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1.

うつ病に対する5つの抗精神病薬補助療法、その有効性と忍容性は?

 うつ病成人の多くは、従来の抗うつ薬では寛解に至ることが困難である。米国食品医薬品局(FDA)は、有効性と安全性に関する十分なエビデンスに基づき、うつ病の治療薬として5種類の非定型抗精神病薬を承認している。カナダ・トロント大学のRoger S. McIntyre氏らは、うつ病に対するFDA承認の非定型抗精神病薬併用療法の有効性および忍容性を比較し、医療従事者および当事者への意思決定支援を提供することを目的として、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2026年5月6日号の報告。 データベースの創設時から2025年7月15日までに公表された研究をPubMed/MEDLINE、PsycINFO、Cochrane Library、Embaseの各データベースよりシステマティックに検索した。6人の独立した評価者が、適格性に基づいて研究をスクリーニングした。選択基準は、うつ病の補助療法としてFDA承認の非定型抗精神病薬を評価した研究とした。2人の独立した評価者によりデータを収集し、コクラン基準に従ってバイアスのリスクを評価した。エフェクトサイズは、ランダム効果モデルを用いて統合した。データ分析は、2025年8~9月に実施した。主要アウトカムは、有効性(Montgomery Asbergうつ病評価尺度[MADRS]合計スコアのベースラインから50%以上の減少)および忍容性(すべての原因による中止)とした。主な結果は以下のとおり。・合計22件(1万962例)の短期試験を解析対象に含めた(アリピプラゾール群:1,297例、ブレクスピプラゾール群:1,973例、cariprazine群:1,894例、lumateperone群:483例、クエチアピン徐放製剤群:719例、プラセボ群:4,596例)。・lumateperoneは、有効性において最も高い効果量を示した(リスク比[RR]:1.72、95%信用区間[CrI]:1.40~2.15)。次いで、アリピプラゾール(RR:1.53、95%CrI:1.32~1.77)、ブレクスピプラゾール(RR:1.38、95%CrI:1.18~1.65)、cariprazine(RR:1.20、95%CrI:1.07~1.36)、クエチアピン徐放製剤(RR:1.15、95%CrI:0.96~1.35)の順であった。・忍容性の階層構造が観察され、アリピプラゾールが最も高い忍容性を示した(RR:1.16、95%CrI:0.89~1.50)。次いで、cariprazine(RR:1.44、95%CrI:1.15~1.82)、ブレクスピプラゾール(RR:1.47、95%CrI:1.18~1.85)、クエチアピン徐放製剤(RR:1.56、95%CrI:1.14~2.12)、lumateperone(RR:2.30、95%CrI:1.45~3.84)の順であった。・副次的アウトカム(症状寛解など)および探索的アウトカム(臨床的に有意な体重増加など)は、主要アウトカムと同様であった。 著者らは「うつ病治療における非定型抗精神病薬併用療法には、全体的な有効性と忍容性に関して差異が存在することが示され、これらの差異は同時に考慮されるべきであることが示唆された。うつ病における非定型抗精神病薬併用療法の維持効果を実証した、適切かつ十分な試験が不足していることが、依然として知識のギャップにつながっていることも明らかとなった」としている。

2.

うつ病の再発を予測する残存症状は?

 うつ病の急性期治療が成功した後の再発予防は、依然として臨床上の課題となっている。残存する抑うつ症状は、再発の信頼できる予測因子であると考えられる。しかし、特定の残存症状が再発リスクにどの程度影響を及ぼしているかをシステマティックに評価した研究は、これまであまりなかった。ベルギー・ルーベン大学のDavid Borghgraef氏らは、うつ病の急性期治療が成功した後に残存する抑うつ症状と再発リスクとの関連を調査するため、スコーピングレビューを実施した。Canadian Journal of Psychiatry誌オンライン版2026年5月6日号の報告。 本スコーピングレビューは、システマティックレビューおよびメタ解析のための優先報告項目(PRISMA)拡張版ガイドラインに準拠して実施した。うつ病、残存症状、再発に関連する用語を用いて、システマティックな文献検索を行った。 主な結果は以下のとおり。・11研究を分析に含めた。・残存する睡眠障害と不安症状は、これらの症状を評価したほとんどの研究において、再発リスクの増加と統計学的に有意な関連を示した。・残存する疲労、食欲不振、体重変化、抑うつ症状、興味減退を評価したほとんどの研究では、再発リスクとの統計学的に有意な関連は認められなかった。・焦燥感や落ち着きのなさ、性欲減退に関する結果も一貫性がなく、統計学的に有意な関連を報告した研究もあれば、そうでない研究もあった。・残存する抑うつ症状の評価には、さまざまな症状評価尺度が用いられており、結果に大きなばらつきが認められた。 著者らは「特定の残存するうつ病症状、とくに睡眠障害と不安症状は、再発リスク増加の予測因子となりうるため、臨床医は注意を払うべきであることが示唆された。しかし、研究間のばらつきは大きく、これらの結果の一貫性と一般化可能性が制限された。残存症状の負担を包括的に把握し、再発リスクの予測精度を改善するためには、臨床医による評価と自己申告による評価の両方を統合した標準化された多次元的な評価戦略が必要とされる」としている。

3.

