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せん妄、意思決定能力が高齢がん患者の問題

 2014年8月28日~30日、横浜市で開催された日本癌治療学会学術集会にて、名古屋市立大学 明智龍男氏は「高齢者がん治療の問題点~精神症状の観点から」と題し、高齢がん患者が抱える精神症状と、それらが及ぼす影響について紹介した。せん妄が多い高齢がん患者の精神症状 高齢がん患者の精神症状は、3つのDと呼ばれる、Delirium(せん妄)、Dementia(認知症)、Depression(抑うつ状態)の頻度が高い。米国の研究結果では、無作為抽出された全病期のがん患者のうち47%に精神科的診断がついた。がん終末期における本邦の研究でも米国のデータと同様、がん患者の半数に精神科的診断がついている。その内訳は、せん妄が28%と最も多く、次いで、認知症、適応障害、うつ病である。 がんの経過と精神症状の関連をみると、診断後はうつ状態が現れ、治療に伴い術後せん妄も認められる。再発進行のイベントとともにうつ病の頻度は高くなり、身体症状の悪化とともに多くの患者がせん妄を経過して亡くなる。一方、認知症は、がんの経過と関係なく加齢とともに増加する。精神症状がもたらすさまざまな影響 せん妄は、特殊な意識障害をもたらし多様な影響を及ぼす。転倒・転落、ドレーン自己抜去など医療事故の原因ともなり、家族とのコミュニケーション障害も現れる。入院の長期化、医療スタッフの疲弊といった医療側の問題にもつながる。せん妄は以前、一過性の病態といわれていたが、最近では一部の患者において永続的な影響を残す可能性が示唆され始めた。 認知症は後天的な知的機能の低下を来すことで自律的意思決定が障害され、薬の飲み忘れなど治療アドヒアランスの低下などを引き起こす。さらに、認知症を合併した患者は、非合併患者に対して生存期間が短いとの報告がある。 うつ病・うつ状態は、がん患者においても自殺の最大の原因である。がん診断時からの期間とうつ病合併患者の自殺の相対危険度をみた海外の大規模観察研究では、がん患者の自殺は診断から1週間以内が最も多い。その相対危険度は非うつ病患者の12.6倍であった。また、自殺の問題だけでなく、術後補助療法の拒否が多いなど、うつ病患者では治療アドヒアランスへの低下も報告されている。課題となる高齢がん患者の意思決定能力障害 インフォームド・コンセントが成立するためには、選択の表明、情報の理解、選択と結果の理解、思考過程の合理性といった意思決定能力が患者に担保されていることが前提条件となる。一方、がん患者では、意思決定能力の問題を抱えていることが多い。 腫瘍精神科に意思決定能力評価を依頼されたがん患者を調べた国立がん研究センターのデータでは、依頼された患者の51%に意思決定能力に障害がみられた。これら患者の精神科診断は多岐にわたるが、実際に意思決定能力の障害があった患者は、せん妄と認知症が多くを占めた。逆に、それ以外の患者では能力は保たれており、意思決定能力は精神科診断だけでは判断できないことがわかった。 高齢がん患者では、せん妄、認知症、うつ病といった精神症状が高頻度に起こり治療に影響を及ぼす。また、意思決定能力を障害されている患者が多数存在しインフォームド・コンセントにも影響を及ぼす。これら患者の治療を適切に行うためには、CGA(Comprehensive Geriatric Assessment:高齢者総合的機能評価)などの総合的評価が重要になっていくであろう。

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ALS、前頭側頭型認知症に小脳の萎縮が関与

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)と前頭側頭型認知症(bvFTD)は、認知・神経精神学的症状および運動症状が重複して現れる多系統の神経変性疾患である。この10年の間、認知および神経精神症状の発現過程に小脳の構造が関連するというエビデンスが示されているものの、長い間、小脳は正常な運動機能に重要なものとして知られてきた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のRachel H. Tan氏らは、ALSとbvFTD患者の小脳領域の状況を明らかにし、特定の小脳萎縮領域が、両疾患に重複してみられる認知症状、神経精神および運動症状と関連しているか否かを検討した。その結果、ALS-bvFTDスペクトラムに小脳が重要な役割を担っており、ALS、ALS-bvFTD、bvFTDという3つの表現型すべてにおいて、それぞれが呈する症候と関連する小脳領域の萎縮が認められることを報告した。PLoS One誌オンライン版2014年8月21日号の掲載報告。 研究グループは、ALS-bvFTD患者の小脳領域の状況を明らかにし、特定の小脳萎縮領域が認知、神経精神および運動症状と関連しているか否かを把握するため検討を行った。ALS、ALS-bvFTD、bvFTDと診断された78例(大半はC9ORF72遺伝子異常なし)と健常対照を対象とし、認知、神経精神および機能の評価とともに、小脳小葉、小脳虫部、小脳脚の灰白質区域に関してvoxel-based morphometry(VBM)を用いた画像検査を行った。 主な結果は以下のとおり。・VBM解析により、ALS-bvFTD患者全体を通して小脳に有意な灰白質萎縮が認められた。・bvFTD患者では、上小脳脚において萎縮が優勢であった。・ALS患者では、下頭頂小脳と小脳虫部において萎縮が優勢であった。・ALS-bvFTD患者では、両方のパターンの萎縮が確認された。・Post-hoc共分散分析により、認知および神経精神症状はとくに小脳脚および上小葉の萎縮と関連していること、一方、運動症状は下頭頂小葉の萎縮とより関連していることが示された。・以上より、ALS-bvFTDスペクトラムに小脳は重要な役割を担っていることが示唆された。また、3つの表現型すべてがそれぞれの症候と関連する小脳領域の萎縮パターンを呈した。関連医療ニュース 若年発症統合失調症、脳の発達障害が明らかに 抗精神病薬が脳容積の減少に関与か 認知症、アルツハイマー型とレビー小体型の見分け方:金沢大学  担当者へのご意見箱はこちら

