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抗うつ薬治療抵抗性うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法~国内第II/III相ランダム化比較試験

 抗うつ薬への治療反応が不十分であることは、効果的なうつ病治療の妨げとなる。関西医科大学の加藤 正樹氏らは、抗うつ薬治療で効果不十分な日本人うつ病患者を対象に、ブレクスピプラゾール補助療法の投与量、有効性、安全性を評価するため、国内第II/III相ランダム化比較試験であるBLESS試験を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年11月7日号の報告。 BLESS試験は、8週間の単盲検期間では抗うつ薬治療で効果不十分であった日本人治療抵抗性うつ病患者を対象としたプラセボ対照ランダム化多施設共同並行群間第II/III相試験である。SSRI/SNRI治療で効果不十分なうつ病患者を対象に、6週間のブレクスピプラゾール1mg、2mgまたはプラセボの補助療法を行う群にランダムに割り付けられた。治療抵抗性うつ病患者の定義は、1~3の抗うつ薬治療では、ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD-17)合計スコア14以上と効果不十分であった患者とした。主要エンドポイントは、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアのベースラインからの変化とした。副次的エンドポイントは、MADRSによる治療反応、寛解率、臨床全般印象度の改善度(CGI-I)スコアとした。安全性は、とくに抗精神病薬の有害事象に関して包括的に評価した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニング対象患者1,194例中740例をランダム化した。・ベースライン時およびベースライン後のMADRS合計スコアは、1以上であった。・対象患者の内訳は、ブレクスピプラゾール1mg群248例、ブレクスピプラゾール2mg群245例、プラセボ群243例であった。・MMRM分析では、6週目のMADRS合計スコアのベースラインからのLSM(SE)変化は、ブレクスピプラゾール1mg群で-8.5±0.47(調整済み対プラセボ群変化量の差:-1.7、95%信頼区間[CI]:-3.0~-0.4、p=0.0089)、ブレクスピプラゾール2mg群で-8.2±0.47(同:-1.4、95%CI:-2.7~-0.1、p=0.0312)、プラセボ群で-6.7±0.47であった。・副次的有効性の結果は、主要エンドポイントを裏付けていた。・ブレクスピプラゾール補助療法の忍容性は、良好であった。 著者らは「抗うつ薬治療で効果不十分な日本人治療抵抗性うつ病患者に対するブレクスピプラゾール補助療法は、1mg/日および2mg/日のいずれも有用であり、忍容性も良好であり、ブレクスピプラゾール補助療法における開始用量は、1mg/日が適切であることが示唆された」としている。

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統合失調症患者に対する心血管リスク最適化プログラム

 心血管疾患は、統合失調症患者の早期死亡の主な原因の1つである。関連する修正可能なリスク因子には、不健全なライフスタイル、薬剤性副作用、身体的併存疾患などが含まれる。スペイン・ビック大学のNuria Riera-Molist氏らは、統合失調症患者の心血管リスク(CVR)低下のための6ヵ月間にわたる多因子CVR介入の有効性を評価する目的で本研究を実施した。その結果、患者中心の多因子CVR介入は統合失調症患者の6ヵ月後のCVRを改善し、それは主に脂質プロファイルの改善によりもたらされていたという。Journal of Psychiatric Practice誌2023年11月1日号の報告。 地域の精神保健センターにおいて、2群間並行ランダム化臨床試験を実施した。1つ以上のCVR因子(高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙)のマネジメントが不十分な統合失調症患者46例を、介入群または対照群にランダムに割り付けた。介入群では、健康的なライフスタイルの促進、CVR因子の薬理学的管理、向精神薬の最適化、動機付けフォローアップなどの患者中心のアプローチ(心血管リスク最適化プログラム[Programa d'optimitzacio del RISc CArdiovascular:PRISCA])を行った。主要アウトカムは、両群のベースライン時と比較した6ヵ月後のCVRの変化とし、Framingham-REGICOR関数を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、介入群23例、対照群23例にランダムに割り付けられた。・ベースライン時に最も高頻度で認められたCVR因子は、高コレステロール血症(84.8%)であり、次いで喫煙(39.1%)であった。・介入群では、6ヵ月後のREGICORスコアの有意な低下が認められたが(相対リスクの低減率:20.9%)、対照群では有意な変化が認められなかった。 【介入群】REGICORスコア:-0.96%、95%信頼区間(CI):-1.60~-0.32、p=0.011 【対象群】REGICORスコア:0.21%、95%CI:-0.47~0.89、p=0.706・介入群では、LDLコレステロールの有意な低下も確認された(-27.14mg/dL、95%CI:-46.28~-8.00、p=0.008)。

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精神科医の統合失調症薬物治療ガイドライン順守と患者の労働時間

