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統合失調症の高感度スクリーニング検査 「眼球運動検査」

統合失調症は早期診断、早期治療を行うことで予後改善が期待できる。Benson氏らは統合失調症の高感度スクリーニング検査として眼球運動を測定することが有用であることを報告した。Biol Psychiatry 2012年5月22日オンライン版に掲載の報告。統合失調症患者88例とコントロール群88例の眼球運動の範囲を記録し、9ヵ月の再試験症例とコントロール群の34例、および新規統合失調症患者36例とコントロール群52例から得られた眼球運動データにより試験の予測的妥当性を評価した。眼球運動は円滑追跡などを測定し、単変量分析と多変量分析にて解析を行った。主な結果は以下のとおり。 ・統合失調症患者ではほとんどすべての眼球運動試験でコントロール群と異なった。中でも、free viewingの固定分散は最も独立した因子であった。・性別、薬物、喫煙の有無とは独立していた。・統合失調症患者とコントロール群は完全に識別された。再試験症例とコントロール群における予測的妥当性は87.8%であった。・全298データにおける識別率は98.3%とほぼ完全に近い精度で識別可能であった。(ケアネット 鷹野 敦夫)

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「双極性障害に対する薬物療法レビュー」世界精神医学会(WPA)での報告

Fountoulakis氏らは2012年3月10までに更新された双極性障害に対する薬物療法に関するランダム化比較試験のシステマティックレビューをおこなった。Eur Arch Psychiatry Clin Neurosci誌オンライン版2012年5月24日掲載の報告より。主な結果は以下のとおり。 ・急性躁症状に対しリチウム、第1世代抗精神病薬、第2世代抗精神病薬、バルプロ酸、カルバマゼピンが有効であることが示唆された。・クエチアピンとオランザピン/フルオキセチンの併用は双極性障害のうつ症状に対し有効である。・抗躁薬の単剤投与を目指し、抗うつ薬は併用のみで使用した方が良い。・リチウム、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールは維持治療期に有効である。・ラモトリギンはうつ症状の予防に有効である。また、躁症状への有効性は明らかになっていない。・薬物療法の補助療法として心理社会的介入が有効であるとも報告されている。・電気ショック療法は難治例でのオプションとなりうる。・リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンに対し部分奏効した急性躁病患者では抗精神病薬の併用が効果的である。・急性双極性うつ病に対しリチウム+ラモトリギンは最良の選択肢である。・単剤治療移行中の悪化時にみられる急性症状に対しオランザピン、バルプロ酸、抗うつ薬、ラモトリギンの併用は有効である。著者は最後に、「双極性障害に対する治療選択肢は増えてきたが、まだ十分ニーズを満たしているとはいえない。併用療法をおこなうことで転帰の改善が期待できるようになったが、一方で副作用も問題となっている。今後、段階的かつ合理的な治療をおこなうためにガイドラインやアルゴリズムが整備されることを願う」としている。(ケアネット 鷹野 敦夫)

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10代うつ病患者の治療はファンタジーゲームで?

うつ病の認知行動療法のパソコン用ソフトとして開発された「SPARX(Smart, Positive, Active, Realistic, X-factor thoughts)」は、ファンタジーゲーム様式が特徴で、4~7週間にわたって提供される7つのモジュールを克服していくというものである。その治療効果について、ニュージーランド・オークランド大学のSally N Merry氏らによる12~19歳のティーンエイジャーを対象とした多施設無作為化非劣性試験の結果、プライマリ・ケアにおいて対面カウンセリングといった通常ケアの代替療法となり得るものであることが示された。Merry氏らは、「治療が必要にもかかわらず介入が行われていない患者を対象に適用していくことができるだろう」とまとめている。これまでパソコンソフトを活用した認知行動療法は成人についてはその効果が認められていたが、ティーンエイジャーにおける効果は明らかではなかった。BMJ誌2012年4月19日号より。12~19歳の187例をSPARX介入群と通常ケア群に無作為化試験は、ニュージーランドの24のプライマリなヘルスケア施設(小児科、一般診療所、学校のカウンセリング・サービス)で、うつ症状に対する支援を希望していて、自傷行為の重大リスクがなく、一般医が治療が必要と判断した12~19歳の187例を対象に、多施設無作為化非劣性試験を実施した。94例がSPARXを受ける群(平均年齢15.6歳、女性62.8%)に、93例は通常の治療を受ける群(平均年齢15.6歳、女性68.8%)に割り付けられた。通常ケア群には、訓練を受けたカウンセラーと臨床心理士が提供する対面カウンセリングが行われた。主要評価項目は、小児うつ病尺度改訂版(CDRS-R:children's depression rating scale-revised)スコアの変化とした。副次評価項目は、小児うつ病尺度改訂版、Reynoldのティーンエイジャーうつ病スケール第2版(Reynolds adolescent depression scale-second edition)、気分と感情質問票(mood and feelings questionnaire)、Spence小児不安スケール(SCAS:Spence children's anxiety scale)、小児用QOL・喜び・満足度質問票(paediatric quality of life enjoyment and satisfaction questionnaire)、小児用Kazdin絶望感測定尺度(Kazdin hopelessness scale for children)などの各スケールスコアの変化と、治療評価を含む全体的満足度を含めた。副次評価項目もすべてSPARX群の非劣性を支持170例(91%、SPARX群85例、通常ケア群85例)が介入後に評価を受け、168例(90%、83例、85例)が3ヵ月後のフォローアップ評価を受けた。パープロトコル解析(143例)の結果、SPARX群が通常ケア群に非劣性であることが示された。介入後、CDRS-R未処理スコアは、SPARX群で平均10.32の減少が認められた。通常ケア群では7.59の減少だった(群間差:2.73、95%信頼区間:-0.31~5.77、P=0.079)。寛解率は、SPARX群(31例、43.7%)が通常ケア群(19例、26.4%)より有意に高く(差17.3%、95%CI 1.6~31.8%)、P=0.030)、反応率はSPARX群(66.2%、47例)と通常ケア群(58.3%、42例)との間に有意差は認められなかった(格差:7.9%、95%信頼区間:-7.9~24%、P=0.332)。副次評価項目もすべて非劣性を支持するものであった。intention-to-treat解析はこれらの所見を確認し、得られた改善はフォローアップ後も維持された。介入に関連すると思われる有害事象の頻度も群間での差異は認められなかった(SPARX群11例、通常ケア群11例)。