第322回 拒食症患者の7割ほどに脂質中心のケトン食が有効

脂質中心で炭水化物を極力控えるケトン食が神経性やせ症(拒食症)に有益らしいことが、少人数の試験で示されました1-3)。拒食症は摂食を極端に制限してやせ細ることを特徴とする重度精神疾患です。たとえ体重が回復しても容姿への不満、食べることをひどく恐れる、体型や体重に執着するなどの根本症状がしばしば続くことが拒食症の再発の多さに寄与しています。ケトン食は1920年代に始まり、てんかん発作を減らすか止めることが知られる絶食に代わる治療手段として使われるようになりました3)。エネルギー源のほとんどを摂取した脂肪で賄うことを原理とするケトン食は、脳でのエネルギー代謝を大きく変えます4)。脳はそもそもケトン体をあまり使いませんが、ケトン食を実践すると脳はエネルギー源の糖の一部をケトン体に置き換えて利用するようになります。それに、ケトン食は拒食症と関係するらしい神経伝達物質の働きを調節するらしく、てんかん小児の試験でケトン食が脳脊髄液のGABAを増やすことが示唆されています5)。GABAは拒食症に付きもののうつや不安症状を減らすことが知られる抑制性神経伝達物質であり、全身のケトン体を増やすことはうつや不安と関連する振る舞いを減じることが動物実験で示されています6,7)。加えて、全身のケトン体増加は拒食症の回復に寄与するらしい炎症抑制にも一役買うようです8)。カリフォルニア大学サンディエゴ校のGuido Frank氏らによる先立つ小規模試験で、ケトン食を4~8週間続けた後に強迫症状改善効果が示唆されているケタミンを投与する拒食症治療の効果が示唆されています9)。試験には拒食症から回復して体重が戻ったとはいえ摂食障害の思考や振る舞いが続く成人5例が参加しました。ケトン食開始後の病状は日増しに上向き、食べることに関する悩みや体重の心配、体の不自由さを含む拒食症関連症状一揃いがだいぶ改善しました。ケトン食で体重が減る恐れがあることから試験では体重が回復した被験者を選びましたが、幸い被験者の体重は一定で安定していました。Frank氏はその結果に励まされ、より多くを募ってケタミン投与なしのケトン食の効果を調べる新たな試験に着手しました。新たな試験も、先立つ試験と同様に体重が回復したかわずかに低体重の拒食症女性22例が参加し、栄養士、精神科医、それに拒食症の経験があるいわば被験者と気心通じた相談員(peer counselor)の監督の下でケトン食に臨みました。14週間のケトン食を完遂した18例もやはり拒食症症状や不安、うつ症状の改善を示しました。それら18例中13例(72%)は拒食症やうつ病の診断基準を外れるほどに回復していました。その回復のほどは他の拒食症治療のはるか上をいくものだとFrank氏は述べています3)。試験期間中の被験者の体重に有意な変化はなく、程よいかいくらか低い体重を維持しました。再発もみられませんでした。また、試験を完遂した18例のその後の追跡で、ケトン食の継続が症状を抑える効果が示唆されました。3ヵ月後に摂食障害評価質問表(EDE-Q)のスコアが上昇していた患者の割合は、ケトン食を続けていた7例では3割弱の28%(2例)で済んでいましたが、ケトン食を止めた11例では6割超の64%(7例)がEDE-Q上昇を示しました。Frank氏らのチームはケトン食による拒食症治療はさらなる検討の価値があると言っています。現在、拒食症のみならず過食症の患者も募っている今回の試験の延長(extension)が進行中です2,10)。 1) Frank GKW, et al. Commun Med(Lond). 2026;6:315. 2) New evidence offers hope for ketogenic therapy in treatment of anorexia nervosa / Eurekalert 3) Keto diet shows real promise for anorexia recovery / NewScientist 4) Hartman AL, et al. Pediatr Neurol. 2007;36:281-292. 5) Dahlin M, et al. Epilepsy Res. 2005;64:115-125. 6) Yamanashi T, et al. Sci Rep. 2020;10:21629. 7) Gumus H, et al. Neurosci Lett. 2022;770:136443. 8) Yamanashi T, et al. Sci Rep. 2017;7:7677. 9) Calabrese L, et al. Eat Weight Disord. 2022;27:3751-3757. 10) Therapeutic Ketogenic Diet in Anorexia Nervosa(ClinicalTrials.gov)

4.

精神疾患の疾病負担、その世界的現況:GBD 2023/Lancet

 「疾病、傷害、リスク要因に関する世界疾病負担(GBD)研究」2023年版では、375の疾病・傷害について調査が行われ、このうち12が精神疾患であった。オーストラリア・Queensland Centre for Mental Health ResearchのDamian F. Santomauro氏らMental Disorder Collaboratorsは、2023年の時点で、利用可能な医療資源の有無を問わず、すべての国・地域で精神疾患が大きな健康上の負担をもたらし、場合によっては、この負担は時間とともに増大し、人口集団間で不均等に分布していることを示した。研究の成果はLancet誌2026年5月23日号に掲載された。1990~2023年の有病率、疾病負担を評価 研究グループは、1990~2023年に、21の地域と204の国・領地、および社会人口統計学的指標(SDI:国や地域が開発段階のどこに位置するかの要約指標)の五分位別に、性別および年齢層ごとの精神疾患の有病率と疾病負担に関して評価を行った(ゲイツ財団などの助成を受けた)。 対象となった12の精神疾患は、不安障害、大うつ病性障害、気分変調症、双極性障害、統合失調症、自閉スペクトラム障害、行為障害(素行症)、注意欠如・多動症、神経性やせ症、神経性過食症、特発性発達性知的障害、その他のカテゴリーの精神疾患であった。 また、障害生存年数(YLD:健康損失を伴いながら生存した年数)と損失生存年数(YLL:早期死亡により失った年数)を評価し、障害調整生存年(DALY:早期死亡および障害により失われた健康年数)を算出した。1990年以降、全精神疾患が増加 2023年の世界の精神疾患の有病者数は11億7,000万例(95%不確実性区間[UI]:10億6,000万~13億1,000万)、人口10万人当たりの年齢調整有病率で1万4,210.7例(1万2,849.5~1万5,940.1)と推定され、1990~2023年に、有病者数が95.5%(95%UI:75.0~121.2)、年齢調整有病率が24.2%(11.4~41.4)増加したことが示された。 また、1990~2023年に、すべての精神疾患で有病者数が増加したが、年齢調整有病率が著しく上昇した疾患として、不安障害、大うつ病性障害、気分変調症、神経性やせ症、神経性過食症、統合失調症、行為障害(素行症)が挙げられた。2023年の全死因によるDALYの6.1%が精神疾患 2023年に世界全体で、性別および年齢を問わず精神疾患に起因するDALYは1億7,100万(95%UI:1億2,700万~2億2,800万)、年齢調整DALY率(/10万人)は2,070.5DALY(1,519.1~2,750.5)と推定された。 2023年に精神疾患は、全死因によるDALYの6.1%(95%UI:4.8~7.6)を占め、世界のDALYの5番目に多い原因となった(1990年の12位から上昇)。DALYはほぼ完全にYLDで構成されていた。また、2023年に精神疾患はYLDの最大の原因となり(1990年の2位から上昇)、全世界の全死因によるYLDの17.3%(95%UI:14.8~20.6)を占めた。 精神疾患によるDALYの主な原因は、不安障害(GBD原因階層レベル4の304の疾病・傷害のうち11位)、大うつ病性障害(同15位)、統合失調症(同41位)であった。全地域で精神疾患によるDALY率上昇 2023年の世界全体において、精神疾患の年齢調整DALY率(/10万人)は、男性(1,900.2、95%UI:1,399.8~2,510.8)よりも女性(2,239.6、1,643.7~3,014.1)で高く、年齢層別では15~19歳(2,617.3、1,850.6~3,696.8)でピークに達した。 2023年には、すべての地域で1990年と比較して精神疾患によるDALY率(/10万人)が上昇しており、国・地域別では、ベトナムの1,302.4(95%UI:952.7~1,683.7)から、オランダの3,555.8(2,661.9~4,715.0)までの幅があった。 また、SDIの五分位別のDALY率(/10万人)は、中SDIの1,853.0(95%UI:1,352.1~2,469.3)から、高SDIの2,184.1(1,606.1~2,890.3)の範囲であった。 これらのデータを踏まえて著者は、「とくに低所得国と中所得国において、より強力なサーベイランス体制が求められる。さらに、地域ごとの性別や年齢の違いに応じた早期治療や予防を通じて負担を軽減するために、より協調的で包括的な施策が必要である」と指摘し、「世界の人々、とりわけ最も脆弱な人たちの精神衛生上の要望に応えることは、選択ではなく義務である」と結んでいる。

