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1.

統合失調症と自閉スペクトラム症に共通する6つのポイント

 歴史的に、統合失調症と自閉スペクトラム症(ASD)は、一方は精神疾患、もう一方は神経発達障害として、それぞれ異なる疾患に分類されてきた。しかし近年の研究では、これら2つの疾患の間には、重複している部分が多い可能性が示唆されている。サウジアラビア・Northern Border UniversityのNahi Sabih Alruwaili氏らは、両疾患の類似点を示す疾患発症に関与する生物学的メカニズムについてのレビューを行った。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2026年6月11日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・疾患発症に関与する生物学的メカニズムには、ドパミン、セロトニン、グルタミン酸、GABA、アセチルコリンといった神経伝達物質系の調節不全、BDNFシグナル伝達の変化、ヒスタミン調節の異常、ミクログリアの活性化、神経炎症、補体介在性のシナプス除去、脳腸相関シグナル伝達、エンドカンナビノイド系の機能不全などが挙げられる。・重要なポイントとして、上述の生物学的メカニズムは、うつ病、アルツハイマー病、多発性硬化症などの中枢神経系疾患にも認められる。・他の多くの中枢神経系疾患についても、統合失調症やASDと共通の生物学的メカニズムを有している可能性がある。しかし、統合失調症とASDの類似性は、次の6つの理由から顕著であった。(1)統合失調症とASDにみられる生物学的メカニズムが著しく類似している(2)遺伝率のパターンが高い整合性を示す(3)発達の経過が類似している(4)神経回路レベルでの病態が類似している(5)双方向的な疫学的リスクを共有している(6)神経発達スペクトラムに沿って推移している・こうした重複を認識することは、早期診断やバイオマーカーの開発、さらには疾患横断的な治療戦略(例えばメマンチン、α7ニコチン受容体作動薬、抗炎症薬などの既存薬のリポジショニングを含む)において、重要な意義を持つ可能性がある。・ただし、共通する経路を早期にターゲットとすることが、ASDにおける長期的な精神疾患リスクに影響するかを明らかにするには、縦断的な研究が必要とされる。

2.

加糖飲料によるうつ病リスク、そのメカニズムは?

 うつ病は、世界的な精神的・身体的障害の主要な原因となっており、その発症や進行は、食事、心理、生物学的要因の複雑な相互作用により影響を受けることが報告されている。近年の研究により、加糖飲料(SSB)の摂取とうつ病リスクとの関連が示唆されているものの、この関連の根底にある生物学的メカニズムについては、依然として十分に解明されていない。中国・吉林大学のZhirong Li氏らは、SSBの摂取とうつ病発症との関連を評価するため、UKバイオバンクのデータを用いた検討を行った。Nutrition Journal誌オンライン版2026年6月20日号の報告。 UKバイオバンクの参加者19万2,045例のデータより、Cox比例ハザードモデルを用いて、SSB摂取とうつ病発症とのプロスペクティブな関連を検討した。SSBの摂取は、24時間食事回想法(Oxford WebQ)で評価された5つの飲料カテゴリーの合計とした。さらに、多様な集団を対象とした3つの外部データセット(NHANES、YRBSS、江蘇省データベース)を用いて、この関連の一貫性を検証した。加えて、タンパク質、代謝産物、炎症マーカー、脳画像表現型が、SSBの摂取とうつ病との関連を媒介する統計的に整合性のある候補因子となる可能性があるかを調査した。 主な結果は以下のとおり。・SSBの摂取量が多い群では、非摂取群と比較し、うつ病発症リスクが18%高いことが示された(ハザード比:1.18、95%信頼区間:1.11~1.25)。・この関連の方向性は、外部データセットにおいても一貫して認められた。・エラスティックネット正則化を用いて229種類のタンパク質からなる血漿プロテオミクスシグネチャーを構築したところ、これはうつ病発症リスクの増大との関連が認められた。・探索的な媒介分析では、72種類のタンパク質、36種類の代謝産物、5種類の炎症マーカーが候補媒介因子として特定された。・タンパク質レベルでは、IL1RNが最も強い媒介効果(9.6%)を示し、代謝産物および炎症マーカーのレベルは、それぞれ不飽和度と好中球数が最も強い効果を示した。 著者らは「本研究では、タンパク質、代謝産物、炎症マーカーが、SSBの摂取とうつ病発症との関連を媒介する統計的に整合性のある候補因子である可能性が示唆された。これらの知見は、探索的かつ仮説生成的なものであり、今後は、これらの経路を検証し、うつ病予防のための食事介入のターゲットとしての可能性を評価するための実験的研究が求められる」としている。

3.