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双極性障害、退院後の自殺リスクが高いタイプは

 精神疾患入院患者において、退院後に自殺リスクが顕著に高まることは報告されている。しかし、双極性障害患者における自殺リスク、時間経過との関連やリスク因子については明らかにされていなかった。研究グループは、双極性障害のタイプ別にどのようなパターンがみられるかを調べた。フィンランド・ヘルシンキ大学のErkki Isometsa氏らによる研究。Bipolar Disorders誌オンライン版2014年7月24日号の掲載報告。 全国レジストリに基づき、1987~2003年にフィンランドの精神科病院から退院した全双極性障害患者5万2,747例を特定し、退院後の状態または自殺について追跡した(466例)。1995~2003年の退院者(3万5,946例)については、退院直後120日間の因子修正自殺リスクを調べた(129例)。 主な結果は以下のとおり。・自殺リスクの時間的パターンは、疾患タイプで異なっていた。うつ症状を伴うタイプの場合、退院後のリスクは最も高かったが急落が認められた。混合状態の場合は、リスクはそれほど高くなく、時間とともに低下した。躁状態を伴う場合のリスクは低く、相対的に安定していた。・Coxモデルにおいて、双極性うつ病で入院した患者(9,635例)の退院後の自殺(65例)について、自殺企図で入院した患者のハザード比は8.05(p=0.001)、男性患者のハザード比は3.63(p<0.001)であった。一方、リチウム服用患者は0.186(p=0.001)であった。・躁病エピソード(28例)または混合エピソード(20例)の退院後の自殺は、それぞれ、男性であることおよび過去の自殺企図によって予測された。・以上のように、双極性障害の退院後の自殺リスクは、抑うつエピソードによる入院患者において高く、時間経過との関連が強かった。また混合エピソードでは、自殺リスクは高くなかった。・「自殺企図のエピソードがあること」および「男性」は、自殺リスクの強い予測因子であった。・抑うつエピソードを伴うリチウム服用患者の退院後の自殺率は低く、同薬について予防的効果があることが示された。関連医療ニュース 双極性障害とうつ病で自殺リスクにどの程度の差があるか 双極性障害の自殺予防に求められるのは 双極性障害へのDBT追加療法、自殺念慮の改善も  担当者へのご意見箱はこちら

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統合失調症患者へのインフォームド・コンセント、有効な方法は

 研究の際のインフォームド・コンセントは、一般集団ですら取得が困難なことがあり、複雑な問題を抱えている。この問題は、統合失調症患者において最も大きい可能性がある。フランス・リール第1大学のT. Fovet氏らは、統合失調症患者を対象とした研究に際してのインフォームド・コンセントについて文献レビューを行った。その結果、統合失調症患者の同意に対するキャパシティは、健常人と比較して低下しているが、適切な介入により同意を得られやすい状態にもっていける可能性を示唆した。Encephale誌オンライン版2014年8月12日号の掲載報告。 本研究は、統合失調症患者を含む研究に際するインフォームド・コンセントについて、関連する文献の適用可能なデータをまとめることを目的とした。MedlineおよびGoogle Scholarにより、MESH用語(統合失調症、インフォームド・コンセントおよび研究)を検索した。  主な結果は以下のとおり。・MacCAT-CRなどのきわめて標準的なスケールを用いた研究により、統合失調症患者の同意に対するキャパシティは健常人と比較して低下していることが示された。・統合失調症が多様な障害であることを考慮すると、最低レベルの見識は重度の認知症状と同様に、同意に対するキャパシティがより障害されていると思われた。・こうした理解力と研究への同意に対するキャパシティの欠乏は、意思決定の変更と関連することが示された。・これらの特別な患者に対しては、介入により、同意へのキャパシティ向上につながる可能性があった。さまざまな戦略として、同意書の質向上、十分なディスカッション、テスト/フィードバック法、またはマルチメディアによる介入などが示された。・それらの中で、コミュニケーションならびに成長しつつある分野、すなわち情報テクノロジー(たとえばweb をベースとしたツール)に着眼したものは有望だと思われた。・最終的には、家族および患者の連携(French Association UNAFAMのような)により、患者が研究プログラムに安全な状態で参加しやすい状況にもっていける可能性が示唆された。・最適かつ個別化した介入を明らかにするため、さらなる研究が求められる。関連医療ニュース 他の精神科医は薬剤の選択基準をどこに置いているのか 入院から地域へ、精神疾患患者の自殺は増加するのか 職場のメンタルヘルス、効果的な方法は:旭川医大 職場のメンタルヘルス、効果的な方法は:旭川医大  担当者へのご意見箱はこちら

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統合失調症の妄想低減へ、新たな介入方法

 統合失調症患者に対する認知療法としてのメタ認知トレーニング(MCT)は、抗精神病薬治療の効果を上回る妄想減少の持続的効果があることが示された。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのSteffen Moritz氏らが無作為化試験の結果、報告した。MCTは妄想に関する認知バイアスをターゲットとする介入だが、さらに3年時点では自尊心やQOL改善といった、予期しない“スリーパー”効果などもみられたという。JAMA Psychiatry誌オンライン版2014年8月6日号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症へのMCT介入の長期効果を調べるため、2施設での無作為化対照並行群間比較試験を行った。試験は、評価者については盲検化された。DSM-IVに基づく統合失調症スペクトラムと診断され、抗精神病薬の処方を受けていた入院・外来患者(150例)を登録し、MCT(介入群)vs. 神経心理トレーニング(COGPACK、対照群)について最大16セッションの介入を行い検討した。被験者は、介入後も3年にわたりフォローアップ評価を受けた。主要評価項目は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)で測定した妄想スコアとした。副次評価項目には、PANSSの陽性スコア、総スコア、Psychotic Symptom Rating Scales(PSYRATS)、結論判断バイアス、自尊心、QOLなどを含んだ。 主な結果は以下のとおり。・3年時点でのintention-to-treat解析の結果、MCT介入群は対照群と比べて、PANSS妄想スコアが有意に大きく低下した(η2partial=0.037、p=0.05)。・副次評価においても、intention-to-treat解析の結果、MCT介入群は対照群と比べて、PANSSの陽性スコア(η2partial=0.055、p=0.02)、PSYRATS妄想スコア(η2partial=0.109、p=0.001)で有意に大きなスコアの低下がみられた。・なお、注意スコアの改善は、介入群と同様にCOGPACK(対照群)でも認められた。・結論判断バイアスの改善はみられなかったが、自尊心と安寧に対する効果が認められた。関連医療ニュース 抑うつ症状改善に“手紙による介入”は効果的か?:京都大学で試験開始 統合失調症治療、家族への介入に効果はあるか 境界性パーソナリティ障害でみられる幻覚の正体は  担当者へのご意見箱はこちら