5.

統合失調症スペクトラム症に最適な抗精神病薬の投与量は?

 急性期の統合失調症スペクトラム症に対する最適な抗精神病薬の用量に関する研究が進められている。しかし、依然として不明点が多く残存している。ドイツ・ミュンヘン工科大学の古川 由己氏らは、急性期統合失調症における抗精神病薬の用量反応関係を明らかにするため、2段階アプローチよりも多くの情報を活用した1段階用量反応メタ解析を実施した。EClinicalMedicine誌2026年3月26日号の報告。 2025年1月13日までのCochrane Schizophrenia Groupレジストリーおよび2026年1月19日までのPubMedより、成人および小児・青年の急性期統合失調症患者を対象に、20種類の抗精神病薬を固定用量で検討した研究を検索した。主要アウトカムは、標準化平均差(SMD)を用いて要約した全般的な統合失調症症状とした。各薬剤を個別またはすべての薬剤をまとめて解析する、制限付き3次スプラインを用いた1段階ランダム効果用量反応メタ解析を実施した。エビデンスの確実性は、GRADEを用いて評価した。研究には、当事者経験者は参加しなかった。 主な結果は以下のとおり。・131件の研究(参加者:4万715例)を解析対象とした。・成人の平均年齢は39.24歳、女性の割合は31.8%。小児・青年の平均年齢は15.68歳、女性の割合は45.1%であった。なお、人種、民族に関するデータは入手不可であった。・急性増悪の統合失調症患者において、ほとんどの抗精神病薬の全般的症状に対する用量反応曲線は双曲線状であり、承認されている低用量から中用量の範囲、すなわちリスペリドン換算3~5mg付近でプラトーに達していた。・amisulpride、ブロナンセリン、cariprazine、クロザピン、ハロペリドール、lumateperone、ziprasidoneの用量反応関係に関するエビデンスの確実性は、低~非常に低いであった。・オランザピン/samidorphan、xanomeline/trospium、ゾテピンについては、用量反応メタ解析を実施するのに十分な研究が見つけられなかった。・小児と青年では、用量反応曲線に明確な違いは見られなかったが、データは少なく、確実性も低~非常に低いであった。 著者らは「通常、抗精神病薬は、推奨用量の低用量から中用量の範囲で治療効果の大部分を発揮する。この知見は、抗精神病薬を臨床使用するに当たり、一般的な参考値となりうるが、実際には個人差が生じることが予想される。用量反応関係に対する潜在的な効果修飾因子の影響を明らかにするためには、さらなる研究が必要とされる」としている。

6.

統合失調症に対するブレクスピプラゾール2~4mgの有用性評価:メタ解析

 ブレクスピプラゾールは、統合失調症治療薬として承認された新規ドーパミンD2パーシャルアゴニストであり、D2、5-HT1A、5-HT2A受容体への作用バランスを取ることで、有効性と忍容性を向上させた薬剤である。パキスタン・イスラマバード大学のSher Bano氏らは、ブレクスピプラゾール2~4mg/日の有効性と安全性に関する最新のエビデンスを評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。PCN Reports誌2026年4月12日号の報告。 PubMed、ScienceDirect、Cochrane Libraryより、2011~25年に公表された研究を、特定のキーワードを用いて検索した。適格基準は、DSM-IV、DSM-IV-TR、DSM-5、ICD-10に基づいて統合失調症と診断された患者を対象に、介入としてブレクスピプラゾール2~4mgで治療を行った患者とした。主要有効性エンドポイントは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)スコアおよび臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコアとした。また、治療関連有害事象も有効性評価に用いた。両群間でサブグループ解析を計画した。ランダム化比較試験(RCT)の質は、RoB2ツールを用いて評価した。 主な内容は以下のとおり。・検索により特定された464件の研究のうち、5件(2,182例)を適格と判断した。・ブレクスピプラゾール群では、PANSS総スコア(平均差[MD]:-5.76、95%信頼区間[CI]:-7.69~-3.83、p<0.00001)、陽性症状サブスコア、陰性症状サブスコア、CGI-Sスコアの有意な改善が認められた(MD:-1.35、95%CI:-1.87~-0.84、p<0.00001)。・治療中に発現した有害事象は、プラセボ群と同程度であり、ブレクスピプラゾール群では投与中止のリスクが低かった(リスク比:0.58、95%CI:0.43~0.77、p=0.0002)。・最も多くみられた錐体外路症状はアカシジアであった。 著者らは「ブレクスピプラゾール2~4mgによる統合失調症治療は、PANSSおよびCGI-Sスコアを有意に改善し、治療中止リスクの低下も認められた。これらの結果は、ブレクスピプラゾールが統合失調症の治療において有効かつ忍容性が高いことを裏付けている」としている。

7.