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抗精神病薬を処方された患者は本当に薬を服用しているのか?

Stephenson氏らは経口第二世代抗精神病薬を服用している患者について、医師が認識しているアドヒアランスと患者による薬局への薬剤請求から判定した実際のアドヒアランスを比較し、「医師が思っているよりも患者のアドヒアランスは良好でないため、再発予防も見据え適切な介入を行うことが重要である 」と結論づけた。本報告はInt J Clin Pract誌6月号(オンライン版5月11日号)に掲載された。ヘルスコア統合研究データベースをもとに、1剤以上の第二世代抗精神病薬を処方された統合失調症または双極性障害患者の薬剤請求データから処方医師を抽出し、1~2名の担当患者の服薬アドヒアランスの評価と1年間の第二世代抗精神病薬のアドヒアランスとの関係をインターネット調査により収集した。医師により調査されたアドヒアランスは同期間の薬局から薬剤を請求と照らし合わせ比較をおこなった。主な結果は以下のとおり。 ・153名の医師が調査に協力し、214例(統合失調症:44例、双極性障害:162例、双極性障害および統合失調症:8例)の患者が抽出された。・60%の医師は正式なアドヒアランスに関するトレーニングを受けていなかった。・医師の2/3以上(68%)がアドヒアランスは重要であると考えており、担当患者の約76%はアドヒアランス良好であると回答した。・統合失調症患者において、アドヒアランス不良~中程度(アドヒアランス70%以下)であった17例中16例(97%)に対し、医師はアドヒアランス良好(アドヒアランス71%以上)であると回答した。・双極性障害患者において、アドヒアランス不良~中程度であった92例中62例(67%)に対し、医師はアドヒアランス良好であると回答した。(ケアネット 鷹野 敦夫)

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インタビュー:ときわ病院 精神神経科・内科 宮澤 仁朗氏 ~剤形から考える抗精神病薬の服薬アドヒアランス~