 統合失調症は社会的機能不全を伴う精神障害であり、患者の労働時間の短縮などさまざまな課題を引き起こす。国立精神・神経医療研究センターの伊藤 颯姫氏らは、精神科医のガイドライン順守と統合失調症患者の労働時間との関連を調査した。統合失調症の薬物治療ガイドラインを精神科医がどの程度順守しているかを測定するため、本研究の研究者らは患者ごとの精神科医のアドヒアランスに関する治療適合度(individual fitness score:IFS)を最近開発した。しかし、精神科医のアドヒアランス向上が、労働時間などの患者の社会的機能アウトカムの改善にどの程度関連しているかは、依然としてよくわかっていなかった。Schizophrenia (Heidelberg, Germany)誌2023年11月7日号の報告。 自身が治療中の統合失調症患者に対する精神科医の統合失調症薬物治療ガイドライン順守と、同患者の労働時間との関連を評価するため、研究者らは統合失調症患者286例を対象に、IFSと社会的活動評価を用いてデータを収集し、IFS値と労働時間との相関関係を調査した。 主な結果は以下のとおり。・精神科医のガイドライン順守は、統合失調症患者の労働時間との有意かつ正の相関を示した(rho=0.18、p=0.00215)。・患者を治療抵抗性統合失調症(TRS)群(40例)と非TRS群(246例)に分類した場合、TRS群の多くで労働時間の短縮が認められた(1週間当たり0~15時間)。・TRS患者を除外した後でも、非TRS患者における精神科医のガイドライン順守と患者の労働時間との間には正の相関が認められ、依然として有意なままであった(rho=0.19、p=0.00332)。・ガイドラインで推奨されている薬物治療が実施されていた患者では、より長い労働時間が認められた。 結果を踏まえ、著者らは「統合失調症患者の機能的アウトカムを改善するためには、精神科医に対する広範な教育およびトレーニングが必要である可能性が示唆された」とまとめている。

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女性統合失調症に対する治療~エビデンスに基づく推奨事項

 性差は、抗精神病薬の有効性や忍容性に大きな影響を及ぼすことが示唆されているにもかかわらず、現在の統合失調症スペクトラム障害(SDD)の治療ガイドラインでは、男女間の区別は行われていない。オランダ・フローニンゲン大学のBodyl A. Brand氏らは、女性に対する薬物療法の改善に寄与する可能性のある戦略について、入手可能なエビデンスを要約し、女性統合失調症患者の治療を最適化するためのエビデンスに基づいた推奨事項を報告した。Current Psychiatry Reports誌オンライン版2023年10月21日号の報告。 次の3つのトピックスに関する査読済みの研究をPubMed、Embaseよりシステマティックに検索した。トピックスは、(1)用量調節した抗精神病薬の血中濃度に関する性差、(2)症状の重症度を改善するためのエストロゲンおよびエストロゲン様化合物によるホルモン増強療法、(3)抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症を軽減するための戦略とした。 主な結果は以下のとおり。・データベース研究3件、ランダム化比較試験(RCT)1件に基づくと、ほとんどの抗精神病薬は、男性と比較し、女性において用量調節濃度が高かった。・クエチアピンは、とくに高齢女性で高濃度であった。・最近の2つのメタ解析に基づくと、エストロゲンおよびラロキシフェンにおいて全体的な症状改善が認められた。・閉経後女性におけるラロキシフェン増強療法に関する最も一貫した所見が確認された。・症状に対するエストロゲン性避妊薬の効果を評価した研究は見当たらなかった。・メタ解析2件、RCT1件に基づくと、抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症を軽減するための研究として、アリピプラゾール補助療法が最も研究されており、最も安全な戦略であることが示唆された。 女性SSDに対する薬物療法について、エビデンスに基づく推奨事項は次のとおりであった。 (1)治療薬のモニタリングに基づく女性特有の抗精神病薬の投与量 (2)閉経後の女性におけるラロキシフェンによるホルモン増強療法 (3)抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症に際するアリピプラゾール補助療法 著者らは「これらの戦略を組み合わせることで、女性SSD患者の副作用を軽減し、アウトカムを改善できる可能性がある」とし、「これらの効果を今後の縦断的RCTで明らかにしていく必要がある」とまとめている。

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持続性うつ病と関連する要因

 うつ病は、再発・再燃を繰り返す慢性疾患である。うつ病の症状慢性化や双極性障害への診断変化を予測するためにも、患者背景を理解することは、臨床上重要である。関西医科大学の越川 陽介氏らは、持続性うつ病、再発、双極性障害への診断変化と関連する臨床的および社会人口学的特徴を特定するため、本研究を実施した。Heliyon誌2023年10月13日号の報告。 対象は、2年間のフォローアップ調査を伴う6週間のランダム化比較試験に登録されたうつ病患者197例。多重ロジスティック回帰分析を用いて、持続性うつ病(PDD)、再発、双極性障害への診断変化と関連する臨床的および社会人口学的特徴を分析した。 主な結果は以下のとおり。・PDDと有意な関連が認められた因子は、洞察力を含む残存症状、仕事およびアクティビティ、一般的な身体症状であった。・再発または双極性障害への診断変化に影響を及ぼす因子は、特定できなかった。・急性期治療で特定の残存症状が認められる患者では、うつ病の長期治療成績に影響する可能性が示唆された。・本研究の限界として、治療中止に至った患者の中には、PDDが残存している可能性がある、研究期間中に治療が標準化されていないアドヒアランスの確認が聴取により行われている点が挙げられる。 結果を踏まえ、著者らは「うつ病治療の初期段階では、残存症状に注意し、改善策を検討する必要がある」としている。

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統合失調症患者における抗精神病薬誘発性糖尿病性ケトアシドーシスのリスク評価~医薬品副作用データベース解析