新ガイドラインで変わり始めたうつ病治療/塩野義

 2025年12月に『うつ病診療ガイドライン2025』が公表された1)。ゼロベースで全面的に改訂された本ガイドラインでは、エビデンスに基づく治療に加え、患者と医療者が治療方針を共に決める「SDM:Shared Decision Making(共有意思決定)」や、症状を定量的に評価しながら治療を進める「MBC:Measurement-Based Care(測定に基づく診療)」が重視された。 塩野義製薬は2026年7月1日に「新ガイドライン導入で変わり始めたうつ病治療 患者と医師が“一緒に考える”診療の最前線を解説」と題したプレスセミナーを開催した。加藤 正樹氏(関西医科大学 精神神経科学講座)が登壇し、うつ病診療の課題、『うつ病診療ガイドライン2025』の概要、新たに期待される薬剤について解説した。うつ病診療の課題―早期改善への期待と治療継続の難しさ 多くの抗うつ薬が開発されてきたにもかかわらず、薬物治療に対する医師の満足度は低いことが指摘されている。患者を対象とした調査では、治療に対する要望として「症状を早く改善してほしい」が最も多く、「自分の病気について詳しく知りたい」「有効な薬があるなら早く服用したい」「症状のつらさを医師に聞いてほしい、理解してほしい」といった回答が続いた。 この背景には、従来の抗うつ薬の効果が現れるまでには、一定の時間を要するということがある。既存の抗うつ薬のほとんどがモノアミン仮説に基づいて開発されたものであり、セロトニンやノルアドレナリンなどのモノアミン神経伝達を調節する。これらの薬剤では、シナプス間隙のモノアミン神経伝達には比較的早期から変化が生じる一方、臨床的な抗うつ効果を実感するまでには一定の時間を要する。患者によっては、効果を実感する前に有害事象が発現し、治療を中止してしまうこともある。 治療中止の背景には、薬剤の有害事象や効果不十分だけでなく、用量不足、治療期間不足、患者の希望と治療内容の不一致、医師と患者のコミュニケーション不足など、医療者側の要因もある。患者側でも、改善を実感できないことによる治療意欲の低下や、症状が軽減した段階で「治った」と判断して服薬を中止することがある。  このような背景から、コミュニケーションや薬物治療の質の向上を目指して『うつ病診療ガイドライン2025』が作成された。「診療の地図」として作成された新ガイドライン 本ガイドラインは、「今どこに立ち、次に何を考えるべきか」を整理する診療の地図として設計され、ゼロベースで全面的に改訂された。改訂を貫く3つの考え方として、「Patient-Centered Care」「SDM」「MBC」がある。 Patient-Centered Careの観点では、本ガイドラインの作成に当事者・家族も参加し、治療方針の検討に、当事者・家族の声が組み込まれた。 SDMは、医師が一方的に治療方針を決めるのでも、患者に判断を委ねるのでもなく、医師が信頼できる情報と各治療のメリット・デメリットを提示したうえで、患者の希望、過去の治療歴、副作用歴などを踏まえて治療を決定するものである。うつ病治療では、ある選択肢がすべての患者に明確に優れているとは限らない。効果だけでなく、副作用、服薬方法、生活上の制約などに対する患者の価値観も異なるため、患者が治療方針の決定に参加することが重要となる。 SDMの実践に欠かせないのがMBCである。これは、PHQ-9やQIDSなどの定量的な評価尺度で症状や治療反応を評価し、数値を基に治療を調整することで、漫然とした治療継続を防ぐものだ。患者自身が質問票に回答することで、直近の睡眠、食欲、集中力、希死念慮などを定期的に振り返ることができる。診察時に伝え忘れやすい症状を補足できるほか、医師も変化を把握しやすくなり、重要な症状の聞き漏らしを防ぐことにつながる。また、評価結果を患者にフィードバックすれば、薬剤を増量・変更する理由も共有しやすくなる。MBCを導入した群と導入しなかった群を比較した無作為化試験のメタ解析では、MBC導入群の寛解率が約10%高かったことも報告されている2)。「今後期待される治療」として掲載されたズラノロン 本ガイドラインでは、各臨床疑問に対する推奨とは別に、うつ病診療に役立つ情報を「トピックス」として掲載している。その中の1つが「今後期待される治療」である。 ガイドライン作成のためにシステマティックレビューを開始した時点で、本邦で使用できなかった薬剤は、臨床疑問に対する正式な推奨の対象には含まれない。このため、従来の抗うつ薬とは異なる作用機序を持つ治療薬などが、将来の治療選択肢としてトピックス内で紹介された。 そのなかで、本邦で使用可能となった薬剤がズラノロンである。ズラノロンは、GABAA受容体に作用し、GABAのシグナル伝達を促進することで抗うつ作用を発揮する新規作用機序の薬剤で、2026年3月に発売された。 ズラノロンの特徴の1つは、連日服用を長期間継続する従来の抗うつ薬とは異なり、一定期間の投与を基本とする点にある。具体的には、14日間の投与後に最低6週間の休薬期間を設ける。これは「2週間服用すればうつ病の治療が終了する」という意味ではない。投与終了後も効果の持続が期待される一方、十分な改善が得られない患者や、時間の経過とともに症状が再び悪化する患者も想定される。そのため、投与終了後も症状や社会生活上の機能を継続して評価し、必要に応じて他の薬物療法や精神療法、再投与などを検討する必要がある。 最後に、これからの新しいうつ病診療について、加藤氏は「うつ病治療は、医師にすべてを任せるものから、患者が自身の希望を伝え、医療者と共に治療を選択するものへと変わりつつある。最初の治療で薬剤が合わない場合でも、それは次の治療選択肢を検討する段階に進んだことを意味するため、焦る必要はない。治療は段階的に続けることが重要である」とまとめ、講演を締めくくった。

4.

ベンゾジアゼピンの長期使用は統合失調症の認知機能低下と関連しているか

 統合失調症患者に対するベンゾジアゼピン(BZD)の長期使用と認知機能との関連については、十分に解明されていない。中国・上海交通大学のCaiping Liu氏らは、統合失調症におけるBZDの長期使用と認知機能との関係を調査するため、コホート研究を実施した。BMC Psychiatry誌オンライン版2026年6月10日号の報告。 本研究では、中国の統合失調症患者を対象とした非定型抗精神病薬による治療に関する観察研究(SALT-C)のデータを用いて評価を行った。BZDを60日以上使用していた長期使用患者57例を対象とし、年齢、性別、罹病期間、使用された非定型抗精神病薬について傾向スコアを用いてマッチさせたBZD非使用患者57例との比較を行った。認知機能はモントリオール認知評価(MoCA)、精神病症状は陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、疾患重症度は臨床全般印象度-重症度(CGI-S)尺度、心理社会的機能は個人的・社会的機能遂行度尺度(PSP)を用いて評価した。群間比較には、独立サンプルのt検定またはマン・ホイットニーのU検定を用いた。BZD使用者におけるBZD用量とMoCA合計スコアとの関連を評価するために、スピアマンの順位相関係数による分析を行った。また、MoCA合計スコアに関連する因子の検討には、重回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・BZD長期使用患者は、BZD非使用患者と比較し、MoCA合計スコアが有意に低かった(16.02±6.69 vs.19.33±7.11、FDR補正p値=0.048)。・PANSS、CGI-S、PSPの合計スコアでは、両群間に有意な差は認められなかった(各々、p>0.05)。・BZD用量とMoCAスコアとの間には、有意な関連は認められなかった(r=-0.098、p=0.466)。・重回帰分析において、認知機能の低下と独立して関連している因子は次のとおりであった。【BZDの長期使用】β=-0.182、p=0.008【PANSS合計スコア】β=-0.217、p=0.003【抗コリン負荷】β=-0.199、p=0.008・教育年数と認知機能との間には、正の関連が認められた(β=0.460、p<0.001)。 著者らは「統合失調症患者において、BZDの長期使用は認知機能の低下と関連していることが明らかとなった。これは、認知機能をモニタリングし、長期にわたる投与を避けるべきであることを示唆している」としている。

5.

