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ベンゾジアゼピン系薬剤(BZD)は、不眠症や不安症の治療に幅広く使用されている。しかし、BZDの長期使用は、認知機能低下を加速させる可能性がある。認知症の前駆症状がBZD使用のきっかけとなり、逆因果バイアスが生じている可能性もあるため、エビデンスに一貫性が認められていない。カナダ・Universite de SherbrookeのDiego Legrand氏らは、BZDの使用量、投与期間、消失半減期が認知症発症と独立して関連しているかどうかを検証し、前駆期による交絡因子について検討を行った。Journal of the Neurological Sciences誌2025年12月15日号の報告。 Canadian Community Health Surveyから抽出したtorsade cohortを対象に、医療行政データベースにリンクした症例対照研究を実施した。BZDの使用量、投与期間、消失半減期は、多変量条件付きロジスティック回帰を用いて解析した。モデル1では、認知症リスク因子を調整した。モデル2では、BZDの潜在的な適応症(不眠症、不安症、うつ病)についても調整した。前駆症状の影響を検証するため、インデックス日を診断の1~10年前に変更した。症例群は50歳以上の認知症患者とし、対照群は性別、年齢、フォローアップ調査、教育歴でマッチングさせた。 主な結果は以下のとおり。・症例群1,082例および対照群4,262例において、モデル1では、BZDの使用が認知症と関連していることが示唆された(オッズ比[OR]:1.65、95%信頼区間:1.42~1.93)。・認知症リスクは、半減期が長い薬剤(OR:2.81)のほうが、半減期が中程度の薬剤(1.57)よりも高かった。・モデル2では、180日超の慢性的なBZDの使用は、診断前4年以内において、認知症リスクとの関連が認められた。 著者らは「BZDの使用は、認知症リスクの上昇と関連しており、半減期が長い薬剤で最も強い関連が認められた。BZDの慢性的な使用との関連が4年間の前駆症状に限定されていることは、適応による交絡、あるいは逆因果関係を示唆している。これらの知見は、高齢者におけるBZDの使用は、慎重かつ期限を限定して行うべきであることを強調している」と結論付けている。