった。 ●出産前のうつ病:SMD=0.53(95%CI:0.13~0.94)、不均一性I2=85%(p=0.001) ●出産後のうつ病:SMD=0.45(95%CI:-0.03~0.92)・本研究は、英語で発表された研究のみを対象としており、また出産前後のうつ病の評価にはさまざまな方法が用いられているため、研究全体の不均一性が高レベルであった。 著者らは「出産前の心理学的介入は、出産前後のうつ病に対し一般的な予防効果が期待できる。しかし、含まれた研究の方法論的な質があまり高くないため、決定的な結果とはいえない。今後、適切に設計された研究によるエビデンスが求められる」としている。

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COVID-19、回復期におけるうつ病と免疫反応に相関性

 これまで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染して重度の急性呼吸器症候群となった患者のうち、退院後に自己申告のうつ病とされた患者は観察されていたが、回復期からこの自己申告のうつ病が発症しているのかは不明だった。中国・深センSamii医療センター(SSMC)のBo Yuan氏らは、オンラインアンケートを利用して回復期のCOVID-19患者のメンタルヘルス状態を調べたうえで、定期的な血液および生化学データを含む患者の臨床的特徴を遡及的に分析し、うつ病と免疫反応との相関性を見た。Brain, Behavior, and Immunity誌オンライン版5月25日号掲載の報告。 2020年2月21日~3月12日にSSMCに入院したCOVID-19患者226例中126例に対し、オンラインアンケートを行った。アンケートには心的外傷性ストレス障害(PTSD)自己評価スケール(PTSD-SS)、不安自己評価スケール、うつ病自己評価スケール(SDS)が用いられ、50のインデックススコアで臨床的重要度を判断した。 アンケートは3月2日~12日に行われ、回答から臨床的重要度が高いと判断された96例の回復期患者が対象となった。患者の年齢、性別、併存症、初期感染の重症度の潜在的影響、再発および初期疾患期間(入院平均日数)を含む疫学的特徴を調査し、血液を採取して白血球と炎症性因子の炎症性免疫応答を見た。その他のCOVID-19関連の医療データは電話インタビューと医療記録の確認から収集した。 主な結果は以下のとおり。・96例のうち、SDSスコアが50を超える自己申告うつ病群は42例だった(正常群:54例)。・自己申告うつ病の発生と性別、年齢、併存症、初期感染の重症度、および初期疾患期間には、有意な相関は見られなかった。・自己申告うつ病群は、正常群と比べて白血球数(6.7±1.5vs. 6.0±1.5、p=0.016)、好中球数(4.1±1.2vs. 3.3±0.9、p=0.000)が有意に多かった。・炎症の発現では、自己申告うつ病群は正常群よりもCRP値が高かった(0.2±0.3 vs. 0.1±0.1 mg/dl、p=0.035)一方で、IL-6値には有意差がなかった。 著者らは「自己申告うつ病はCOVID-19の回復初期から発生しており、退院後の短期追跡によってうつ病群は免疫応答が増加していることが示された」とした。さらに、「免疫応答と自己申告うつ病をつなぐメカニズム解明にはさらなる研究が必要だ」としつつも、「自己申告うつ病の患者には適切な心理的介入が必要であり、免疫機能の変化は長期フォローアップ中に重点を置くべきポイントだ」と述べている。

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治療抵抗性統合失調症に対するルラシドンの精神病理および認知機能への効果