統合失調症治療では、患者が積極的に治療に参加することで服薬アドヒアランスの向上を促し、再燃・再発の抑制が期待できるといわれている。治療参加の方法の1つとして、患者自身による薬剤や剤形の選択があげられる。現在、抗精神病薬は各製品ごとに様々な剤形が販売されているが、2012年5月、非定型抗精神病薬のアリピプラゾール(製品名:エビリファイ)の新たな剤形として口腔内崩壊錠(以下、OD錠)が発売された。薬物治療の選択肢がさらに増えた現状を踏まえ、患者の剤形選択の現状や、今後の剤形開発に対する期待などについて、ときわ病院 精神科 宮澤仁朗氏にお話を伺った。宮澤氏はこれまでに、数々の抗精神病薬の治験に携わり、新しい剤形の開発時のアドバイザーとして活躍するなど、積極的に新薬に関する考察を述べられている。■剤形選択に関する現状と課題――実際の臨床現場において患者さんは剤形選択に関してどのような認識をお持ちなのでしょうか。宮澤 2009年に統合失調症の患者さんを対象に実施された、剤形に関するアンケートの調査結果(n=135)1)によると、56%の方が服用している薬剤の剤形について医師から説明を受けていない、と考えていることが示されています。また、一方で、自分で服用する薬剤の剤形を選択したいと回答した患者さんは72%にも上ることもわかっています。理想と現実にギャップがありますね。医師は、実際には説明を行っていたとしても、患者さんがそれを認識していない可能性も考えられ、コミュニケーションにはさらに注意を払う必要があるでしょう。しかし、一方で、現状では、精神科医師の不足や診療報酬等の関係から、1人の患者さんにかけられる時間は限られており、我々医師の努力に加えて、制度面の整備も必要ではないかと思います。■各剤形をどのように使い分けるのか?~宮澤氏の場合~――自分で剤形を選択したいと考える患者さんが多いようですが、それぞれの剤形の特徴について教えてください。宮澤 急性期と維持期に分けて考える必要があります。急性期では、病識がなく、興奮が見られるなど激しい症状を呈する患者さんも多いため、いかに確実に薬剤が体内に取り込まれるか、という視点が重要となります。そのため、OD錠や液剤などに対する医療者、看護者のニーズがとても高いです。一方、維持期においては、薬剤の有効性、安全性を考慮しつつ、患者さんがきちんと服用できる薬剤が求められます。そのため、患者さんの好みやライフスタイルに合わせてできる限り患者さんご自身に選択していただくことが重要となってきます。――具体的には?宮澤 たとえば、通常の錠剤は、ある程度病識があり、水と一緒に服用することで「服薬している」という実感がほしいと訴える患者さんなどに処方することが多いです。液剤は錠剤・散剤などを飲みにくいと感じ、個別包装の簡便さを好む患者さんに適していると感じています。ところが、中には被毒妄想が生じる方もいるので、その点は注意が必要かもしれません。持続性の注射剤は、決して服薬アドヒアランスは悪くないけれどたまに服用し忘れるような方に対し勧め、患者さん自ら選択されることも少なくありません。しかし、もっとも患者さんのニーズが高いと感じるのは、OD錠です。OD錠には様々なタイプがありますが、1日1回の内服で水を必要とせず、口に含んだ瞬間、瞬時に溶けるタイプのものが好まれています。このタイプのOD錠は服用の簡便さからアドヒアランスの向上も期待できます。今後、主流となっていくと思います。■OD錠はどのような患者に有用か?――非定型抗精神病薬のOD錠には2種類ありますが。宮澤 ある程度、硬度が保たれているタイプと口に含むと瞬時に溶けるタイプがあります。前者は薬局等の自動分包機にもかけられ、多少の湿度で溶けることはありません。一方、後者は、手掌、手指に汗をよくかく方などには向かないかもしれません。しかし、スーパー救急(精神科救急)などの現場では、口に入れるとスッと溶けてしかも甘みがあるこのタイプの薬剤はとても重要です。5月に発売されたアリピプラゾールのOD錠(製品名:エビリファイOD錠)はこのタイプです。――OD錠は、実際、どのような患者さんに適しているのでしょうか。宮澤 先ほど説明しました救急・急性期病棟に入院となった患者さんのほかにも、外来通院されている患者さんにも適しています。水が必要ないことから外出先での服用が容易になります。嚥下が困難な高齢者や女性の患者さんにも勧められると思います。また、抗精神病薬単剤で治療している方も他の剤形からの変更のメリットが大きいのではないかと思います。たとえば、アリピプラゾールは、1日1回の服用で急性期、維持期いずれにおいても有効性が認められており、私が診ている統合失調症の維持期の患者さんでは、比較的、胃腸薬や便秘薬など他の薬剤を併用せずに単剤で治療している方も多いため、OD錠への変更により受ける恩恵が大きいと考えられます。逆に併用薬が多い患者さんではあまりメリットは感じられないかもしれません。――今後も、新しい剤形が追加されていくようですが、どのようなことを期待されますか。宮澤 今回のように、急性期、維持期いずれにおいても有用性が認められている薬剤のOD錠化は、患者さん、医療者双方の選択肢の幅が広がったことを意味し、大変意義深いと考えます。また、今後も、非定型抗精神病薬で新たな剤形が追加されることにより、患者さん、医療者の細かい二-ズに沿った薬剤選択が可能になっていくと思います。昨今の課題である服薬アドヒアランスの向上をめざして、我々医師は、患者さんの飲み心地に、より配慮した治療戦略が求められていくのではないでしょうか。(聞き手=ケアネット) 1)統合失調症患者さんを対象に実施したインターネット調査2009年 医療法人 ときわ病院ホームページhttp://www4.ocn.ne.jp/~tokiwahp/

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日本人の睡眠満足度は低い「より積極的な問診が必要」-日米仏3ヵ国睡眠調査より-

現代では24時間型の生活習慣による生活の乱れや、高齢化、ストレスに満ちた社会環境などにより、国民の約5人に1人は睡眠に悩んでいるといわれ、不眠症は誰にでも起こりうる現代病のひとつといえる。不眠は、集中力や気力、充実感といった日中パフォーマンスの低下を招くだけでなく、糖尿病や高血圧をはじめとする生活習慣病やうつ病のリスクともなる。現代社会における睡眠、不眠に対する意識や行動の実態を把握するため、睡眠専門医である林田 健一氏の監修のもと、アステラス製薬株式会社ならびにサノフィ・アベンティス株式会社は、日本・アメリカ・フランスの3ヵ国で約7,000人を対象に睡眠に関する意識と行動についてのインターネット調査を実施した。本調査結果は、2012年5月22日、アステラス製薬株式会社とサノフィ・アベンティス株式会社によるプレスセミナーにて発表された。日本人の睡眠時間は米仏と比べ、約0.5時間短い平日の平均睡眠時間は、日本は6.50時間で米国の7.01時間、仏国の7.07時間より約0.5時間短く、平均睡眠時間が6時間未満の割合は、日本が最も多く19.8%、米国12.5%、仏国10.2%であった。また、日本人は睡眠時間に対する満足度も最も低かった。日本人は睡眠の質に対する満足度も低く、日中パフォーマンスも低下睡眠の質への満足度調査では、「満足」と回答した割合は米国59.4%、仏国61.1%に対し、日本は44.7%であった。一方、「不満」と回答した日本人は36.0%と約3人に1人が睡眠の質に不満であることが明らかとなった。日中パフォーマンスとして評価した「集中力、気力・充実感の低下」および「眠気」を感じる人の割合は、日本はいずれの項目でも米仏より高い結果であった。とくに、「集中力がない」と回答した割合は、米仏(各4.5%、9.7%)に対して日本人は17.4%、「日中に眠気を感じる」が米仏(各56.0%、30.3%)に対して日本人70.9%、と米仏との間に大きな開きがあった。また、日本人では睡眠の質に対する満足度が低いほど日中パフォーマンスの低下が顕著にみられた。不眠の対処法-日本人は「寝酒」、米仏では「かかりつけ医に相談」-不眠症状のある人(アテネ不眠尺度6点以上)を対象に、不眠への対処を調査したところ、日本では「お酒を飲む」19.5%、「医師から処方された睡眠薬を飲む」13.7%、「何もしない」13.1%の順であった。米仏では「医師から処方された薬を飲む」(各19.2%、16.9%)、「医師の診察を受ける」(各18.6%、19.9%)の割合が多く、日本とは対照的な結果であった。次いで、不眠症状がある人が医療機関を受診した割合では、米国27.3%、仏国25.6%に対し、日本は15.7%と低い結果であった。また、不眠症状があるが受診経験のない人を対象に「不眠の改善に良いと思う診療科」を尋ねたところ、米仏では「かかりつけ医(内科)」(各49.8%、66.7%)の割合が多いが、日本では25.9% と低く、さらに31.4%が「わからない」と回答した。加えて、「かかりつけ医から睡眠について聞かれた経験がある」と回答した割合は、米仏(各29.8%、47.2%)と比べ、日本人では20.8%と低かった。求められる、かかりつけ医の役割「積極的な睡眠の問診と治療を」今回の調査結果から、日本人は睡眠時間や睡眠の質に関する悩みを抱えているものの、米仏と比べ医師に相談することも少なく、寝酒で不眠対処をする傾向 があることがわかった。林田氏は「不眠の予防、早期発見、治療は日本人の健康と安全を守るうえで重要であり、かかりつけ医には睡眠についてより積極的な問診を実施し治療を行うことが求められる」と語った。 【調査概要】 調査目的:睡眠、不眠に対する意識や行動の実態を把握する調査対象:日米仏の成人、計6,973人(30歳以上)     日本 3,282人(男性:49.8%、女性:50.2%)     米国 1,725人(男性:49.8%、女性:50.2%)     仏国 1,966人(男性:49.6%、女性:50.4%)調査手法:インターネット調査(2011年8月18日~24日) (ケアネット 鷹野 敦夫) 【関連コンテンツ】 転倒リスクを見据えた睡眠薬の選択http://mrp.carenet.com/project/269/c/120525 睡眠薬の分類と特徴からみたマイスリーの特性http://mrp.carenet.com/project/253/c/120525

