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米国のうつ病/物質使用障害成人の喫煙率が有意に低下/JAMA

 大うつ病エピソード(MDE)、物質使用障害(SUD)、あるいはその両方を抱えた米国成人の自己申告による喫煙率は、2006年から2019年にかけて有意に低下している。米国・国立衛生研究所(NIH)のBeth Han氏らが、探索的順次横断研究の結果を報告した。米国における予防可能な疾病・障害・死亡原因である喫煙は、減少傾向にある。しかし、精神疾患患者では喫煙率が高く、2014年までのデータを用いた研究において一般集団でみられた喫煙率低下は、精神疾患患者では観察されなかったことが示されていた。著者は、「精神疾患患者の喫煙率をさらに低下させるため、継続的な取り組みが必要である」とまとめている。JAMA誌2022年4月26日号掲載の報告。全国調査に参加した約56万人のデータを解析 研究グループは、米国において2006~19年の薬物使用と健康に関する全国調査に参加した18歳以上の55万8,960例のデータを用い、DSM-IV-TR(精神疾患の診断・統計マニュアル第4版テキスト改訂版)に基づく過去1年間のMDEおよびSUDを有する人の喫煙率について解析した。 主要評価項目は、社会人口統計学的特性で補正した自己申告による過去1ヵ月間の喫煙である。 55万8,960例のうち、41.4%が18~25歳、29.8%が26~49歳で、女性は53.4%であった。2006年から2019年にかけて、喫煙率はMDEで年間3.2%、SUDで年間1.7%低下 自己申告による過去1ヵ月間の喫煙率は、2006年から2019年にかけてMDEを有する成人では37.3%から24.2%へ(平均年間変化率:-3.2、95%信頼区間[CI]:-3.5~-2.8、p<0.001)、SUDの成人では46.5%から35.8%へ(-1.7、-2.8~-0.6、p=0.002)、MDEとSUDの両方を有する成人では50.7%から37.0%へ(-2.1、-3.1~-1.2、p<0.001)、いずれも有意に低下した。この有意な喫煙率低下は、アメリカ先住民/アラスカ先住民のMDE(p=0.98)またはSUD(p=0.46)では観察されなかったことを除き、年齢、性別、人種/民族のいずれのサブグループでもMDEおよびSUDともに認められた(すべてp<0.05)。 MDEを有する成人と有していない成人との間の喫煙率の差は、全体では11.5%から6.6%に有意に低下し、平均年間変化率は-3.4(95%CI:-4.1~-2.7、p<0.001)であった。平均年間変化率の有意な低下は、男性(-5.1、95%CI:-7.2~-2.9、p<0.001)、女性(-2.7、-3.9~-1.5、p<0.001)、18~25歳(-5.2、-7.6~-2.8、p<0.001)、50歳以上(-4.7、-8.0~-1.2、p=0.01)、ヒスパニック系(-4.4、-8.0~-0.5、p=0.03)、白人(-3.6、-4.5~-2.7、p<0.001)でも同様に確認された。 アメリカ先住民/アラスカ先住民における喫煙率は、2006~12年の間ではMDEの有無で有意差はなかったが、2013~19年の間ではMDEを有する成人で有意に高かった(群間差:11.3%、95%CI:0.9~21.7、p=0.04)。SUDの有無で比較した喫煙率の差は、女性で低下し、平均年間変化率は-1.8(95%CI:-2.8~-0.9、p=0.001)であった。

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中年期の生活環境とその後のうつ病との関連

 大阪大学の小川 憲人氏らは、一般集団における生活環境と精神科医によるうつ病診断との縦断的関連について、調査を行った。その結果、子供と一緒に暮らすことで、男性ではうつ病リスクの低下が認められ、うつ病予防における子供の影響が示唆された。Translational Psychiatry誌2022年4月11日号の報告。 1990年、多目的コホート研究(JPHC Study)において、40~59歳の日本人男性および女性1,254人が登録され、生活環境についてのアンケート調査に回答した。その後、2014~15年にメンタルヘルス検診を実施した。うつ病の診断は、十分な経験を積んだ精神科認定医による診察を通じて評価した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中に、精神科医によるうつ病の診断は105例(64~84歳、男性:36例、女性69例)であった。・男性では、子供と一緒に暮らすことでうつ病リスクの低下が認められたが(多変量OR:0.42、95%CI:0.19~0.96)、女性では認められなかった(同:0.59、95%CI:0.32~1.09)。・これらの関連は、配偶者や親との同居で調整した場合でも、同様であった。