1晩2回以上の夜間頻尿、日本人男性40歳以上の3割~2023年全国調査

 夜間に2回以上の排尿はQOLの低下や死亡リスクの増加と関連することが報告されている。今回、山梨大学の吉良 聡氏らが2023年日本における大規模疫学調査(Japan Community Health Survey:JaCS 2023)の参加者において調査した結果、1晩に2回以上と定義される夜間頻尿の有病率は加齢により増加し、男女共に年齢、パフォーマンスステータス(PS)1以上、不眠、高血圧が夜間頻尿と有意に関連していた。International Journal of Urology誌2026年5月号に掲載。 本研究は、下部尿路症状と日常生活に関する48項目の質問票から成る全国規模のオンライン調査であるJaCS 2023のデータを用い、20~99歳の参加者6,210人を対象に評価を行った。夜間頻尿の定義に基づき、参加者を「夜間頻尿群」と「非夜間頻尿群」に分類した。夜間頻尿の有病率を調査し、多変量ロジスティック回帰分析を用いて夜間頻尿に関連する要因を男女別に検討した。さらに60歳未満および60歳以上の参加者についてサブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・夜間頻尿の有病率は、男性で27.1%(40歳以上:31.4%、60歳以上:39.8%、80歳以上:58.1%)、女性では17.8%(40歳以上:19.9%、60歳以上:24.7%、80歳以上:38.2%)で、加齢により増加した(傾向のp<0.0001)。・男性では年齢、PS1以上、高血圧、うつ病/不安障害、不眠症、前立腺肥大症、便失禁、週1回以上の飲酒、勃起不全(ED)、女性では年齢、PS1以上、歩行速度の低下、高血圧、不眠症が、夜間頻尿と独立して関連していた。・サブグループ解析では、男性におけるED、女性におけるPS1以上が有意な因子であることが示された。

8.

日本において軽度うつ病の初回受診時から抗うつ薬が処方される割合は?

 軽度うつ病に対する抗うつ薬の有効性については、依然として議論が続いている。ガイドラインでは、まず心理社会的介入を推奨しているが、実際の臨床現場では抗うつ薬が処方されることが少なくない。杏林大学の浦田 実氏らは、軽度うつ病患者の精神科初診時における抗うつ薬の処方パターンを調査し、処方決定に影響を与える症状関連因子を特定することを目的に、レトロスペクティブカルテレビュー研究を実施した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2026年4月8日号の報告。 2020~24年に杏林大学病院でうつ病と診断された外来患者1,508例を対象に、レトロスペクティブカルテレビューを実施した。そのうち、Quick Inventory of Depressive Symptomatology-Self Report(QIDS-S)の合計スコアが6~10点の軽度うつ病の診断基準を満たした患者171例を分析した。抗うつ薬を処方された患者と処方されなかった患者の間で、人口統計学的特性および症状レベルを比較するため、独立t検定とロジスティック回帰分析を行った。 主な内容は以下のとおり。・対象患者171例のうち、初回受診時に抗うつ薬を処方された患者の割合は28.1%であった。・人口統計学的特性および全体的な症状の重症度において、両群間に有意な差は認められなかった。・QIDS-Sの項目である体重増加は、抗うつ薬群で有意に低かった(0.1±0.4 vs.0.3±0.7、p=0.03)。しかし、Benjamini-Hochberg法による偽発見率補正後およびロジスティック回帰分析においては、統計的に有意な差は認められなかった。・単剤療法を受けた患者において、抗うつ薬の種類による有意な差は認められなかった。 著者らは「本調査の結果、軽度うつ病患者の約30%は、初回診察時に抗うつ薬を処方されていることが明らかとなった。どの症状項目についても、抗うつ薬処方との明確かつ確固たる関連性が認められなかったことから、実際の治療選択においては、特定の症状プロファイル以外の要因が、より決定的な影響を及ぼしている可能性が示唆された」としている。

9.

治療抵抗性の幻聴に対する視聴覚補助療法、その有効性は?

 統合失調スペクトラム症では、抗精神病薬治療を行っているにもかかわらず、幻聴が持続することが少なくない。認知行動療法(CBT)は確立された心理療法であるが、難治性幻聴に対する視聴覚補助療法であるAVATAR療法は、インタラクティブなデジタルアバターを統合した新しいアプローチとして近年導入されている。台湾・高雄医学大学のTien-Wei Hsu氏らは、薬剤抵抗性の幻聴に対するAVATAR療法とCBTの有効性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Psychological Medicine誌2026年4月13日号の報告。 2025年6月1日までに公表された研究を5つの主要なデータベースよりシステマティックに検索し、いずれかの治療を評価したランダム化比較試験(RCT)を特定した。主要アウトカムは、幻聴の重症度とした。副次的アウトカムは、精神病症状、気分指標、すべての原因による治療中止とした。主な内容は以下のとおり。・選択基準を満たしたRCTは26件(2,273例、男性の割合:65.0%、平均年齢:39.3±4.1歳)。・AVATAR療法は、CBTと比較し、幻聴の重症度を有意に軽減する効果が認められなかった(標準化平均差[SMD]:-0.23、95%信頼区間[CI]:-0.55~0.10)。・しかし、AVATAR療法は、治療後3ヵ月時点での持続的な改善効果(SMD:-0.37、95% CI:-0.69~-0.05)および全体的な精神病症状の軽減効果(SMD:-0.41、95%CI:-0.75~-0.06)において、有意な効果が認められた。・陽性症状、陰性症状、抑うつ症状、不安症状、QOLに関するアウトカムについては、統計学的に有意な差は認められず、治療中止率も同程度であった。・小規模研究の影響(幻聴の重症度に関するEgger検定:p<0.01)や、対象となった試験全体におけるバイアスリスクが中程度~高度であったことを考慮すると、本結果の解釈には注意が必要である。 著者らは「AVATAR療法は持続的な有効性を示し、CBTと同等またはわずかに優れている可能性があるため、薬剤抵抗性の幻聴に対する代替療法となりうる」としている。

10.