 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は、生命を脅かす重篤な状態であり、抗精神病薬により引き起こされる可能性がある。アジア人糖尿病患者は、白人と比較し、インスリン抵抗性が低いといわれている。これまでに報告されている抗精神病薬に関連したDKAの研究は、すべて欧米人を対象としているため、これらのデータが日本人でも同様なのかは、不明である。獨協医科大学の菅原 典夫氏らは、自発報告システムデータベースである日本の医薬品副作用データベースを用いて、抗精神病薬とDKAとの関連を分析した。その結果から、統合失調症患者のDKA発現にはオランザピン治療が関連していることが明らかとなった。とくに、男性患者において、DKAリスクが高いことも確認された。Journal of Psychosomatic Research誌オンライン版2023年10月19日号の報告。 2004年4月~2021年3月に独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出された有害事象報告書を用いて、レトロスペクティブにファーマコビジランスの不均衡分析を行った。対象集団は統合失調症患者7,435例であり、抗精神病薬に関連したDKAの報告は合計55件であった。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者のDKA症例55例のうち、DKA後の死亡した患者は3例(6%)であった。・DKAの兆候は、オランザピン治療後に報告されており、調整後報告オッズ比は有意であった(aROR:3.26、95%信頼区間[CI]:1.87~5.66)。・準選択法を用いた多変量ロジスティック回帰分析では、オランザピン治療症例1,399例において、DKA発現と関連していた因子は、男性であることだった(aROR:2.72、95%CI:1.07~6.90)。 結果を踏まえ、著者らは「本データは、統合失調症患者の抗精神病薬に関連するDKA発現を減少させるために、リスク管理やモニタリングに役立つであろう」としている。

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日本人統合失調症患者の院内死亡率と心血管治療との関連性

 統合失調症は、心血管疾患(CVD)リスクと関連しており、統合失調症患者では、CVDに対する次善治療が必要となるケースも少なくない。しかし、心不全(HF)により入院した統合失調症患者の院内予後およびケアの質に関する情報は限られている。京都府立医科大学の西 真宏氏らは、統合失調症患者の院内死亡率および心不全で入院した患者の心血管治療との関連を調査した。その結果から、統合失調症は心不全により入院した非高齢患者において院内死亡のリスク因子であり、統合失調症患者に対する心血管治療薬の処方率が低いことが明らかとなった。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌2023年10月18日号の報告。 日本全国の心血管登録データを用いて、2012~19年に心不全により入院した患者70万4,193例を対象に、年齢別に層別化を行った。18~45歳の若年群2万289例、45~65歳の中年群11万4,947例、65~85歳の高齢群56万8,957例に分類した。すべての原因による死亡率、30日間の院内死亡率、心血管治療薬の処方について評価を行った。欠損データを複数回代入した後、混合効果多変量ロジスティック回帰分析を用いて分析した。ランダム効果の変数として、病院識別コードを有する患者と病院の特性を用いた。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は、入院期間が長期化し、入院費用が高額になる可能性が高かった。・非高齢者群における統合失調症患者の院内死亡率は、非統合失調症患者と比較し、有意に不良であった。 【対若年群死亡率】7.6% vs. 3.5%、調整オッズ比(aOR):1.96、95%信頼区間(CI):1.24~3.10、p=0.0037 【対中年群死亡率】6.2% vs. 4.0%、aOR:1.49、95%CI:1.17~1.88、p<0.001・30日以内の院内死亡率は、中年群で有意に不良であった(4.7% vs. 3.0%、aOR:1.40、95%CI:1.07~1.83、p=0.012)。・高齢群の院内死亡率は、統合失調症の有無にかかわらず同程度であった。・β遮断薬およびACE阻害薬、ARB処方は、すべての年齢層の統合失調症患者で有意に低かった。 結果を踏まえ、著者らは「重度の精神疾患を有する患者では、心不全に対する十分なケアやマネジメントが必要である」としている。

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小児・青年のうつ病に有用な運動介入とは~メタ解析

 中国・浙江師範大学のJiayu Li氏らは、小児および青年の抑うつ症状に対するさまざまな運動介入効果について評価を行った。その結果、運動介入は、小児および青年の抑うつ症状を有意に改善することが明らかとなった。とくに、有酸素運動が効果的であり、週3回、40~50分の運動介入を12週間行うとさらに有効であることが示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年10月11日号の報告。 2023年5月までに公表されたランダム化比較試験(RCT)を4つのデータベースで検索した。バイアスリスクの評価には、Cochrane collaboration toolを用いた。ペアワイズメタ解析、ネットワークメタ解析には、Stata 16.0ソフトウェアを用いた。 主な結果は以下のとおり。・RCT35件、5,393例を分析に含めた。・抑うつ症状に対し最も有意な効果が認められた運動介入は、有酸素運動(66.2%)であり、次いで集団トレーニング(62.5%)、レジスタンスエクササイズ(59.0%)、有酸素運動とレジスタンスエクササイズの併用(57.9%)であった。・15歳未満では、抑うつ症状の有意な改善が認められた(標準化平均差[SMD]:-0.41、95%信頼区間[CI]:-0.63~-0.19、p<0.01)。・健康者(SMD:-0.25、95%CI:-0.41~-0.08、p<0.01)、肥満者(SMD:-0.15、95%CI:-0.31~-0.00、p<0.01)、うつ病患者(SMD:-0.75、95%CI:-1.32~-0.19、p<0.01)のいずれにおいても、抑うつ症状の有意な改善が認められた。・30分の運動介入において有意な効果が認められ(SMD:-0.14、95%CI:-0.81~-0.01、p<0.01)、40~50分の運動介入が最も効果的であった(SMD:-0.17、95%CI:-0.33~-0.02、p<0.01)。・運動介入の頻度は、週3回で有意な効果が認められた(SMD:-0.42、95%CI:-0.66~-0.18、p<0.01)。