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うつ病とドライアイ症状との関係~DREAM研究

 うつ病患者は、ドライアイ症状を有する割合が高いといわれているが、ドライアイ症状の重症度とうつ病との関連はよくわかっていない。米国・ペンシルベニア大学のYi Zhou氏らは、うつ病とドライアイ症状の重症度、兆候、炎症マーカーとの関連を調査した。その結果、うつ病はドライアイ症状の重症度および全体的な兆候と関連しており、中等度~重度のドライアイ症状を有するうつ病患者では、ドライアイ症状がより重度である可能性が示唆された。JAMA Ophthalmology誌2022年4月1日号の報告。 2014年10月~2016年7月、ドライアイの中等度~重度の症状および兆候を有する患者を対象に実施されたランダム化比較試験「DREAM(Dry Eye Assessment and Management)研究」のデータに基づき、2020年4月~12月に2次的横断および縦断分析を行った。米国17州の眼科および検眼センター27ヵ所で登録された535例を1年間フォローアップした。SF-36の精神的側面サマリー(MCS)スコア42以下をうつ病と定義し、スクリーニングを実施した。ドライアイ症状は眼表面疾患指数(OSDI)およびBrief Ocular Discomfort Index(BODI)、ドライアイの兆候は、涙液層破壊時間(BUT)、Schirmer試験、フルオレセイン角結膜染色、涙液浸透圧、マイボーム腺機能不全(MGD)による評価を、ベースライン時、6ヵ月時点、12ヵ月時点で行った。すべての兆候より、複合ドライアイ兆候スコアを算出した。一部の対象患者に対して、炎症マーカー(涙液中のサイトカイン、結膜表面細胞によるHLA-DR発現)の測定を行った。ドライアイの特徴は、うつ病患者と非うつ病患者で評価し、年齢、性別、人種、受診、ベースライン時の併存疾患で調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者535例の平均年齢は58±13.2歳、女性の割合は81%(434例)、白人の割合は74.4%(398例)であった。・スクリーニングでうつ病と診断された患者では、ドライアイ症状の悪化が認められた。 【OSDI】エフェクトサイズ:0.45、p<0.001 【BODI】同:0.46、p<0.001 【複合ドライアイ兆候スコア】同:0.21、p=0.006・MCSスコアが低い(うつ病重症度が高い)患者では、ベースライン時(Spearman ρ=-0.09、p=0.03)、6ヵ月時(同:-0.20、p<0.001)、12ヵ月時(同:-0.21、p<0.001)のOSDIスコアが高かった。・うつ病患者と非うつ病患者において、炎症マーカーの差は認められなかった。 著者らは「これらの結果は、ドライアイ症状を有する患者のマネジメントにおいて、併存疾患としてのうつ病を考慮すべきであることを示唆している。うつ病とドライアイ症状との関連を明らかにするためにも、さらなる研究が求められる」としている。

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日本人精神疾患患者における第2世代抗精神病薬治療後のHbA1cの閾値下変化

 第2世代抗精神病薬(SGA)の種類により糖尿病発症リスクが異なることは、いくつかの研究で報告されている。しかし、HbA1cの閾値下の変化に焦点を当てた研究は、ほとんどない。北海道大学の澤頭 亮氏らは、6種類のSGAのうち、いずれかを使用している日本人患者を対象に、HbA1cの閾値下およびBMIの変化について調査を行った。その結果、糖尿病リスクの高い患者に対しては、ブロナンセリン治療が最も有用な治療法である可能性が示唆された。The Journal of Clinical Psychiatry誌2022年3月30日号の報告。 本研究は、統合失調症患者に対し、日本の血糖モニタリングガイドラインに基づいてフォローアップ調査を実施したプロスペクティブコホート研究である。2013年4月~2015年3月の期間に、ベースライン時およびSGA治療開始3ヵ月後の時点で、患者の人口統計学的データ、薬歴、血液検査値、体重測定値を収集した。対象は、ICD-10に基づく統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害の患者378例。抗精神病薬による治療開始から3ヵ月後のHbA1cの閾値下およびBMIの変化を比較するため、多変量回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ブロナンセリン開始3ヵ月後のHbA1cの閾値下の変化は、オランザピンと比較し、有意に低かった(B=-0.17、95%CI:-0.31~-0.04)。・ブロナンセリン(B=-0.93、95%CI:-1.74~-0.12)およびアリピプラゾール(B=-0.71、95%CI:-1.30~-0.12)開始3ヵ月後のBMIの変化は、オランザピンと比較し、それぞれ有意に低かった。

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睡眠、不安、ビタミンDと周産期うつ病リスク

 周産期うつ病の頻度は高く、死亡率に影響を及ぼす疾患である。米国・サウスカロライナ医科大学のCourtney E. King氏らは、周産期うつ病リスクに影響を及ぼす修正可能な心理学的および生物学的因子を特定するため、検討を行った。その結果、妊娠初期の睡眠、不安および潜在的なビタミンD不足は、周産期うつ病リスクの増加と関連していることが示唆された。Reproductive Sciences誌オンライン版2022年3月29日号の報告。睡眠障害や不安症状、ビタミンD不足とうつ症状スコア 対象は、妊娠中の女性105人。妊娠8~12週および24~28週、産後6~8週および10~12週に、うつ症状、不安症状、睡眠障害の評価と血液検査を実施した。評価尺度として、うつ症状にはエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)、不安症状には全般不安症スコア(GAD)、睡眠障害にはピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。 妊娠中の女性105人にうつ症状、不安症状、睡眠障害の評価と血液検査を実施した主な結果は以下のとおり。・研究期間中にうつ病基準を満たした女性は、105例中35例(33.3%)であった。・妊娠8~12週にPSQIスコア(OR:1.17、95%CI:1.04~1.33)またはGADスコア(OR:1.33、95%CI:1.18~1.48)の上昇が認められた女性は、その後の評価でうつ症状スコアが上昇する可能性が高かった。・ビタミンDレベルが20ng/L以下の女性は、フォローアップ期間中にうつ症状スコアが上昇する可能性が高かったが、統計学的な有意差は認められなかった(OR:2.40、95%CI:0.92~6.27)。・産後の評価への参加率は低かった。・本研究の限界として、うつ症状、不安症状、睡眠障害の評価には、自己報告尺度を用いた点が挙げられる。 著者らは「妊娠中の睡眠や不安の問題を軽減させ、適切なビタミンDレベルを確保することを目的とした介入は、周産期うつ病リスクを減少させるために重要である」としている。

