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双極性障害が日本人の健康関連QOLや労働生産性に及ぼす影響

 これまでの研究では、双極性障害患者は、対人関係、教育または就業に問題を抱えて、QOLが低下しているといわれている。順天堂大学の加藤 忠史氏らは、健康関連QOL、労働生産性およびそれらに関連するコストに対する双極性障害の影響を推定するため、検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年8月1日号の報告。 オンライン調査National Health and Wellness Surveyの2019年のデータを用いて、検討を行った。双極性障害患者179例、うつ病患者1,549例、対照群(双極性障害、うつ病統合失調症でない人)2万7,485例について比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害の生涯有病率は0.60%、うつ病の生涯有病率は5.16%と推定された。・双極性障害患者では、精神的QOLサマリー(MCS)スコア、役割的QOLサマリー(RCS)スコア、EQ-5D-5Lサマリーインデックスの有意な低下が認められ、Work Productivity and Activity Impairment questionnaireで評価されたプレゼンティズム、労働生産性の問題、活動性の問題および対照群と比較した双極性障害に関連するコスト、PHQ-9スコア10以上の割合の有意な増加が認められた。・双極性障害患者は、うつ病患者と比較し、RCSスコアが有意に低く、労働生産性の損失と活動性の問題が多かった。・日本における双極性障害の全コストは、human-capital approachを用いて、1兆2,360億円と推定された。・本研究の限界として、本分析で使用したデータは自己申告であり、横断的であるため、因果関係を推測することはできない。 著者らは「双極性障害患者および重度の抑うつ症状を有する患者では、健康関連QOLの有意な低下が認められ、労働生産性の損失や関連コストが増大することが示唆された。このことは、双極性障害および双極性うつ病の適切なスクリーニングや診断および治療の重要性を表している」としている。

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うつ病の初期治療と持続的治療反応との関連~メタ解析

 うつ病は、しばしば再発を繰り返す疾患である。そのため、患者を良い状態に導くだけでなく、良い状態を保つために最も効果的な治療法から選択すべきである。京都大学の古川 壽亮氏らは、成人うつ病患者の急性期治療における心理療法(PSY)、プロトコール化された薬物療法(PHA)、心理療法と薬物療法の併用(COM)、プライマリまたはセカンダリケアでの標準的治療(STD)、プラセボ治療についてランダム化比較試験(RCT)のネットワークメタ解析を実施し、治療期間およびフォローアップ期間を通じた初期治療と持続的治療反応との関連を調査した。World Psychiatry誌2021年10月号の報告。 研究デザイン上、急性期治療は、維持期まで継続するか、別の治療法へ切り替えるか、任意の治療を行うか選択可能であった。対象は、81件のRCTより抽出された1万3,722例。持続的治療反応の定義は、急性期治療の反応が認められた後、維持期を通じて抑うつ症状の再発が認められなかった場合とした(平均期間:42.2±16.2週間、範囲:24~104週間)。12ヵ月目に最も近い時点で報告されたデータを抽出した。 主な結果は以下のとおり。・COMは、COM治療が維持期まで継続された場合(OR:2.52、95%CI:1.66~3.85)と任意の治療が行われた場合(OR:1.80、95%CI:1.21~2.67)のいずれにおいても、PHAと比較し、持続的治療反応が認められた。・STDとの比較においても、COMは、COM治療が維持期まで継続された場合(OR:2.90、95%CI:1.68~5.01)と任意の治療が行われた場合(OR:1.97、95%CI:1.51~2.58)に同様の結果が得られた。・PSYは、PSY治療が維持期まで継続された場合(OR:1.53、95%CI:1.00~2.35)と任意の治療が行われた場合(OR:1.66、95%CI:1.13~2.44)のいずれにおいても、PHAと比較し、持続的治療反応がより維持された。・STDとの比較においても、PSYは、PSY治療が維持期まで継続された場合(OR:1.76、95%CI:0.97~3.21)と任意の治療が行われた場合(OR:1.83、95%CI:1.20~2.78)に同様の結果が得られた。・STDによる持続的治療反応率の平均値が29%であることを考慮すると、PHAまたはSTDに対するPSYまたはCOMの利点は、12~16%ポイントの範囲でリスク差に影響を及ぼすと考えられる。 著者らは「心理療法または心理療法と薬物療法の併用は、薬物療法単独よりも持続的治療反応が得られることが示唆された。これを踏まえて、臨床ガイドラインにおけるうつ病の第1選択治療に関する項は、改訂が必要になるかもしれない」としている。

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小児における抗うつ薬の投与量の推移と向精神薬増強療法との関係

 米国・メリーランド大学のO' Mareen Spence氏らは、小児における抗うつ薬治療開始後最初の6ヵ月間の抗うつ薬の投与量を調査し、その投与量と他の向精神薬による増強との関連について評価を行った。Pharmacoepidemiology and Drug Safety誌オンライン版2021年9月16日号の報告。 対象は、米国の商業保険患者に関する包括的なデータベースであるIQVIA PharMetrics Plusを用いて特定された、2007年1月~2015年6月に新規で抗うつ薬治療を開始した3~18歳のうつ病患者5,655例。新規抗うつ薬使用の定義は、治療開始前1年以内での抗うつ薬使用がないこととした。抗うつ薬治療開始6ヵ月間における投与量の推移は、潜在クラス成長分析を用いて分類した。アウトカムは、レジメンの変更(他の向精神薬による増強療法、他の抗精神病薬への切り替えの有無にかかわらず抗うつ薬の中止)とした。抗うつ薬治療開始前6ヵ月間に測定したベースラインの共変量は、人口統計学的要因、精神医学的併存疾患、医療サービスの利用であった。抗うつ薬の投与量の推移とレジメン変更とのオッズ比(OR)の算出には、多項ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬の投与量の推移は、以下の5つに分類された。 ●急激な減量:897例(16%) ●ゆっくりと減量:1,029例(18%) ●最小用量で安定:1,397例(25%) ●最大用量で安定:1,783例(32%) ●高用量への増量:549例(10%)・最小用量で安定した患者と比較し、急激な減量およびゆっくりと減量を行った患者では、抗うつ薬を中止する可能性が高かった。【他の向精神薬への切り替え】 ●急激な減量(OR:5.91、95%CI:3.23~10.80) ●ゆっくりと減量(OR:1.67、95%CI:1.04~2.68)【すべての向精神薬中止】 ●急激な減量(OR:6.64、95%CI:4.24~10.39) ●ゆっくりと減量(OR:1.62、95%CI:1.22~2.13)・最大用量で安定および高用量への増量を行った患者は、他の向精神薬への切り替えよりも、治療を中止する可能性が低かった。【どちらかの切り替え】 ●最大用量で安定(OR:0.38、95%CI:0.24~0.61) ●高用量への増量(OR:0.30、95%CI:0.16~0.59)【すべての向精神薬中止】 ●最大用量で安定(OR:0.15、95%CI:0.12~0.20) ●高用量への増量(OR:0.02、95%CI:0.01~0.03) 著者らは「抗うつ薬治療開始6ヵ月間の抗うつ薬の投与量の推移は、他の向精神薬による増強療法に影響を及ぼしていることが示唆された」としている。