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抗精神病薬関連の流涎症に対する薬理学的介入~メタ解析

 抗精神病薬に関連する流涎症は大きな問題の1つであるが、エビデンスベースの治療ガイダンスは不十分である。イタリア・フェデリコ2世ナポリ大学のMichele Fornaro氏らは、抗精神病薬関連の流涎症に対する薬理学的介入について、ネットワークメタ解析を実施した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年10月11日号の報告。 成人患者を対象とした抗精神病薬誘発性流涎症に関するRCT研究(公開/非公開)をPubMed Central、PsycInfo、Cochrane Central database、Clinicaltrials.gov、WHO-ICTRP、中国電子ジャーナルデータベース(Qikan.cqvip.com)で検索した(2023年6月12日まで)。グローバル/ローカルでの不一致、出版バイアス、バイアスリスク(RoB2)、エビデンスの確実性を評価するため、サブグループ/感度分析を行った。主要有効性アウトカムは、唾液産生の変化(標準化平均差:SMD)、研究で定義された治療反応(リスク比:RR)とした。忍容性アウトカムは、すべての原因による中止(RR)をした。薬剤ごとに評価し、作用機序の評価は副次的なものとした。 主な結果は以下のとおり。・34件のRCTをシステマティックにレビューし、33件(1,958例)をネットワークメタ解析に含めた。・すべての介入は、精神疾患患者のクロザピン誘発性流涎症に対する介入であった。・プラセボと比較し、治療反応が良好であった薬剤は以下のとおりであった。 ●メトクロプラミド(RR:3.11、95%信頼区間[CI]:1.39~6.98) ●シプロヘプタジン(RR:2.76、95%CI:2.00~3.82) ●スルピリド(RR:2.49、95%CI:1.65~3.77) ●プロパンテリン(RR:2.39、95%CI:1.97~2.90) ●ジフェンヒドラミン(RR:2.32、95%CI:1.88~2.86) ●benzhexol(RR:2.32、95%CI:1.59~3.38) ●doxepin(RR:2.30、95%CI:1.85~2.88) ●amisulpride(RR:2.23、95%CI:1.30~3.81) ●クロルフェニラミン(RR:2.20、95%CI:1.67~2.89) ●アミトリプチリン(RR:2.09、95%CI:1.34~3.26) ●アトロピン(RR:2.03、95%CI:1.22~3.38) ●astemizole(RR:1.70、95%CI:1.28~2.26)・作用機序別の評価では(28研究、1,821例)、抗ムスカリン薬(RR:2.26、95%CI:1.91~2.68)、ベンズアミド(RR:2.23、95%CI:1.75~3.10)、三環系抗うつ薬(RR:2.23、95%CI:1.83~2.72)、抗ヒスタミン薬(RR:2.18、95%CI:1.83~2.59)は、プラセボよりも良好であった。・直接比較では、astemizoleとイプラトロピウムは、いくつかの介入において良好な成績が認められた。・作用機序別の継続的な有効性は、ベンズアミドを除き、プラセボよりも良好であった。・夜間流涎症に関して、ベンズアミド、アトロピンは、プラセボよりも良好な結果は認められなかった。・便秘または眠気は、プラセボと比較し有意な差は認められなかった。

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「糖尿病スティグマ」に興味を持った患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第42回

■外来NGワード「合併症にならないように、もっと食事に気を付けないと」(患者の気持ちに寄り添わず、食事制限を指示)「職場で回ってきたおやつは食べないように!」(職場環境を無視)■解説最近、「スティグマ」(社会的偏見による差別)という言葉をよく耳にします。「スティグマ」(stigma)の語源は、ギリシャ語の奴隷や犯罪者などに付けていた肉体上の「印」のことです。現在では、差別や偏見などネガティブな意味での烙印の意味で用いられています。社会における糖尿病に対する知識不足や誤ったイメージから、糖尿病を持つ人はさまざまなスティグマにさらされています。たとえば、糖尿病では生命保険の加入や就職の際に社会的スティグマを経験することがあります。糖尿病の人は「甘いものを食べてはいけない」と勘違いされ、人前では食べない人もいます。糖尿病であることを受け止められずに、重荷に感じ、職場や友人に糖尿病であることを打ち明けられずにいることもあります。そうすると、職場で回ってくるおやつを食べたり、逆に、会食や交流を避け、他人から距離をとるようになるという自己スティグマ状態に陥り、自尊心がだんだん低下してくる人もいます。そのまま、スティグマを放置していると、社会生活の中で不利益を被るだけでなく、前向きに治療に向かうことができなくなります。日本では2002年に日本精神神経学会が、差別的な意味合いが包含されているとして「精神分裂病」という病名を「統合失調症」という病名に変更しました 。現在、日本糖尿病学会や日本糖尿病協会では「糖尿病」という名称を変えることが検討されています。■患者さんとの会話でロールプレイ医師血糖値がなかなか落ち着きませんね…。患者はい。実は…自分が糖尿病であることが職場で言えなくて…。医師なるほど。言えないと、いろいろな不便がありますよね…。患者そうなんです。職場でおやつが回ってきて、断ることができなくて、つい食べてしまったり…。医師確かに、断りにくいですよね。(共感)患者そうなんです。会食なんかも億劫で…、何か理由を付けて断ったり…。医師なるほど。それは困りましたね。患者そうなんです。なかなか、自分から言えなくて…。医師確かに。今では糖尿病の人の平均余命は日本人の平均余命とほぼ同じですし、糖尿病治療によって心筋梗塞や脳梗塞などの合併症は減っていますからね。患者えっ、そうなんですか。糖尿病は早死にする病気かと思っていました。医師いえ、そうではありませんよ。ただ、糖尿病であろうがなかろうが、健康的な食事にした方がいいですよね。「一病息災」ではないですが、血糖が高いと言われたことをきっかけに、健康的な食事にされる方も多いですからね。「糖尿病だからではなくて、健康のために…」と言って、食べたくないおやつを断ったりされてはいかがでしょう。それに、我慢だけでなく、たまには羽目を外されるのもいいと思いますよ。患者そう言われると、少し心が軽くなってきました。ありがとうございます。(嬉しそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「糖尿病があろうがなかろうが、健康的な食事にした方がいいですよね」 1)Kato A, et al. PEC Innov.2)Hamano S, et al. J Diabetes Investig. 2023;14:479-485.