テストステロン処方前、ガイドラインに沿った診断は12%

 テストステロン製剤を処方された男性の多くが、事前に必要な検査を受けていない可能性があることが、新たな研究で示された。テストステロン製剤の処方前に、ガイドラインに沿った診断検査を受けていたのは12%にとどまっていたという。米ミシガン大学アナーバー校内科学分野のMaria Papaleontiou氏らによるこの研究結果は、米国内分泌学会年次学術集会(ENDO 2026、6月13~16日、米シカゴ)で発表された。 Papaleontiou氏はニュースリリースで、「本研究結果は、患者ケアを改善し、不適切なテストステロン製剤の処方を削減できる機会があることを示している。長期的には、これらの知見が診療の質改善の取り組みや臨床意思決定支援ツールの開発につながり、ガイドラインに沿った一貫性のあるテストステロン製剤処方の促進に寄与する可能性がある」と述べている。 研究チームは、2020~2025年にミシガン大学医療センターで性腺機能低下症と診断され、テストステロンを処方された男性200人(平均年齢52.5歳)をランダムに抽出し、診療記録を分析した。男性での性腺機能低下症は、精巣の機能低下に伴い十分な量のテストステロンを産生できなくなる状態をいう。 対象者に多く認められた併存疾患は、肥満(63%)、高血圧(52%)、うつ病(40%)、糖尿病(28%)、関節炎(28%)であった。テストステロン製剤を処方された患者のうち、午前5~10時の検査で2回、低テストステロン値(総テストステロン値300ng/dL未満、遊離テストステロン70pg/mL未満、または生物学的利用可能テストステロン値の低値)が確認され、LH(黄体形成ホルモン)および/またはFSH(卵胞刺激ホルモン)の測定が行われ、テストステロン療法の禁忌がないことが確認されていた患者は12%にとどまっていた。 また、初回のテストステロン製剤処方前の1年以内に前立腺特異抗原(PSA)検査を受けていた患者は62%、全血球計算(CBC)を受けていた患者は77%であった。さらに、テストステロン製剤処方前の併存疾患として、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が55%、前立腺がんが4%に認められ、1.5%ではPSA値が4ng/mLを超えていた。テストステロン製剤を処方した医師の内訳は、プライマリケア医が45%、泌尿器科医が35.5%、内分泌科医が18%、その他の診療科医が1.5%であった。処方されたテストステロン製剤では、クリームやジェルなどの外用剤(68.5%)が最も多かった。 Papaleontiou氏らは、「テストステロン製剤の処方をガイドラインに沿ったものに改善することで、臨床的にテストステロン療法を必要としない可能性がある患者における回避可能なリスクを防ぐことができる」との見方を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

6.

日光浴は精神神経疾患の予防に有効か?

 生態学的研究により、日光が精神疾患の発症に及ぼす影響が明らかにされてきた。しかし、個人レベルの日光曝露と精神疾患の進行への影響に関するエビデンスは限られている。中国・華中科技大学のXiaodie Li氏らは、日光曝露と精神疾患との関連を明らかにするため、プロスペクティブコホート研究を実施した。Public Health誌2026年8月号の報告。 英国バイオバンクのデータベースより、データを取得した。日光曝露に関するデータは、自己申告による質問票から聴取した。日光曝露と初回精神疾患発症、精神疾患の多疾患併存、すべての原因による死亡との関連性を検討するため、制限付き3次スプラインおよびCox比例ハザードモデルを用いた。多状態モデルを用いて、日光曝露が精神疾患の経過に及ぼす影響を検討した。最後に、これらの関連性について季節的および性別による違いを評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象者27万3,261例のうち初回精神疾患発症患者は3万3,964例、精神疾患の多疾患併存患者が8,306例、死亡例は1万7,233例であった。・平均日光曝露量と初回精神疾患発症、精神疾患の多疾患併存、死亡との間には非線形関係が認められ、1日1.5時間でリスクが最も低いことが明らかとなった。・多状態モデル分析の結果、日光曝露が1日1.5時間超では、1日1.5時間の場合と比較し、ベースラインから死亡および初回精神疾患発症への移行リスク、とくにうつ病、認知症、物質使用障害への移行リスクの増加との有意な関連が認められた。・過剰な日光曝露は、初回精神疾患発症から精神疾患の多疾患併存への移行リスク、とくに不安症または認知症から精神疾患の多疾患併存への移行リスクの増加とも有意な関連が認められた。・さらに、日光曝露が精神疾患の移行に及ぼす季節的および性別による影響も観察された。 著者らは「適切な日光曝露は、精神疾患の進行において重要な役割を果たす可能性がある。今回の研究結果は、精神疾患の予防とマネジメントにおける日光浴がエビデンスに基づいた戦略である可能性を示唆している」としている。

7.

薬物治療抵抗性統合失調症に有効な治療は?~ネットワークメタ解析

 抗精神病薬は、統合失調症に対して必ずしも万能な効果を示すわけではないにもかかわらず、抗精神病薬治療抵抗性患者に対する最適な治療戦略は依然として明らかになっていない。ガイドラインでは、薬物療法、心理療法、非侵襲的脳刺激(NIBS)などいくつかの治療法が推奨されているが、どれが最も効果的かは不明であった。ドイツ・ミュンヘン工科大学の古川 由己氏らは、抗精神病薬治療抵抗性統合失調症患者に対する現在のエビデンスをシステマティックにレビューし、ネットワークメタ解析を実施した。EClinicalMedicine誌2026年5月22日号の報告。 Cochrane Schizophrenia Groupレジストリ(2025年1月13日まで)およびPubMed(2026年1月8日まで)を検索し、1回以上の適切な抗精神病薬4週間投与後も症状が持続する抗精神病薬治療抵抗性統合失調症患者を対象としたランダム化比較試験(RCT)を抽出した。評価者は、盲検化したうえで実施した。主要アウトカムは、標準化平均差(SMD)と95%信頼区間(CI)を用いたランダム効果ネットワークメタ解析により分析した、全般症状の変化とした。 主な結果は以下のとおり。・59件のRCT(参加者:5,409例、平均年齢:39.8歳、男性:3,416例、女性:1,441例)が対象となり、そのうち5,013例を主要解析対象に含めた。・抗精神病薬併用療法(18件、575例、SMD:-0.25、95%CI:-0.46~-0.04、CINeMA:非常に低い)および電気けいれん療法(5件、97例、SMD:-0.51、95%CI:-0.96~-0.06、CINeMA:非常に低い)は、同じ抗精神病薬を継続するよりも効果的である可能性が示唆された。・精神疾患に対する認知行動療法(CBTp)は、同じ抗精神病薬を継続するよりも効果があるという弱いエビデンスが示された(5件、340例、SMD:-0.23、95%CI:-0.58~0.11、CINeMA:非常に低い)。・その他の戦略(キサノメリン・トロスピウム併用療法、用量漸増、経頭蓋磁気刺激療法、クロザピンまたは他の抗精神病薬への切り替え)については、結論が得られなかった。・併用療法では、有害事象の増加がみられた(オッズ比:1.93、95%CI:1.26~3.00)。・クロザピンおよび非クロザピンによる治療抵抗性患者の間で、サブグループ間の差は認められなかった。 著者らは「抗精神病薬治療抵抗性統合失調症患者に対する治療選択肢に関して、結果は非常に不確実であった。これらの疑問を明らかにするためには、さらなる直接比較試験が必要とされる。また、用量漸増やクロザピンへの切り替えを支持するエビデンスは認められなかった。抗精神病薬併用療法と電気けいれん療法の併用療法の有効性を示唆するエビデンスは非常に弱く、検討の余地はあるものの、十分な注意が必要である」と結論付けている。

8.