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不眠症治療に対するプライマリケア患者の好み

 睡眠障害は、プライマリケアにおいて一般的に認められる。主な治療オプションには、不眠症に対する薬物療法および認知行動療法が挙げられる。そして、ベストプラクティス・ガイドラインでは、治療に対する協調的意思決定アプローチが推奨されている。米国・バージニア・コモンウェルス大学のElliottnell Perez氏らは、プライマリケア患者の人口統計学的および臨床的特徴に基づいた不眠症治療に対する好みの違いについて、検討を行った。Clinical Therapeutics誌オンライン版2022年3月28日号の報告。重度の不眠症患者では認知行動療法を好んだ割合が有意に高かった 大学医療センターおよび地域のクリニックより抽出された200例(平均年齢:54.92±12.48歳)を対象に、不眠症、うつ病、不安症、不眠症治療に対する好みについて、簡易アンケートを実施した。不眠症は不眠症重症度質問票、うつ病はPHQ-2、不安症はGAD-2を用いて評価した。群間の不眠症治療に対する好みの有意差を検出するためχ2分析を用いた。 不眠症治療に対する好みについて簡易アンケートを実施した主な結果は以下のとおり。・薬物療法を好んだ患者は46.5%、認知行動療法を好んだ患者は56.0%であった(評価は排他的ではない)。・重度の不眠症患者では、認知行動療法を好んだ割合が有意に高かった(好ましい:15.2%、好ましくない:4.5%、p=0.002)。・不安症状が強い患者では、薬物療法を好んだ割合が高かった(57.3% vs.42.7%、p=0.017)。・うつ病患者の中で、うつ症状の強い患者では、認知行動療法(66.7% vs.33.3%、p=0.012)および薬物療法(56.8% vs.43.2%、p=0.016)を好んだ割合が最も高かった。・治療に対する好みの違いは、認知行動療法において年齢のみで認められた(p=0.008)。・治療を好む割合は、51歳以下の患者で最も高かった(67.2% vs.32.8%)。 著者らは「プライマリケア患者は、不眠症治療に対する認知行動療法および薬物療法を好むことがわかった。また、メンタルヘルスや睡眠の状態が悪化するほど、患者は認知行動療法を好む傾向が示唆された。患者の治療に対する好みを理解することは、意思決定の共有の促進につながり、治療満足度や治療への関与の向上に寄与すると考えられる」としている。

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抗精神病薬の治療歴とその後の代謝関連副作用との関係

 抗精神病薬治療によるさまざまな有害事象が報告されているが、重篤な副作用が頻繁に認められるわけではない。中国・Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのYe Yang氏らは、抗精神病薬の治療歴が現在の抗精神病薬誘発性代謝関連副作用と関連しているかを確認するため、検討を行った。BMC Psychiatry誌2022年3月21日号の報告。 抗精神病薬未治療患者115例、代謝関連副作用リスクの低い抗精神病薬による治療歴を有する患者65例、同リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者88例を対象に、ケースコントロール研究を実施した。すべての患者に対し、オランザピン治療を実施した。体重、BMI、血糖値、脂質パラメータ、ベースラインより7%以上の体重増加が認められた患者の割合、脂質異常症の割合を評価した。すべての評価は、ベースライン時、治療開始4週目および6週目に実施した。 主な結果は以下のとおり。・オランザピン治療により、抗精神病薬未治療患者は他の2群と比較し、体重とBMIの有意な増加が観察された(それぞれp<0.05)。・代謝関連副作用リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者では、他の2群と比較し、脂質レベルが有意に高かった(それぞれp<0.05)。・抗精神病薬の治療歴と体重増加との間に有意な関連は認められなかった(すべてのp>0.05)。・抗精神病薬による治療歴を有さない患者と比較し、同治療歴を有する患者では、3.37mmol/L-1以上の高LDLコレステロール値が観察された(aOR:1.75、95%CI:1.07~3.52)。・とくに、代謝関連副作用リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者では、他の2群と比較し、3.37mmol/L-1以上の高LDLコレステロール値リスクが高かった(aOR:2.18、95%CI:1.03~3.32)。 著者らは「抗精神病薬治療歴、とくに代謝関連副作用リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者では、現在使用している抗精神病薬により誘発される代謝関連副作用との関連が示唆された」としている。

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初発統合失調症の再発予防に対する抗精神病薬の用量とその効果