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統合失調症患者のアルコール使用と自殺関連アウトカム~メタ解析

 自殺は統合失調症患者における不自然死の主な原因である。アルコール使用は統合失調症患者の併存疾患として一般的に認められ、自殺に対する修正可能なリスク因子である。英国・マンチェスター大学のLee D. Mulligan氏らは、統合失調症患者におけるアルコール使用と自殺関連アウトカムとの関係を定量的に調査するため、プロスペクティブ研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、統合失調症患者においてアルコール使用は、自殺関連アウトカムと大きく関連していることが示された。Psychological Medicine誌オンライン版2023年10月11日号の報告。 データベース(Medline、Embase、PsycINFO)より、2022年12月までに公表された横断的研究、症例対照研究、縦断的研究を、網羅的なキーワードを用いて検索した。オッズ比(OR)およびハザード比(HR)の算出には、DerSimonian-Laird法の推定による変量効果モデルを用いた。出版バイアス、研究の質の評価も行い、サブグループ解析およびメタ回帰を実施した。 主な結果は以下のとおり。・65サンプルで構成された50研究が適格基準を満たした。・全体として、統合失調症患者におけるアルコール使用は、自殺(OR:1.38[95%信頼区間[CI]:1.21~1.58]、HR:1.32[95%CI:1.00~1.74])、自殺企図(OR:1.69[95%CI:1.45~1.98])、自殺念慮(OR:1.69[95%CI:1.22~2.34])との関連が認められた。・出版バイアスは認められなかったが、自殺企図(I2=39.6%、p=0.01)および自殺念慮(I2=56.0%、p=0.01)の分析では、サンプル間の不均一性が中程度認められた。・サマリーエフェクトは、自殺企図に関する縦断的研究(OR:1.60、95%CI:0.86~3.00)および男女混合サンプルを用いた自殺念慮の研究(OR:1.63、95%CI:0.99~2.67)を除くすべてのサブグループで有意であった。 結果を踏まえて著者らは、「臨床医は、自殺予防の取り組みに焦点を当てるため、メンタルヘルスサービスにおいてアルコール使用を定期的に確認する必要がある」と述べている。

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抗精神病薬の推奨用量のコンセンサス、最も高い製剤は~ICSAD-2

 専門家のコンセンサスに基づいた臨床的に同等の推定用量や推奨用量は、臨床診療および研究において、精神疾患に対する薬物治療をサポートする貴重な情報となりうる。カナダ・ダルハウジー大学のMatthew Kt McAdam氏らは、精神疾患に対する新規薬剤と過去に報告されているコンセンサスの低い薬剤について、用量の同等性と推奨用量の確立および更新を目的に、第2回となる抗精神病薬投与に関する国際的なコンセンサス確立のための研究「Second International Consensus Study of Antipsychotic Dosing:ICSAD-2」を行った。Journal of Psychopharmacology誌2023年10月号の報告。 2段階のデルファイ調査プロセスを用いて、26製剤に関する臨床専門家および研究専門家の幅広い国際サンプルにおけるコンセンサスの確立および更新を行い、統合失調症治療の推奨用量および臨床的に同等の推定用量を検討した。等価用量推定の参照薬剤は、経口剤15種類および長時間作用型注射剤(LAI)7種類に対してはオランザピン経口剤20mg/日、短時間作用型注射剤(SAI)4種類に対してはハロペリドール筋注5mgとした。精神疾患に対する経口剤44種類、LAI 16種類、SAI 14種類についても、同等の推定用量および推奨用量の最新リストへの更新を行った。 主な結果は以下のとおり。・24ヵ国の調査参加者72人が、経口剤、LAI、SAIの同等の推定用量および推奨用量を提供した。調査の1段階から2段階にかけて、コンセンサスは向上した。・最終的なコンセンサスは、LAIで最も高く、経口剤は中程度、SAIは最も低かった。 著者らは「精神疾患に対する抗精神病薬の投与量を最適化するためのランダム化対照試験(フィックスドーズ、マルチプルドーズ)は依然としてまれであり、専門家によるコンセンサスは、臨床的投与量の同等性を推定するための有効な代替手段である」とし、「本結果は、精神疾患治療薬に関する臨床実践、ガイドラインの開発、研究デザインおよび解釈をサポートする可能性がある」とまとめている。