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認知症にイチョウ葉エキス、本当に有効なのか

 認知障害および認知症に対するイチョウ葉エキスの有益性および有害事象については、長年にわたって議論の的となっている。中国海洋大学のMeng-Shan Tan氏らは、認知障害および認知症に対しイチョウ葉エキス(EGb761)の有効性および有害性についてシステマティックレビューとメタ解析を行った。その結果、同240mg/日の22~26週投与により、認知、機能、行動の低下および全般的な低下を、阻止あるいは遅らせうることが、とくに神経精神症状を伴う患者で示されたと報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2014年8月11日号の掲載報告。 2014年3月の時点でMEDLINE、EMBASE、Cochraneなどの関連データベースを、EGb761に関する無作為化試験(認知障害および認知症患者への治療として検討)を適格として検索し、評価した。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした試験は、9件であった。試験期間は、22~26週間で、合計2,561例の患者が含まれていた。・メタ解析の結果、認知に関する変化スコアの加重平均差は、プラセボと比較してEGb761群で良好であった(-2.86、95%信頼区間[CI]:-3.18~-2.54)。・また、日常生活動作(ADL)に関する変化スコアの標準平均差も、同様にEGb761群で良好であった(-0.36、95%CI:-0.44~-0.28)。・Clinicians' Global Impression of Change(CGIC)尺度に関するプラセボとのPeto法オッズ比(OR)は、統計的に有意な差がみられた(OR 1.88、95%CI:1.54~2.29)。・これらすべての有益性は、主にEGb761用量が240mg/日で認められた。・神経精神症状を伴う患者のサブグループ解析では、全体グループと比べてEGb761の240mg/日投与は、認知機能、ADL、CGICおよび神経精神症状の改善が、統計的に優れていることが示された。・アルツハイマー型認知症群の解析では、全体グループと比べて主なアウトカムはほとんど同等で統計的な優越性はみられなかった。・安全性のデータから、EGb761の安全性について重大な懸念はないことが示された。関連医療ニュース 認知症にスタチンは有用か 認知症予防効果を降圧薬に期待してよいのか 統合失調症の認知機能改善に抗認知症薬は有用か  担当者へのご意見箱はこちら

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6分間歩行で統合失調症患者の身体評価

 フランス・モンペリエ第1大学のP. Bernard氏らは、統合失調症患者を対象とした研究での6分間歩行試験(6MWT)の意義について、システマティックレビューにて評価を行った。その結果、統合失調症患者が6分間に早歩きできる距離(6MWD)は健常成人と比べ概して短いこと、BMIが高値、喫煙量が多い、高用量の抗精神病薬服用、身体的な自己認識が低いことと負の関係にあることなどを報告した。そのうえで著者は、統合失調症患者の身体的健康モニタリングに6MWTが使用可能であるとし、「今後の研究において、その予測因子としての役割を検討するとともに、その測定特性の評価を継続すべきである」と述べている。Disability and Rehabilitation誌オンライン版2014年8月7日号の掲載報告。 6MWTは、6MWDを測定する亜最大運動負荷試験である。研究グループは、介入効果を測定する際の6MWTの適合性を評価し、統合失調症患者の6MWDを一般集団およびマッチさせたコホートと比較、また6MWD決定要因の特定、6MWTの測定特性や品質手順などを調査した。5つのデータベースを用いて、2013年8月に公表されたフルテキスト文献をシステマティックレビューした。 主な結果は以下のとおり。・16件の研究が選択された。・6MWDの有意な増加を報告した介入研究がなかったため、介入の影響を測定する際の6MWTの適合性については評価を行わなかった。・成人統合失調症患者の歩行距離は、健常成人と比較して全般的に短いようであった。・レビュー対象となった研究の平均6MWDは、421~648mの範囲にあった。・統合失調症患者において、通常、6MWDはBMI高値、喫煙量が多い、高用量の抗精神病薬、低い身体的自己認識と負の関係にあった。・6MWTの信頼性は高かったが、これまで、その基準の妥当性について検討されていなかった。・ガイドラインが存在するにもかかわらず、レビュー対象の研究で用いられていた6MWTの方法には大きなばらつきがあった。・将来、統合失調症患者に対して推奨される身体的健康モニタリングに6MWT を含めるべきであることが示唆された。・6MWTはリハビリテーションに影響を及ぼし、統合失調症患者における機能的運動能力を評価するものであった。・治療介入の影響を6MWTで測定した患者は確認できなかった。・以上の結果を踏まえて著者は、「臨床医は、統合失調症における機能的運動能力を考える際、過体重、抗精神病薬の使用、身体に関する自己認識などを考慮に入れるべきである。また、重篤な精神疾患患者に6MWTを施行する際には、米国胸部学会などによる国際標準に従うべきである」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症に対し抗精神病薬を中止することは可能か 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか 統合失調症患者の突然死、その主な原因は  担当者へのご意見箱はこちら

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暴力的なゲームが子供の心に与える影響は

 米国・UTHealth公衆衛生院のTortoleroSusan R氏らは、前思春期において、暴力的なビデオゲームを毎日することと、うつ病との関連を調べた。結果、両者間には有意な相関性があることが判明した。著者は、「さらなる検討で、この関連における因果関係を調査し、症状がどれほどの期間持続するのか、また根底にあるメカニズムと臨床的な関連性を調べる必要がある」と報告している。Cyberpsychology, Behavior, and Social Networking誌オンライン版2014年7月9日号の掲載報告。 検討では前思春期において、ここ1年間に毎日、暴力的なビデオゲームを行っていたことと、うつ症状例増大との関連が認められるかを調べた。5,147人の小学5年生とその保護者から断面調査にて集めたデータを分析した。被験者は、米国3都市で行われたコミュニティベースの縦断調査Healthy PassagesのWave I(2004-2006)の参加者だった。 主な結果は以下のとおり。・線形回帰分析の結果、暴力的なビデオゲームの接触と抑うつ症状が関連していることが認められた。性別、人種/民族、仲間いじめ(peer victimization)、暴力を目撃すること、暴力で脅されていること、攻撃性、家族構成、世帯所得で補正後も変わらなかった。・「非常に暴力的(high-violence)なテレビゲームを1日2時間超する」と回答した児童では、「それほど暴力的ではない(low-violence)テレビゲームを1日2時間未満する」と回答した児童と比べて、抑うつ症状が有意に強いことが判明した(p<0.001)。・この関連性の強さは小さかったが(Cohen's d=0.16)、人種/民族の全サブグループ、および男児で認められた(Cohen's d:0.12~0.25)。関連医療ニュース ゲームのやり過ぎは「うつ病」発症の原因か 大うつ病性障害の若者へのSSRI、本当に投与すべきでないのか 小児および思春期うつ病に対し三環系抗うつ薬の有用性は示されるか  担当者へのご意見箱はこちら

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高齢者のうつとペットの意外な関連

 高齢者において、うつは大きな問題となる。これまでの研究では、動物と暮らす高齢者のメンタルヘルスが改善することが示されているが、逆の結果も存在する。そこで、ノルウェー・ノルトロンデラグ大学のIngela Enmarker氏らは、ペット非所有・イヌ所有・ネコ所有の高齢(本研究では65歳以上と定義)男女において、自己評価による抑うつ症状を集団研究で比較した。その結果、都会以外でイヌやネコを飼う高齢の男女において、抑うつ症状に違いが認められた。老人ホームのような環境でイヌやネコを利用する場合に、これらの集団研究のデータが使えるかもしれないという。Aging & mental health誌オンライン版2014年7月3日号に掲載。 この横断集団研究には65~101歳の1万2,093人が参加した。そのうち1,083人がネコを、814人がイヌを所有していた。自己評価による抑うつ症状は、自己記入式スケールであるHADS-D(Hospital Anxiety and Depression Scaleにおける抑うつ症状の項目)を用いて測定した。 主な結果は以下のとおり。・ネコ所有者は、イヌ所有者・ペット非所有者に比べて、HADS-Dの平均値が高かった。・ペット非所有者は、抑うつ症状を最も低いと評価した。・抑うつ症状を高評価と低評価に分けた場合、ネコ所有の男性はネコ所有の女性よりも抑うつ症状が低いと感じる可能性が高いことが、ロジスティック回帰分析より示された。・ペット所有と、一般健康状態・独居・配偶者の有無との相互関係は認められなかった。