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境界性人格障害患者の自殺予防のポイントはリハビリ

境界性人格障害では自殺行為を繰り返すことが大きな問題となる。多くの患者は寛解まで時間を要するため、約10%が自殺により死亡するといわれている。Soloff氏らは境界性人格障害患者の長期予後改善のために、自殺の予測因子を検証した。そのうえで「自殺リスクを減少させ、長期の転帰を改善するには、社会的かつ職業的リハビリテーションによる心理社会的介入が重要である」と結論づけている。Am J Psychiatry誌2012年5月号掲載の報告。境界性人格障害患者90例に対し6年以上の追跡調査を実施、縦断的研究をおこなった。分析にはCox比例ハザードモデルを用いた。主な結果は以下のとおり。 ・25例(27.8%)において、少なくとも1回以上の自殺企図がみられた。・自殺企図者の大部分は、発症後2年目以内であった。・自殺企図リスクの増加要因は、社会経済的地位の低さ、心理社会的適応の低さ、自殺の家族歴、精神科入院歴、自殺前の外来診療の不足であった。・総合評価尺度(GAS)が高いほど自殺リスクは低かった。・自殺の危険因子は時間とともに変化し、短期(12ヵ月)では大うつ病性障害などの急性ストレス、長期的には心理社会的機能の低さとの関係が示唆された。(ケアネット 鷹野 敦夫)

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統合失調症治療薬ルラシドンの長期投与試験

統合失調症治療薬ルラシドンの12ヵ月にわたる長期投与試験の結果が発表された。Citrome氏らはルラシドンの長期安全性および忍容性を評価する目的でリスペリドンとの二重盲検比較試験を実施し、「ルラシドンは長期投与により良好な忍容性が示された」と報告した。安定した統合失調症外来患者427例をルラシドン群(40-120mg/日)とリスペリドン群(2-6mg/日)に2:1の比率で割り付け比較検討した。主な結果は以下のとおり。 1)ルラシドン群(vs リスペリドン群)で最も多くみられた有害事象は、嘔気(16.7% vs 10.9%)、不眠症(15.8% vs 13.4%)、鎮静(14.6% vs 13.9%)であった。2)リスペリドン群(vs ルラシドン群)で最も多くみられた有害事象は、体重増加(19.8% vs 9.3%)、傾眠(17.8% vs 13.6%)、頭痛(14.9% vs 10.0%)であった。3)少なくとも7%の体重増加がみられた患者はリスペリドン群 vs ルラシドン群=14% vs 7%であった。4)プロラクチン値の変化量はリスペリドン群で有意に高かった(p

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日本睡眠学会第37回定期学術集会のご案内 会長の井上氏より