高齢者マルチモビディティ パーフェクトガイド

高齢者の多疾患併存(マルチモビディティ)をふまえたベストプラクティスを考える本邦初! マルチモビディティをテーマにした高齢者診療シリーズの登場です。高齢者を診る機会は増えているものの、マルチモビディティ(多疾患併存)の高齢者をいかに診るべきかについての明確な指針は必ずしも存在していません。高齢者医療のアウトカムを見据え、高齢者に寄り添う診療を実践するため、本シリーズでは枢要と考えられるテーマを15領域(=各論巻のタイトル)設定し、総論巻+各論巻15冊の全16冊からなる“高齢者マルチモビディティ パーフェクトガイドシリーズ”を刊行します。今回紹介する『総論 高齢者マルチモビディティを考える』は、シリーズ全体を貫く「大切な視点」を解説するとともに、その後に続く各論巻の責任編集者による各領域の総説を掲載しています。同時刊行した『各論1 高齢者のフレイル・サルコペニアにおけるマルチモビディティを考える』は、フレイル・サルコペニアを軸に、マルチモビディティ高齢者診療の最適解を探ることを目的として、主要な併存疾患や症候ごとに診療の要点を整理し、予防や介入の視点からの対応も具体的に解説しました。「多疾患を抱えた高齢者を全人的に診る」という理念に立脚した、高齢者に寄り添う診療の実践を支える羅針盤となるシリーズです。読者対象一般医(全診療科)、総合診療医、高齢者医療を担うメディカルスタッフ総論 高齢者マルチモビディティを考える画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する総論 高齢者マルチモビディティを考える定価6,600円(税込)判型B5判(並製)頁数312頁発行2026年6月総編集宮地 良樹(京都大学名誉教授、静岡社会健康医学大学院大学学長)、伊藤 裕(慶應義塾大学名誉教授、慶應義塾大学予防医療センター特任教授)、荒井 秀典(国立長寿医療研究センター理事長)ご購入はこちらご購入はこちら各論1 高齢者のフレイル・サルコペニアにおけるマルチモビディティを考える画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する各論1 高齢者のフレイル・サルコペニアにおけるマルチモビディティを考える定価4,950円(税込)判型B5判(並製)頁数272頁発行2026年6月責任編集荒井 秀典(国立長寿医療研究センター理事長)ご購入はこちらご購入はこちら

9.

コーヒー・紅茶はうつや不安の軽減に有効か?

 イランにおけるメンタルヘルスの問題の深刻化と独特な飲用習慣を踏まえ、イラン・テヘラン医科大学のMohammad Matin Mahjourian氏らは、紅茶やコーヒーの摂取と抑うつ・不安症状との関連を明らかにするため研究を実施した。Scientific Reports誌オンライン版2026年5月31日号の報告。 本横断研究では、2018年2月〜2019年7月、イランの主要5都市において層化多段階クラスターサンプリング法を用いて対象成人1,994人を募集した。紅茶とコーヒーの摂取量は、自己申告による1日または1週間の摂取量に基づいて評価した。紅茶については3つのカテゴリーに分類、コーヒーについては摂取者と非摂取者に分類した。抑うつ・不安症状の評価には、イランで妥当性が検証された病院不安・抑うつ尺度(HADS)を用いた。二項ロジスティック回帰モデルを用いて、HADSで定義された抑うつ・不安症状のオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定した。バイアスを最小限に抑えるため、主な交絡因子について段階的に調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・紅茶の摂取と、抑うつ症状または不安症状との間には、調整前モデルおよび調整後モデルのいずれにおいても有意な関連は認められなかった(傾向検定p>0.05)。・コーヒーの摂取に関しては、調整前解析では、コーヒー摂取者(1日1杯以上)は、非摂取者(1日1杯未満)と比較し、抑うつ症状(OR:0.60、95%CI:0.43〜0.84、p=0.003)および不安症状(OR:0.73、95%CI:0.54〜0.99、p=0.045)のリスクが低いことが示唆された。・しかし、潜在的な交絡因子を調整すると、この関連は弱まった。・完全調整モデルでは、コーヒー摂取は、抑うつ症状のリスクを低下させる傾向が認められたが(OR:0.70、95%CI:0.49〜1.01、p=0.057)、不安症状との関連は認められなかった。 著者らは「紅茶の摂取と抑うつ症状や不安症状との関連は認められなかったが、コーヒーの摂取は抑うつ症状を軽減する傾向が示唆された。今回の結果を裏付けるためにも、プロスペクティブコホート研究が求められる」としている。

10.

統合失調症患者に多い血液型は?

 中国・Wuxi Taihu UniversityのKangying Yu氏らは、統合失調症患者と健康対照者におけるABO式血液型の分布を調査した。Medicine誌2026年5月15日号の報告。 中国・無錫市の精神疾患患者6,772例(2003〜25年)の臨床データを対象に、レトロスペクティブ解析を行った。同時期に定期健康診断を受けた健康対照者871人を対照群とし、両群間のABO式血液型分布の違いを分析した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者における血液型の分布は、A型2,599例、AB型574例、B型1,646例、O型1,953例であった。・それぞれの血液型の割合は、A型38.4%、AB型8.5%、B型24.3%、O型28.8%であった。・対照群における血液型の分布は、A型277人、AB型85人、B型252人、O型257人であり、それぞれの割合は31.8%、9.8%、28.9%、29.5%であった。・年齢、性別、婚姻状況などの因子を調整した後、Firthロジスティック回帰分析では、統合失調症患者と対照群の間でABO式血液型分布に統計的に有意な差が認められた。・統合失調症群では対照群と比較し、A型の割合が高く、B型の割合が低いことが明らかになった。 著者らは「統合失調症患者においてA型の割合は一般集団よりも高く、B型の割合は一般集団よりも低いことが示された」としている。

11.

日本人が「うつ病」と一緒に最も検索する臨床症状は?