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新規抗精神病薬、高TG血症が高頻度

 ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボ総合病院のBelma Sadibasic氏らは、抗精神病薬による脂質異常症の頻度を第二世代抗精神病薬と第一世代抗精神病薬で比較した。その結果、脂質異常症のなかで高トリグリセリド血症の頻度は第二世代抗精神病薬で有意に高頻度であったが、高コレステロール血症の頻度については有意差が確認されなかったことを報告した。Medicinski glasnik誌2014年8月号の掲載報告。 抗精神病薬による治療を受けている患者の脂質異常症(高トリグリセリド血症および高コレステロール血症)の頻度について、第二世代と第一世代の薬剤をレトロスペクティブに比較検討した。慢性精神病患者116例を、第二世代抗精神病薬による治療を受けている試験群(クロザピン、オランザピン、リスペリドン)と第一世代抗精神病薬による治療を受けているコントロール群(プロマジン、レボメプロマジン、ハロペリドール、フルフェナジン)の2群に分けた。各群の患者について、臨床検査値およびバイタルパラメーターをモニタリングした。  主な結果は以下のとおり。・平均トリグリセライド値は、試験群3.13mmol/L、コントロール群2.28mmol/Lであり、両群間で有意差が認められた(p=0.004)。・平均コレステロール値は、試験群6.12mmol/L、コントロール群5.85mmol/Lであり、両群間で有意差は認められなかった(p=0.239)。・平均年齢は、試験群49.6歳、コントロール群51.47歳であり、両群間で有意差は認められなかった(p=0.356) 。・脂質異常症のうち高トリグリセリド血症は、第一世代抗精神病薬と比較して第二世代抗精神病薬で高頻度であった。・脂質異常症のうち高コレステロール血症については、第一世代抗精神病薬と比較して第二世代抗精神病薬で有意に高頻度であることは証明されなかった。関連医療ニュース 日本人統合失調症患者の脂質プロファイルを検証!:新潟大学 遅発性ジスキネジアが発現するD2受容体占有率は:慶應義塾大学 高力価vs低力価、有効性の違いは  担当者へのご意見箱はこちら

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腰椎椎間板ヘルニア、手術 vs 非手術は同程度?

 米国・The Dartmouth Institute for Health Policy and Clinical PracticeのDana Kerr氏らは、多施設前向き無作為化研究のSpine Patient Outcomes Research Trial(SPORT)から、腰椎椎間板ヘルニアに対する手術的治療と保存的治療を比較した解析結果を報告した。追跡期間8年において、intent-to-treat解析ではすべての主要評価項目で差がみられなかったという。ただし、坐骨神経痛症状、患者の自己評価による改善などの副次評価項目については手術的治療の有効性が示唆された。Clinical Orthopaedics and Related Research誌オンライン版2014年7月24日号の掲載報告。 6週以上続く症候性腰椎神経根障害があり、画像診断で椎間板ヘルニアと確認された患者を、米国の13施設にて無作為化コホート(501例)と観察コホート(743例)のいずれかに登録した。 無作為化コホートの患者は手術群か非手術群に無作為に割り付け、椎間板切除術または通常の保存的治療を行った。 主要評価項目は、6週、3ヵ月、6ヵ月、1年、以後1年ごとのSF-36身体的疼痛スコアおよび身体機能スコア、ならびにオスウェストリー障害指数(ODI)であった。 主な結果は以下のとおり。・8年間で、手術群245例中148例(60%)、非手術群256例中122例(48%)が実際に手術を受けていた。・無作為化コホートの intent-to-treat解析では、手術群と非手術群とで主要評価項目に差はなかった。・副次評価項目(坐骨神経痛症状、下肢痛、症状についての満足感、自己評価による改善)は、クロスオーバーが多かったにもかかわらず手術群のほうが改善を認めた。・無作為化コホートと観察コホートを合わせたas-treated解析(実際行われた治療に基づいた解析)では、潜在的交絡因子で補正後、すべての主要評価項目について手術的治療群のほうが優れていることが示された。・喫煙者および、うつ病または関節症を合併している患者は、手術的治療でも保存的治療でも、機能に関する評価項目がすべて悪化していた。・遊離型ヘルニアの患者、ベースラインの腰痛が高度で症状が6ヵ月以上持続していた患者、およびベースラインにおいて障害もなく仕事もしていない患者では、手術的治療の効果が大きかった。