 初発統合失調症患者の再発予防に対する抗精神病薬の投与量として、成功の可能性が最も高い用量は、明らかになっていない。東フィンランド大学のHeidi Taipale氏らは、抗精神病薬の使用および特定用量と精神科再入院リスクについての調査を行い、抗精神病薬の投与量の変化と重度の再発リスクとの関連について、検討を行った。The Lancet. Psychiatry誌2022年4月号の報告。初発統合失調症を5年間/5回の再発エピソードまでをフォローアップ フィンランドにおいて全国レジストリベースコホート研究を実施した。すべての入院患者の情報が記録されているnationwide Hospital Discharge registerより、対象患者を特定した。初発統合失調症と診断された45歳以下の入院患者を、5年間または5回の再発エピソードまでフォローアップした。主に精神科再入院を再発のマーカーとして評価し、退院時診断として記録されたICD-10コード(F20-29)を用いて入院治療を定義した。次の再発と見なす期間の定義は30日以上とした。抗精神病薬の使用に関するデータは、処方レジストリより抽出した。用量は、使用したすべての抗精神病薬の合計とした。再入院予防に対する抗精神病薬の有効性は、個別分析を用いて検討し、選択バイアスを除外し、2回目の再発前と再発後の時間で層別化した。初発統合失調症の再発予防に対する抗精神病薬の有効性は2回目再発後に大幅減 初発統合失調症の再発に対する抗精神病薬の有効性を検討した主な結果は以下のとおり。・対象患者は5,367例(男性:3,444例[64.2%]、女性:1,923例[35.8%])、フォローアップ開始時の平均年齢は29.5±7.8歳であった。・民族性に関するデータは、収集できなかった。・5,367例中3,058例(57.0%)が入院治療を必要とした。・抗精神病薬の平均用量は、最初の再発前で1.22 DDD(defined daily doses)/日(95%CI:1.18~1.26)であり、再発ごとに増加が認められ、5回目の再発前では1.56 DDD/日(95%CI:1.48~1.64)であった。・抗精神病薬の使用を未使用と比較した再入院の調整済みハザード比(aHR)は、2回目の再発前の0.42(95%CI:0.35~0.51)から2回目の再発後には0.78(95%CI:0.62~0.99)に増加しており(p<0.0001)、再発予防効果の著しい低下が認められた。・特定用量のカテゴリ分析では、U字型曲線関係が認められ、標準用量の使用中において入院リスクが最低を示した(0.9~1.1 DDD/日)。これは、2回目の再発前で認められたが、2回目の再発後では認められなかった。・低用量(0.6 DDD未満/日)は、2回目の再発前の標準用量と比較し、実質的に高い再入院リスクと関連が認められたが(aHR:1.54、95%CI:1.06~2.24)、2回目の再発後ではこの関連は認められなかった(aHR:1.11、95%CI:0.76~1.62)。これは、2回目の再発後には、すべての用量において有効性が低下するためであると考えられる。 著者らは「再発予防に対する抗精神病薬の有効性は、2回目の再発後、大幅に減少した。そのため、2回目の再発予防は不可欠であり、最初の再発後には十分な投与量の抗精神病薬の使用と再発予防強化策を治療に組み込む必要がある」としている。

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各抗うつ薬に対する患者の主観的満足度の比較

 現在、異なる作用機序を有するさまざまな抗うつ薬が利用可能であるが、その有効性および安全性に有意な差があるかは、よくわかっていない。また、各抗うつ薬に対する主観的な経験に関するデータを組み込んだ検討は、ほとんど行われていなかった。アルゼンチン・AREA(Assistance and Research in Affective Disorders)のSebastian Camino氏らは、各抗うつ薬に対する患者の主観的満足度について、比較検討を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2022年3月29日号の報告。使用されている抗うつ薬で満足度が高かった薬剤 薬剤に関する患者評価のWebサイト(www.askapatient.com)から、さまざまな抗うつ薬についての投稿を定性的および定量的に分析した。1,000件の投稿をランダムサンプルとして確認した。 さまざまな抗うつ薬の評価を定性的および定量的に分析した主な結果は以下のとおり。・包含基準および除外基準を適用し、450件の投稿が分析サンプルに含まれた。・450件には、最も使用されている抗うつ薬(セルトラリン、citalopram、パロキセチン、エスシタロプラム、fluoxetine、ベンラファキシン、デュロキセチン、ミルタザピン、bupropion)それぞれの投稿50件が含まれた。・全体的な満足度が高かった薬剤は、bupropion、citalopram、ベンラファキシンであった。・セルトラリン、パロキセチン、fluoxetineでは感情鈍麻の報告が多く、bupropionでは少なかった。・抗うつ薬治療に対する全体的な満足度は、自殺傾向、過敏性、感情鈍麻、認知機能障害、禁断症状などの有害事象との逆相関が認められた。・交絡因子で調整した後、セロトニン作動性薬を使用した患者では、非セロトニン作動性薬と比較し、感情鈍麻のみ報告頻度が高かった。 著者らは「抗うつ薬は薬剤間に違いがあることから、選択する際には、治療中の患者の主観的な経験を考慮すべきであることが示唆された。感情鈍麻を引き起こす可能性の低い薬剤である非セロトニン作動性薬の選択は、患者の満足度の向上につながる可能性がある」としている。