 うつ病患者は、自殺や就労障害のリスクが高いため、発症後できるだけ早期に適切な治療を提供することがきわめて重要である。これまでのオンライン検索動向に基づくうつ病への関心に関する研究は、時間的変化や地域差に焦点を当てたものがほとんどで、検索クエリの内容に焦点を当てた分析は限られていた。横浜市立大学のRikako Shimizu氏らは、日本におけるうつ病に関するオンライン検索動向を明らかにし、うつ病に対する社会的な認識と臨床診断における症状構成概念との関連性を調査することを目的とし、本研究を実施した。PloS One誌2026年5月12日号の報告。 Yahoo! JAPANより入手したデータを用い、2022年1月〜2024年12月における「うつ病」を含む検索クエリの検索ボリュームに関する記述的観察研究を実施した。毎年うつ病に関する上位500件の検索クエリの検索量およびうつ病と併記された症状に関する検索クエリの検索量を比較した。これらの症状は、国際プライマリケア分類第2版(ICPC-2)の「第1成分:症状と愁訴」に基づいて分類した。さらに、ICPC-2に基づいて分類された症状は、精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5-TR)におけるうつ病の診断基準に合致するかどうかで分類した。 主な内容は以下のとおり。・「うつ病の症状」の検索量は、「うつ病」単独の検索量よりも多かった。・うつ病と併記された症状の多くは、DSM-5-TRにおけるうつ病の診断基準と合致していた。・とくに、臨床現場でもよくみられる睡眠障害が、最も頻繁に併記された症状であった。 著者らは「オンライン上でのうつ病の症状に対する一般の認識は、臨床診断の概念とある程度一致している可能性が示唆された。オンライン検索データは、プライマリケアの現場において、患者がうつ病の症状をどのように認識し、どのように捉えているかを臨床医が理解するのに役立つ可能性がある」としている。

12.

日本人統合失調症外来患者の再発率と関連する要因は~MUSASI研究

 社会機能障害は、統合失調症患者の生活の質に大きな影響を及ぼすが、社会機能に関連する因子が再発頻度によって異なるかどうかは明らかになっていない。関西医科大学の嶽北 佳輝氏らは、日本人統合失調症外来患者を対象に、再発頻度別にこれらの因子の違いを検討するため、本研究を実施した。Psychological Medicine誌2026年5月29日号の報告。 本研究は、日本の精神科診療所における統合失調症の多施設共同治療調査・評価(MUSASI)として実施された全国横断研究である。2023年9~10月にかけて日本国内の精神科診療所330施設で実施した。解析対象は、統合失調症関連疾患と診断された患者1万81例。対象患者は、非再発群、低頻度再発群(再発回数:1~2回)、高頻度再発群(再発回数:3回以上)に分類した。社会機能の評価には、社会的職業的機能評価尺度(SOFAS)を用い、61点以上を高機能と定義した。 主な結果は以下のとおり。・本研究には、非再発群3,670例、低頻度再発群4,428例、高頻度再発群1,983例が含まれた。・全体として、患者の55.8%(5,631例)が高社会機能群に分類された。・全群において、高社会機能と有意に関連していた因子は、就労、過去1年間の不安定期間の短縮、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコアの低さ、陰性症状の少なさであった。・非再発群と低頻度再発群では、陽性症状と薬剤関連因子が関連していた。・低頻度再発群と高頻度再発群では、婚姻歴が関連していた。・高頻度再発群では、遅発性ジスキネジアの欠如が因子として浮上した。 著者らは「社会機能に関連する因子は再発頻度によって異なり、再発頻度に基づいた層別介入戦略の必要性が示唆された」としている。

13.

タモキシフェン治療中の乳がん患者のホットフラッシュ、ベンラファキシンが有望(HOFLA-V試験)/日本乳癌学会

 内分泌療法治療中の乳がん患者において、発汗や動悸を伴う血管運動症状である「ホットフラッシュ」は、患者の約50~80%と高頻度に発生する。とくに閉経前患者や、LH-RHアゴニスト併用症例においては、その頻度や重症度が高い。更年期障害に伴うホットフラッシュに対しては、ホルモン補充療法が第一選択となるが、乳がん患者においては再発リスクを増加させる懸念があるため推奨されていない。非ホルモン療法の中では、抗うつ薬ベンラファキシン、抗けいれん薬ガバペンチンについて、NCCNガイドラインでは「preferred」とされ推奨度が高いが、日本人乳がん患者、とくに閉経前患者におけるエビデンスは不足している。こうした背景を踏まえ、日本人乳がん患者における内分泌療法中のホットフラッシュに対するベンラファキシンの有効性および安全性を検討した単施設前向き単群非盲検パイロット試験「HOFLA-V試験」が実施され、結果を筑波大学附属病院の佐藤 璃子氏が第34回日本乳癌学会学術総会で発表した。<HOFLA-V試験>・対象:18歳以上60歳以下、StageI~IIIC期の原発性乳がん患者。術後療法としてタモキシフェンを内服しており(LH-RHアゴニスト併用有無は問わない)、週に14回以上のホットフラッシュを認めるECOG PS 0~1の患者(大うつ病もしくはうつ病と診断されている患者、甲状腺疾患治療中の患者、重度の肝機能障害を有する患者、およびSSRI・SNRI・強力または中程度のCYP2D6阻害薬・CYP3A阻害薬およびCYP3A誘導薬・ガバペンチノイド・MAO阻害薬を使用している患者は除外)。・試験群:ベンラファキシン37.5mg/日を4週間投与。投与2週目の診察時に効果不十分かつ患者自身が希望した場合に限り、75mg/日への増量を可能とした。・評価項目:[主要評価項目]投与開始4週目における投与前からの「ホットフラッシュスコア」変化率(患者が毎日記録する日誌に基づき、日々の症状を軽度[1点]~非常に重度[4点]の4段階で評価し、それぞれの発生回数を乗じた合計値を1日のスコアとした)[副次評価項目]安全性(CTCAE v5.0を用い、投与2週目および4週目に評価)など 主な結果は以下のとおり。・2022年11月~2024年6月に20例が登録された。安全性解析集団は20例全例とし、主要解析集団については、Grade1の有害事象(めまいなど)により投与1週目で中止を希望した2例、および後日不適格が判明した1例を除く17例とした。・主要解析集団17例のベースライン特性は、平均年齢45.5歳、全例がECOG PS 0および閉経前であった。治療法については、LH-RHアゴニスト+タモキシフェン併用が11例(65%)、LH-RHアゴニスト+タモキシフェン+アベマシクリブ併用が2例(12%)、タモキシフェン単独が4例(24%)であり、LH-RHアゴニスト併用例が全体の約76%を占めた。・主要評価項目である投与4週目におけるホットフラッシュスコアの変化率は、平均で49.8%の減少(改善)を示した。個別の症例をみると、17例中16例でスコアの減少が認められた。・ホットフラッシュスコア実測値の推移をみると、ベースライン時の中央値79(範囲:49~125)から、投与4週目には中央値33(範囲:11~75)へと有意に低下した。この改善効果は投与1週目から速やかに発現し、各評価ポイント(1~4週目)のすべてにおいてベースラインと比較して有意な改善(すべてp<0.001)が維持されていた。・安全性に関して、認められた有害事象はすべてGrade1または2にとどまり、Grade3以上の有害事象は発生しなかった。全Gradeで報告された主な有害事象は、頭痛(35.0%)、悪心(35.0%)、不眠症(25.0%)、口内乾燥(20.0%)、浮動性めまい(20.0%)などであった。・内服完遂率および継続状況について、主要解析対象の17例は全例が全4週間の内服を完遂し、服薬遵守率は96.4%であった。2週目の時点で75mg/日への増量を希望したのは5例(29.4%)であった。試験終了時および3ヵ月後において、15例(88%)がベンラファキシンの継続投与を希望した。 佐藤氏は、単施設・単群のパイロット試験であることを研究の限界として挙げたうえで、ベンラファキシン投与によるホットフラッシュの約50%の改善効果は、これまでに海外で報告されている40~60%程度の改善率とおおむね一致していると説明した。特筆すべき点として、投与1週目という早期から症状緩和が得られること、そして、既存データが乏しかった「閉経前かつLH-RHアゴニスト併用例」を多く含む日本人集団において改善効果が示されたことを挙げ、非ホルモン療法の選択肢となりうるとした。