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抗グルタミン酸受容体抗体が神経疾患に重大関与か

 グルタミン酸は中枢神経系(CNS)の主な興奮性神経伝達物質であり、多くの主要な神経機能に必要な物質である。しかし、過剰なグルタミン酸はグルタミン酸受容体活性化を介した有害な興奮毒性により、重度の神経細胞死と脳害を引き起こす。イスラエル・School of Behavioral Sciences, Academic College of Tel-Aviv-YafoのMia Levite氏は、抗グルタミン酸受容体抗体に関して、これまでに得られている知見をレビューした。抗AMPA-GluR3B抗体、抗NMDA-NR1 抗体、抗NMDA-NR2A/B抗体、抗mGluR1抗体、抗mGluR5抗体、以上5種類の抗グルタミン酸受容体抗体について言及し、いずれもさまざまな神経疾患に高頻度に認められ、神経系にきわめて有害な影響を及ぼしていることを示唆した。Journal of Neural Transmission誌オンライン版2014年8月号の掲載報告。 グルタミン酸による興奮毒性は、多くのタイプの急性および慢性CNS疾患および傷害に生じる主要な病理学的プロセスである。近年、過剰なグルタミン酸だけでなく、いくつかのタイプの抗グルタミン酸受容体抗体もまた、重度の脳傷害を引き起こしうることが明らかになってきた。抗グルタミン酸受容体抗体は神経疾患患者の血清および脳脊髄液(CSF)中に存在し、CNSにおいて何らかの強い病理学的影響を誘導することにより、脳に傷害を引き起こす。抗グルタミン酸受容体自己免疫抗体ファミリーは、これまでに開発されたなかで最も広範かつ強力、危険で興味深い抗脳自己免疫抗体だと思われる。ヒトの神経疾患および自己免疫疾患において種々のタイプの抗グルタミン酸受容体抗体が認められ、髄腔内産物に由来しCNS内に高濃度存在し、脳にさまざまな病理学的影響を及ぼし、またユニークかつ多様なメカニズムでグルタミン酸受容体とシグナル伝達に作用し、神経伝達を障害して脳に傷害を誘導する。2つの主な自己免疫抗グルタミン酸受容体抗体ファミリーが神経および/または自己免疫疾患患者においてすでに発見されており、抗AMPA-GluR3抗体、抗NMDA-NR1抗体、抗NMDA-NR2抗体などイオンチャンネル型のグルタミン酸受容体に直接作用する抗体、そして抗mGluR1抗体、抗mGluR5抗体など代謝型のグルタミン酸受容体に直接作用する抗体などがCNSに有害な影響を及ぼすことが示されている。 この包括的レビューでは、それぞれの抗グルタミン酸受容体抗体について、発現が認められたヒト疾患、神経系における発現と産物、さまざまな精神/行動/認知/運動障害との関連、特定の感染臓器との関連の可能性、マウス、ラット、ウサギなど動物モデルにおけるin vivoでの有害な作用そしてin vitroにおける有害な作用、多様でユニークなメカニズム、以上についてそれぞれの抗グルタミン酸受容体抗体別に言及する。また、これら抗グルタミン酸受容体抗体を有し、さまざまな神経疾患および神経系の問題を抱える患者における免疫療法に対する反応性についても言及する。5種類の抗グルタミン酸受容体抗体について、それぞれ項目を立て有用な図を用いて解説し、最後にすべての主要な知見をまとめ、診断、治療、ドラッグデザインおよび今後の検討に関する推奨ガイドラインを提示する。 ヒトを対象とした試験、in vitro試験、マウス、ラット、ウサギなど動物モデルを用いたin vivo試験から、5種類の抗グルタミン酸受容体抗体に関して得られた知見は以下のとおり。(1)抗AMPA-GluR3B抗体・さまざまなタイプのてんかん患者で~25~30%に認められる。・てんかん患者にこれら抗グルタミン酸受容体抗体(またはその他のタイプの自己免疫抗体)を認める場合、およびこれら自己免疫抗体がしばしば発作や認知/精神/行動障害を誘発または促進していると思われる場合、てんかんは“自己免疫性てんかん”と呼ばれる。・“自己免疫性てんかん”患者の中には、抗AMPA-GluR3B抗体が有意に精神/認知/行動異常に関連している者がいる。・in vitroおよび/または動物モデルにおいて、抗AMPA-GluR3B抗体自身が多くの病理学的影響を誘発する。すなわち、グルタミン酸/AMPA受容体の活性化、“興奮毒性”による神経細胞死、および/または補体調節タンパク質による補体活性化により脳への複数のダメージ、痙攣誘発化学物質による発作、行動/運動障害の誘発などである。・抗AMPA-GluR3B抗体を有する“自己免疫性てんかん”患者の中には、免疫療法に対する反応性が良好で(時々一過性ではあるが)、発作の軽減および神経機能全体の改善につながる者がいる。(2)抗NMDA-NR1 抗体・自己免疫性“抗NMDA受容体脳炎”に認められる。・ヒト、動物モデルおよびin vitroにおいて、抗NMDA-NR1抗体は海馬神経に発現している表面NMDA受容体を著しく減少させうること、そしてNMDA受容体のクラスター密度ならびにシナプス性局在もまた減少させることから重要な病因となりうる。・抗NMDA-NR1抗体は、NMDA受容体と架橋結合およびインターナリゼーションを介してこれらの作用を誘発する。・このような変化はNMDA受容体を介するグルタミン酸シグナル伝達を障害し、さまざまな神経/行動/認知/精神の異常を来す。・抗NMDA-NR1抗体は、その髄腔内産物により抗NMDA受容体脳炎患者のCSF中にしばしば高濃度に認められる。・抗NMDA受容体脳炎患者の多くは、いくつかの免疫療法に良好に反応する。(3)抗NMDA-NR2A/B抗体・神経精神的問題の有無にかかわらず、全身性エリテマトーデス(SLE)患者の多くに認められる。・抗NMDA-NR2A/B抗体を有するSLE患者の割合は報告により14~35%とさまざまである。・ある1件の試験では、びまん性神経精神的SLE患者の81%、焦点性“神経精神的SLE”患者の44%で抗NMDA-NR2A/B抗体が認められることが報告されている。・抗NMDA-NR2A/B抗体は、いくつかのタイプのてんかん、いくつかのタイプの脳炎 (慢性進行性辺縁系脳炎、傍腫瘍性脳炎または単純ヘルペス性脳炎など)、統合失調症、躁病、脳卒中またはシェーグレン症候群患者にも認められる。・患者の中には、抗NMDA-NR2A/B抗体が血清とCSFの両方に認められる者がいる。・dsDNAと交差反応する抗NMDA-NR2A/B抗体もある。・いくつかの抗NMDA-NR2A/B抗体は、SLE患者の神経精神/認知/行動/気分障害と関連している。・抗NMDA-NR2A/B抗体は、NMDA受容体の活性化により神経死をもたらすこと、“興奮毒性”を誘発して脳を傷害する、膜NMDA受容体発現の海馬神経における著明な減少、そして動物モデルにおいて認知行動障害を誘発することなどから、病因となりうることは明らかである。・しかし、抗NMDA-NR2A/B抗体の濃度は、グルタミン酸受容体に対するポジティブまたはネガティブな影響、神経の生存を決定付けていると思われる。・このため、低濃度において抗NMDA-NR2A/B抗体は受容体機能のポジティブモジュレーターであり、NMDA受容体を介した興奮性シナプス後電位を増加させる一方、高濃度ではミトコンドリア膜透過性遷移現象を介した“興奮毒性”を促進して病因となる。 (4)抗mGluR1抗体・これまでに、少数の傍腫瘍性小脳運動失調患者に認められており、これら患者では髄腔内で産生されるため血清中よりもCSF中濃度のほうが高い。・抗mGluR1抗体は、基本的な神経活性の減弱、プルキンエ細胞の長期抑圧の誘導阻害、プルキンエ細胞の急性および可塑反応の両方に対する速やかな作用による脳運動調節欠乏、慢性的な変性などにより脳疾患のきわめて大きな原因になりうる。・抗mGluR1抗体をマウス脳に注射後30分以内に、マウスは著しい運動失調に陥る。・運動失調患者に由来する抗mGluR1抗体は、動物モデルにおいて眼球運動もまた障害する。・抗mGluR1抗体を有する小脳性運動失調患者の中には、免疫療法が非常に効果的な者がいる。(5)抗mGluR5抗体・これまでに、ホジキンリンパ腫および辺縁系脳炎(オフェリア症候群)患者の血清およびCSF中にわずかに認められている。・抗GluR5抗体を含むこれら患者の血清は、海馬の神経線維網およびラット海馬ニューロン細胞表面と反応し、培養ニューロンを用いた免疫沈降法および質量分析法により抗原がmGluR5であることが示された。 以上のエビデンスから、著者は「抗グルタミン酸受容体抗体は、これまでに認識されていた以上にさまざまな神経疾患に高頻度に存在し、神経系に対してきわめて有害であることがわかった。したがって、診断、治療による抗グルタミン酸受容体抗体の除去あるいは鎮静化、および将来の研究が求められる。広範な抗グルタミン酸受容体抗体ファミリーに関しては、興味深く、新規でユニークかつ重要であり、将来に向けた努力はいずれも価値があり必須であることがわかった」とまとめている。関連医療ニュース 精神疾患におけるグルタミン酸受容体の役割が明らかに:理化学研究所 精神疾患のグルタミン酸仮説は支持されるか グルタミン酸作動薬は難治性の強迫性障害の切り札になるか