2012年6月28~30日にパシフィコ横浜にて日本睡眠学会第37回定期学術集会が開催されます。会長の井上雄一氏より寄稿文をいただきました。是非ご覧ください。来る平成24年6月28日から30日の3日間、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて、日本睡眠学会第37回定期学術集会を会長として主催いたします。本学術集会は毎年1回、睡眠ならびに生体リズムのメカニズムと病態、社会的意義を解明し、実生活に活かすことを目的に開催され、全国の基礎医学、社会医学、臨床医学、薬学、検査医学、臨床ならびに実験心理学、看護学等の研究者や臨床家が参加し、過去最多となる45のシンポジウムが予定されています。本年度は「睡眠研究 新世代への架け橋」をテーマに掲げ、快適な睡眠がストレス社会の現代で人間性を回復させるために重要であり、睡眠健康の増進が高血圧や糖尿病という生活習慣病の予防・治療や、うつ病に代表される精神疾患、ひいては自殺の抑制にも有益であることを訴求、提案していく予定です。今回は、睡眠学の学際的な進歩を広く若手研究者に普及・拡大させるのみならず、睡眠を専門としない医療関係者の皆様にも広く門戸を開くため、開催期間中は常時、学会員以外の医療関係者が聴講できるシンポジウムを開催いたします。本学会は、事前の参加申込み不要、当日会場にて参加登録頂けます。多くの医師、医療関係者の皆様のご参加をお待ちしております。 日本睡眠学会第37回定期学術集会会長 井上 雄一東京医科大学睡眠学講座 教授 医療法人社団絹和会 理事長公益財団法人神経研究所附属睡眠学センター センター長 日本睡眠学会第37回定期学術集会テーマ:「睡眠研究 新世代への架け橋」会 期:2012年6月28日(木)/29日(金)/30日(土)会 場:パシフィコ横浜 http://www.pacifico.co.jp/(神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1) 主なシンポジウム: ■6月28日(木)シンポジウムS2「睡眠呼吸障害と上気道~睡眠中の上気道と呼吸調節における進歩」シンポジウムS4「頭痛と睡眠障害」シンポジウムS7「不眠症治療薬開発の現状と未来」シンポジウムSS2「睡眠と生活習慣病がからむ血管内皮機能障害」 ■6月29日(金)シンポジウムS15「循環器領域における睡眠呼吸障害のガイドラインを検証する」シンポジウムS21「OSAS治療の長期化について考える」シンポジウムS22「産業保健と睡眠・睡眠障害」シンポジウムS26「高齢社会における睡眠障害の意義と対応」 ■6月30日(土)シンポジウムS30「我が国における不眠症に対する認知行動療法の現状(CBT-I up to date in Japan)」シンポジウムS34「睡眠関連運動障害」  *シンポジウムの最新情報はウェブサイトにて随時更新しています。 日本睡眠学会第37回定期学術集会ウェブサイト:http://www.c-linkage.co.jp/jssr37/本学会はFacebook、Twitterも開設しています。Facebook: http://www.facebook.com/jssr37Twitter: http://twitter.com/37jssr

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統合失調症の再発予防のポイントとは?

統合失調症の治療において、再発を予防することは極めて重要な課題である。Leucht氏らは抗精神病薬の再発予防への影響を分析した。統合失調症患者の維持治療期おける65件のプラセボ対照無作為化試験から得られた116件の報告より6,493名の患者データを抽出した。主要評価項目は7~12ヵ月後の再発率とし、忍容性や機能的な影響に関しても調査した。主な結果は以下のとおり。 1)抗精神病薬投与群ではプラセボ群と比較して1年後の再発率を有意に低下させた(27% vs 64%、リスク比=0.40(95%信頼区間=0.33-0.49)、number needed to treat to benefit(NNTB)=3(95%信頼区間=2-3))。2)抗精神病薬投与群では再入院率は低かった(10% vs 26%、リスク比=0.38(95%信頼区間=0.27-0.55)、NNTB=5(95%信頼区間=4-9))。3)抗精神病薬投与群で良好なQOL(両群間の変化差=-0.62(95%信頼区間=-1.15 to -0.09))、攻撃性の低下(2% vs 12%、リスク比=0.27(95%信頼区間=0.15-0.52)、NNTB=11(95%信頼区間=6-100))が認められた。4)抗精神病薬投与群では体重増加(10% vs 6%、リスク比=2.07(95%信頼区間=2.31-3.25))、運動障害(16% vs 9%、リスク比=1.55(95%信頼区間=1.25-1.93))、過鎮静(13% vs 9%、リスク比=1.50(95%信頼区間=1.22-1.84))が多く認められた。5)サブグループ解析の結果、エピソード数、寛解率の有無、治療中止方法、症状安定期間、第1世代または第2世代抗精神病薬使用状況、無作為割り当て方法に関しては有意な影響を及ぼさなかった。6)デポ剤投与患者では経口剤投与患者と比較して再発率が低かった(リスク比=0.31(95%信頼区間=0.21-0.41))。7)抗精神病薬の効果は非盲検下の2試験においてより大きかった。8)メタ回帰分析では、抗精神病薬投与群とプラセボ群の差は試験期間により減少した。

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維持期の統合失調症患者において現在の薬物投与量は最適か?

統合失調症の薬物療法において、ドーパミンD2受容体の占有率を最適化することが求められる。従来から、統合失調症の適切な治療域(therapeutic window)としてD2受容体占有率を65-80%に保つべきとされてきた。慶応大学の水野氏らは、統合失調症の維持治療期においても同様なD2受容体占有率が必要か否かを検討した。水野氏らは「安定期の統合失調症患者においては65%以上のD2受容体占有率が必ずしも必要でない可能性がある」と報告した。2010年9~12月にリスペリドンまたはオランザピンを投与中の安定した統合失調症患者35例(48.8±13.8歳)を対象に、D2受容体占有レベルのトラフ値とピーク値を毎日測定した。主な結果は以下のとおり。 1)各薬剤の投与量はリスペリドン群(n=20):3.2±2.3mg/日、オランザピン群(n=15):9.2±4.9mg/日であった。2)17/35例(48.6%)の患者においてD2受容体占有率65%以上が維持されていなかった。3)さらに、4/35例(11.4%)の患者においてD2受容体占有率は65%未満に維持されていた。

