HFpEF/HFmrEFへの心房シャント、運動時肺血管抵抗正常患者で転帰改善/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2022/02/15

 

 駆出率(EF)が保持または軽度低下した心不全(HFpEF/HFmrEF)患者では、心房シャントデバイス(InterAtrial Shunt Device[IASD]System II、米国Corvia Medical製)の留置により全体的な健康状態は改善されないものの、運動時の肺血管抵抗(PVR)の頂値が正常範囲内の患者では利益が得られる可能性があることが、米国・ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のSanjiv J. Shah氏らが実施したREDUCE LAP-HF II試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2022年2月1日号に掲載された。

日本を含む89施設の無作為化第III相試験

 本研究は、心房シャントはHFpEF/HFmrEF患者における心不全イベントを低減し、健康状態を改善するかの検証を目的とする第III相無作為化偽手術対照比較試験であり、米国、カナダ、欧州、オーストラリア、日本の89施設で、2017年5月~2020年7月の期間に参加者の登録が行われた(米国Corvia Medicalの助成による)。

 対象は、年齢40歳以上の症候性心不全で、EFが40%以上、運動時の肺動脈楔入圧(PCWP)が25mmHg以上で右房圧を少なくとも5mmHg上回る患者であった。

 被験者は、心房シャントデバイスを留置する群または偽手術を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。患者と転帰の評価者には無作為化の情報が知らされなかった。

 主要エンドポイントは、12ヵ月の時点での心血管死または非致死的虚血性脳卒中、24ヵ月までの全心不全イベントの発生率、12ヵ月時の健康状態(カンザスシティ心筋症調査票[KCCQ]の全要約スコアの変化量)の階層的な複合とされた。

安全性の複合エンドポイントにも差はない

 626例が登録され、心房シャント群に314例、偽手術群に312例が割り付けられた。全体の年齢中央値は72歳(IQR:66~77)で、女性が62%を占め、NYHA分類はクラスIIIが最も多く、心房細動などの併存疾患を有する患者が多かった。EFの中央値は60%(IQR:55)で、582例(93%)がHFpEF、44例(7%)がHFmrEFだった。

 複合主要エンドポイントの発生については、両群間に有意な差は認められなかった(win ratio:1.0、95%信頼区間[CI]:0.8~1.2、p=0.85)。

 12ヵ月時の心血管死または非致死的虚血性脳卒中の頻度は低く、心房シャント群が4例、偽手術群は2例で発現した(p=0.41)。また、24ヵ月以内に少なくとも1件の心不全イベントがみられた患者は、心房シャント群が66例(21%)、偽手術群は60例(19%)であり(p=0.42)、追跡期間中央値691日の時点における全心不全イベント発生率は、それぞれ0.28件/人年および0.25件/人年だった。

 12ヵ月後のKCCQ全要約スコアの変化量中央値は、心房シャント群が10.2(IQR:-1.8~26.8)、偽手術群は9.4(IQR:-2.1~22.9)であった。

 事前に規定されたサブグループ解析では、3つのサブグループで両群間に治療効果の差がみられた。すなわち、強度20Wの運動時の肺動脈収縮期圧が>70mmHg(pinteraction=0.002)、右房容積が≧29.7mL/m2(pinteraction=0.012)、男性の患者(pinteraction=0.02)では、心房シャント群で心不全イベントの発生頻度が高かった。

 このうちベースライン(無作為化前)の強度20W運動時の肺動脈収縮期圧による有意な交互作用の知見に基づき、侵襲的な血行力学マーカーの探索的事後解析を行った。その結果、運動時のPVRの頂値が1.74ウッド単位(正常上限値)未満の患者(382例)では、心房シャントの利益が得られた(win ratio:1.28、p=0.032、心不全イベントの発生率比:0.71、95%CI:0.42~1.20、プラセボで補正したKCCQ全要約スコアの変化量:5.5点、95%CI:1.6~9.5)のに対し、1.74ウッド単位以上の患者(188例)では、心房シャントは有害であった(心不全イベントの発症率比:2.48、95%CI:1.23~5.01、プラセボで補正したKCCQ全要約スコアの変化量:-6.2点、95%CI:-11.8~-0.7、pinteraction=0.031)。

 安全性の複合エンドポイント(心血管死、非致死的虚血性脳卒中、腎機能不全[新規発症、悪化]、主要有害心イベント[心臓死、心筋梗塞、心タンポナーデ、緊急心臓手術]など7項目)には、両群間で差はなかった(心房シャント群 116例[38%]vs.偽手術群 97例[31%]、p=0.11)。

 著者は、「運動時PVR頂値のサブグループ解析は事後解析であり、それゆえ探索的な評価であることを考慮し、この結果の解釈には注意を要する」と指摘し、「EFが40%以上の心不全で、運動中に肺血管疾患が認められない患者における、心房シャント治療の有効性、安全性、耐久性、長期的な臨床効果を評価するための新たな研究が求められる」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 原田 和昌( はらだ かずまさ ) 氏

東京都健康長寿医療センター 副院長

J-CLEAR理事