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うつ病×腰痛高齢者への抗うつ薬の効果:カナダ

 うつ病と慢性腰痛は高齢者においてはどちらも頻度が高く、しばしば併存している。カナダ・マギル大学のSoham Rej氏らは、こうした患者に対するセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬ベンラファキシン(venlafaxine、国内未承認)の治療効果について検討した。結果、6週間のベンラファキシン投与によりうつ症状と腰痛の両方とも改善した患者の割合は約25%で、比較的少なかったが、2週時点での早期改善が6週時点の改善の予測因子となることなどが明らかになったという。著者らは、「今後、早期改善が得られない場合に増量、変更または他の治療法を追加し、改善できるかどうかを検討する必要がある」とまとめている。Pain Medicine誌7月15日号(オンライン版2014年7月4日号)の掲載報告。 研究グループの目的は、うつ病と慢性腰痛を合併している患者において低用量ベンラファキシン投与の効果を予測する、使いやすい臨床変数を明らかにすることであった。 対象は、Addressing Depression and Pain Together試験に参加したうつ病と慢性腰痛を有する60歳以上の患者140例で、第I期としてベンラファキシン150mg/日を6週間投与し、うつ症状および疼痛スコアの変化について分析した。 主な結果は以下のとおり。・うつ病と腰痛のどちらも改善した患者の割合(反応率)は、26.4%であった。・2週目における早期の疼痛改善が、反応率の予測因子であった(p=0.027)。・2週目のうつ症状あるいは腰痛の軽減と、それぞれ6週後の改善が関連していた。

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統合失調症治療、ベンゾジアゼピン系薬の位置づけは

 臨床診療および臨床試験では、統合失調症患者に対してベンゾジアゼピン系薬が処方されている。それらの臨床アウトカムについて、英国キングス・カレッジ・ロンドンのFaye Sim氏らは調査を行った。その結果、総合的、精神医学的、行動学的アウトカムについてプラセボより優れていたが、より長期の総合的なアウトカムについて抗精神病薬よりも劣性であることが判明したことを報告した。また、抗精神病薬との併用に関しては相反するエビデンスが存在していた。これらの結果を踏まえて著者は、「臨床および臨床試験におけるベンゾジアゼピン系薬の使用は制限すべきであろう」と結論している。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2014年7月21日号の掲載報告。 システマティックレビューにて、ベンゾジアゼピン系薬とプラセボまたは抗精神病薬を比較評価していた無作為化試験、および抗精神病薬への併用について検討していた無作為化試験を特定し、関連臨床アウトカムデータを抽出して分析した。 主な結果は以下のとおり。・分析には26件の試験を組み込んだ。いくつかの報告は多重比較を含むものであった。・ベンゾジアゼピン系薬とプラセボの比較試験は、短期試験の7件で行われていた。・そのうちベンゾジアゼピン系薬の優越性について、5試験中2件で総合的な改善が報告されており、また4試験中2試験で、精神医学的/行動学的アウトカムについて優れているとの報告がみつかった。・ベンゾジアゼピン系薬と第一世代抗精神病薬(FGA)を比較した試験は、11件であった。・そのうち抗精神病薬よりもベンゾジアゼピン系薬の総合的な改善が大きかったことが報告されていたのは、9試験中4試験(2件は長期試験)であった。・一方で精神医学的/行動学的アウトカムについては、5試験中4試験において治療間の差は示されていなかった。・ベンゾジアゼピン系薬(抗精神病薬への追加療法として)vs. 抗精神病薬(大半はFGA)を比較した試験は14件であった。・そのうちベンゾジアゼピン系薬の優越性について、総合的な改善が示されたと報告されていたのは8試験中1件で、劣性であることが示されていたのは8試験中2件であった。・一方で、精神医学的/行動学的アウトカムについての優越性は12件の短期試験のうち3件で示され、非劣性も12試験中3件で報告されていた。関連医療ニュース 統合失調症治療にベンゾ併用は有用なのか ベンゾジアゼピン使用は何をもたらすのか 急性期精神疾患に対するベンゾジアゼピン系薬剤の使用をどう考える  担当者へのご意見箱はこちら

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ビタミンD欠乏で統合失調症発症リスクが2倍に

 統合失調症はビタミンD欠乏と強く関連していることが、システマティックレビューおよびメタ解析の結果、明らかにされた。統合失調症患者の65.3%でビタミンD欠乏が認められること、ビタミンD欠乏例はビタミンD充足例と比較して統合失調症である可能性が2.16倍高かったことを、イラン・エスファハーン医科大学のGhazaleh Valipour氏らが報告した。これまでに観察研究においてビタミンDの状態と統合失調症との関連が検討されているが、包括的なメタ解析は把握されていなかった。Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌オンライン版2014年7月22日号の掲載報告。 研究グループは、観察研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、血清ビタミンD濃度と統合失調症に関連する適用可能なデータをまとめた。2013年10月までに発表されたすべての公表記事をPubMed、ISI(Web of science)、SCOPUSおよびGoogle Scholarを用いて系統的に検索。統合失調症患者の血清ビタミンD濃度を測定した観察研究すべてについてシステマティックレビューを行った。除外基準を考慮した結果、19件の研究についてシステマティックレビューを行い、(1)25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]の平均濃度(13件)、(2)ビタミンD欠乏の頻度(8件)、(3)オッズ比(8件)の3つのメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者とコントロール群における血清25(OH)D平均濃度の差は、-5.91ng/mL(95%信頼区間[CI]:-10.68~-1.14)であった。サブグループ解析の結果、入院状況、研究の質、研究の場所は試験間の不均一性に関連していなかった。しかし、25-ヒドロキシビタミンD3 vs 25(OH)Dを評価したバイオマーカーの種類は不均一性にある程度関連していた。・統合失調症患者におけるビタミンD欠乏頻度は65.3%(95%CI:46.4~84.2%)であった。・ビタミンD欠乏例はビタミンD充足例と比較して、統合失調症である可能性が2.16倍(95%CI:1.32~3.56)高かった。不均一性を示すエビデンスは認められなかった。・結果を踏まえて著者は「今回の所見を明確にするため無作為化臨床試験が求められる」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症患者を発症前に特定できるか:国立精神・神経医療研究センター うつ病治療にビタミンD投与は有用か 統合失調症に対し抗精神病薬を中止することは可能か  担当者へのご意見箱はこちら