うつ病予防に最適な年齢別の睡眠時間が判明

 睡眠時間の短縮は、青年期のうつ病と関連していることが報告されている。しかし、明確な用量反応関係や年齢別のリスク閾値に関しては、依然として十分に解明されていない。中国・皖南医科大学第一附属医院のWei Cheng氏らは、この関連性を明らかにするため、代表的なサンプルを用いて、発達段階に応じた最適な睡眠時間を特定することを試みた。Frontiers in Pediatrics誌2026年3月27日号の報告。 対象は、2020~23年の全米児童健康調査(NSCH)の横断データより抽出した6~17歳の青年12万6,407例。保護者による睡眠時間の報告は、制限付き3次スプラインを用いた連続変数およびカテゴリー変数としてモデル化した。現在の抑うつ状態は、保護者による臨床医の診断報告に基づいて定義した。社会人口統計学的因子および健康関連因子で調整した後、調査データに基づくロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・睡眠時間と抑うつリスクの間には、強い非線形逆相関が認められた(p-non-linearity<0.001)。・用量反応曲線は、6~9歳では約10時間、10~13歳男子では約8.5時間、14~17歳では約8.3時間でプラトーに達した。・これらの閾値までの睡眠時間が1時間増加するごとに、抑うつリスクは有意に低下した。・この関連性は、非ADHD児、健康状態の良好な子供、女性において最も強かった(p-interaction<0.05)。・検討した因子(世帯収入、保護者の精神健康状態、子供の健康状態、ADHD診断、保護者の教育レベル)を介した媒介効果は、全体の効果の4%未満であった。 著者らは「抑うつリスクに対する保護効果がプラトーに達する発達段階特有の睡眠閾値が明らかとなった。本結果は、小児集団における年齢別睡眠推奨事項およびメンタルヘルススクリーニング戦略のための実証的な基準値となりうる」としている。

11.

患者に最も好まれる第1選択抗精神病薬は?

 初回エピソードの精神疾患患者に対する抗精神病薬の選択は、臨床医が複数の基準を経験的に評価する必要があるため、非常に困難な課題である。診療記録を用いて開発された精密治療(precision treatment)ルールは、臨床医の治療選択を支援する実用的なアプローチを提供できるが、副作用や患者の嗜好は考慮されていない。イタリア・University of PaviaのKamil Krakowski氏らは、初回エピソードの精神疾患における第1選択抗精神病薬推奨のための、有効性、副作用、患者の嗜好を総合的に考慮した精密治療ルールの開発および検証を行った。Translational Psychiatry誌オンライン版2026年4月11日号の報告。 本研究は、英国・サウスロンドンおよびモーズレイNHSトラストの早期精神病介入サービスから得た電子カルテデータを用い、RECORDおよびTRIPOD + AIガイドラインに準拠して実施された。精密治療ルールは、因果関係に基づく機械学習手法を用いて開発され、臨床的、人口統計学的、症状、物質使用に関する予測因子を用いて、有効性(薬剤変更、入院)および副作用(錐体外路症状、高プロラクチン血症、鎮静、性機能障害、体重増加)を推定した。副作用に関する患者の嗜好は、ランキング法を用いて考慮した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、1,709例(平均年齢:26.7歳、男性の割合:64%)。・アリピプラゾールは、患者の希望に応じて80~98%の患者に推奨された。・観察された治療決定と比較すると、治療ルールに基づく推奨では、高プロラクチン血症が4.7パーセントポイント(pp)、鎮静が15.8pp、性機能障害が4.3pp、体重増加が15.2pp減少すると推定された。・入院と薬剤の効果には変化がなかった。・錐体外路症状は、5.5pp増加すると推定された。 著者らは「本研究は、有効性、副作用、患者の希望を統合した、早期精神疾患に対する初の精密治療ルールを提示するものである。より大規模なデータセット、より多くの予測因子および治療選択肢を用いた、さらなる研究が求められる」としている。

12.

統合失調症や双極症リスクを低下させる修正可能なリスク因子は?

 統合失調症や双極症は、遺伝的リスク因子と修正可能なリスク因子の影響を受ける、重篤な精神疾患である。脳ケアスコア(BCS)は、身体的、生活習慣、社会情緒的にわたる12の修正可能な因子から構成される検証済みのツールであり、それぞれが脳の健康に関連している。中国・北京大学のYichen Cui氏らは、多遺伝子リスクスコア(PRS)により定量化されたさまざまな遺伝的リスクレベルにおいて、BCSが統合失調症または双極症のリスクとどのように関連するかを調査した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2026年4月13日号の報告。 UKバイオバンクのデータを用いて、BCSおよびPRSスコアを算出し、新規発症の統合失調症および双極症患者を特定した。BCSと統合失調症または双極症リスクとの関連性の評価には、Cox比例ハザードモデルを用いた。この関連性が遺伝的リスクレベルによってどのように変化するかを、交互作用分析および層別分析を用いて評価した。BCSの各ドメインの寄与についても評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・参加者29万9,665例のうち、中央値13.7年のフォローアップ期間中に、統合失調症が331例、双極症が787例で確認された。・PRSが低い群では、BCSが高いほど統合失調症のリスクが有意に低下していた。とくに生活習慣(ハザード比[HR]:0.87、p=0.027)、社会情緒的ドメイン(HR:0.47、p<0.001)においてその傾向が顕著であった。・PRSが高い群では、BCSと統合失調症との全体的な関連性は認められなかった。しかし、社会情緒的ドメインは依然として保護因子として作用していた(HR:0.56、p<0.001)。・双極症に関しては、PRSが低い群では、とくに生活習慣(HR:0.91、p=0.017)および社会情緒的ドメイン(HR:0.44、p<0.001)において、BCSによる保護作用がより強く認められた。・PRSが高い群では、BCSによる保護作用は弱まったものの、社会情緒的ドメインでは依然として有意であった(HR:0.50、p<0.001)。・感度分析においても、これらの結果は支持された。 著者らは「生活習慣と社会情緒的健康の改善は、統合失調症および双極症のリスクを有意に低減することが可能であり、その効果は遺伝的リスクによって左右されることが示された。社会情緒的健康の向上は、あらゆる遺伝的リスクレベルにおいて保護効果をもたらし、重要な予防策となりうる」としている。

13.

ヨーグルトや低脂肪チーズ、高齢期のうつ病や認知症予防に有効?

