軽度認知障害(MCI)は、アルツハイマー病の前段階に当たる前認知症期である。MCIからアルツハイマー病へ移行するリスク因子を検討した研究は、これまで数多くあるが、その結果は一貫していない。韓国・高麗大学のKyoungwon Baik氏らは、韓国のMCI患者におけるMCIからアルツハイマー病への移行率およびそれに寄与するリスク因子を調査するため、本研究を実施した。Scientific Reports誌2025年10月10日号の報告。
韓国において12年間の全国規模のレトロスペクティブコホート研究を実施した。2009〜15年の間に40歳以上のMCI患者を登録し、2020年までフォローアップ調査を行った。MCI診断時の年齢に基づき、アルツハイマー病への移行率およびそのリスク因子を分析した。解析には、Cox比例ハザード回帰分析を用いた。
主な内容は以下のとおり。
・MCI患者におけるアルツハイマー病への移行率は70〜90歳にかけて増加し、100歳近くでプラトーに達した。
・アルツハイマー病への移行リスク上昇と関連していた因子は、低体重(ハザード比[HR]:1.279、95%信頼区間[CI]:1.223〜1.338)であった。
・心血管代謝疾患の中で、糖尿病(HR:1.373、95%CI:1.342〜1.406)、冠動脈疾患(HR:1.047、95%CI:1.015〜1.079)、出血性脳卒中(HR:1.342、95%CI:1.296〜1.390)はアルツハイマー病への移行リスクを増加させたが、高血圧、虚血性脳卒中、脂質異常症との関連は認められなかった。
・うつ病(HR:1.736、95%CI:1.700〜1.773)および身体活動不足(HR:1.193、95%CI:1.161〜1.227)はリスク上昇と関連していた。
・軽度(HR:0.860、95%CI:0.830〜0.891)から中等度(HR:0.880、95%CI:0.837〜0.926)のアルコール摂取、高所得(HR:0.947、95%CI:0.925〜0.970)、都市部居住(HR:0.889、95%CI:0.872〜0.907)は、アルツハイマー病への移行リスクの低下と関連が認められた。
著者らは「いくつかの修正可能なリスク因子は、MCIからアルツハイマー病への移行リスクの増加と密接に関連していることが明らかとなった。本研究の結果は、MCI患者におけるアルツハイマー病への移行リスクを軽減するための予防戦略の策定に役立つ可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)