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境界性パーソナリティ障害でみられる幻覚の正体は

 境界性パーソナリティ障害(BPD)の約3分の1の患者で認められると報告されている幻覚症状について、フランス・リール第2大学のA. Gras氏らは、研究状況などをまとめるためレビューを行った。その結果、現状において同症状への理解は不十分であり、病態生理を明らかにする研究が必要であることを指摘した。Encephale誌オンライン版2014年7月22日号の掲載報告。境界性パーソナリティ障害の幻覚症状 本検討は、境界性パーソナリティ障害患者における幻覚症状への対処を模索することを目的に行われた。2013年3月時点でMedline、Scopus、Google Scholarデータベースを、「境界性パーソナリティ障害」「幻覚」「精神病症状」のキーワードを用いて論文を検索した。英語またはフランス語の査読を受けたジャーナルに発表されたレビュー論文で、DSM基準で診断されたBPD患者が試験登録されているものを適格とした。 境界性パーソナリティ障害の幻覚症状についての主な報告は以下のとおり。・1985~2012年に発表された15試験、被験者計635例のデータがレビューに組み込まれた。・BPDで観察された幻覚は現象学的経験で、統合失調症スペクトラムにおいて述べられる幻覚と同様に、鮮明で、持続的で、3次元的であり、悪意または万能性に関する信念が認められるものであった。その一方で、幻覚の内容はよりネガティブで苦痛に満ちたものであった。・こうした症状は長い間、「偽性幻覚(または幻覚様症状)」とみなされてきたことも本レビューによって判明した。・またそうした捉え方が、科学的な検証作業を阻害し、BPD患者に対して本当にそのような経験を有しているのかという疑問や、患者が感じている苦痛を認めないというスティグマを引き起こしていた。著者は「これらの状況が、BPDの幻覚症状の解明に焦点を当てた研究の必要性を指摘するものであった」としている。・一方で興味深いことに、最近の併存症研究において、40年来議論されてきたBPDと精神病との潜在的な関連性についての」議論が再燃していることが明らかになった。・当初、前精神病性障害とみなされたBPDは、Otto F. Kernberg氏により独立したカテゴリーに分類され、DSM-III定義に至り、精神病症状から除外された。・しかしながら、幻覚は、気分障害のみでなく薬物の過剰摂取によっても生じ、幻覚それ自体をもって統合失調症と診断するには依然として不十分であり、BPDにおけるすべての幻覚を説明することもできなかった。・著者らは、BPDの幻覚は視床下部-脳下垂体-副腎系およびストレス下のドパミンシステムの機能亢進に関わるとして、「ストレスに対する精神病性反応」とのフレームワークで理解することを試みた。そのようなモデルは、小児期の心的外傷では中心的な役割を有する可能性があった。・結果、小児期の心的外傷について、BPDにおける有病率が高いこと、また非臨床集団における幻覚の強い関連因子でもあることが示された。・BPDで起きている幻覚と、外傷後ストレス障害およびその他の頻度の高い併存障害で観察された幻覚との比較検討は、最後に行われていた。

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抗精神病薬が脳容積の減少に関与か

 抗精神病薬投与が、統合失調症患者でみられる発症後の脳容積減少に関与している可能性が示された。フィンランド・オウル大学のJuha Veijola氏らが、一般住民ベースの出生コホートの被験者を9年間追跡し脳容積の変化などを評価し報告した。先行研究において、統合失調症患者では経時的に脳容積が減少することが示されていた。PLoS One誌オンライン版2014年7月18日号の掲載報告。 研究グループは、追跡期間が約10年と比較的長期に行われていた一般住民ベースのコホートサンプルから、統合失調症を有する被験者と対照被験者を選定し、脳容積の変化、その重症度との関連、機能、認知および抗精神病薬治療について調べた。1999~2001年の間に、33~35歳で、あらゆる精神障害を有していたNorthern Finland Birth Cohort 1966の全参加者と、精神疾患を有していなかったランダムサンプルに対して、MRI脳スキャン、臨床および認知機能の評価を行い、9年後の2008~2010年にフォローアップを行った。両時点のデータを基に、回帰モデルを用いて、脳容積変化が臨床および認知機能の変化を予測するかどうか、また抗精神病薬治療が脳容積変化を予測するかを調べた。 主な結果は以下のとおり。・両時点でMRI脳スキャンを行ったのは、統合失調症被験者33例、対照被験者71例であった。・年平均の全脳容積減少は、統合失調症群で0.69%、対照群0.49%であった(性別、教育水準、アルコール摂取、体重増加で補正後p=0.003)。・統合失調症患者の脳容積減少は、とくに側頭葉、脳室周囲領域でみられた。・統合失調症における脳容積減少と、重症度および機能レベル、認知機能の低下との関連はみられなかった。・追跡期間中に受けた抗精神病薬の投与量(クロルプロマジン換算100mg/日の年間投与量に相当)は、脳容積減少を有意に予測した(症状、アルコール摂取、体重増加で補正後p=0.003)。関連医療ニュース 統合失調症と双極性障害、脳の違いはどこか 若年発症統合失調症、脳の発達障害が明らかに 治療抵抗性統合失調症患者の脳は、特徴的な所見を示す  担当者へのご意見箱はこちら