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若者のうつ病に対する孤独感の影響

 COVID-19パンデミックは、孤立の長期化や社会的関係の混乱をもたらし、それに伴って学生の孤独感は増大した。孤独は、うつ病を含むさまざまな精神疾患と関連しており、自傷行為や自殺など、重大な事態を引き起こす可能性がある。中国・広東技術師範大学のM-Q Xiao氏らは、孤独感がうつ病に影響を及ぼす要因について調査を行った。European Review for Medical and Pharmacological Sciences誌2023年9月号の報告。 COVID-19パンデミック中に中国広東省広州市の中等教育および高等教育を受けていた学生879人を対象に、アンケート調査を実施した。収集したデータは、包括的に分析した。 主な結果は以下のとおり。・データの分析により、孤独感がうつ病に対し、有意な正の予測効果を示すことが明らかとなった。・孤独感とうつ病の症状との関係に、目標思考のアプローチとレジリエンスが部分的に関連していることが示唆された。・レジリエンスや目標へのフォーカスは、表現抑制や認知的再評価のレベルとは無関係に、メディエーターとして特定された。・認知的再評価は、孤独感とうつ病とのメディエーターとして、負の緩和効果を示した。・表現抑制は、孤独感とうつ病との関係を明確に媒介しており、この関係ではレジリエンスが役割を果たしていた。 著者らは、「本調査結果により、COVID-19パンデミック中は、社交や対人関係を通じてネガティブな感情を軽減できなかったことが、孤独感の増大や、その後のうつ病発症につながっていたことが示された」とし、以下のようにまとめている。 レジリエンスについては、孤独感による低下が、好ましくない対人関係の経験を人生の他の側面に投影すること、自身は困難を克服する能力に欠けると思い込むことにつながり、それによってうつ状態を悪化させる可能性がある。また、その向上は、パンデミックにより起きた変化により良く適応し、うつ病リスクの軽減に寄与すると考えられるという。目標へのフォーカスについては、高い場合には、自身の経験からの学び、生活リズムの調整、うつ病レベルが低い傾向などが認められた。このことから、うつ病リスク軽減に、目標へのフォーカス向上を目指した介入が有用であることが示唆された。 さらに、自身の不幸の表現を抑制している場合は、うつ病レベルが上昇する可能性があるが、認知的再評価スキルが高い場合には、困難な状況に対する認知的視点を変えることで、うつ病リスクの低下につながる傾向がある、としている。

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11月3日 難聴ケアの日【今日は何の日?】

【11月3日 難聴ケアの日】〔由来〕「いい(11)みみ(3)」(いい耳)と読む語呂合わせと、難聴ケアを文化にしたいという思いも込め「文化の日」の今日、補聴器を中心とした聴覚関連機器の販売などを手がける株式会社岡野電気(埼玉県・大宮市)が制定。難聴が原因で起きるさまざまな障害の重大性を知る機会を作ること、難聴予備群の方に正確な情報を提供すること、そして難聴の予防、改善するきっかけの日とすることが目的。関連コンテンツ難聴と認知症【外来で役立つ!認知症Topics】コロナ禍のコミュニケーション【コロナ時代の認知症診療】耳鳴りがするときの症状チェック【患者説明用スライド】老化に伴う難聴を脳のコレステロール補強で防ぎうる高齢者における難聴とうつ病との関係~メタ解析

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抗精神病薬の減量/中止と維持療法との比較~RADAR試験

 統合失調症や再発性精神疾患の患者には、抗精神病薬の継続投与が推奨されているが、副作用の負担が大きく、長期アウトカムに関するエビデンスは不十分である。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJoanna Moncrieff氏らは、抗精神病薬の段階的な減量プロセスの有益性と有害性を維持療法と比較し評価するため、本検討を行った。その結果、2年間のフォローアップ調査では、抗精神病薬の段階的な減量プロセスは、社会機能に影響を及ぼさないことが明らかとなった。The Lancet Psychiatry誌2023年11月号の報告。 「PADAR試験」は、イングランドのNational Health Service Trustの19施設で実施された並行群間無作為化オープンラベル試験である。抗精神病薬の減量により、社会的機能が改善し短期的には再発リスクが増加する、と仮説を立て検証を行った。対象は、再発性非感情性精神病性障害と診断され、抗精神病薬を投与された18歳以上の患者。除外基準には、過去1ヵ月間でメンタルヘルスの不調または入院を経験した患者、自身または他者に重大なリスクをもたらすと治療臨床医が判断した患者、英国の精神保健法に基づき抗精神病薬の投与が義務付けられている患者を含めた。 対象患者は、独立したインターネットベースのシステムを通じて、治療臨床医の管理の下で段階的かつフレキシブルに抗精神病薬を減らす減量群、または維持群に1対1の割合でランダムに割り付けられた。試験参加者と治療臨床医はどちらの群に割り当てられたかを認識していたが、評価者はマスキングされた。フォローアップ期間は2年、主要アウトカムは社会機能評価尺度で評価した社会機能とした。主な副次的アウトカムは、要入院と定義された重度の再発とした。分析にはITT分析を用い、グループの独自性は考慮しなかった。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングを行った4,157例中253例がランダムに割り付けられた。・内訳は、男性168例(66%)、女性82例(32%)、トランスジェンダー3例(1%)であり、平均年齢は46±12歳(範囲:22~79歳)、白人171例(67%)、黒人52例(21%)、アジア人16例(6%)、その他12例(5%)であった。・試験期間中の任意の時点における減量率の中央値は67%であり、24ヵ月時点で33%であった。・24ヵ月時点で、減量群126例中90例、維持群127例中94例を評価したところ、社会機能評価尺度に差は認められなかった(β=0.19、95%信頼区間[CI]:-1.94~2.33、p=0.86)。・重度の有害事象は、減量群では49例で93件(主にメンタルヘルスの再発による入院)、維持群では29例で64件が認められた。