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強迫症患者における統合失調症への診断変更の可能性

 いくつかのエビデンスにおいて、強迫症と統合失調症との関係が報告されている。しかし、強迫症から統合失調症への診断変更を予測する可能性のある因子は、明らかになっていない。この予測因子を特定するため、台湾・国立陽明交通大学のMu-Hong Chen氏らが、検討を行った。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2022年3月24日号の報告。強迫症から統合失調症への粗累積進行率は6%、推定進行率は7.80% 2001~10年に強迫症(ICD-9-CM:300.3)と診断された青少年および成人3万5,255例を対象とし、2011年末まで、新たに統合失調症(同:295)と診断されているかを特定するフォローアップ調査を行った。発生率の推定にはカプランマイヤー法を用い、予測因子の有意性を評価するためCox回帰を用いた。 強迫症から統合失調症への進行の予測因子を検討した主な結果は以下のとおり。・11年間のフォローアップ期間中における、強迫症から統合失調症への粗累積進行率は6%、推定進行率は7.80%であった。・強迫症から統合失調症への診断変更の可能性を上昇させる因子は、以下のとおりであった。 ●男性(ハザード比:1.23) ●肥満(同:1.77) ●自閉スペクトラム症(同:1.69) ●双極性障害(同:1.69) ●心的外傷後ストレス障害(同:1.65) ●クラスターAパーソナリティ障害(同:2.50) ●統合失調症の家族歴(同:2.57) 著者らは「強迫症から統合失調症への診断変更の根底にある病態メカニズムを解明するためには、さらなる研究が求められる」としている。

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元サラリーマンの精神科医が教える 働く人のためのメンタルヘルス術

コロナ禍で増えるメンタル不調、五月病対策にも!働く人の心に寄り添うメンタル回復法とは?「最近、なんだか元気が出ない……」「気持ちが沈んで、何にも興味が持てない……」、そんな状態が続いてはいませんか?メンタル不調には、うつ、抑うつ状態など、いろいろな呼び方がありますが、そうした“心の水位”が下がっている状況とはどういうものなのかを理解し、早めのケアすることが大切です。本書では、〈メンタル不調とは何か?〉〈誰に相談したらいいか?〉にはじまり、〈病院選び〉や〈薬のこと〉、〈復職〉に至るまで、メンタル不調を自覚した段階からよりよい自分を取り戻すまでに、知っておいてほしいことをQ&Aを交えてわかりやすく解説します。元サラリーマンで、年間3,000~4,000人のメンタルケアに向き合ってきた精神科医・産業医の著者がお教えいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    元サラリーマンの精神科医が教える 働く人のためのメンタルヘルス術定価1,650円(税込)判型四六版・ソフトカバー頁数248頁発行2022年3月仕様四六判・ソフトカバー・248ページ著者尾林 誉史

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統合失調症に対する持続性注射剤抗精神病薬の使用推進要因

 米国・Janssen Global ServicesのAlexander Keenan氏らは、精神科医と統合失調症患者との疾患マネジメントに関する考え方の違いを評価し、持続性注射剤(LAI)抗精神病薬の使用要因について、調査を行った。BMC Psychiatry誌2022年3月17日号の報告。 2019年、精神科医と担当する統合失調症患者を対象に実施したリアルワールドの国際的調査「Adelphi Schizophrenia Disease Specific Programme」で収集したデータを分析した。精神科医は、統合失調症のマネジメントに関する調査を完了し、担当する成人患者10例の患者プロファイルを提供した。自己記入式調査票を用いて、対象患者から情報を収集した。症状重症度は医師から報告された臨床全般印象度(CGI)で評価し、患者の治療アドヒアランスは3段階評価で評価した(1:アドヒアランス不良~3:アドヒアランス良好)。 主な結果は以下のとおり。・精神科医466人より統合失調症患者4,345例(LAI治療患者:1,132例、非LAI治療患者:3,105例、未治療患者:108例)のデータが収集された。・LAIは、より重度な統合失調症患者に使用されており、その使用理由はさまざまであった。・精神科医と患者との間で、CGI重症度(k=0.174)と治療改善レベル(k=0.204)について、わずかな一致のみが観察された。・治療アドヒアランスレベルに関しては、中程度の一致が観察された(k=0.524)。・アドヒアランス不良の理由に関しては、明確な示唆を得られるレベルに達しなかった。 著者らは「今回のリアルワールドデータ分析により、LAIは重度の統合失調症患者に使用されることが多く、アドヒアランス改善が使用促進要因であることが明らかとなった。しかし、精神科医は統合失調症患者と比較し、疾患の重症度を過小評価している可能性、逆にアドヒアランスを過大評価する傾向が確認された」としている。

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高齢者のうつ病治療ガイドラインのポイント~日本うつ病学会

 2020年、日本うつ病学会の気分障害の治療ガイドライン検討委員会は、『高齢者のうつ病治療ガイドライン』を作成した。高齢者のうつ病治療ガイドラインは、世界的な専門家の提言や最新のエビデンスに基づいた作成および改訂が行われている。順天堂大学の馬場 元氏らは、高齢者のうつ病治療ガイドラインのポイントについて、報告を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年3月11日号の報告。高齢者のうつ病治療ガイドラインに各種療法の有用性 高齢者のうつ病治療ガイドラインの主なポイントは以下のとおり。・高齢者うつ病の診断では、双極性障害や身体疾患および脳器質性疾患を原因とするうつ症状、薬物治療による症状、認知症と慎重に鑑別し、高齢者うつ病と認知症との併存を判断することが重要となる。・高齢者うつ病の臨床的特徴や心理社会的背景の十分な理解、患者の状態の評価、これらの因子に基づいた基本的な介入を行う必要がある。・抑うつ症状の軽減には、問題解決療法、回想療法/ライフレビュー療法、行動活性化療法、その他の心理療法が有効である。・高齢者うつ病に対する薬物療法に関しては、新規抗うつ薬または非三環系抗うつ薬を用い、初めに最小有効用量を決定することが推奨されている。・治療抵抗性患者に対しては、抗うつ薬の切り替えおよびアリピプラゾール増強療法が使用可能である。・高齢者うつ病に対し、電気けいれん療法および反復経頭蓋磁気刺激療法が有用であることが確認されている。・運動療法、高照度光療法、食事療法は、ある程度の有用性が認められている。

714.