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うつ病を合併した糖尿病患者では認知症のリスク上昇

うつ病は認知症の危険因子であるといわれているが、糖尿病患者での報告は少ない。Katonらはうつ病を合併した2型糖尿病患者における認知症発症リスクを調査したところ、糖尿病単独患者と比較してリスクの増加が認められた。北カリフォルニアの大規模な医療管理データから30~75歳の糖尿病患者19,239例を対象にうつ病または抗うつ薬投与と認知症の発症との関係を検討した。主な結果は以下の通り。 1) 3~5年の観察期間での認知症発症率はうつ病を合併した糖尿病患者3766例中80例で2.1%(1,000人当たり5.5人)、糖尿病単独患者15,473例中158例で1.0%(1,000人当たり2.6人)であった。2) うつ病を合併した糖尿病患者の3~5年の認知症発症リスクは2.02(95%信頼区間:1.73-2.35)であった。

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職場におけるうつ病患者に対し電話認知行動療法は有効か?

 年々増加している職場におけるうつ病は、生産性の低下など大きな社会的損失をきたす。そのため、様々な治療法が検討されている。古川氏らは職場における小うつ病(閾値下うつ病)および労働効率が低下している状態(presenteeism)に対する電話認知行動療法(tCBT)の有効性を検討した。古川氏らは「tCBTは職場におけるうつ病患者への簡便な治療法のひとつとなりうるが、さらに長期間の検討が必要である」と結論づけている。 日本の大規模な製造会社に勤務する閾値下うつ病患者を標準的な従業員支援プログラム(EAP)単独群とEAP+tCBT群に無作為に割り付け、4ヵ月時点での抑うつ重症度(Beckのうつ病自己評価表:BDI-IIにより測定)と労働生産性(WHO健康と仕事の生産性アンケート:HPQにより測定)を比較検討した。 主な結果は以下の通り。1)118例をEAP単独群60例、EPA+tCBT群58例に無作為割り付け。2)EAP+tCBT群はEAP単独群よりも抑うつ重症度改善率が有意に高かった(p<0.001、エフェクトサイズ=0.69、95%信頼区間:0.32-1.05)。3)EAP+tCBT群におけるBDI-IIのベースラインからの変化量は-17.3。4)労働生産性への有意な影響は認められなかった。

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精神疾患患者におけるメタボリックシンドローム発症要因は?

精神疾患患者における心血管イベント発症要因の一つとして葉酸が関与しているといわれている。特にメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)やカテコール-o-メチルトランスフェラーゼ(COMT)の異常がリスクを増大させると考えられる。Ellingrod氏らはこれら遺伝子異型が抗精神病薬とメタボリックシンドロームとの関係にどのような影響を及ぼすのかを分析した。抗精神病薬による治療を少なくとも6ヵ月以上受けている統合失調症および双極性障害患者237例をメタボリックシンドロームの有無、MTHFR677C/T、MTHFR1298A/C、COMTVal158Metの各遺伝子型でスクリーニングを行った。主な結果は以下の通り。 1)平均年齢44.7歳(標準偏差:11.7)、男:女=51:49、平均BMI32.6kg/m(標準偏差:8.2)、非定型抗精神病薬投与患者は61%で各遺伝子型間に違いはなかった。2)メタボリックシンドロームの基準を満たした患者98例(41%)。3)メタボリックシンドロームの発症は年齢、喫煙、MTHFR677C/T、COMTVal158allelesとの関連が認められた(χ=34.4、p

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団体・企業のうつ病対策の資材になる小冊子 GSKがデータ版提供中

グラクソ・スミスクラインは25日、同社が2011年夏に実施した「うつ病の私や家族を支えてくれた“ことばの贈りもの”」に寄せられたお便りの一部をまとめた小冊子の内容をPDFファイルに収めた「ことばの贈りもの」データ版を作成、同日より希望者に提供を開始した。データ版は、6月29日(金)までの期間中に申し込んだ団体や企業向けに配布するという。「ことばの贈りもの」は、うつ病の患者や家族が病気と向き合う中で、周囲からもらって支えとなった「ことば」とエピソードを募集する企画で、2011年7月19日から約2ヵ月間エピソードを募集し、計315通のお便りが全国から寄せられた。なお、2011年度に寄せられたお便りは同社Webサイト(http://utsu.jp/kotoba/)にて公開中だ。データ版の主な内容は、『ご家族からもらった「ことば」(10通)』『ご友人からもらった「ことば」(2通)』『医療従事者からもらった「ことば」(6通)』『職場でもらった「ことば」(2通)』など。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2012_01/P1000731.html

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うつ病は高血圧発症の危険因子か?

長い間、うつと高血圧の関連していることは知られていたが、うつ病が高血圧発症の危険因子であるかどうかは不明であった。中国 吉林省の吉林大学第一病院のMeng氏らは、観察研究のメタアナリシスの結果、うつ病が高血圧発症の独立した危険因子である可能性が高いことを発表した。Meng氏は「高血圧症の予防と治療においてうつ病を考慮することが重要である」と言及している。うつ病患者では高血圧発症の危険性が1.4倍高いMeng氏らは、PubMed、EMBASE、 Cochrane、PsycINFOより、健康な正常血圧者におけるうつ病と高血圧発症の相関を報告した前向きコホート研究を検索し、ベースライン時のうつ症状/うつ病の記録を保有していた研究を解析の対象に選んだ。「高血圧」は、複数機会にわたる140/90mmHgを超える血圧値、降圧薬の服用、自己申告、高血圧という診断の記録のいずれかと定義した。横断研究、ケースコントロール研究は解析対象から除外した。主な結果は下記のとおり。 1) 9つの研究が解析対象の基準を満たし、計22,367名の対象者が  含まれていた。観察期間の平均値は9.6年。2) うつ症状/うつ病患者では高血圧の発症リスクが1.42倍高かった  (補正後相対リスク:1.42、95%信頼区間:1.09-1.86、P=0.009)。3) 高血圧発症リスクは、観察期間の長さ(P = 0.0002)、  ベースライン時のうつ病有病率(P