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日本における統合失調症治療、最新の推奨事項〜エキスパートコンセンサス

 従来の統合失調症薬物治療ガイドラインは、日常診療における臨床的に重要な問題すべてに対して十分に対応できていなかった。関西医科大学の嶽北 佳輝氏らは、現在の臨床状況を反映させるため、日本臨床精神神経薬理学会(JSCNP)の2021年専門家コンセンサスを改訂することを目的とし、本研究を実施した。Schizophrenia誌オンライン版2026年6月2日号の報告。 JSCNPおよび日本神経精神薬理学会(JSNP)に所属する精神科専門医154人が、臨床的に関連性の高い21の状況における治療選択肢を9段階リッカート尺度(1=「強く反対」、9=「強く賛成」)を用いて評価した。 主な内容は以下のとおり。・回答率は44%であった。・主な症状別の推奨される第1選択薬は以下のとおりであった。【陽性症状】リスペリドン、ブレクスピプラゾール、オランザピン、パリペリドン、ブロナンセリン【陰性症状および認知機能低下】アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール【うつおよび不安】アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、ルラシドン、オランザピン、クエチアピン【滅裂思考】ブレクスピプラゾール、アリピプラゾール、オランザピン【興奮および攻撃性】オランザピン、リスペリドン【社会的統合】アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、ルラシドン【錐体外路系副作用または糖尿病の高リスク】ブレクスピプラゾール、クエチアピン、アリピプラゾール・遅発性ジスキネジアに対しては減量または薬剤変更を検討する。・再発を繰り返し、患者の要望、アドヒアランス不良の場合には、長時間作用型注射(LAI)抗精神病薬の導入適応となりうる。・治療抵抗性統合失調症に対してはクロザピンへの切り替えが第1選択となる。・副作用対策として、抗精神病薬の減量および単剤療法への簡略化の両方が最も重要な要因として挙げられた。・第2世代抗精神病薬は、ほとんどの場合第1選択薬または第2選択薬として評価された。一方、第1世代抗精神病薬は、おおむね第3選択薬として評価された。 著者らは「これらの推奨事項は、既存のエビデンスだけでは十分に対応できない臨床的に困難な状況における治療選択と共同意思決定(SDM)のための実践的な指針となる」としている。

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最も老化しにくい睡眠時間は?

 睡眠時間が短いことだけでなく、長すぎることも、多くの臓器の生物学的老化の加速指標と関連していることが報告された。生物学的老化の進行が最も緩やかな傾向は、1日の睡眠時間が6.4~7.8時間の人に見られるという。米コロンビア大学ヴァジェロス医学校のJunhao Wen氏らの研究によるもので、詳細は「Nature」に5月13日掲載された。 この研究では、英国で約50万人の一般住民を対象に行われている大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを用いて、睡眠時間とさまざまな臓器の老化との関連性が検討された。睡眠時間は自己申告により評価された。一方、臓器の老化については、画像検査データ(in vivo imaging:生体内イメージング)、および、血漿中のタンパク質や代謝産物の網羅的なデータを機械学習により解析して、脳や心臓、肺、肝臓などの17の臓器・システムを含む23種類の「生物学的老化時計」を作成して評価した。 この研究手法について、論文の上席著者であるWen氏は、「例えば肝臓では、タンパク質、代謝産物、画像データなど複数の情報に基づく老化時計が構築されている。これらを活用することで、睡眠と老化時計との関連の有無を調べることができる」と解説している。 このような解析の結果、睡眠時間と多くの臓器の老化との間に、U字型の関連があることが明らかになった。一晩の睡眠時間が6時間未満の人や8時間以上の人は、指標上の生物学的老化が全身的に加速している傾向が見られた。最もリスクが低い老化パターンを示したのは、一晩に6.4~7.8時間の睡眠を取っていると報告した人たちだった。 また、睡眠不足は、うつ病、不安症、肥満、2型糖尿病、高血圧、心臓病など、多くの疾患のリスク上昇と関連していた。他方、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息などの肺疾患、および胃炎や逆流性食道炎などの消化器疾患は、睡眠時間が短すぎる場合と長すぎる場合のいずれにおいても、発症リスクの上昇と関連していることが判明した。 研究者らは、「今回の研究結果は睡眠が脳の健康だけでなく、全身の機能といかに深く結びついているかを浮き彫りにしている」と述べている。またWen氏は、「われわれの研究結果は、睡眠が脳や体全体の臓器の健康維持、代謝バランスや免疫システムの維持などにおいて、重要な役割を果たしているという考え方を裏付けるものだ」と総括。その上で、「今後の研究では、睡眠習慣の改善が、さまざまな臓器における生物学的老化を遅らせるのに役立つかどうかを検証していく」と付け加えている。