抗精神病薬使用中の患者に対する心電図モニタリングの実践

 急性期および慢性期の精神症状の管理における抗精神病薬の使用は、不整脈による死亡率の増加と関連しているとされるが、心電図(ECG)モニタリングのタイミングや頻度に関するコンセンサスは十分に得られていない。米国・Zucker School of MedicineのLiron Sinvani氏らは、抗精神病薬を使用している成人患者(とくに入院患者)に対するECGモニタリングの現在の実施状況に関して調査を行った。Journal of Psychiatric Practice誌2022年3月3日号の報告。 2010~15年に8施設の医療機関で、入院中に抗精神病薬で治療された成人患者を対象に、マルチサイト・レトロスペクティブ・チャートレビューを実施した。主要アウトカムは、抗精神病薬使用後のECG実施とした。 主な結果は以下のとおり。・調査期間中に抗精神病薬で治療された入院患者数は2万6,353例(平均年齢:61.4歳、女性の割合:50.1%、白人の割合:64.8%)であった。・平均併存疾患スコアは1.4、入院期間の中央値は8.3日であった。・対象患者のうち、入院中にECGを実施した患者は60.6%(1万5,977例)、抗精神病薬使用後にECGを実施した患者は41.2%であった(1万865例)。・ECGのフォローアップを実施した患者の入院期間(中央値:11.3日)は、実施しなかった患者の入院期間(中央値:7.0日)と比較し長かった。・ECGのフォローアップ実施率が高かった患者の特徴は以下のとおりであった。 ●心不全の既往歴(オッズ比[OR]:1.17、95%信頼区間[CI]:1.06~1.30、p=0.002) ●抗精神病薬の多剤併用(OR:1.3、95%CI:1.24~1.36、p<0.001) ●その他のQT間隔延長リスクを有する薬剤の使用(OR:1.09、95%CI:1.07~1.1、p<0.001) ●リスペリドンの使用(OR:1.12、95%CI:1.004~1.25、p=0.04) ●QTcの延長(10ms増加当たりのOR:1.02、95%CI:1.01~1.04、p=0.003)・入院前に抗精神病薬を使用していた患者では、ECGのフォローアップを実施する可能性が低かった(OR:0.93、95%CI:0.87~0.997、p=0.04)。 著者らは「本研究では、抗精神病薬を使用している入院患者に対するECGモニタリングは、十分に行われていない可能性が示唆された。急性期治療環境におけるECGモニタリングにより、最もベネフィットが示される患者を特定するためには、さらなる研究が求められる」としている。

715.

高齢成人のうつ、不安、PTSDに対する性的虐待の影響

 性的暴力は、メンタルヘルスに重大な影響を及ぼすとされる。小児期の性的虐待は、その後の人生における内在化障害と関連しており、高齢の成人においては、性的暴力がこれまで考えられていた以上に多く発生している。後の人生における性的暴力への医療従事者の対応スキルは十分であるとは言えず、生涯(小児期、成人期、老年期)における性的暴力のメンタルヘルスへの影響に関する研究も不十分である。ベルギー・ゲント大学のAnne Nobels氏らは、高齢成人を対象に、性的虐待とメンタルヘルスへの影響について調査を行った。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2022年2月28日号の報告。 2019年7月~2020年3月、ベルギー在住の高齢成人513人を対象に構造化された対面式インタビューを実施した。ランダムウォーク検索アプローチを用いて、クラスターランダム確立サンプリングを行った。うつ病、不安神経症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の評価には検証済みの尺度を用いた。対象者には、生涯および過去12ヵ月間の自殺企図および自傷行為について質問した。性的暴力は、広範な性的暴力の定義に基づくbehaviourally specific questionsを用いて測定した。 主な結果は以下のとおり。・各発症率は、うつ病27%、不安神経症26%、PTSDが6%であり、過去12ヵ月間における自殺企図の割合は2%、自傷行為の割合は1%であった。・生涯における性的暴力の経験は44%以上で認められ、過去12ヵ月間でも8%であった。・生涯における性的暴力は、うつ病(p=0.001)、不安神経症(p=0.001)、慢性疾患を有する(p=0.002)または低学歴である(p<0.001)試験参加者のPTSDと関連が認められた。・生涯における性的暴力と過去12ヵ月間の自殺企図または自傷行為との間に関連は認められなかった。 著者らは「生涯における性的暴力は、後の人生におけるメンタルヘルスの問題と関連しており、性的暴力歴を有する高齢成人に個別に対応したメンタルヘルスケアが求められる。そのためには、専門家への教育促進や臨床ガイドラインの開発、ケア手順の策定が重要である」としている。

716.