 ヨーグルトやチーズなどの発酵乳製品には、非乳製品とは異なる生理活性成分が含まれているが、高齢期のうつ病や認知症リスクとの関連性については依然として不明であった。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のMuniratul Idrus氏らは、発酵乳製品摂取と高齢期のうつ病および認知症リスクとの関連を調査した。Nutrients誌2026年3月24日号の報告。 年齢70~90歳で地域在住の高齢者を対象としたコホート研究であるSydney Memory and Ageing Studyのデータを用いて、乳製品摂取と抑うつ症状(15項目の老年期うつ病評価尺度:GDS15)、心理的苦痛(Kessler-10[K10尺度])、うつ病(医師による診断または抗うつ薬の使用)と認知症(DSM-IV基準)との関連性を検討した。ヨーグルト、チーズ、非発酵乳製品の摂取量は、ベースライン時に検証済みの食物摂取頻度調査票を用いて評価した。縦断的関連性は、死亡を考慮したFine-Gray競合リスクモデルを用いて検討した。また、横断的関連性も評価した。 主な結果は以下のとおり。・参加者966例(平均年齢:78.3歳、女性の割合:55.5%)において、ヨーグルトの摂取量が多い群(標準1食分)では、非摂取群と比較し、抑うつ症状スコアが有意に低かった(調整β:第3~4四分位群で-0.37および-0.39、平均:88.5~164g/日)。低脂肪チーズの摂取量が多い群でも同様の結果が得られた(調整β:-0.35、平均:13.2g/日)。・平均3.3年のフォローアップ期間中に、うつ病の新規発症が120例、死亡が68例に発生した。・ヨーグルトの摂取量が多い群と低脂肪チーズの摂取量が多い群では、非摂取群と比較し、うつ病リスクが低かった(各々、調整サブ分布ハザード比:0.41[95%信頼区間[CI]:0.19~0.88]および0.40[95%CI:0.21~0.78])。・心理的苦痛、認知機能、認知症発症(平均フォローアップ期間:5.2年、発症100例、死亡153例)については、有意な関連は認められなかった。・また、チーズや牛乳の定期的な摂取についても関連は認められなかった。 著者らは「発酵乳製品、とくにヨーグルトと低脂肪チーズの摂取は、非発酵乳製品とは異なり、高齢期のメンタルヘルスに潜在的な役割を果たす可能性が示唆された」としている。

14.

抗うつ薬治療期間と心臓突然死リスク

 抗うつ薬は、世界で最も使用されている薬剤の1つである。これまでの研究において、抗うつ薬の使用と心血管系有害事象との関連が示唆されている。しかし、抗うつ薬の治療期間や治療開始時期が心臓突然死リスクに及ぼす影響は明らかになっておらず、臨床的なリスク層別化ができていなかった。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のJasmin Mujkanovic氏らは、抗うつ薬治療の累積期間と開始時期が心臓突然死リスクと関連しているかどうか、また、その関連性が薬剤クラスによって異なるかどうかを調査するため本研究を実施した。Heart Rhythm誌オンライン版2026年3月12日号の報告。 2010年にデンマーク在住で18~90歳の430万人を対象とした全国コホート研究を実施した。抗うつ薬の使用状況は、同国の処方箋レジストリ(1999~2009年)で確認した。死亡は、心臓突然死、それ以外に分類した。ハザード比(HR)の推定には、多変量Cox回帰モデルを用いた。抗うつ薬の使用は、1年間で2回以上の処方を受けた場合と定義し、累積使用期間(1~5年vs.6年以上)と開始時期(過去、最近、現在)で分類した。主な結果は以下のとおり。・心臓突然死は6,002件で発生した。そのうち1,907件(32%)が抗うつ薬使用患者であった。・調整HRは、使用期間1~5年で1.41(95%信頼区間[CI]:1.31~1.51)、使用期間6年以上で1.74(95%CI:1.59~1.90)であった。・時間経過に伴うリスクの勾配が認められた。抗うつ薬を現在使用していた患者は、最近および過去に使用していた患者と比較し、最もリスクが高かった。(現在)HR:1.71、95%CI:1.59~1.83(最近)HR:1.24、95%CI:1.09~1.42(過去)HR:1.11、95%CI:0.97~1.27・この関連性は、薬剤クラス間で一貫していた。選択的セロトニン再取り込み阻害薬:(1~5年間)HR:1.38、95%CI:1.28~1.49(6年以上)HR:1.57、95%CI:1.42~1.75三環系抗うつ薬:(1~5年間)HR:1.24、95%CI:1.09~1.42(6年以上)HR:1.40、95%CI:1.15~1.71 著者らは「長期にわたる抗うつ薬治療は、主な薬剤クラス全体において、治療期間および治療開始時期に依存して心臓突然死リスクの増加と関連していた。因果関係を断定することはできないものの、これらの結果は、長期にわたる抗うつ薬治療を受けている患者が心血管リスクの高い集団であることを示しており、さらなる研究が必要であることを示唆している」としている。

15.

抗精神病薬+SSRIの併用による突然死や心室性不整脈リスクはどの程度か

 抗精神病薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、それぞれ心室性不整脈または突然死のリスク増加と関連しているといわれている。両薬剤の併用は、リスクをさらに高める可能性があるものの、その臨床的エビデンスは限られている。国立台湾大学のHsiu-Ting Chien氏らは、抗精神病薬とSSRIが併用されている患者における心室性不整脈または突然死のリスクを評価するため、本研究を実施した。JAMA Network Open誌2026年4月1日号の報告。 本研究では、逐次ターゲット試験エミュレーション法を用いて、米国(2010~23年)および台湾(2010~21年)の医療保険データベースの保険請求データを分析した。過去1年間にSSRIを使用しておらず抗精神病薬治療を開始した成人を対象に、抗精神病薬投与開始後1~52週目のSSRI開始の有無を毎週評価した。その評価に基づき、SSRI投与開始群または非開始群に分類した。新規で抗精神病薬治療を開始した患者におけるSSRI投与開始後1年間の心室性不整脈または突然死のリスクを評価するため、52週にわたる試験をエミュレーションした。逆確率重み付けと時間変動共変量の調整を用いたプロトコール順守解析法を適用した。主要アウトカムは、心室性不整脈または突然死の発生とした。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は、ロバスト分散推定量を用いた加重プールロジスティック回帰モデルを用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・米国コホートでは30万7,818例(被験者数:437万289例、平均年齢:46.6±18.8歳、女性:276万4,180例[61.2%])、台湾コホートでは19万1,080例(被験者数:215万639例、平均年齢:51.0±18.3歳、女性:118万4,464例[55.1%])が適格基準を満たした。・調整済みコホートにおいて、SSRI投与を開始した患者は、米国では5万2,825例(17.2%)と台湾では2万5,203例(14.7%)であった。・抗精神病薬とSSRIの併用と抗精神病薬単独投与を比較した場合の調整HRは、米国では1.51(95%CI:1.04~2.19)、台湾では3.32(95%CI:2.26~4.88)であった。・高リスクなSSRIであるシタロプラムとエスシタロプラムの調整HRは、それぞれ2.20(95%CI:1.39~3.46)と2.84(95%CI:1.75~4.62)であった。・感度分析では、主要結果のロバスト性が支持された。陽性対照および陰性対照分析では、残存交絡が限定的であることが示唆された。 著者らは「米国と台湾で抗精神病薬投与を開始した成人を対象としたこのコホート研究では、抗精神病薬使用者におけるSSRI投与開始は、心室性不整脈または突然死のリスク増加と関連していた。これらの事象はまれではあるものの、その重篤性を考慮すると、両薬剤の併用療法は慎重に検討する必要がある」としている。

16.