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現職中に発病する認知症をどう診て支えるか【コロナ時代の認知症診療】第8回

若年性認知症(EOD)患者さんを取り巻く状況認知症専門のクリニックで働く筆者は、この6年で100数十名、現時点で約50名の若年性認知症(65歳未満)の方を診ている。言うまでもなく実に大変な病気である。当事者はもとより家族皆が巻き込まれ、思いもかけなかった人生の大波に飲み込まれる。若年性認知症の問題は30年来注目されてきた。厚生労働省による3回の全国調査が行われている。報告患者総数は通して3万台後半である(第7回参照)。しかし個人的には、実数は5万人前後であり、直接関係される方は20万~30万人程度ではないかと考えている。患者数はさておき、今回、これに注目するのは、最近進行中の定年延長に伴って、現職中に発病する人が急増するからである。60~65歳における認知症の人の数は60歳未満の人の認知症の総和と同じと考えられる。ところが数年後には必至のこのことが、世の中にはほぼ知られていない。就労面からこの問題を考える時、筆者はざっくりと次の分類をしている。男女という性別、ついで民間企業勤務者か700万人の公務員かである。主流は男性であれば民間勤務者、女性は少なくとも従来は主婦が多かった。なお男性公務員には相当の該当者がいると思われるが、その対応法は知る限りではケースバイケースで多彩である。一貫した対応ルールのようなものを多くの人が知らない。女性の主婦の場合、若年性認知症の中では、深刻さがいくらかは軽微でないかと思われかねない。ところが過去の全国調査の報告書では、こうした人を介護している配偶者が仕事でも収入でも一番アップアップになりやすいという結果が報告されている。若年性認知症に気付くきっかけさて以下では、最も多数派と思われる男性の民間企業勤務者を念頭において述べてみたい。まず何をきっかけに認知症に気付かれるか? である。一般的には、認知症の初期症状、とくに物忘れに起因する失敗が職場で起こる。アルツハイマー病の記憶障害と言うと、記銘力障害つまり新たに情報をインプットできないことが有名である。それもあるが展望記憶の低下による失敗も職場では目立ちやすい。若いころは、今日の予定を確認しなくても覚えているものである。たとえば13時から自分に責任がある会議があるとする。若いころは、わざわざ思い出さなくても12:30頃になれば自然と「そろそろ部屋に行って準備しようか」となってしまう。ところがこれができず、肝心な自分抜きで他の関係者だけが集まるような事態が生じる。これが展望記憶の障害である。また「うっかりにもほどがある」と謗られかねない失態がある。重要な顧客に朝一番で報告を入れるというような、その日のプライオリティ1番を完全に忘れてしまうようなことである。当初は年1、2回程度の失敗だが、その頻度は徐々に増えていく。「またか!」と最初に思うようになるのは、直属の部下である。しかし簡単には、当人にもその上司にもこの事実を伝えられない。知る限りでは、まさに「猫に鈴付け」だから、申し出方法と担当者決定がこの部下の仲間内でなされる。そこで当事者の上司に、「恐れながら、実は...」と申し出る。個人情報の最たるものだから、上司も慎重なのが常である。人事部・総務部、あるいはその担当役員クラスがチームを作って善後策を練ることが多い。さらに産業医への相談がある。もっとも、認知症に関わる精神科医や脳神経内科医は増えたとは言え、産業医全体ではまだ少数派であるだけに相談を受けても返事に窮してしまう。なお精神科医や脳神経内科医といえどもこうした問題に通じた人はとても稀である。仕事に支障をきたすようになってしまった場合にどうするかこうしているうちに認知症は緩徐でも着実に進行するから、会社の幹部もこれ以上は看過できないという時点がくる。そこで本人とその配偶者に連絡が行き、面談となって最近の状態が説明されることになる。しかしとくに「飯、風呂、寝る」の昔ながらのタイプの夫を持つ妻にはまさに寝耳に水である。「家では何も変わっていません、忘れての失敗もありません」という言葉が発せられるのが常である。この時から後のポイントは以下である。会社側の主張は「これまでの功績は有難いが、現在では今の職位にも給与にも値する仕事ができていない。役職を解くとともに、異動してもらい給与も削らざるを得ない」というものが多い。当事者とその妻は、「これまでやってきた自負がある。今でもできるはずだ。役職はともかく、異動とは...。さらに給与を下げられては。自分にはここで働く権利があるはずだ」この両者の全面対決になってしまう。多くの会社では社内の担当者だけで、法的に逸脱なくこの問題を解決していくことは至難の業である。労働に関する幾つかの法律に依拠して、労働基準監督署や社会労務士なども絡まざるを得ない事態にいたりがちだ。一方で人事部も社会労務士も、職場のメンタルヘルスとしてのうつ病や適応障害には経験も知識も身に付けている。しかし若年性認知症となると経験がない、うちには関係ないという人がこれまでは普通であった。次回は、治療をしながら社会生活を継続していくために、使える制度や助成金などについて紹介したい。