統合失調症患者の慢性期うつ病と臨床アウトカムとの関連

 統合失調症患者のうつ症状は、臨床アウトカムに影響を及ぼす重要な症状である。岡山大学のYuto Yamada氏らは、統合失調症患者の慢性的なうつ症状や自殺関連症状が将来の臨床アウトカムと関連しているか、向精神薬使用により臨床アウトカムの改善が認められるかについて、検討を行った。Psychopharmacology誌2022年3月号の報告。統合失調症のうつ症状に対する炭酸リチウム使用は男性で良好な臨床アウトカム 対象は、2010~11年に岡山大学病院で治療を受けた15~64歳の統合失調症の外来患者462例。最終来院時(平均年齢19.2歳)での臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアと過去のうつ症状、自殺念慮、自殺企図との関連を調査した。病歴を含む複数の交絡因子による調整には、重回帰分析およびロジスティック回帰分析を用いた。 統合失調症のうつ症状や自殺関連症状と臨床アウトカムとの関連を検討した主な結果は以下のとおり。・462例中168例(36.4%)において、統合失調症発症から2年間でうつ症状が認められた。・自殺念慮歴および自殺企図歴は、臨床アウトカム悪化と関連していた。・うつ症状歴と臨床アウトカム悪化との関連は、男性では認められたが、女性では認められなかった。・統合失調症患者のうつ症状に対する炭酸リチウムの使用は、とくに男性において良好な臨床アウトカムと関連していた。・抗うつ薬治療は、男性のみで良好な臨床アウトカムとの関連が認められた。 著者らは「統合失調症患者において、慢性的なうつ症状または過去の自殺関連症状は、将来の臨床アウトカム悪化との関連が認められた。とくに男性患者において、炭酸リチウムまたは抗うつ薬の使用は推奨される可能性が示唆された」としている。

717.

第2世代抗精神病薬に関連する体重増加と併存疾患

 多くの第2世代抗精神病薬(SGA)は、体重増加や心血管代謝系の副作用の発現と関連している。抗精神病薬関連の体重増加は治療中断と関連しており、再発や入院のリスクを高める可能性がある。米国・AlkermesのMichael J. Doane氏らは、経口SGAによる治療を開始した統合失調症または双極I型障害で、中程度から重度の体重増加リスクを有する患者における臨床的に有意な体重増加、治療中断、心血管代謝系副作用の発症について評価した。BMC Psychiatry誌2022年2月14日号の報告。 患者レベルのレセプトデータおよび電気カルテデータ(2013年1月~2020年2月のOM1 Real-World Data Cloud)より、中程度から重度の体重増加リスクを有する経口SGAの使用経験のない患者を抽出した。SGAを開始する12ヵ月前と3ヵ月後の両方の時点で1回以上の体重測定を行った患者を対象に、体重の継続的な変化、臨床的に有意な体重増加(ベースラインから7%以上および10%以上の増加)、治療中断(切り替え、中止)、心血管代謝系副作用の発症について分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者8,174例および双極I型障害患者9,142例のコホートにおけるフォローアップ期間の中央値は、それぞれ153.4週間および159.4週間であり、ベースライン時の肥満の割合は、それぞれ45.5%、50.7%であった。・SGA治療中の体重増加率は、統合失調症患者で3.3±7.2%、双極I型障害患者で3.7±7.0%であった。体重増加率は、低体重/正常体重の患者で最も高かった(統合失調症患者:4.8±8.1%、双極I型障害患者:5.5±8.7%)。・フォローアップ期間中に治療中断(主に中止)に至った患者は96%以上であった。・臨床的に有意な体重増加と治療中断は、それぞれ治療開始後13週以内、14週以内に認められた(中央値)。・臨床的に有意な体重増加と治療中断が認められた患者の約75%は、フォローアップ期間中にベースライン時の体重に戻らなかった。・ベースライン時に心血管代謝系の異常が認められなかった患者のうち、統合失調症患者の14.7%、双極I型障害患者の11.3%は、SGA治療開始12ヵ月以内に1つ以上の異常が発現していた。発現率は、ベースライン時の過体重/肥満患者、臨床的に有意な体重増加を発現した患者で高かった。 著者らは「統合失調症または双極I型障害患者では、SGA治療初期に体重増加や治療中断が認められることが、リアルワールドデータより示唆された。初期治療薬を切り替えまたは中止した場合でも、治療に伴う体重増加の改善は認められなかった。また、心血管代謝系副作用の発現率は、治療開始12ヵ月以内で増加していた。統合失調症または双極I型障害患者は、心血管代謝系の異常リスクが一般集団よりも高く、SGAに関連する体重増加は、これらのリスクを悪化させる可能性がある」としている。

718.