加熱式タバコも頻回な頭痛に関連/JASTIS研究

 加熱式タバコは、従来の紙巻タバコより「有害物質が少ない」と一般的に認識されているが、頭痛との関連についてはエビデンスが限られていた。長岡技術科学大学の勝木 将人氏らの研究グループは、日本の大規模インターネット調査のデータを解析した結果、紙巻タバコだけでなく加熱式タバコの使用も、頻回な頭痛の有病率上昇と独立して関連していることを明らかにした。Headache誌オンライン版2026年3月2日号に掲載。 本研究では、2025年2月〜3月に実施された「日本における社会と新型タバコに関するインターネット調査研究プロジェクト」(JASTIS研究)の回答者のうち2万3,228例(年齢中央値49歳、女性49.3%)を対象とした。過去1年間に「時々」または「頻繁に」頭痛を経験した人を「自覚的な頻回な頭痛」と定義した。タバコの使用状況(現在使用、過去使用、非使用)ごとに、年齢、性別、BMI、既往歴(うつ病、睡眠障害、脂質異常症など)、ライフスタイル(コーヒー、アルコール摂取)などを調整した多変量ロジスティック回帰分析を行い、頭痛の有病率との関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象者の25.5%(5,923例)が頻回な頭痛を報告した。・多変量解析の結果、タバコ非使用者と比較した「頻回な頭痛」の調整オッズ比(aOR)は以下のとおりであった。 - 現在の紙巻タバコ使用者:1.71(95%信頼区間[CI]:1.44~2.03、p<0.001) - 過去の紙巻タバコ使用者:1.54(95%CI:1.37~1.73、p<0.001)  - 現在の加熱式タバコ使用者:1.15(95%CI:1.01~1.32、p=0.038) - 過去の加熱式タバコ使用者については、有意な関連は認められなかった(1.09、95%CI:0.96~1.24、p=0.203)・事後比較により、加熱式タバコよりも紙巻タバコのほうが、頭痛との関連が有意に強いことが示された(aORの比:1.48、95%CI:1.19~1.84)。・女性(aOR:2.30)、睡眠障害(2.78)、うつ病(1.92)、カフェイン飲料の摂取(1.07)なども頭痛と有意に関連していた。一方、週2回以上の飲酒は負の関連を示した(0.76)。 著者らは、加熱式タバコは紙巻タバコに比べて有害な揮発性化合物の排出は少ないものの、同程度のニコチンを含有していることが頭痛に寄与している可能性を指摘している。頭痛患者の生活指導において、加熱式タバコへの切り替えだけでは不十分であり、禁煙を促す重要性が示唆された。公衆衛生政策においても、タバコによる害の軽減(ハームリダクション)戦略に頭痛を考慮する必要性を強調している。

17.

若年性認知症、そのリスク因子は?

 65歳未満で発症する若年性認知症は、重要な健康上の問題である。しかし、認知症のリスク因子に関する知見の多くは、65歳以降で発症した晩年期認知症の研究から推測されたものである。米国・ミネソタ大学のKatherine Giorgio氏らは、若年性認知症とさまざまな人口統計学的因子、臨床的因子および生活習慣因子との関連性を調査し、それらの推定値を晩年期認知症の場合と比較した。The Lancet Healthy Longevity誌2026年3月号の報告。 英国および米国における5つの地域ベースの縦断的コホート研究(UKバイオバンク、ARIC[Atherosclerosis Risk in Communities Study]研究、フラミンガム心臓研究、多民族アテローム性動脈硬化症研究[Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis]、ホワイトホールII研究)のデータを統合し、標準化した。認知症は、各コホートのプロトコールに従い、入院記録および死亡記録に基づき、臨床評価の有無にかかわらず確認した。リスク因子には、性別、自己申告による人種または民族(ヒスパニック、白人、黒人、アジア人、その他)、学歴、高血圧、糖尿病、肥満、高コレステロール血症、うつ病、過度の飲酒、喫煙、運動不足を含めた。年齢を時間軸とし、時間変動係数を用いたCox回帰モデルを用いて、若年性認知症と晩年期認知症のハザード比(HR)を推定し、発症年齢によってHRが異なるかを検証した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中(中央値13.7年[四分位範囲:12.9~14.4])に、参加者54万4,442例において、若年性認知症を発症したのは807例、晩年期認知症は1万4,253例の発症が確認された。・女性は、男性と比較し、若年性認知症リスクが低かった(HR:0.70、95%信頼区間[CI]:0.61~0.80)。・若年性認知症リスクの上昇と独立して関連していた因子は、黒人と白人の人種(HR:1.61、95%CI:1.23~2.11)、小学校卒業以下の学歴(HR:1.99、95%CI:1.67~2.38)、糖尿病(HR:2.45、95%CI:1.99~3.03)、うつ病(HR:2.73、95%CI:2.34~3.20)、喫煙(HR:1.86、95%CI:1.56~2.22)、肥満(HR:1.24、95%CI:1.04~1.48)、運動不足(HR:1.33、95%CI:1.11~1.59)、過度の飲酒(HR:1.22、95%CI:1.01~1.47)であった。・高血圧ステージ1(HR:1.19、95%CI:0.97~1.47)、高血圧ステージ2(HR:1.16、95%CI:0.94~1.43)、高コレステロール血症(HR:1.11、95%CI:0.92~1.34)は、正の効果推定値を示したが、統計的に有意ではなかった。・人種、運動不足、過度の飲酒を除くすべてのリスク因子は、晩年期認知症よりも若年性認知症との関連性が強かった。 著者らは「若年性認知症の発症における修正可能なリスク因子の重要性が示された。若年性認知症の1次予防における優先度の高いターゲットを特定するためにも、本結果は今後の研究の指針となりうる」としている。

18.