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週末のキャッチアップ睡眠とうつ病との関係

 週末のキャッチアップ睡眠とうつ病との関係を検討するため、韓国・延世大学校医科大学のKyung Min Kim氏らは、調査を行った。Sleep Medicine誌オンライン版2021年9月1日号の報告。週末のキャッチアップ睡眠が1~2時間の人においてうつ病リスクが低下 2016年の第7回韓国国民健康栄養調査のデータを用いて検討を行った。うつ病の定義は、こころとからだの質問票(PHQ-9)スコア10以上とした。キャッチアップ睡眠の時間は、0時間以下、0~1時間、1~2時間、2時間以上で分類した。 週末のキャッチアップ睡眠とうつ病との関係を検討した主な結果は以下のとおり。・全体の参加人数は、5,550人。キャッチアップ睡眠の時間別うつ病有病率は、以下のとおりであった。 ●0時間以下(3,286人):7.0% ●0~1時間(1,033人):4.2% ●1~2時間(723人):2.9% ●2時間以上(508人):6.0%・共変量を含む多変量回帰分析では、キャッチアップ睡眠の時間が1~2時間の人は、0時間以下の人と比較し、うつ病リスクの有意な低下が認められた(オッズ比[OR]:0.517、95%CI:0.309~0.865)。・キャッチアップ睡眠の時間が0~1時間の人(OR:0.731、95%CI:0.505~1.060)と2時間以上の人(OR:1.164、95%CI:0.718~1.886)では、うつ病リスクに有意な変化は認められなかった。 著者らは「週末のキャッチアップ睡眠の時間が1~2時間の人において、うつ病リスクの低下が認められた。このことは、より良いうつ病マネジメントのために役立つ可能性がある」としている。

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うつ病ケアに対する薬剤師介入の影響

 うつ病は、健康に重大な影響を及ぼす疾患である。うつ病患者の健康アウトカムを改善するために、薬剤師が関与した診療が役立つ可能性がある。タイ・シラパコーン大学のWaranee Bunchuailua氏らは、うつ病患者に対する薬剤師介入の影響を評価するため、ランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Annals of Pharmacotherapy誌オンライン版2021年8月29日号の報告。 2019年12月までに報告された研究を国際データベース4件、国内データベース3件よりシステマティックに検索した。事前に定義した包括基準に基づき研究を選択し、バイアスリスク基準を用いて品質評価を行った。プールした推定値を分析し、相対リスク(RR)および標準平均差(SMD)を算出した。メタ解析において、研究間の不均一性が認められた場合には、変量効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした研究12件より抽出された、うつ病患者2,133例を分析に含めた。・薬剤師介入には、薬物療法マネジメント、アドヒアランスカウンセリング、うつ病や抗うつ薬に関する教育的アドバイスが含まれていた。・メタ解析では、薬剤師介入は、良好なアドヒアランスを有する患者数(RR:1.39、95%CI:1.11~1.75)および服薬アドヒアランススコアの改善(SMD:0.32、95%CI:0.07~0.56)において、有意な効果が認められた。・臨床評価尺度(SMD:-0.03、95%CI:-0.16~0.10)およびQOL(SMD:0.10、95%CI:-0.04~0.25)に関しては、有意な影響は認められなかった。 著者らは「うつ病患者に対する薬剤師介入は、服薬アドヒアランスに対しプラスの影響を及ぼすことが示唆された」としている。

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抗うつ薬はいつまで続ければよいのか?(解説:岡村毅氏)

 抗うつ薬をいつまで内服すればよいのかという質問をよく受ける。世間的には「ずっと内服させるなんて論外だ、精神科医よ、さっさと減量・中止させよ」という声が大きいと思う。 ところが現実はそう単純ではない。それを説明しよう。 うつ病エピソードで、恐る恐る、あるいは半信半疑で精神科の外来を初診した患者さんがいるとする。『うつ病ですよ、薬物治療をしたほうがいいですよ』と言うと、最初は「薬は嫌だなあ」とか「どうしても飲んだほうがいいですか?」という姿勢の方も多い。 治療が順調に進むと、会社に復帰し、さまざまな症状が良くなって、本人も自信を取り戻す。また医師ともなじみの関係になってきて、外来で冗談の1つも言うようになる。月日がたち、医師の側が『ではそろそろ減量して中止しましょう』と言うと、「それはよかった」と喜ぶ人と、「でも再発は嫌だなあ、あんな体験は絶対に嫌だ、ずっと薬飲んじゃだめですか」という人がいる。 一方で、ちょっと症状が良くなると来なくなってしまう人がいる。いわゆる自己中断である(社会的な偏見が大きいため、残念ながら精神科では非常に多い)。それで幸せに暮らしてくれればいいのだが、しばらくしてだいぶ悪くなって舞い戻ってくる人もいる。 上記を鑑みて、私は最初に見通しをはっきり伝えることにしている。 『薬物治療が必要な状況だと思います。薬はできれば使いたくないのは誰でも同じですが、現状は使ったほうが良いと思います。順調に回復したとして、元の状態に戻って半年程度たったら、減薬し、外来からの卒業を検討します。とはいえ、ずっと通院したいという人もいます。その場合は少量で通院していただくことは可能です』と伝えている。また『少し良くなると来なくなってしまう人がいますが、結局悪くなって再度来る人も多いのです。通院を中断したいと思ったら、正直にそう言ってください。その時にできることを検討します』とも伝える。 では、実際にずっと内服するのと、あるところで中断するのは、どちらが正しいのであろうか? 本研究はこの疑問に答えようとする非常に臨床的で、実際的な研究である。 対象は英国のプライマリケアにて抗うつ薬を長期に飲んでいる人で、もう安定しており、やめても大丈夫と医師も本人も思っている患者さんである。中断群と継続群にランダムに分けたところ、1年後には、中断群の再発率は56%、継続群では39%であり、中断による再発リスクは確かに高い。 一方で、中断によるメリットと思われる薬物の有害事象については期間を通じて差はない(うつ病の再発後には当然放置されず、薬物治療が行われていることも影響しているかもしれない)。 本研究はプライマリケア医を対象にしており、精神科の専門医の外来であれば、より精緻に治療継続と治療中断(卒業)を分けている可能性はあるので、わが国の臨床に即応用できるとは言い切れないが、重要な知見を報告している。中断すると再発率は高いが、とはいえ継続していても再発はあることも認識しなければならないということだ。本研究の結果からは、絶対に内服を継続したほうがいいとは言えないし、中断すべきだとも言えない。 要するに医療が患者さんの生活のすべてではないし、医学的妥当性がすべてを決定するわけではない。どうしても中断したい、どうしても継続したいという患者さんの意思は尊重されるべきだろう。一方で意思は医師-患者関係と共に変わっていくだろう。結局はしっかり話し合って決めていくということに尽きる。本研究の結果は、話し合いの際の重要な判断材料になるだろう。