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高齢統合失調症患者における認知症発症の神経病理学的根拠

 統合失調症患者は、そうでない人よりも認知症発症リスクが高いことが、臨床研究で報告されている。しかし、過去の神経病理学的研究では、統合失調症患者におけるアルツハイマー病の発症率は対照群と差異がないことが示唆されている。これらの一貫性のない結果は、アルツハイマー病以外の認知症を包含したことが原因である可能性があるが、高齢統合失調症患者を対象とした現在の神経病理学的分類に基づく臨床病理学的研究は、ほとんど行われていなかった。名古屋大学の荒深 周生氏らは、高齢統合失調症患者における認知症発症の神経病理学的根拠を調査するため、本研究を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年9月14日号の報告。高齢統合失調症患者の認知症に2つのタイプ 高齢統合失調症患者32例を対象に、標準化された病理学的手法を用いて、システマティックに脳検査を実施した。認知症に関連する神経病変の重症度の分析には、標準化された半定量的評価法を用いた。神経病理学的基準を満たす患者を除外した後、認知症を発症した患者と発症しなかった患者の臨床病理学的変数を比較し、潜在的な差を特定しようと試みた。 高齢統合失調症患者における認知症発症の神経病理学的根拠を調査した主な結果は以下のとおり。・病理学的基準を満たした統合失調症患者は7例であり、その内訳は、アルツハイマー病3例、嗜銀顆粒性認知症(AGD)2例、レビー小体型認知症1例、AGD/進行性核上性麻痺(PSP)1例であった。・神経病理学的所見が認められなかった統合失調症患者25例のうち、10例は認知症に罹患していたが、残りの非認知症患者15例と比較し、臨床病理学的所見に差は認められなかった。 著者らは、「高齢統合失調症患者では、2つのタイプの認知症がみられる。すなわち、1つは神経変性疾患併発タイプ、もう1つは現在の分類に基づく病理学的基準を満たさないタイプ」であるとし、「高齢統合失調症患者における認知症発症の神経生物学的側面を理解するためには、認知症発症を従来の認知症関連神経病理の併存疾患として分析するだけでは不十分であり、さらなる臨床病理学的研究が必要である」とまとめている。

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治療抵抗性統合失調症患者に対するクロザピン治療は早期開始すべきか

 クロザピンは、治療抵抗性統合失調症患者に対して有効性が証明されている唯一の抗精神病薬である。藤田医科大学の波多野 正和氏らは、クロザピン治療開始の遅延が長期アウトカムに及ぼす影響を評価する目的で、多施設共同レトロスペクティブコホート研究を実施した。その結果、長期治療中の精神科再入院を防ぐため、治療抵抗性統合失調症患者に対するクロザピン治療は早期に開始すべきであることが示唆された。BMC Psychiatry誌2023年9月15日号の報告。 対象は、2009年7月~2018年12月にクロザピン治療を開始した患者。統合失調症の診断からクロザピン治療開始までの期間に応じて、早期開始群(9年以内)、中期開始群(10~19年)、後期開始群(20年以上)の3群に分類した。エンドポイントは、3年以内の精神科再入院およびすべての原因によるクロザピン治療中止とした。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、Fine and Gray法またはCox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・3年以内の精神科再入院の発生率(累積発生関数)は、早期開始群32.3%、中期開始群29.7%、後期開始群62.2%であった。・後期開始群は、早期開始群よりも精神科再入院リスクが有意に高かった(HR:2.94、95%CI:1.01~8.55、p=0.016[Gray's test])。・早期開始群と中期開始群との間に、精神科再入院リスクの有意な差は認められなかった。・3年以内のすべての原因によるクロザピン治療中止の割合(カプランマイヤー法)は、早期開始群13.0%、中期開始群10.6%、後期開始群20.1%であった。・すべての原因によるクロザピン治療中止の割合は、各群間で有意な差は認められなかった。・後期開始群では、他の群よりも、身体疾患による死亡のためクロザピン治療が中止となった患者が多かった。

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第186回 手術不要の狙いどおりの脳深部刺激がヒトに初めて施された

手術不要の狙いどおりの脳深部刺激がヒトに初めて施された手術で脳内に移植した電極による脳深部刺激(DBS)はパーキンソン病などの重度の運動疾患や強迫性障害(強迫症)などの気分障害の治療手段として世界で広く使われています。用途の拡大も期待され、たとえば治療抵抗性うつ病やアルツハイマー病へのDBSの試験が実施されています。しかし脳手術につきものの危険性や合併症がDBSの可能性を狭めています。手術不要のDBSの実用化を目指し、頭の外側からの磁気や電気を送る手段が多くの臨床試験で検討されてきました。そのような経頭蓋磁気/電気刺激を基底核や海馬などの脳の奥深くの領域に到達させるにはそれらを覆う脳領域も広く一緒に刺激してしまうことが避けられず、余計な副作用の心配があります。そこで英国のImperial College Londonの認知症研究者Nir Grossman氏らは脳に置いた電極が発する電場によって脳の奥深くのみを遠隔刺激しうる手段を編み出し、その意図どおりの効果を示したマウス実験成果を2017年に報告しました1)。Grossman氏らがtemporal interference(TI)と呼ぶその手術不要の手段はマウスの海馬をそれに被さる領域に手出しすることなく刺激することができました。検討はその後さらに進み、先週Nature Neuroscience誌に発表された臨床試験の結果、いまやTIはマウスと同様にヒトの脳の奥深くも刺激しうることが裏付けられました2)。Grossman氏らはまず死者の脳を使った検討で電場が海馬のみ相手しうることを確認し、続いて健康な20例を募ってTIによる海馬刺激を試みました。被験者には顔と名前の組み合わせを記憶する課題をしてもらい、その最中の被験者の脳にTIを施しました。海馬は言わずもがな記憶や学習を司る脳領域であり、被験者がした課題は海馬の働きを必要とします3)。fMRIで被験者の脳の活動を測定したところ、TIは海馬の活性のみ調節し、記憶の正確さが改善しました。Nature Neuroscience誌に時を同じくして発表された別の報告4)ではヒトの線条体をTIによって活性化し、運動記憶機能が改善したことが確認されています。スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)が率いた研究の成果です。Grossman氏らの成果はまったく新しいアルツハイマー病治療の道を切り開くものです。初期段階のアルツハイマー病患者へのTIの臨床試験が早くもGrossman氏の指揮の下で始まっており、被験者集めが進行中です5)。アルツハイマー病で侵された脳領域の活動がTIを繰り返すことで正常化し、記憶障害の症状が改善することを期待しているとGrossman氏は述べています3)。参考1)Grossman N, et al. Cell;169:1029-1041.2)Violante IR, et al. Nat Neurosci. 2023 Oct 19. [Epub ahead of print]3)Surgery-free brain stimulation could provide new treatment for dementia / Imperial College London4)Wessel MJ, et al. Nat Neurosci. 2023 Oct 19. [Epub ahead of print]5)Recruiting to a new landmark trial to treat dementia by sending electrical currents deep into the brain.