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無理なく飲み続けられる新剤形 抗精神病薬「エビリファイOD錠」発売

大塚製薬は17日、抗精神病薬「エビリファイ」(一般名:アリピプラゾール)の新剤形として、「エビリファイOD錠」を4つの用量(3mg、6mg、12mg、24mg)で5月11日に日本国内で発売すると発表した。エビリファイは、世界で初めてのドパミンD2受容体パーシャルアゴニスト作用を有する抗精神病薬で、日本国内では「統合失調症」および「双極性障害の躁症状」の治療に用いられている。これらの疾患の治療では長期にわたり薬を飲み続けることが大切だが、従来の抗精神病薬では「眠気」などの副作用が原因で薬を飲むことをやめてしまう問題があった。エビリファイは、これらの副作用が生じにくいことに加え、剤形の面からもQOLを損なうことなく飲み続けられることを目指し、OD錠新しく発売した。エビリファイOD錠は甘みがあり、口の中に入れると数秒で溶ける。従来の錠剤と比べ高齢者や女性など嚥下が困難な患者にとっても飲みやすく、外出先などでも水なしで飲めるため確実な服薬が期待できるという。また、エビリファイは、3mg、6mg、12mgの3つの用量が販売されているが、OD錠では新しく24mg錠が加わる。24mg錠は、本年1月に新しく適応症を取得した「双極性障害の躁症状の改善」の治療の開始用量であり、1錠で1日に必要な量を服用することができる。詳細はプレスリリースへhttp://www.otsuka.co.jp/company/release/2012/0417_01.html

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双極性障害治療における課題と新たな治療選択肢への期待

 2012年2月22日、オランザピン(商品名:ジプレキサ)の「双極性障害におけるうつ症状の改善」の適応承認を受け、3月14日、日本イーライリリー株式会社による記者発表会が開催された。この会では、帝京大学医学部附属溝口病院精神神経科科長・教授の張賢徳氏より、現在の双極性障害治療の課題や新たなる選択肢への期待などについて講演が行われた。双極性障害とは? 双極性障害は躁症状とうつ症状の二つの病相を繰り返す疾患であり、わが国における生涯有病率は0.6%程度 1) と決して珍しい疾患ではない。躁症状は自尊心の肥大や快楽的活動への熱中などにより人間関係や社会的信頼の失墜をもたらす一方で、うつ症状は無気力や種々の身体症状、自殺のリスクの増大などにより、患者やその家族の社会生活に大きな影響を及ぼすことが知られている。双極性障害診療の問題点 双極性障害の診断には躁症状の認識が重要であるが、患者が躁症状を自覚していないことが多く、医師に報告されないことも多いため診断が難しいと言われている。さらに、双極性障害におけるうつ症状と単極性うつ病の症状は類似しており、鑑別が難しいケースが少なくない。海外の報告によると、69%の患者が単極性うつ病など他の精神疾患と診断され、適切に診断されるまで10年以上かかる患者は35%にのぼると言われている 2)。 鑑別診断が難しい一方で、薬物治療に関してはそれぞれのうつ症状に対し、異なるアプローチを要する。しかし、これまで、わが国において双極性障害におけるうつ症状の改善の適応を有する治療薬はなく、気分安定薬や抗精神病薬、抗うつ薬などが用いられてきた。双極性障害におけるうつ症状に対し抗うつ薬治療を継続すると、躁転やラピッドサイクル化、衝動性の亢進などのリスクが伴うことが報告されており 3)、その使用の是非や適切な治療の重要性が長期にわたり叫ばれてきた。オランザピン、「躁」「うつ」両症状に適応をもつ唯一の双極性障害治療剤に このような背景のもと、非定型抗精神病薬であるオランザピンは双極性障害における躁症状に加え、わが国では初となるうつ症状の改善も承認され、両症状の改善に適応が認められた唯一の薬剤となった。 今回の適応取得の根拠となった国際共同第III相プラセボ対象二重盲検比較試験及び非盲検継続治療試験(HGMP試験)は、DSM-IV-TRにより『双極I型障害、最も新しいエピソードがうつ病』と診断され、大うつ病エピソードの基準を満たしている患者514例を対象としており、日本人156例も含まれる。結果をみると、最終観察時点(投与開始6週後)におけるMADRS(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale:うつ症状の評価指標)合計点のベースラインからの変化量の平均値は、オランザピン群でプラセボ群と比較して有意な改善が認められ、日本人のみで検討した場合でも同様の結果が示された。また、うつ症状治療時における躁症状の発現率もプラセボと比較して有意に少ないことも示された。HGMP試験に続いて実施された長期投与試験(HGMS試験)では、HGMP試験を完了した日本人患者及びHGMS試験から参加した患者を対象に48週間、オランザピンの持続した効果が示された。張氏は講演の中で、「双極性障害の治療の基本は波のコントロールである。両症状の改善の適応をもつオランザピンは情動の安定化が期待できるのではないだろうか」と述べた。 なお、同試験における副作用は、頻度の高いものから体重増加、傾眠、食欲亢進、鎮静、過眠症などであった。 また、うつ症状の疾患自体に自殺のリスクが伴うため、十分に患者の状態を評価しながら投与することが必要であることから、添付文書の使用上の注意に自殺に対する注意喚起が追記された。今後への期待 双極性障害は患者の社会生活や健康、生命が脅かされる重大な疾患であり、薬物治療を中断すると再発するリスクが大きいことが知られている。さらに再発を繰り返すにつれて次の再発までの期間が短くなることに加え、薬剤の効果が得られなくなることが報告されており 4)、早い段階から適切な治療を行うことが必要である。 双極性障害の治療目標の一つに、「再発を防ぎ、患者が普通の社会生活を送れるようにする」ことが挙げられる。わが国で唯一、双極性障害における躁症状とうつ症状の両症状に適応を有するオランザピンは今後、長期的な症状のコントロールと再発の予防の観点からも、治療上重要な役割を担うことが期待される。