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統合失調症と肥満~メタ解析

 統合失調症および抗精神病薬と代謝調整不全との関係は、現在十分に確立された知見が示されているが、肥満に対する影響についてはよくわかっていない。カナダ・Centre for Addiction and Mental HealthのEmily Smith氏らは、肥満測定画像技術の所見を統合することにより、統合失調症患者の病状や治療に対する肥満の影響を検討するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2021年8月30日号の報告。統合失調症は肥満リスクが高く、抗精神病薬に使用により増強される 2021年2月までに報告されたケースコントロール研究およびプロスペクティブ縦断研究を、MEDLINE、EMBASE、PsychINFO、Scopusより検索した。主要アウトカムは、体脂肪率、皮下脂肪、内臓脂肪を含む肥満関連の測定値とした。 統合失調症への肥満の影響を検討した主な結果は以下のとおり。・統合失調症スペクトラム障害患者における肥満を定量化するため画像診断法を用いた29件の研究を特定した。・統合失調症スペクトラム障害患者群では、対照群と比較し、肥満関連の測定値が高かった。 ●体脂肪率の平均差:3.09%(95%CI:0.75~5.44) ●皮下脂肪の平均差:24.29cm2(95%CI:2.97~45.61) ●内臓脂肪の平均差:33.73cm2(95%CI:4.19~63.27)・抗精神病薬の使用は、皮下脂肪、内臓脂肪の増加との関連が認められたが、体脂肪率には影響を及ぼさないようであった。 ●皮下脂肪の平均差:31.98cm2(95%CI:11.33~52.64) ●内臓脂肪の平均差:16.30cm2(95%CI:8.17~24.44)・しかし、体脂肪率の変化は、治療を受けていた統合失調症スペクトラム障害患者と比較し、抗精神病薬未使用/初めて使用の患者のほうが高かった。 著者らは「統合失調症スペクトラム障害患者は、肥満リスクが高く、とくに抗精神病薬に使用により増強されることが示唆された。抗精神病薬未使用の若年患者では、この影響をとくに受けやすい可能性がある。今後の研究では、特定の抗精神病薬の肥満に対する影響や全体的な代謝関連への影響を調査する必要がある」としている。

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うつ病女性に対する運動介入効果~メタ解析

 うつ病は、男性よりも女性の割合が高い疾患である。これは、思春期、月経、妊娠、更年期などにおける女性の生理学的調整が、男性と異なることが原因であると考えられる。そのため、うつ病女性の治療は、健康上の課題となっている。また、うつ病に対する運動介入に関する最近の研究では、薬物療法や心理療法と対照的に、優れた効果が示唆されており、利便性、迅速性、副作用がないこと、短長期的有効性が認められている。中国・広西師範大学のLin-Bo Yan氏らは、抑うつ症状を有する女性に対する運動介入の臨床的な有効性を明らかにするため、システマティックレビューを行った。Medicine誌2021年8月20日号の報告。 PubMed、Cochrane Library、Embaseより、うつ病女性に対する運動介入について検討したランダム化比較試験を検索した。文献スクリーニング後のデータ抽出、品質評価、取得データのメタ解析は、RevMan5.3ソフトウエアを用いて実施した。 主な結果は以下のとおり。・25件の研究より抽出した、2,294例を分析に含めた。・メタ解析では、運動は、対照群と比較し、女性のうつ病を軽減することが示唆された(標準平均差:-0.64、95%信頼区間:-0.89~-0.39、Z=4.99、p<0.001)。・サブグループ解析では、さまざまな種類の運動において、抑うつ症状改善に有意な効果が認められた。・運動介入は、通常のうつ病患者よりも、生理学的または他の疾患により誘発されるうつ病患者に対し、より効果的であることが示唆された。 著者らは「運動介入は、女性の抑うつ症状を有意に改善することが確認された」としている。

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プラリマリケアでの抗うつ薬治療、再発リスクの評価/NEJM

 抗うつ薬治療を中止できるほど良好な状態であったプライマリケアのうつ病患者において、投薬を中止した患者は継続した患者と比べて、52週までのうつ病再発リスクが高いことが示された。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)Faculty of Brain SciencesのGemma Lewis氏らが両者を比較する無作為化二重盲検試験の結果を報告した。プライマリケアで治療を受けるうつ病患者は、長期間抗うつ薬の投与を受ける可能性があるとされるが、投与を継続または中止した場合の影響に関するデータは限定的であった。NEJM誌2021年9月30日号掲載の報告。52週の無作為化試験で、うつ病再発を評価 研究グループは、英国にある150の一般診療所(GP)で治療を受ける成人患者を対象に試験を行った。全患者が2つ以上のうつエピソード歴があるか、抗うつ薬治療を2年以上受けており、治療中止を考慮可能なほど良好な状態であった。 被験者(citalopram、fluoxetine、セルトラリン、ミルタザピンのいずれかを服用)は1対1の割合で無作為に、現行の抗うつ薬治療を継続する群(継続群)またはマッチさせたプラセボを用いて漸減・中止する群(中止群)に割り付けられた。 主要アウトカムは、52週の試験期間中の初回うつ病再発(time-to-event解析で評価)であった。副次アウトカムは、抑うつ・不安症状、身体的・離脱症状、QOL、抗うつ薬/プラセボ中止までの期間、全般的な気分の評価とした。再発は継続群39%、中止群56%、ハザード比2.06 合計1,466例がスクリーニングを受け、478例が試験に登録された(継続群238例、中止群240例)。被験者の平均年齢は54歳、女性が73%。割り付けられた試験薬のアドヒアランスは、継続群70%、中止群52%であった。 52週までに再発を認めたのは、継続群92/238例(39%)、中止群135/240例(56%)であった(ハザード比:2.06、95%信頼区間:1.56~2.70、p<0.001)。 副次アウトカムは、概して主要アウトカムと同様の傾向が認められた。中止群は継続群と比べて、抑うつ症状(12週時のPHQ-9評価で推定群間差2.2ポイント)、不安症状(12週時のGAD-7評価で同2.4ポイント)、離脱症状(12週時のDESS評価で同1.9ポイント)が多かった。