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高齢統合失調症、遅発性ジスキネジアのリスク低

 高齢患者に対するオランザピンvs. 旧来の抗精神病薬治療による遅発性ジスキネジアの発生率は、それぞれ2.5%、5.5%と低率で有意差もみられなかったことが、米国のBruce J. Kinon氏らが行った検討の結果、報告された。これまで55歳以上を対象とした比較試験は行われていたが、今回の検討は、平均年齢78歳、約8割が認知症を有する高齢患者を対象に行われたものである。Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology誌オンライン版2014年7月9日号の掲載報告。 遅発性ジスキネジア(TD)を有さない患者を、オランザピン投与群(2.5~20mg/日、150例)と旧来の抗精神病薬投与(CNV)群(各ラベル用量、143例)に無作為に割り付け、6週間の漸減/導入期間後、最長1年間治療を行った。 主要アウトカムのエンドポイントは、アプリオリに定義した持続性TDで、異常不随意運動評価尺度(Abnormal Involuntary Movement Scale:AIMS)でスコア2(1~7項目のうち2項目以上で)または3以上(同1項目以上で)が1ヵ月以上続く場合とした(基準A)。また事後解析では、中等度(1項目以上でスコア3以上が1ヵ月間持続;基準B)と定義した持続性TDの評価、およびAIMSスコアの上昇(基準A、B)が1ヵ月間持続しなかったprobable TDの評価を行った。治療群間の比較にはKaplan-Meier法が用いられ、log-rank検定も行われた。 主な結果は以下のとおり。・被験者の平均年齢は78歳であり、多くが認知症と診断されていた(オランザピン群76.7%、CNV群82.5%)。・CNV群の患者のうち40.6%が、ハロペリドールを投与されていた。・持続性TD発症については、治療群間で有意差はみられなかった。累積発生率はオランザピン群2.5%(95%信頼区間[CI]:0.5~7.0)、CNV群5.5%(同:2.1~11.6)であった(p=0.193)。・曝露量で補正後のイベント発生率も、治療群間で有意差は示されなかった。オランザピン群は100人年当たり2.7、CNV群は同6.3で、率比は0.420(95%CI:0.068~1.969)であった。・事後解析の結果、オランザピン治療群における、1ヵ月間持続している中等度の持続性TD(p=0.012)、および1ヵ月間持続しなかったprobable TD(基準Aのp=0.030、基準Bのp=0.048)のリスクは、有意に低いことが示された。・ベースライン時に顕著な錐体外路症状がない患者については、CNV治療群のほうが、オランザピン治療群よりも、治療によりパーキンソニズムが発現した患者が有意に多かった(CNV群70%[35/50例]、オランザピン群44%[25/57例]、p=0.011)。・治療により出現したアカシジアについては、治療群間の有意差はみられなかった(CNV群6%[7/117例]、オランザピン群10%[13/130例]、p=0.351)。関連医療ニュース 遅発性ジスキネジアが発現するD2受容体占有率は:慶應義塾大学 遅発性ジスキネジアへの対処に新たな知見 高齢発症の統合失調症様症状、死亡リスク高  担当者へのご意見箱はこちら

2239.

線維筋痛症、教育的介入より認知行動療法

 米国・エモリー大学のSoumitri Sil氏らは、認知行動療法に反応する若年性線維筋痛症患者の特定と予測因子について検討し、教育的介入より認知行動療法で治療反応率が高いこと、認知行動療法は治療開始時の機能障害が大きく自己効力感が高い患者でより有効であること、疼痛強度やうつ症状は治療反応性と無関係であることなどを明らかにした。Pain誌2014年7月号(オンライン版2014年3月17日号)の掲載報告。 本研究の主要目的は、若年性線維筋痛症に対する認知行動療法の治療反応例を特定する、臨床的に有意かつ定量可能な機能障害の変化を推定することであった。 また、副次目的は、試験開始時の機能障害(Functional Disability Inventory:FDI)、疼痛強度、うつ病(Children's Depression Inventory:CPI)、疼痛コーピング(Pain Coping Questionnaire:PCI)、両親の疼痛の既往歴が6ヵ月後の機能障害に関する治療反応を予測できたかどうかを検討することであった。 試験対象は、最近発表された、線維筋痛症に対する教育的介入と認知行動療法の比較試験に登録された11~18歳の若年性線維筋痛症患者100例であった。FDIが7.8ポイント以上の減少および臨床基準ポイントに基づいた障害グレードの低下の両方を満たした場合を治療反応例と定義した。 主な結果は以下のとおり。・定義に基づく治療反応率は、教育的介入群28%(14/50例)に対して、認知行動療法群は40%(20/50例)であった。・認知行動療法群では、試験開始時の機能障害がより大きく、自己効力感がより高い患者で、臨床的に有意な機能障害の改善が得られた。・疼痛強度、うつ症状および両親の疼痛既往歴は、治療反応性を予測しなかった。

2240.

抗うつ薬+アリピプラゾール、長期忍容性は

 抗うつ薬が奏効しないうつ病患者に対する抗精神病薬の併用は、長期的に安全なのか。米国・バージニア大学のAnita H Clayton氏らは、大うつ病性障害(MDD)患者に対し、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)/セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)またはブプロピオン(国内未承認)にアリピプラゾールを併用した場合の長期忍容性を評価した。その結果、いずれの併用においても予期せぬ有害事象は認められず、同様の症状改善効果が認められたことを報告した。BMC Research Notes誌オンライン版2014年7月18日号の掲載報告。 研究グループは、MDD患者を対象とし、アリピプラゾールをSSRIs/SNRIsに併用した場合の長期治療の安全性、忍容性および有効性を評価するpost hoc解析を実施した。具体的には、1~4種類の抗うつ薬治療(ADT:SSRI、SNRIまたはブプロピオン)に対する反応性が不良で、その後にアリピプラゾールを投与した52週間の非盲検安全性試験の登録患者で、過去に実施された2つの研究に参加していない新規患者のデータを解析した。安全性、忍容性、性機能(マサチューセッツ総合病院性機能評価項目[MGH-SFI])、Clinical Global Impression-Severity(CGI-S)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・ブプロピオン+アリピプラゾールが47例、SSRI/SNRI+アリピプラゾールが245例で、52週間の治療完了例はそれぞれ19例(40.4%)、78例(31.8%)であり、試験薬を1回以上投与(安全性評価対象)された例は46例、242例であった。・何らかの理由による中止までの期間中央値は、184.0日であった。・ブプロピオン群の97.8%、SSRI/SNRI群の93.8%に、1件以上の有害事象が発現した。・ブプロピオン群で最も多かった治療関連有害事象は疲労(26.1%)と傾眠(21.7%)であった。SSRI/SNRI群は疲労(23.6%)とアカシジア(23.6%)であった。・52週時の平均体重変化は、ブプロピオン群で+3.1kg、SSRI/SNRI群は+2.4kgであった。・治療に関連する、臨床的に意味のある空腹時血糖異常はブプロピオン群8.3%、SSRI/SNRI群で17.4%であった。空腹時総コレステロール値の異常は、それぞれ25.0%、34.7%であった。・空腹時血糖値のベースラインからの平均変化(標準誤差)は、ブプロピオン群1.4(1.9)mg/dL 、SSRI/SNRI群2.7(1.5)mg/dLであった。・ベースライン時のMGH-SFIスコアにおいて、ブプロピオン群はSSRI/SNRIと比べて性機能障害の程度が低いことが示唆された。そして両群ともMGH-SFIスコアの改善は、52週時に最大値を示した。・52週時点の平均CGI-S改善(最終的に改善に向かっている)は、ブプロピオン群-1.4、SSRI/SNRI群は-1.5であった(有効性の解析対象において)。・ブプロピオンまたはSSRI/SNRIのいずれにアリピプラゾールを追加しても、長期投与に伴う予期せぬ有害事象はみられなかった。また、症状改善は抗うつ薬群間で同様であった。MDD患者の性機能もまた、アリピプラゾール追加後に穏やかに改善した。関連医療ニュース 日本人うつ病患者に対するアリピプラゾール補助療法:名古屋大学 難治性うつ病にアリピプラゾールはどの程度有用か 本当にアリピプラゾールは代謝関連有害事象が少ないのか  担当者へのご意見箱はこちら

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