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高齢者のうつ病は、十分に治療されていないことがある。2011年の高齢者治療抵抗性うつ病(TRD)の治療に関するシステマティックレビューでは、プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)が1件のみ特定された。英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のAlice Jane Larsen氏らは、高齢者のTRD治療に対する有効性に関するエビデンスを統合し、更新レビューを行うため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMJ Mental Health誌2025年3月3日号の報告。 対象研究は、55歳以上のTRD患者に対する治療を調査したRCT。治療抵抗性の定義は、1回以上の治療失敗とした。2011年1月9日〜2023年12月10日(2024年1月7日に検索を更新)に公表された研究を、電子データベース(PubMed、Cochrane、Web of Science)よりシステマティックに検索した。メタ解析により、寛解率を評価した。バイアスリスクの評価には、Cochrane Risk of Bias(RoB)2ツールを用いた。エビデンスの評価には、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluation)基準を用いた。 主な結果は以下のとおり。・14研究、1,196例(平均年齢:65.0歳、男性:548例、女性:648例)が包括基準を満たした。・10研究はプラセボ対照試験であり、4研究は低RoBであった。・介入群の寛解割合は0.35(17アーム、95%信頼区間[CI]:0.26〜0.45)。・対照群と比較し、介入群の寛解の可能性は高かった(9研究、OR:2.42、95%CI:1.49〜3.92)。・対照群と比較し、寛解率が良好であった治療は、ケタミンが優れており(3研究、OR:2.91、95%CI:1.11〜7.65)、経頭蓋磁気刺激(TMS)はその傾向がみられた(3研究、OR:1.99、95%CI:0.71〜5.61)。単一のプラセボ対照研究では、セレギリン、アリピプラゾール増強療法、薬理遺伝学的介入(PGP)、認知機能リハビリテーション介入の有用性が認められた。 著者らは「高齢者TRD患者の寛解率向上に対する治療として、ケタミン治療およびアリピプラゾール増強療法が有効であるとする弱いエビデンスとTMS、PGP、認知機能リハビリテーションが有効であるとする非常に弱いエビデンスが特定された。日常的に使用される抗うつ薬や心理社会的介入に関するエビデンスの欠如は問題であり、臨床医は、若年層からのエビデンスを拡大することが求められる」と結論付けている。