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SSRIの副作用プロファイル~自然主義的横断研究

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、最も一般的に使用されている抗うつ薬である。通常の臨床試験では、SSRIの副作用は過少報告されているといわれている。各SSRIの副作用プロファイルを完全に理解するためには、自然主義的な環境で構造化された手法を用いてシステマティックに評価することが求められる。インド・JDT Islam College of PharmacyのK. Anagha氏らは、自然主義的な治療環境で患者の主観的な症状を測定するために設計された自己評価法を用いて、3種類のSSRI(セルトラリン、エスシタロプラム、fluoxetine)によって誘発される副作用の頻度を調査した。The Primary Care Companion for CNS Disorders誌2021年7月29日号の報告。3種類のSSRIの副作用プロファイルを調査 対象は、3次医療施設の精神科より登録された外来患者。対象条件は、ICD-10基準でうつ病、不安スペクトラム障害、適応障害、心気症、衝動調節障害と診断されSSRI単剤治療を受けた18歳以上の患者とした。評価法には、42項目を含み、米FDAよりリリースされた抗うつ薬の最も一般的な副作用に関する添付文書データを用いて考案した。 自然主義的な治療環境でSSRIの副作用の頻度を調査した主な結果は以下のとおり。・対象患者数は100例、女性の割合は70%であった。・最も一般的な診断は、うつ病であった(49%)。・使用薬剤の割合は、セルトラリンが53%、エスシタロプラムが38%、fluoxetineが8%であった。・患者より報告された一般的な副作用は、腹部膨満感(64%)、傾眠(59%)、記憶障害(51%)、集中力低下(50%)、あくび(47%)、倦怠感(45%)、口渇(45%)、体重増加(45%)、ふらつき(43%)、発汗(38%)であった。・エスシタロプラムでは、頭痛、そう痒症、記憶障害、集中力低下、めまいの発生率が有意に高かった。・セルトラリンでは、食欲不振が有意に多かった。 著者らは「一般的に使用される3種類のSSRIに関する副作用の発生率やパターンが示された。また本結果は、他の同様な研究と比較するためのベースラインデータとなりうるであろう」としている。

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急性期および治療抵抗性統合失調症に対する抗精神病薬治療戦略~ガイドラインのレビュー

 慶應義塾大学の下村 雄太郎氏らは、急性期および治療抵抗性統合失調症に対する抗精神病薬の治療戦略に関する現状を要約するため、ガイドラインおよびアルゴリズムのシステマティックレビューを実施した。Schizophrenia Research誌オンライン版2021年9月8日号の報告。治療抵抗性統合失調症に対するクロザピンの使用を多くのガイドラインが推奨 急性期および治療抵抗性統合失調症に対する抗精神病薬治療に関する臨床ガイドラインおよびアルゴリズムを特定するため、MEDLINEおよびEmbaseを用いて、システマティックに文献検索を行った。治療反応不良(抗精神病薬の増量や切り替えなど)や治療抵抗性を含む抗精神病薬治療戦略の推奨事項に関する情報を収集した。 主な結果は以下のとおり。・2011年以降に公開された、各国の急性期および治療抵抗性統合失調症治療のガイドラインやアルゴリズムを17件特定した。・急性期および治療抵抗性統合失調症に対する抗精神病薬の投与量に関しては、ほとんどのガイドライン(11件中10件)において、低用量または有効最低用量から開始し、漸増することとしていた。・治療反応不良例に対する抗精神病薬治療戦略に関しては、すべてのガイドライン(9件中9件)において、承認用量範囲の最大用量に向かって抗精神病薬の増量が推奨されていた。・例外的な場合に、承認用量範囲を超えた抗精神病薬の増量に肯定的であったガイドラインは5件、否定的であったガイドラインは10件であった。・多くのガイドライン(17件中16件)において、治療反応不良例には、他の抗精神病薬への切り替えを推奨していたが、クロザピン以外の抗精神病薬については、エビデンスが十分でないことが、いくつかのガイドラインにおいて指摘されていた。・すべてのガイドライン(17件中17件)において、2種類の抗精神病薬で治療反応が不十分であった場合に、クロザピンの使用を推奨していた。・4件のガイドラインでは、クロザピンの早期使用を推奨していたが、あくまで第3選択薬としてであった。 著者らは「現在利用可能なガイドラインやアルゴリズムでは、急性期統合失調症治療に対し治療反応が不良な場合には、抗精神病薬の増量や他の抗精神病薬への切り替えが推奨されていた。とくに、治療抵抗性統合失調症に対するクロザピンの使用が推奨されていた」としている。

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治療抵抗性片頭痛患者に対するフレマネズマブ治療がQOLや生産性に及ぼす影響