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統合失調症への集団アートセラピー、臨床的効果認められず

統合失調症の症状は薬物療法によって軽減されるが、多くの患者はメンタル面の回復や社会復帰を果たせずにいる。そうした統合失調症患者への補助療法として行われている集団アートセラピーの臨床的な効果について、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMike J Crawford氏らによる多施設での介入無作為化試験による検証が行われた。これまで、同療法のベネフィットについての検討はほとんど行われていなかった。BMJ誌2012年3月10日号(オンライン版2012年2月28日号)掲載報告より。集団アート療法、活動療法、標準治療の3群で比較研究グループは、統合失調症患者への集団アートセラピーの臨床的効果を評価し、そのベネフィットについて検証するため、3アーム評価者盲検介入無作為化比較試験を行った。被験者は、英国の二次的ケアサービスを提供する15病院で募集された、統合失調症の診断を受け、研究への参加について文書で説明了解を得た18歳以上の417例だった。参加者は病院ごとに分けられ、12ヵ月間にわたって、週1回集団アートセラピー+標準治療を受ける群(140例)、週1回集団活動療法+標準治療を受ける群(140例)、標準治療のみ群(137例)の3群に無作為化された。アートセラピー群と活動療法群のグループ構成は最大8人とし、1セッションは90分間。アートセラピー群のメンバーには、芸術材料は限定されず、自由に自己表現するよう促された。活動療法群のメンバーには、芸術と工芸関係を除くさまざまな活動が提示され、続けたいと思う活動を共同で選択して行うよう勧められた。主要評価項目は、無作為化24ヵ月後の、総合機能スケールを使って計測した全般的な機能状態と、陽性・陰性症状評価スケールで測定したメンタル症状とした。副次評価項目は、12ヵ月時点と24ヵ月時点の出席状況、社会参加、治療に対する満足度とした。3群間でアウトカムに差はみられず結果、3群間で主要評価項目に格差は認められなかった。24ヵ月後の総合機能スケール評価は、アートセラピー群と標準治療群との補正平均差は-0.9(95%信頼区間:-3.8~2.1)で、陽性・陰性症状評価スケールは0.7(同:-3.1~4.6)だった。12ヵ月時点と24ヵ月時点の副次評価項目については、アートセラピー群と標準治療群との間で格差は認められなかった。アートセラピーと活動療法への出席レベルは低調だった。研究グループは、「統合失調症と診断された患者に集団アートセラピーを受けさせても、全体的な機能状態、メンタル面ほか健康関連アウトカムは改善しなかった」と結論づけている。

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18歳以上のAD/HD当事者が最も望む支援は、医療の充実

日本イーライリリー株式会社は2日、全国で18歳以上の男女100名の注意欠陥/多動性障害(以下、AD/HD)当事者を対象としたインターネット調査を実施し、結果を発表した。同時に、AD/HD当事者や家族の相談・支援を行っている6都道府県11施設の発達障害者支援センターへのアンケートも実施されており、成人期AD/HD(18歳以上)当事者(以下、当事者)を取り巻く現状が明らかになった。今回のアンケートの対象となった100名の成人期AD/HD当事者において、成人前に診断を受けたのは20%に過ぎず、当事者の63%は18歳以上でAD/HDと診断を受けていた。初めて診断を受けた平均年齢は28歳だったという。多くみられる症状は、「忘れ物が多い」「集中力がない」「片付けができない」で、それらはAD/HD特有の『不注意』による症状だった。また、72%の当事者が併存障害を抱えており、最も多い疾患は「うつ病」だということもわかった。また、当事者自身が自分らしく暮らしていくために必要だと思われる支援として、72%が「医療(医療機関、治療選択肢など)の充実」と回答した。医療面で困難があると感じている当事者において、最も困っていることは、「成人向け(18歳以上)のAD/HD治療薬がない」(41.9%)、「治療を受ける病院がない・診断できる先生がいない」(39.2%)が挙げられた。それに加え、発達障害者支援センターへの成人期当事者からの相談件数が近年増加していることもわかった。成人AD/HD当事者から同センターへ寄せられる相談のなかで医療面で最も多いのは「医療機関の紹介をして欲しい」こと、就労面で最も多いのは「仕事が長続きしない」ことであった。また、同センターが当事者支援を行う上で「紹介する医療機関がない、少ない」ことに最も困っている現状も明らかになった。詳細はプレスリリースへhttps://www.lilly.co.jp/pressrelease/2011/news_2011_39.aspx

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