マバカムテンは青年期の閉塞性肥大型心筋症にも有効である(解説:原田和昌氏)

 成人では閉塞性肥大型心筋症(HOCM)に対して心筋の収縮力を抑制する薬が承認されたが、小児の薬はなかった。わが国のガイドラインでは、HOCMの左室流出路閉塞軽減のためマバカムテンがClass 1で推奨されている。米国・フィラデルフィア小児病院のRossano氏らは、第III相二重盲検無作為化比較試験であるSCOUT-HCM試験にて、青年期(12歳以上18歳未満)のHOCM患者において、マバカムテンがプラセボと比較して、28週間にわたり左室流出路閉塞を有意に改善することを報告した。 NYHA心機能分類II度またはIII度の症候性HOCM患者44例を、マバカムテン群23例(14.7±1.7歳)、プラセボ群21例(14.6±1.7歳)に無作為に割り付け、有効性と安全性を評価した。マバカムテン群では、ベースラインにおける体重45kg以上は1日1回5mg、35kg以上45kg未満は1日1回2.5mgで投与を開始した。バルサルバ法による左室流出路圧較差および左室駆出率(LVEF)に基づき、増量または減量が可能であった。主要エンドポイントは、誘発時の左室流出路圧較差のベースラインから28週時の変化量であった。 誘発時の左室流出路圧較差は、それぞれ78.4±34.1mmHg、80.8±47.4mmHgであった。28週時点の誘発時左室流出路圧較差の最小二乗平均変化量は、マバカムテン群 -48.5 mmHg、プラセボ群 -0.5mmHgであった(p<0.001)。有害事象の発現率は両群で同程度で、重篤な有害事象は各群2例で認められた。マバカムテン群では1例で失神、もう1例で植込み型除細動器による不適切ショックが報告された。プラセボ群では1例で胸痛、もう1例で自殺念慮を伴ううつ病が報告された。LVEFが50%未満に低下した患者はなく、試験期間中に死亡の報告はなかった。また、心臓のリモデリングが改善し、病気の自然経過が改善される可能性を示唆する兆候がみられた。 本研究の限界として、被験者数が比較的少ない、研究期間が短い、被験者の大部分が白人であることが挙げられる。そのため、50週間の追跡調査、12歳未満の小児、さまざまなタイプのHOCM患者における有効性を今後研究すると書かれている。これまで、効果の高い新薬の、青年や小児への適応拡大に時間と治験費用がかかることが問題視されていた。その意味で、マバカムテンの青年患者への速やかな適応拡大を期待させる非常に意義のある試験である。

19.

治療抵抗性統合失調症患者の脳構造はどうなっているのか

 治療抵抗性統合失調症(TRS)は、精神科医療において大きな課題となっており、患者の約10~60%が抗精神病薬に治療反応を示さない。TRSに対する早期治療は、臨床アウトカムの改善につながる可能性があるものの、客観的なバイオマーカーが欠如しているためタイムリーな介入の妨げとなっている。一般的な脳の構造変化がTRSと関連していることが示唆されているものの、大規模なTRS症例データを得ることが困難なため、明確かつ確固たる結論はいまだ得られていない。米国・Johns Hopkins University School of MedicineのSemra Etyemez氏らは、このギャップを埋めるため、ENIGMA(Enhancing Neuro Imaging Genetics through Meta-Analysis)コンソーシアムと共同で、TRSに関連する脳の構造変化を調査した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2026年3月28日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・複数の大陸および民族を対象とした複数の機関のデータを用いたメタ分析およびメガ分析により、十分な統計的検出力をもって、TRS患者では非TRS患者と比較し、両側被殻および両側海馬の体積、左上前頭回(SFG)表面積が有意に減少していることが明らかになった。・健康対照群(HC)のデータを取り入れたさらなる分析では、HCから非TRS患者、そしてTRS患者へと、両側海馬体積および左SFG表面積が減少傾向にあることが示された。・クロザピン投与量および抗精神病薬の累積曝露量は、両側海馬体積および左SFG表面積に有意な影響を及ぼさなかった。・一方、被殻体積は、非TRS患者でHCと比較して増加しており、TRS患者とHCとの間には有意な差は認められなかった。・抗精神病薬曝露量は、被殻体積と有意な相関関係を示したが、そのエフェクトサイズは小さかった。・結論として本研究は、海馬とSFGの体積がTRSの潜在的なバイオマーカーであることを示唆している。

20.

うつ病治療戦略、第2世代抗精神病薬増強療法はどのタイミングで検討すべきか

 重篤な疾患を有する患者では、うつ病が頻繁に認められる。重篤な疾患に合併するうつ病は、日常生活に支障を来し、多くの場合、迅速な改善が求められる。従来の抗うつ薬では、効果が現れるまでに数週間かかることが課題となっていたが、第2世代抗精神病薬(SGA)は、一般的な精神疾患患者において、より迅速な効果発現と強力な増強効果を示すことが示唆されている。米国・エモリー大学のGregg Robbins-Welty氏らは、一般的な精神疾患および重篤な疾患を有する患者のうつ病に対するSGAの単剤療法および増強療法としての使用に関するエビデンスのレビューを実施した。Journal of Pain and Symptom Management誌オンライン版2026年3月21日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・精神医学的エビデンスでは、SGAの増強療法は、奏効率および寛解率を改善し(オッズ比:1.34~2.93、治療必要数:7~13)、その効果は1~2週間以内に認められた。・単剤療法は、忍容性が低く、ガイドラインでは推奨されていなかった。・重篤な疾患を有する患者におけるうつ病に対するSGAの有効性を特異的に評価したランダム化比較試験は存在しなかった。しかし、多くの悪性腫瘍の臨床試験において、悪心、食欲不振、その他の症状に対するSGAの安全性が支持されていた。・重篤な疾患に特化した精神医学的臨床試験は実施されていなかった。しかし、SGAは増強療法の中で最も強力なエビデンスを有しており、予後や症状の重症度から迅速な改善が求められる場合には、好影響をもたらす可能性が示唆された。 著者らは「SGAの増強療法は、複数の抗うつ薬が無効であった場合だけでなく、早期に低用量での導入を検討すべきである。とくに、SGAは緩和ケアに関連して併発する身体症状にも効果を発揮する可能性がある」としている。

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