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精神疾患が障害による健康損失の最大の原因に

 2023年時点で精神疾患を抱えていた人は世界で約12億人に上り、1990年と比べてほぼ2倍に増加したことが、新たな大規模研究で明らかになった。また、精神疾患は現在、世界の障害による健康損失(障害生存年数〔YLD〕)の最大の原因となっていることも示された。Queensland Centre for Mental Health Research(オーストラリア)のDamian Santomauro氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet」5月23日号に掲載された。Santomauro氏は、「こうした増加傾向は、パンデミックに関連したストレスの長期的な影響に加え、貧困、不安定な生活環境、虐待、暴力、社会的つながりの希薄化といった、より長期的な構造的要因を反映している可能性がある」と述べている。 この研究では、2023年版世界疾病負担(GBD)研究のデータを用いて、204カ国・地域における12種類の精神疾患の有病率を推定した。また、各疾患の有病率に障害の重み付けを適用してYLDを算出し、さらに神経性やせ症については損失生存年数(YLL)も評価した。これらを基に、疾病負担の指標である障害調整生存年数(DALY)を評価した。12種類の精神疾患は、不安症、うつ病、気分変調症、双極症、統合失調症、自閉スペクトラム症(ASD)、素行症、注意欠如・多動症(ADHD)、神経性やせ症、神経性過食症、特発性知的発達症、その他の精神疾患であった。 その結果、2023年時点で12種類の精神疾患の有病者数は11億7000万人に上り、年齢標準化有病率は人口10万人当たり1万4,210.7人であった。これは、1990年と比較して、有病者数は95.5%増加、年齢標準化有病率は24.2%増加に相当した。2023年の精神疾患による世界全体のDALYは1億7100万で、全原因によるDALYの6.1%を占めた。また、精神疾患はDALYの原因として1990年の第12位から2023年には第5位へと上昇した。さらにYLDについては、2023年には精神疾患が全YLDの17.3%を占め、最大の要因となっていた。このほか、DALYに占める割合が大きかった精神疾患は不安症(304疾患中11位)、うつ病(15位)、統合失調症(41位)であることや、精神疾患の負担は男性よりも女性で大きく、年齢別では15〜19歳でピークに達することも示された。 論文の上席著者であるQueensland Centre for Mental Health ResearchのAlize Ferrari氏は、「今回の研究から、精神疾患による負担は15~19歳でピークに達することが示された。この時期は教育、就業、人間関係など、その後の人生の軌道を左右する重要な発達段階である」と述べている。 著者らは、この拡大する危機に対処するためには、メンタルヘルスケアへの投資拡大、治療へのアクセス向上、リスクの高い集団への支援強化が必要であるとしている。

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統合失調症の肥満に関連するリスク因子が判明〜メタ解析

 中国・Chongqing Mental Health CenterのJianmei Long氏らは、統合失調症患者における肥満の発生率およびその影響因子を調査するため、メタ解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2026年4月27日号の報告。 複数のデータベース(PubMed、Web of Science、Embase、Cochrane Library、CNKI、Wanfang Data、VIP Database、SinoMedを含む)より、包括的な文献検索を実施した。検索対象は、2025年5月26日までのすべての論文とした。メタ解析は、RevMan 5.4およびStata 18.0ソフトウェアを用いて実施した。 主な結果は以下のとおり。・18件の研究(統合失調症患者9,351例)が解析対象となった。・本メタ解析では、統合失調症患者における肥満の発生率は33.0%であった。・肥満リスク上昇と有意な関連(p<0.05)が認められた因子は次のとおりであった。【女性】オッズ比(OR):1.14、95%信頼区間(CI):1.10〜1.20【高血糖】OR:1.08、95%CI:1.04〜1.12【糖尿病】OR:2.36、95%CI:1.79〜3.10【高トリグリセライド血症】OR:1.13、95%CI:1.08〜1.18【高LDLコレステロール血症】OR:1.88、95%CI:1.45〜2.44【オランザピン使用】OR:7.40、95%CI:4.98〜11.00【抗精神病薬併用】OR:3.19、95%CI:2.31〜4.41【定型抗精神病薬使用】OR:1.46、95%CI:1.18〜1.82【非定型抗精神病薬使用】OR:1.70、95%CI:1.42〜2.03【赤血球増多】OR:2.80、95%CI:1.60〜4.90【低HDLコレステロール血症】OR:1.75、95%CI:1.41〜2.16 著者らは「現在のエビデンスによると、統合失調症患者における肥満の主なリスク因子は、女性、高血糖、糖尿病、高トリグリセライド血症、高LDLコレステロール血症、オランザピン使用、抗精神病薬併用、定型抗精神病薬使用、非定型抗精神病薬使用、赤血球増多、低HDLコレステロール血症であることが示唆された。臨床医は、統合失調症患者における肥満の発症を抑制し、生活の質を向上させるために、早期スクリーニングとターゲットを絞った介入を実施すべきである」と結論付けている。

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3分程度のゲームがうつ病の特徴をとらえる手がかりに?

 わずか3分程度のリンゴ狩りゲームが、うつ病の特徴をとらえる手がかりになる可能性があるとする研究が報告された。健康な人よりも早くにゲームの主要な活動であるリンゴの収穫をやめる人は、「アンヘドニア(無快感症)」を抱えている可能性が高かった。アンヘドニアとはうつ病患者の約70%に見られる症状の一つで、通常なら楽しいと感じることを楽しめなくなる症状である。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部神経科学教授でトランスレーショナル神経科学研究所所長のPaul Glimcher氏らによるこの研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に5月18日掲載された。 このゲームでは、プレイヤーは木から落ちてくるリンゴを収穫する。収穫を続けると、木から得られるリンゴの数は減っていく。そのため、プレイヤーは別の木に移動するかどうかを判断しなければならない。研究では、うつ病患者50人と健常者70人を対象に、プレイヤーがどの時点でその木からの収穫を切り上げ、別の木へ移るのかを調べた。研究グループは、人は出来事を「期待」と比較しながら評価するという前提に立ち、その判断の基準となる「参照点」がうつ病患者では高くなっている可能性があるという仮説に基づき、このゲームによる課題を設計した。 その結果、健常者は木から収穫できるリンゴの数が平均5個になるまで同じ木にとどまって収穫を続けていた。一方、うつ病患者は、うつ症状の重症度にもよるものの、その木から得られるリンゴの数が8~9個になった時点で別の木に移動する傾向が見られた。研究グループは、「これは、うつ病患者では健常者に比べて、収穫を切り上げる際の参照点が約50%高くなっている可能性を示している」と説明している。 Glimcher氏は、「このゲームによって、うつ病患者の脳内で何が起きているのかについて手がかりを得ることができる。将来的には、血圧測定により心疾患を見つけるのと同じくらいの信頼性でうつ病を特定できるようになることを期待している」と述べている。一方、論文の筆頭著者であるNYUのAadith Vittala氏は、「うつ病患者は、状況の変化に応じて期待値を適切に調整することが難しいようだ。それは、脳内でどのような仕組みの異常が起きているのかを示す手がかりになる」と説明している。 研究グループは、本研究結果は、患者ごとに異なるタイプのうつ病を見分けるのにも役立つ可能性があると見ている。共著者の1人であるNYUグロスマン医学部精神医学教授のDan Iosifescu氏は、「うつ病は現在、複数の異なる病態を含む包括的な概念として考えられるようになってきている」と指摘する。その上で、「参照点の測定によって、アンヘドニアに関連する特定のうつ病サブタイプを特定し、その脳内メカニズムを明らかにしながら、患者ごとに適した治療法を選択できる可能性がある。また、患者にスマートフォンゲームを毎週数分プレイしてもらうことで、対面診療を繰り返さなくても遠隔で状態を把握し、迅速に治療を調整できるようになるかもしれない」と話している。