 片頭痛は、うつ病のみならず、QOLや仕事の生産性へ影響を及ぼす疾患である。ヒト化モノクローナル抗体であるフレマネズマブは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的とした薬剤であり、片頭痛の予防的治療に対する有効性が認められている。米国・Boston Headache Institute & MedVadis Research CorporationのEgilius L. H. Spierings氏らは、第IIIb相FOCUS試験のオープンラベル延長試験において患者が報告したアウトカムを、経時的に評価した。Headache誌オンライン版2021年8月10日号の報告。 12週間の二重盲検試験であるFOCUS試験を終了した反復性片頭痛および慢性片頭痛患者を対象に、12週間のオープンラベル延長試験へ移行し、フレマネズマブ225mg月1回投与を行った。患者の自己評価には、片頭痛用QOL調査票(MSQoL)による日常役割機能の制限(RFR)、日常役割機能の予防(RFP)、感情的機能(EF)やEuroQol-5-Dimension-5-Level(EQ-5D-5L)、患者による変化に関する包括印象度(PGIC)、Work Productivity and Activity Impairment(WPAI)、こころとからだの質問票(PHQ-9)を含めた。 主な結果は以下のとおり。・FOCUS試験の二重盲検期間に参加した838例のうち、オープンラベル延長試験に807例が移行し、6ヵ月時点で772例が登録されていた。・6ヵ月時点でのフレマネズマブ四半期ごと投与群(四半期群)、フレマネズマブ月1回投与群(月1群)、プラセボ群における各評価項目に対する改善は以下のとおりであった。●MSQoL-RFRのベースラインからの平均変化 四半期群:24.6±21.9、月1群:22.9±21.3、プラセボ群:20.8±26.5●MSQoL-RFPのベースラインからの平均変化 四半期群:19.6±20.0、月1群:18.3±19.7、プラセボ群:16.0±19.9●MSQoL-EFのベースラインからの平均変化 四半期群:22.5±24.2、月1群:19.1±23.6、プラセボ群:17.2±24.7●EQ-5D-5Lのベースラインからの平均変化 四半期群:8.0±19.6、月1群:7.3±21.1、プラセボ群:6.6±21.0●WPAIの労働時間損失率のベースラインからの平均変化 四半期群:-4.9±28.3、月1群:-6.9±23.3、プラセボ群:-4.0±22.5●WPAIの労働効率低下率のベースラインからの平均変化 四半期群:-18.5±26.1、月1群:-17.1±27.8、プラセボ群:-13.4±28.3●WPAIの全般労働障害率のベースラインからの平均変化 四半期群:-20.0±28.3、月1群:-19.1±30.6、プラセボ群:-14.5±30.5●WPAIの活動性障害率のベースラインからの平均変化 四半期群:-19.5±28.0、月1群:-18.0±29.3、プラセボ群:-15.4±27.5●PHQ-9のベースラインからの平均変化 四半期群:-2.4±5.3、月1群:-1.6±5.5、プラセボ群:-2.0±4.9●PGICによる治療反応率 四半期群:77.1%(271例中209例)、月1群:75.4%(272例中205例)、プラセボ群:68.8%(263例中181例) 著者らは「反復性および慢性片頭痛でこれまで複数のクラスの片頭痛予防薬で効果不十分であった患者に対し、6ヵ月間のフレマネズマブ治療を実施することにより、MSQoL、うつ病、労働生産性の改善が期待できる」としている。

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胃腸症状とうつ病との関連~米国健康栄養調査

 最近、多くの調査において、うつ病の病因としてのマイクロバイオームの役割がトピックスとなっている。調査結果によると、腸内細菌叢による一般的な症状である腸内尿毒症が胃腸症状の問題の根底にあり、これがうつ病と関連していることが示唆されている。米国・タフツ大学のSarah J. Eustis氏らは、胃腸症状の徴候が認められる人では、抑うつ症状のオッズ比(OR)が有意に高いかどうかを検証するため、本研究を実施した。Journal of the Academy of Consultation-Liaison Psychiatry誌オンライン版2021年8月27日号の報告。 2005~16年に実施された米国健康栄養調査(3万6,287人)より、成人3万1,191人のデータを分析した。アウトカムには、過去1ヵ月間の粘液性または液性の排便および胃疾患、過去1年間の下痢、1週間当たりの排便回数を含めた。本分析では、マイクロバイオームのサンプルは含まず、自己申告による胃腸症状のみとした。抑うつ症状は、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いて評価した。中等度、中等度~重度、重度のスコアは、肯定的なアウトカムとしてレコード化した。 主な結果は以下のとおり。・中等度~重度の抑うつ症状を有する人は、抑うつ症状のない人と比較し、以下の胃腸症状のORが高かった。 ●腸粘液(OR:2.78、95%CI:1.82~4.24) ●腸液(OR:2.16、95%CI:1.63~2.86) ●胃疾患(OR:1.82、95%CI:1.31~2.53) ●下痢(時々あり対なしのOR:1.72、95%CI:1.30~2.29) ●便秘(時々あり対なしのOR:2.76、95%CI:2.11~3.62)・全体として、胃腸症状を有する人では、抑うつ症状を示す可能性が有意に高かった。 著者らは「複雑な脳腸軸(brain-gut axis)については、分子レベルで調査されている。そのような中で、抑うつ症状と腸内尿毒症の徴候との関連を示唆する本研究結果は、さらなるエビデンスの蓄積に貢献し、医療従事者や患者にとって有益な情報となる可能性がある」としている。

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男性の抑うつ症状や肥満の改善に対するeHealthプログラムの影響

 肥満とうつ病は、男性において相互に関連する健康上の問題であるにもかかわらず、これらの問題を管理するためのサポートは十分に行われていない。オーストラリア・ニューカッスル大学のMyles D. Young氏らは、セルフガイドのeHealthプログラム(SHED-IT:Recharge)が過体重または肥満の改善および抑うつ症状の改善に寄与するかについて、検討を行った。Journal of Consulting and Clinical Psychology誌2021年8月号の報告。 抑うつ症状(PHQ-9スコア5以上)を有するBMI 25~42kg/m2の男性125例を対象に6ヵ月間のランダム化比較試験(RCT)を実施した。対象患者は、eHealthプログラム群62例または対照群63例にランダムに割り付けられた。3ヵ月間のプログラムは、印刷物およびオンライン(Webサイト、インタラクティブモジュールなど)を用いて実施した。プログラムは、エビデンスに基づく男性のダイエットプログラムにメンタルフィットネスを加えて行った。主要アウトカムは、3ヵ月後の体重および抑うつ症状の変化とした。評価は、ベースライン時、3ヵ月後、6ヵ月後に行った。プログラムのアウトカムを調査するため、治療企図(ITT)線形混合モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・3ヵ月後、体重および抑うつ症状の改善に対する中程度の効果が認められた。 ●体重(調整後平均差:-3.1kg、95%CI:-4.3~-1.9、d=0.9) ●抑うつ症状(調整後平均差:-2.4、95%CI:-4.0~-0.9、d=0.6)・これらの効果は、6ヵ月間持続しており、他の健康アウトカムの継続的な改善によりサポートされた。 著者らは「ダイエットプログラムとメンタルヘルスサポートを組み合わせたセルフガイドのeHealthプログラムの実施により、男性の抑うつ症状や肥満の改善が認められた。身体的および精神的な問題を抱える患者を対象とした統合的介入は、効果的な治療戦略である可能性が示唆された」としている。

