循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:236

心房細動後1年間のアウトカムに大きな地域間格差/Lancet

 心房細動後1年間の死亡率および脳卒中の発症について、カナダ・マックマスター大学のJeff S Healey氏らが47ヵ国の前向きレジストリのデータを分析した。その結果、大きな地域間格差が認められ、臨床変数以外の因子が重大な要因として考えられることが示唆されたという。心房細動は世界中で罹患や死亡の重大な原因となっているが、北米・欧州を除けば入手可能な個人の長期アウトカムデータが、とくにプライマリケアのものについて不足していた。研究グループは、心房細動からの罹患や死亡を減らすことを目的に、世界の異なる地域集団における、脳卒中および幅広く有害アウトカムの発生率を明らかにする検討を行った。Lancet誌オンライン版2016年8月8日号掲載の報告。

これからの心房細動アブレーション、焼くか冷やすか~Fire and Ice trial~(解説:矢崎 義直 氏)-580

左房と肺静脈をカテーテルアブレーションで電気的に隔離する心房細動の治療法は、この10年で大きく発展し、心房細動に対するマネージメントを大きく変えた。とくに高周波によるアブレーション治療は、薬物療法より洞調律維持効果が高いことを多くの大規模臨床試験が証明している。しかし、従来の高周波によるアブレーションは、肺静脈と左房を電気的隔離するために一点一点の多くの焼灼を必要とし、連続した円周上のブロックラインを作成するには、経験を必要とする。手技の複雑性のため、アブレーション治療成績は、個々のオペレーターの技術に大きく依存し、経験豊富な施設でも一定の割合で合併症が発生する。より手技がシンプルで、安全かつ治療効果が高いシステムとして冷凍バルーンアブレーションが開発された。

心血管疾患既往のない糖尿病患者の適切な降圧目標は?/BMJ

 2型糖尿病患者において、現行の推奨値よりも低値の収縮期血圧値は、心血管イベントの有意なリスク低下と関連することが、スウェーデン・イエーテボリ大学のSamuel Adamsson Eryd氏らによる国民ベースのコホート試験の結果、示された。この所見は、心血管疾患既往のない2型糖尿病患者についてみられたもので、著者は「先行研究で示された血圧低値と死亡増大の関連は、降圧治療というよりも合併症によるものと思われる」と述べている。最近の高血圧ガイドラインにおいて、2型糖尿病患者の降圧目標は、130mmHg以下から140mmHg以下へと緩和された。背景には、低値目標を支持する決定的な無作為化試験がないこと、および観察研究で血圧値と合併症にJカーブの関連を認めることが示唆されたためであった。BMJ誌オンライン版2016年8月4日号掲載の報告より。

糖尿病治療薬が心不全治療薬となりうるのか? 瓢箪から駒が出続けるのか?(解説:絹川 弘一郎 氏)-579

チアゾリジン薬の衝撃は、FDAをしてその後の糖尿病治療薬すべての認可の際に、心血管イベントをエンドポイントとしたプラセボ対照臨床試験を義務付けた。このことにより、図らずも循環器内科医にとっては糖尿病薬に関する勉強をする機会となり、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬などの糖尿病薬と心血管イベントの関連について知識が増えてきた。

クライオバルーン vs. 高周波、アブレーション比較の2次解析

 今年発表されたFIRE AND ICE試験によって、クライオバルーンアブレーションが高周波(RF)アブレーションと比べて安全性と有効性の面で劣らないことが示された。今回、報告者らは同試験の2次解析によって、日々の患者管理の重要な指標となるアブレーションの再施行、再入院および生活の質(QOL)を評価した。European Heart Journal誌オンライン版2016年7月5日号に掲載の報告。

急性心不全へのGLP-1受容体作動薬、第II相試験の結果/JAMA

 左室駆出率(LVEF)が低下した急性心不全入院患者に対し、GLP-1受容体作動薬リラグルチドを投与しても退院後のより高度な臨床的安定性には結び付かないことが、米国・ペンシルベニア大学のKenneth B. Margulies氏らによる第II相二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果、示された。GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病の状態にかかわらず、重症心不全患者の初期臨床試験で心保護作用を認めることが報告されていた。これを受けて研究グループは、急性心不全患者に対しGLP-1受容体作動薬を投与することで、退院後の臨床的安定性が改善するのかを検討したが、著者は「検討の結果は、そのような臨床効果を期待してのリラグルチドの使用を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2016年8月2日号掲載の報告。

off-site中央モニタリングの有用性が明らかに/JAMA

 標準化された心臓テレメトリを電子的にオーダーするoff-site中央モニタリング法(CMU)は、緊急対応チーム(ERT)の発動よりも早く、発症から1時間以内に洞調律や心拍数変化を検知し、心停止イベントを増大することなく患者の減少に寄与したことが報告された。米国・クリーブランドクリニックのDaniel J. Cantillon氏らが非重症患者を対象とした検討で明らかにした。従来のon-siteモニタリングでは、重大なイベントを見逃す頻度が高く、死亡に至る場合も少なくないことから、研究グループはoff-site CMUとアウトカムの関連を評価する検討を行った。JAMA誌2016年8月2日号掲載の報告。

TAVR後の大動脈弁閉鎖不全症、2つの予測因子/NEJM

 フォンウィルブランド因子(VWF)の高分子量マルチマーの欠損の存在と、アデノシン二リン酸被覆カートリッジの血栓形成による閉塞までの時間(closure time:CT-ADP)の延長は、いずれも経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)後の大動脈弁閉鎖不全症(AR)の予測因子であり、術後1年時の死亡率高値と関連していることが明らかとなった。フランス・リール大学病院センターのE. Van Belle氏らが、高分子量VWFマルチマーの評価あるいは血小板機能分析器(PFA-100)を用いた止血のポイントオブケア検査によりTAVR中のARをモニタリングできる、という仮説を検証する目的でコホート研究を行い、結果を報告したもの。大動脈弁狭窄症に対するTAVRを受ける患者の10~20%は術後ARを発症する。TAVR術後ARはただちに修復可能なので術中に検出することが望ましいが、実際には困難で、迅速かつ確実なスクリーニング法の開発が求められていた。NEJM誌2016年7月28日号掲載の報告。

日々の適度な身体活動が長時間座位による死亡リスクを抑制/Lancet

 毎日の適度な身体活動(1日約60~75分)は、長時間座位と関連する死亡リスクを排除すると思われることが、英国・ケンブリッジ大学のUlf Ekelund氏らによる男女100万人超のデータをメタ解析した結果、明らかにされた。一方で、同活動はTV視聴時間と関連する死亡リスクについては、低減はするが排除するまでには至らなかった。長時間座位は多くの慢性症状や死亡との関連が示唆されている一方、身体活動が長時間座位による有害作用を減少もしくは排除にまで至るのかは不明であった。著者は、「検討の結果は、とくに長時間座位労働者が増えており、今後パブリックヘルスの推奨が行われていく社会において、身体活動のベネフィットについてさらなるエビデンスを提供するものだった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年7月27日号掲載の報告。