富とうつ病との関係

提供元:ケアネット

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公開日:2022/03/03

 

 うつ病と収入との関係については、逆相関が認められるといわれている。しかし、富とうつ病との関連はあまりわかっていない。米国・ボストン大学のCatherine K. Ettman氏らは、富とうつ病との関係についてこれまでの文献から何がわかっているかについて調査するため、スコーピングレビューを実施した。Brain and Behavior誌オンライン版2022年2月8日号の報告。

 2020年7月19日までの報告を、Medline(PubMed経由)、Embase、PsycINFO、PsycArticles、EconLit、SocINDEXより検索した。抽出された96文献をレビューした。文献の主な特徴は、発行年、サンプルサイズ国、研究デザイン、うつ病の定義、富の定義、富とうつ病の関係であった。詳細なチャートレビューには、32の縦断研究を含めた。

 主な結果は以下のとおり。

・うつ病の定義は、全体的に比較的標準的な方法で行われていた。
・一方、富の定義と測定は、研究により大きく異なっていた。
・フルレビュー研究の多く(56件、58%)および縦断チャートレビュー研究の半数(16件、50%)は、富とうつ病との関係に逆相関が認められると報告していた。
・縦断チャートレビューにおいて、以下の影響が示唆された。
(1)マクロ経済のイベントがうつ病に影響
(2)富の状態は、ライフコース全体のうつ病に影響
(3)失業などのストレスに直面した際の、富のうつ病保護作用
(4)富の認識、相対的な比較、社会的地位などの主観的または心理社会学的因子が、富とうつ病との関係を変化
(5)貯蓄は状況により異なるが、うつ病の軽減が期待

 著者らは「これらの調査結果より、メンタルヘルスに関する検討などを行う上で、富を考慮するべきであることが示唆された」としている。

(鷹野 敦夫)