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ベジタリアンのうつ病リスク~メタ解析

 いくつかの研究において、ベジタリアンはうつ病リスクが高いことが報告されている。しかし、これとはまったく逆の結果も報告されている。ドイツ・ルール大学ボーフムのSebastian Ocklenburg氏らは、これらの不一致性を考慮し、ベジタリアンとうつ病リスクとの間に有意な関連が認められるかを明らかにするため、メタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2021年11月1日号の報告。 主要なデータベースより、ベジタリアンと非ベジタリアン(対照群)のうつ病スコアを報告した研究を検索した。条件付きランダム効果モデルに従ったRによるメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・重複を削除し、適格基準に照らし合わせたところ、13研究、4万9,889例(ベジタリアン:8,057例、対照群:4万1,832例)が分析に含まれた。・ランダム効果メタ解析では、ベジタリアンは、対照群と比較し、うつ病スコアの高さとの有意な関連が認められた。・研究間の異質性は高く、研究地域の地理的なばらつきは少なく、異文化間の比較は限られていた。 著者らは「ベジタリアンは、非ベジタリアンと比較し、うつ病リスクが高いことが示唆された。しかし、公表されている研究は、非常に不均一であり、最終的な結論を導き出すためには、より経験的な研究が求められる。また、より多くの国における実証的研究が望まれる」としている。

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うつ病の1次予防効果

 うつ病に対する1次予防は、疾患の経過を改善する可能性があるものの、その効果についてはよくわかっていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのGonzalo Salazar de Pablo氏らは、うつ病の1次予防効果を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2021年11月1日号の報告。 2020年6月までに公表された研究を、PubMed、Web of Scienceよりシステマティックに検索した(PRISMA and RIGHT)。抑うつ症状(効果測定:標準化平均差[SMD])またはうつ病性障害(効果測定:相対リスク[RR])の1次予防のための介入について、メタ解析を実施した。結果は、年齢範囲、対象集団(一般および/またはリスクあり)、介入タイプにより層別化した。品質(AMSTAR/AMSTAR-PLUS content)および信頼性(高中低で評価)も評価した。推奨事項の評価には、USPSTF grading systemを用いた。 主な結果は以下のとおり。・46件のメタ解析(研究数:928件、患者数:28万6,429例、平均年齢:22.4歳、女性の割合:81.1%)を含めた。・エフェクトサイズは、抑うつ症状では0.08~0.53(SMD)、うつ病性障害では0.90~0.28(RR)であった。・RCTのみを含む感度分析では、結果に影響を及ぼさなかった。・AMSTAR中央値は9(IQR:8~9)、AMSTAR-PLUS content中央値は4.25(IQR:4~5)であった。・メタ解析のエビデンスの信頼性は、不十分/低が43件(93.5%)、中が2件(4.3%)、高が1件(2.2%)であった。・若年成人における心理社会的介入、プライマリケアにおける心理学的介入と教育学的介入の組み合わせは、抑うつ症状の軽減に対し中程度の信頼性を有していた。・脳卒中患者のうつ病性障害に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の予防投与は、高い信頼性を有していた。・本研究の限界として、介入の不均一性および長期的な有効性評価の欠如が挙げられる。 著者らは「うつ病に対する1次予防的介入は効果的な可能性がある。とくに、脳卒中後のSSRI予防投与や高リスク群(小児、青年、若年成人または出産前、周産期の女性)に対する心理社会的介入を検討する必要がある」としている。

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添付文書改訂:フォシーガにCKD追加/エンレストに高血圧症追加/リンヴォックにJAK阻害薬初の間節症性乾癬追加/リオナに鉄欠乏性貧血追加/ロナセンに小児適応追加【下平博士のDIノート】第83回