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妄想性障害と統合失調症患者の臨床アウトカムの違い

 妄想性障害は統合失調症と比較し、予後不良であるといわれているが、発症年齢の差異は十分に考慮されていなかった。香港大学のChristy Lai Ming Hui氏らは、年齢をマッチングした初発精神疾患の中国人患者において、4年後の妄想性障害および統合失調症の診断に関する安定性および臨床的・機能的・神経認知的差異を調査した。BMC Psychiatry誌2023年9月18日号の報告。 妄想性障害患者71例と年齢をマッチさせた統合失調症患者71例を対象に、初発エピソードから4年間のフォローアップ調査を実施した。4年経過時点での症状、精神疾患に関する洞察力、薬剤性副作用、服薬コンプライアンス、機能、神経認知能力を評価した。 主な結果は以下のとおり。・4年時点で、妄想性障害患者の25例は、診断が統合失調症へ変化していた。・分析には、診断が変化しなかった妄想性障害患者46例(65%)のみを含めた。・妄想性障害患者(46例)は、統合失調症患者(71例)と比較し、精神病理学的症状がより大きく、洞察力が低下していたが、服薬に対する態度は良好であった。・社会的機能、職業的機能、QOL、認知機能については、両疾患で同様であった。 著者らは、「妄想性障害の診断は、統合失調症の診断より安定性を欠いていることが示唆された。中国人集団における両疾患患者の臨床アウトカムが、年齢の交絡因子を除いた4年後においてほぼ同様であったことを踏まえると、妄想性障害と統合失調症は、これまで考えられていたほどには区別できない可能性がある」としている。

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統合失調症の初回エピソード後の長期的な症状の軌跡~OPUS研究より

 デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMarie Starzer氏らは、統合失調症スペクトラム障害患者における初回エピソード後の陽性症状および陰性症状の20年間の軌跡を特定し、これらと関連する患者のベースライン特性と長期アウトカムについて調査するため、OPUS試験参加者の再評価を行った。World Psychiatry誌2023年10月号の報告。 対象は、ICD-10により統合失調症スペクトラム障害と診断された患者373例。症状は、陽性症状評価尺度(SAPS)および陰性症状評価尺度(SANS)を用いて、ベースライン時および1、2、5、10、20年後に評価を行った。潜在クラス成長混合モデルを用いて症状の軌跡を特定し、多項回帰分析を用いて特定された症状の軌跡の予測因子を調査した。 主な結果は以下のとおり。・陽性症状では、5つの軌跡が特定された。 ●継続的な寛解(50.9%) ●安定した改善(18.0%) ●断続的な症状(10.2%) ●中程度の症状を伴う再発(11.9%) ●重篤な症状の継続(9.1%)・中程度の症状を伴う再発の予測因子は、物質使用障害(オッズ比[OR]:2.82、95%信頼区間[CI]:1.09~7.38、p=0.033)、未治療期間の長さ(OR:1.02、95%CI:1.00~1.03、p=0.007)、陰性症状レベルの高さ(OR:1.60、95%CI:1.07~2.39、p=0.021)であった。・重篤な症状の継続の予測因子は、未治療期間の長さ(OR:1.01、95%CI:1.00~1.02、p=0.030)のみであった。・陰性症状では、2つの軌跡が特定された。 ●症状の寛解(51.0%) ●症状の継続(49.0%)・症状の継続の予測因子は、男性(OR:3.03、95%CI:1.48~6.02、p=0.002)および未治療期間の長さ(OR:1.01、95%CI:1.00~1.02、p=0.034)であった。・陽性症状(Zスコア:-0.78、CI:-1.39~-0.17)および陰性症状(Zスコア:-0.33、CI:-0.53~-0.13)の継続は、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)で測定した認知機能低下と関連が認められた。・20年間のフォローアップ調査では、陽性症状(78%)および陰性症状(67%)の継続は、抗精神病薬の使用量増加とも関連が認められた。 まとめ・初回エピソードの統合失調症スペクトラム障害患者の多くは、陽性症状の早期安定・寛解を伴う軌跡をたどっていることが示唆された。・長期にわたる未治療、薬物乱用の併発は、症状不良の修正可能な予測因子である。・統合失調症スペクトラム障害患者の半数は、時間が経過しても陰性症状の改善が認められなかった。・これらの症状は、社会的機能や認知機能の低下と関連していることに加え、患者が援助を求めることへの妨げとなっている可能性が示唆された。

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