抗うつ薬の漸減・中止に関する診療ガイドラインの推奨~システマティックレビュー

 抗うつ薬の漸減や中止は、うつ病患者のマネジメントを行ううえで重要であり、診療ガイドラインを考慮して進める必要がある。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のAnders Sorensen氏らは、うつ病に関する主要な診療ガイドラインにおける抗うつ薬の漸減および中止に関するガイダンスの内容や質を評価するため、システマティックレビューを行った。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2022年2月11日号の報告。抗うつ薬中止、いずれの診療ガイドラインも治療アルゴリズムに包含せず 英国、米国、カナダ、オーストラリア、シンガポール、アイルランド、ニュージーランドの保健当局および主要な国家的または国際的な専門機関より発行された、うつ病に関する診療ガイドラインをシステマティックにレビューした。2021年5月25日までにPubMed、14件のガイドラインレジストリおよび関連団体のウェブサイトを検索し、診療ガイドラインの抗うつ薬の漸減および中止に関連する推奨事項について評価した。抗うつ薬の漸減および中止に関する診療ガイドラインの質の評価ツールとして、AGREE IIを用いた。 診療ガイドラインの抗うつ薬の漸減および中止に関連する推奨事項について評価した主な結果は以下のとおり。・21件の診療ガイドラインのうち15件(71%)において、抗うつ薬の漸減は徐々に、またはゆっくりと行うことが推奨されていた。しかし、減量、離脱症状と再発を鑑別する方法、離脱症状のマネジメント方法についてのガイダンスは示されていなかった。・心理的課題については、いずれの診療ガイドラインにおいても取り扱われておらず、治療アルゴリズムおよびフローチャートは、抗うつ薬の中止について包含していなかった。・診療ガイドラインの質は、全体的に低かった。 著者らは「現在、抗うつ薬の中止または漸減に関して、離脱症状の軽減やマネジメントの観点から記載している主要な診療ガイドラインは見当たらなかった。そのため、診療ガイドラインに従った抗うつ薬の漸減および中止により症状が悪化した患者を、再発と結論付けることはできなかった。より良いガイダンスを作成するためにも、抗うつ薬の漸減および中止のための介入を調査するランダム化比較試験が必要とされる」としている。

719.

うつ病の早期寛解の予測因子

 抗うつ薬による治療反応は、患者ごとに大きく異なり、治療前に予測することは困難である。NTT西日本九州健康管理センタの阿竹 聖和氏らは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)およびミルタザピンの治療反応と相関するサイトカイン、これらサイトカインが各抗うつ薬治療による寛解の予測因子となりうるかについて、調査を行った。The World Journal of Biological Psychiatry誌オンライン版2022年3月9日号の報告。 抗うつ薬治療前の患者95例を対象に、酵素結合免疫吸着測定法を用いて、腫瘍壊死因子(TNF-α)、インターロイキン(IL)-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の分析を行った。うつ症状の評価は、ハミルトンうつ病評価尺度を用いて4週間調査した。 主な結果は以下のとおり。・SSRI治療群では、非寛解者よりも寛解者において、ベースライン時のGM-CSFレベルが有意に高かった(p=0.022)。・ミルタザピン治療群では、非寛解者よりも寛解者において、ベースライン時のTNF-αレベルが有意に高く(p=0.39)、IL-2レベルは有意に低かった(p=0.32)。・ミルタザピン治療群では、ROC曲線で算出されたTNF-α(10.035 pg/mL)およびIL-2(1.170 pg/mL)のカットオフ値が寛解率を予測する因子であることが示唆され、寛解率はそれぞれ31.3%から60.0%および50.0%に増加することが推定された。・SSRI治療群では、GM-CSF(0.205 pg/mL)をカットオフ値として用いることで、寛解率が37.0%から70%と約2倍に増加することが推定された。 著者らは「抗うつ薬治療前のTNF-α、IL-2、GM-CSFの血漿濃度は、SSRIまたはミルタザピンによる寛解率を予測する因子である可能性が示唆された」としている。

720.

統合失調症と双極性障害患者における脳容積の違い

 統合失調症と双極性障害は、重複するポリジーン構造や臨床的類似性が認められるものの、臨床的には非類似の特性を有する別疾患である。両疾患において、皮質下容積の特定の違い、皮質下の違いによる臨床的特徴への影響については、不明なままである。岐阜大学の大井 一高氏らは、統合失調症患者、双極性障害患者、健康対照者における皮質下容積の違いについて検討を行った。また、統合失調症と双極性障害の患者における特定の皮質下容積に対する臨床的特徴への影響についても、併せて調査した。Journal of Psychiatry & Neuroscience誌2022年3月1日号の報告。 単一施設の単一スキャナを用いて、対象患者413例(統合失調症:157例、双極性障害:51例、健康対照:205例)より、3T MRIにおけるT1強調画像を収集した。T1強調画像の処理、皮質下脳容積をセグメント化するため、FreeSurfer ver. 6.0を用いた。7つの皮質下領域(視床、尾状核、被殻、淡蒼球、海馬、扁桃体、側坐核)の違いについて、群間比較を行った。また、統合失調症と双極性障害の患者における皮質下容積と臨床的特徴との相関についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・7つの皮質下領域のうち、統合失調症患者は健康対照者と比較し、左側視床(Cohen d=-0.29、p=0.00583)、両側海馬(左側Cohen d=-0.36、p=0.000885)(右側Cohen d=-0.41、p=0.000115)、左側扁桃体(Cohen d=-0.31、p=0.00402)の容積が有意に小さかった。・双極性障害患者は健康対照者と比較し、両側海馬(左側Cohen d=-0.52、p=0.00112)(右側Cohen d=-0.58、p=0.000030)の容積のみが有意に小さかった。・統合失調症患者は双極性障害患者と比較し、両側扁桃体(左側Cohen d=-0.43、p=0.00422)(右側Cohen d=-0.45、p=0.00456)の容積が有意に小さかった。・統合失調症患者の左側扁桃体容積の小ささは、より若年での発症と有意な相関が認められた(r=0.22、p=0.00578)。・本研究では、双極性障害患者のサンプルが限られていたため、同疾患の臨床サブタイプや症状エピソード歴に基づいた層別化による皮質下容積の違いを評価することができなかった。 著者らは「臨床的に類似した統合失調症と双極性障害を鑑別するうえで、扁桃体容積の違いが推定バイオマーカーとなりうる可能性が示唆された」としている。

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