フォシーガ:SGLT2阻害薬で初のCKD適応追加<対象薬剤>ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物(商品名:フォシーガ錠5mg/10mg、製造販売元:アストラゼネカ)<承認年月>2021年8月<改訂項目>[追加]効能・効果慢性腎臓病(CKD)ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く。<Shimo's eyes>わが国では現在、本剤を含めて6種類のSGLT2阻害薬が発売されています。本剤はイプラグリフロジン(商品名:スーグラ錠25mg/50mg)と共に、2型糖尿病だけでなく1型糖尿病にも適応があります。2020年11月にはSGLT2阻害薬で初めて慢性心不全の適応を取得し、さらに2021年8月にCKDの適応も取得しました。NEJM誌に掲載された国際多施設共同無作為化二重盲検比較試験(第III相DAPA-CKD試験)の結果によると、本剤はプラセボと比較して、CKD患者の腎機能低下もしくは死亡などの複合リスクを有意に低下させました。これは、心不全の結果(DAPA-HF試験)と同様に、2型糖尿病合併の有無にかかわらず認められています。参考アストラゼネカ 医療関係者向けサイト フォシーガエンレスト:高血圧症の適応追加<対象薬剤>サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(商品名:エンレスト錠100mg/200mg、製造販売元:ノバルティスファーマ)<承認年月>2021年9月<改訂項目>[追加]効能・効果高血圧症[追加]用法・用量通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回200mgを1日1回経口投与します。年齢、症状により適宜増減しますが、最大投与量は1日1回400mgです。なお、本剤の投与により過度な血圧低下の恐れなどがあり、原則、高血圧治療の第一選択薬としては使えません。<Shimo's eyes>2020年6月に承認された「慢性心不全」に対する適応に加えて、今回「高血圧症」が適応追加されました。本剤は、新しいクラスであるARNIに分類され、ネプリライシン(NEP)とARBであるバルサルタンを分子内に持つ薬剤です。海外では2021年6月時点で、高血圧症に係る適応ではロシアと中国で承認、慢性心不全に関連する適応では欧米を含む110以上の国・地域で承認されています。なお、慢性心不全とは異なり、同錠50mgは適応追加の対象外となっています。参考ノバルティスファーマ 医療関係者向けサイト エンレストリンヴォック:JAK阻害薬で初めて間節症性乾癬の適応追加<対象薬剤>ウパダシチニブ水和物(商品名:リンヴォック錠7.5mg/15mg/30mg、製造販売元:アッヴィ合同会社)<承認年月>2021年5月、8月、9月<改訂項目>[追加]効能・効果関節症性乾癬(5月)、アトピー性皮膚炎(8月)[追加]剤形30mg錠(9月)<Shimo's eyes>本剤は2020年1月に関節リウマチの適応を取得し、2021年5月に関節症性乾癬、8月にアトピー性皮膚炎の適応が承認されました。また、同年9月に承認された30mgはアトピー性皮膚炎のみの適応です。関節症性乾癬の治療薬としては、関節炎に対してはNSAIDsが第一選択となり、活動性が高い場合はメトトレキサートなどのDMARDsが追加されます。それでも効果が不十分の場合は生物学的製剤が検討されますが、既存薬では寛解または疾患コントロールの目標と考えられる最小疾患活動性が達成できていない患者も多くいます。今回の適応追加により、機能障害を予防・軽減し、QOLを改善する新たな治療選択肢となることが期待されています。参考アッヴィ 医療関係者向け情報サイト リンヴォックリオナ:鉄欠乏性貧血の適応追加<対象薬剤>クエン酸第二鉄水和物(商品名:リオナ錠250mg、製造販売元:日本たばこ産業)<承認年月>2021年3月<改訂項目>[追加]効能・効果鉄欠乏性貧血[追加]用法・用量通常、成人には、クエン酸第二鉄として1回500mgを1日1回食直後に経口投与する。患者の状態に応じて適宜増減するが、最高用量は1回500mgを1日2回までとする。<Shimo's eyes>鉄欠乏性貧血は、最も頻度の高い貧血であり、動悸、息切れなどの貧血症状のほか、異食症や易疲労感などが認められます。治療としては、鉄欠乏を来す原因疾患の治療とともに鉄剤の投与が行われます。貧血と高リン血症は慢性腎臓病(CKD)の主要な合併症です。本剤は透析を受けているCKD患者の高リン血症治療薬として2014年に発売され、今回、鉄欠乏性貧血治療薬としても承認されました。本剤は胃腸管で食事に含まれるリン酸塩に結合し、リン酸第二鉄として不溶性の沈殿を形成させることでリンの消化管吸収を抑制するリン吸着剤です。鉄の一部が吸収されるため、ヘモグロビン濃度の上昇につながることから、本剤の投与により貧血の改善も期待できます。参考鳥居薬品 医療関係者向けサイト リオナ錠250mgロナセン:統合失調症治療薬として初の小児適応<対象薬剤>ブロナンセリン(商品名:ロナセン錠2mg/4mg/8mg、ロナセン散2%、製造販売元:大日本住友製薬)<承認年月>2021年3月<改訂項目>[追加]用法・用量小児:通常、小児にはブロナンセリンとして1回2mg、1日2回食後経口投与より開始し、徐々に増量する。維持量として1日8~16mgを2回に分けて食後経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日量は16mgを超えないこと。<Shimo's eyes>本剤は統合失調症治療薬として2008年に発売され、2019年には世界で初めて統合失調症を適応としたテープ剤(経皮吸収型製剤)も発売されています。さらに今回、わが国で初めて統合失調症の小児適応が追加されました。統合失調症は18歳より前に発症すると、その後の重症度が高く、成人で発症した場合と比べて神経認知障害がより重度になることがあります。米国児童青年精神医学会の指針では、小児であっても成人と同様に薬物療法と心理社会的療法を併用することが治療の基本とされています。参考大日本住友製薬 医療関係者向けサイト ロナセン

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青年期うつ病と双極性障害の鑑別を予測するバイオマーカー

 双極性障害の約半数は、少年期または青年期に発症する。双極性障害の初期段階では、通常うつ病エピソードが認められ、うつ病と鑑別することが困難である。しかし、青年期の双極性障害とうつ病を鑑別するための客観的なバイオマーカーは限られている。中国・上海交通大学医学院のXiaohui Wu氏らは、青年期のうつ病と双極性障害の鑑別を予測するバイオマーカーについて、検討を行った。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2021年8月25日号の報告。 2009~18年に双極性障害およびうつ病で精神科病棟に入院した患者を対象に、基本的な人口統計データおよび入院後最初の血液検査データを収集した。対象患者は、10~18歳の双極性障害およびうつ病患者261例(双極性障害:101例、うつ病:160例)。バイナリロジスティック回帰の変数増減法(Forward-Stepwise Selection)を使用して、性別ごとのサンプル全体とサブグループの予測モデルを構築した。中国の別の病院から一致させた255例を用いて、独立した外部検証を行った。 主な結果は以下のとおり。・全体および男女のサブグループにおける回帰モデルの精度、曲線化面積(AUC)は以下のとおりであった。 ●青年期全体(精度:73.3%、AUC:0.785) ●男性(精度:70.6%、AUC:0.816) ●女性(精度:75.2%、AUC:0.793)・最終的に本モデルに含まれた予測因子は、年齢、直接ビリルビン、乳酸デヒドロゲナーゼ、遊離トリヨードサイロニン、C反応性蛋白であった。・外部検証において、鑑別に問題は認められなかった(AUC:0.714)。 著者らは「青年期の双極性障害とうつ病を鑑別するうえで、一般的な臨床検査値が役立つ可能性があることが示唆された」としている。

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うつ病患者の自殺リスク予測因子

 自殺の原因はさまざまであり、自殺リスクのある人を正確に特定することは困難である。米国・ボストン大学のTammy Jiang氏らは、機械学習を用いて、うつ病患者の自殺予測を試みた。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2021年8月11日号の報告。 本研究は、1995~2015年にデンマークにおいて実施されたケースコホート研究である。対象は、デンマークで自殺により死亡したすべてのうつ病患者2,774例。比較サブコホートは、ベースライン時のデンマーク人の5%ランダムサンプルであり、研究期間中にうつ病と診断された患者1万1,963例。自殺予測には、決定木およびランダムフォレストを用いた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病男性では、他の解熱鎮痛薬の使用(アセトアミノフェンなどの非オピオイド鎮痛薬)、催眠鎮静薬の使用、中毒症と診断された患者において自殺リスクが高かった(96例、リスク:81%)。・うつ病女性では、他の解熱鎮痛薬、抗不安薬、催眠鎮静薬が使用された患者で自殺リスクが高かったが、中毒症や脳血管疾患と診断された患者では関連が認められなかった(338例、リスク:58%)。 著者らは「精神障害とそれに関連する薬物療法は、自殺リスクとの関連が示唆された。とくに、慢性疼痛や疾患治療に用いられる抗炎症薬(アセトアミノフェンなど)の使用は、うつ病患者の自殺リスクとの関連が認められた」とし「機械学習は、自殺による死亡を予測する精度を向上させる可能性がある」としている。

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