 クロザピンに加え、薬理学的にクロザピンに類似した他の非定型抗精神病薬(たとえばオランザピン、リスペリドン、melperone)も、治療抵抗性統合失調症(TRS)に対する有効率は40%未満である。米国・ノースウェスタン大学のHerbert Y. Meltzer氏らは、TRS患者に対する非定型抗精神病薬ルラシドンの精神病理および認知機能への有用性を検討するため、6ヵ月間の試験期間中に2つの用量での比較を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2020年5/6月号の報告。 ルラシドン80mg/日による6週間のオープン試験(第I相試験)期間中に精神病理学的な改善が認められなかった患者をTRSと定義した。その後、TRS患者をルラシドン80mg/日または240mg/日に割り付け、24週間のランダム化二重盲検試験(第II相試験)を実施した。 主な結果は以下のとおり。・陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計およびサブスケールスコア、7つの認知機能領域のうち処理速度と実行機能の2つにおいて、用量依存的ではない有意な改善が認められた。・対象患者67例中28例(41.8%)において、PANSS合計スコアの20%以上の改善が認められた。・治療反応患者28例中19例(67.9%)において、第II相試験の6~24週目に最初のPANSS合計スコア20%以上の改善が認められた。この患者の中には、過去にクロザピンで治療不応であった患者が一部含まれていた。 著者らは「TRS患者に対するルラシドンの改善効果は、これまでに報告されたクロザピン、melperone、オランザピン、リスペリドンの効果と同等であった。ルラシドン80mg/日においてもTRS患者に有効であったが、より長い治療期間が必要とされる。今後、TRS患者に対するルラシドンとクロザピンの直接比較試験が待ち望まれる」としている。

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急性期統合失調症に対するアリピプラゾールとブレクスピプラゾールの比較~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、急性期統合失調症に対するアリピプラゾールとブレクスピプラゾールの有効性および安全性、忍容性を評価するため、ランダム化試験のシステマティックレビュー、ネットワークメタ解析を実施した。Psychopharmacology誌2020年5月号の報告。 2019年5月22日までの研究を、Scopus、MEDLINE、Cochrane Libraryより検索した。主要アウトカムは治療反応率とし、副次的アウトカムは中止率、有害事象発生率とした。リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・抽出された研究は14件(3,925例)であった。・アリピプラゾールおよびブレクスピプラゾールの治療反応率は、両剤ともにプラセボよりも優れていた。【治療反応率】 ●アリピプラゾール:RR=0.84(95%CI:0.78~0.92) ●ブレクスピプラゾール:RR=0.84(95%CI:0.77~0.92)・アリピプラゾールおよびブレクスピプラゾールのすべての原因による中止率、有害事象発生率、効果不十分の割合は、両剤ともにプラセボよりも低かった。【すべての原因による中止率】 ●アリピプラゾール:RR=0.80(95%CI:0.71~0.89) ●ブレクスピプラゾール:RR=0.83(95%CI:0.72~0.95)【有害事象発生率】 ●アリピプラゾール:RR=0.67(95%CI:0.47~0.97) ●ブレクスピプラゾール:RR=0.64(95%CI:0.46~0.94)【効果不十分の割合】 ●アリピプラゾール:RR=0.56(95%CI:0.40~0.77) ●ブレクスピプラゾール:RR=0.68(95%CI:0.48~0.99)・ブレクスピプラゾールの有害事象としての統合失調症症状の発生率は、プラセボよりも低かった(RR:0.57、95%CI:0.37~0.85)。・アリピプラゾールおよびブレクスピプラゾールの体重増加の発生率は、両剤ともにプラセボよりも高かった。【体重増加の発生率】 ●アリピプラゾール:RR=2.12(95%CI:1.28~3.68) ●ブレクスピプラゾール:RR=2.14(95%CI:1.35~3.42)・傾眠、アカシジア、錐体外路症状、めまいなどの個々の有害事象の発生率は、アリピプラゾールまたはブレクスピプラゾールとプラセボとの間に有意な差は認められなかった。・アリピプラゾールとブレクスピプラゾールのアウトカムに違いは認められなかった。 著者らは「急性期統合失調症に対するアリピプラゾールとブレクスピプラゾールの有効性および安全性の短期的な違いは認められなかった。両剤間に長期的なアウトカムの違いがあるかを明らかにするためには、さらなる研究が求められる」としている。

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