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第325回 カタコトのアルツハイマー病女性がサイロシビンで会話を取り戻す

支えなしで移動できず、発する言葉といえばカタコトになってしまった重度のアルツハイマー病の高齢女性が、サイロシビン投与で自発的に会話をし始め、1人でキビキビと歩けるようになりました1,2)。アルツハイマー病が進行すると自発性、意思疎通、自制、運動能力、社交性が失われ、多大な心労や介護負担を強いるようになります。進行アルツハイマー病の目下の治療といえばせいぜい支持療法で、身体機能を目に見えて回復させることはおよそ不可能とみなされています。いわゆる幻覚キノコ(magic mushroom)の生理活性成分のサイロシビン(psilocybin)は、セロトニン5-HT2A受容体活性化を介して脳の広範な活動の起伏を大きく変えます。サイロシビンは安静時の神経活動を調整し、神経回路の分断を減らし、神経の機能的連結性を大掛かりに変えることがヒトの神経活動を可視化した試験で示されています。また、サイロシビンのようなセロトニン作動性サイケデリック成分は、樹状突起伸長やシナプス再編成などの可塑性を促すようです3)。サイロシビンの臨床研究の中心はもっぱら精神疾患で、最近になって軽度認知障害や初期アルツハイマー病患者のうつ病や不安に目が向けられるようになっています。一方、進行した認知症を対象とする臨床研究は非常に限られています。そのような中、ブラジルのホリスティック医療機関Ankh Cross AssociationのMarcus Lago氏らは、83歳の進行したアルツハイマー病の女性に、彼女の息子の同意を得てサイロシビンを投与することを試みました。投与されたのはシロシビンを含むミナミシビレタケ(Psilocybe cubensis)の一種のEnigma株です。最初に5g、1ヵ月の間をおいて次に3gが経口投与されました。最初の投与後に女性はどうやら熱を帯びて汗を多くかき、眠気を強くし、長く深い眠りにつきました。目覚ましい効果は投与からおよそ19時間後に表れます。女性は何年も会話といえばカタコト(monosyllabic)で自発的にヒトと接することがめっきり減っていましたが、思い出や想いのほどなどを4時間ほど自発的に話し始めたのです。また、いつも尿失禁していたのがサイロシビン服用後には膀胱の制御が改善して尿を自制できるようになりました。それに、服を1人で着るようになり、自発的に会話に加わり、移動するのに支えが必要だったのが介助なしでよりキビキビと移動できるようになりました。最初の投与から1ヵ月後にも尿の自制は保たれており、体の不自由さの改善も維持されていました。3gの追加投与後には言語表現がより豊かになり、表情模倣が改善し、ユーモアを発し、一層機敏に移動できるようになりました。アルツハイマー病の原因はまだはっきりとしていませんが、脳の神経回路の1つが別の回路を抑制して脳の機能を損なわせることを一端とするようです。サイロシビンなどのサイケデリック成分はそのような抑制が起きないようにする働きがあるのかもしれません2)。女性に投与されたサイロシビンの用量がだいぶ多かったこと、記されている経過といえば最初の投与から1ヵ月後までのみでより長期の観察を明記していないこと、体調の改善の持続のほどが不明であることなどを懸念する専門家がいる一方で、サイロシビンの可能性に期待の目も向けられています。目を見張るような症例報告であり、ほんの1例から多くの結論を引き出すことには用心しないといけませんが、どうやら臨床試験でのさらなる検討の価値があるとハーバード大学の研究者は今回の結果を評しています2)。進行したアルツハイマー病患者の体の不自由さはおよそ回復不能とみなされています。しかし進行アルツハイマー病でも体の自由が効くようにする底力(residual functional capacity)はどうやら残っており、脳の広範囲な伝達をサイロシビンで調整することで引き出せるのかもしれません1)。参考1)Lago M, et al. Front Neurosci. 2026;20:1813281.2)Woman with Alzheimer's starts conversing again after taking psilocybin / NewScientist3)Vann Jones SA, et al. Front Synaptic Neurosci. 2020;12:34.

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統合失調症における薬物治療反応と発達障害の遺伝的リスクとの関連

 統合失調症は、遺伝性の高い神経精神疾患である。そのゲノム構造は、注意欠如多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)などの神経発達障害のゲノム構造と重複することが報告されている。しかし、ADHDおよびASDのゲノムリスクが統合失調症症状に及ぼす影響は依然として不明であった。東北大学の宮原 一総氏らは、統合失調症における抗精神病薬の治療反応性に神経発達障害の遺伝的リスクが影響するかを検討するため、死後脳を用いてゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った。Frontiers in Psychiatry誌2026年4月27日号の報告。 統合失調症患者24例と対照群48例の死後脳からGWASデータを取得し、公開されているGWASデータを用いて多遺伝子リスクスコア(PRS)を算出した(ADHD:ADHD-PRS、ASD:ASD-PRS)。生前の臨床情報が入手可能な統合失調症患者19例を対象に、PRS、統合失調症症状の重症度、抗精神病薬治療反応性スコア(ARS)との相関分析を実施した。さらに、ADHD-PRSに基づいて患者を2つのサブグループ(ADHD-PRS高値群と低値群)に分類し、前頭前皮質における探索的遺伝子発現解析およびその後のパスウェイ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・陽性症状のARSは、ADHD-PRSと負の相関、ASD-PRSと正の相関を示したが、これらの関連性は多重検定補正後には統計学的に有意ではなかった。・全般的精神病理のARSおよび陰性症状のARSと、ADHD-PRSまたはASD-PRSとの間には相関は認められなかった。・遺伝子発現解析により、CHRNB2を含む神経精神疾患関連遺伝子など1,773個の差次的発現遺伝子が同定された。・これらの差次的発現遺伝子は、神経系およびミトコンドリア機能に関連する経路に多く認められた。 著者らは「本研究の結果は、神経発達障害のゲノムリスクが統合失調症患者の抗精神病薬に対する治療反応性に影響を及ぼしている可能性があり、この表現型における潜在的なマーカー分子が関与していることを示唆している。本研究のサンプルサイズが限られているため、探索的知見を検証するには、大規模コホートでのさらなる研究が必要とされる」としている。

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