循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:117

新型コロナで低カリウム血症、その原因は?

 中国・温州医科大学のDong Chen氏らは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者における治療転帰との関連性を見いだすため、低カリウム血症の有病率、原因、および臨床的影響を調査する目的で研究を行った。その結果、COVID-19患者において低カリウム血症の有病率が高いこと、さらにその原因として、新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)がアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合することにより、ACE2(レニン-アンジオテンシン系を抑制)が分解され、レニン-アンジオテンシン系が活性化して持続的に腎からカリウムが排泄されることが示唆された。JAMA Network open誌2020年6月1日号掲載の報告。

中高年女性の前兆ある片頭痛、CVD発生リスクと関連/JAMA

 45歳以上の女性医療従事者を対象としたコホート研究において、前兆のある片頭痛を有する女性は、前兆のない片頭痛を有する女性または片頭痛なしの女性と比較して、心血管疾患(CVD)発生率が高いことが示された。ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のTobias Kurth氏らが、米国のWomen's Health Study(WHS)の追跡調査結果を解析・報告した。前兆のある片頭痛がCVDリスクを増加させることは知られている。しかし、ほかのCVDリスク因子と比較した場合、前兆を伴う片頭痛のCVD発生への絶対的寄与率は不明であった。JAMA誌2020年6月9日号掲載の報告。

抗血栓療法受難の時代(解説:後藤信哉氏)-1246

20世紀の後半からアスピリン、クロピドグレル、DOACsと抗血栓療法が世界の注目を集めた。心筋梗塞、脳梗塞、静脈血栓症などは致死的イベントの代表であった。抗血栓薬にて多少出血が増えても、「心血管死亡」が減るのであれば、メリットが大きいと考えられた。冠動脈ステントなど人工物では血栓性が高いとされ、アスピリン・クロピドグレルの抗血小板薬併用療法も推奨されてきた。血栓イベント予防のために抗凝固薬と抗血小板薬を併用している症例も実臨床では多数見掛けた。21世紀になって体重コントロール、運動習慣、食事への配慮が普及した。世界的に見れば血栓イベントは重要な死因の1つであるが、教育の行き届いた先進諸国での血栓イベントが目に見えて減少した。体内に入れる医療材料の血栓性も制御されるようになった。抗血栓薬による血栓イベント低下効果よりも、抗血栓薬による出血イベントが注目されるようになった。

日本動脈硬化学会総会・学術集会のWeb開催について【ご案内】

 一般社団法人日本動脈硬化学会は、2020年7月17日(金)、18日(土)に名古屋での開催を予定していた『第52回日本動脈硬化学会総会・学術集会』をWeb開催へ変更した。また、開催日も変更し、7月17日(金)~31日(金)の期間に実施される。参加登録者は会期中に全セッションを随時視聴できる。また、同じくWeb配信が予定されている市民公開講座については、誰でも無料で視聴可能である。  本学術集会では、医師向けの最新知見の発信のみならず、大学院生向けの最新研究TECH-Seminar、メディカルスタッフを対象とした症例検討などの企画が予定されている。

心臓リハビリ、冊子&電話フォローで完了率増/BMJ

 心筋梗塞発症後、2次予防のための心臓リハビリテーション実施と薬物療法について、患者に対してその重要性を示し実施と服薬を促す冊子の郵送と電話によるフォローアップを行うことで、心臓リハビリテーションの実施率は有意に増加したことが示された。一方で、服薬のアドヒアランスは増加しなかった。カナダ・Women's College HospitalのNoah M. Ivers氏らが2,632例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、著者は、「介入を強化することで服薬アドヒアランスが改善されるのかを調べること、また心臓リハビリテーションの実施と服薬アドヒアランスとの関連を調べることが必要である」と述べている。BMJ誌2020年6月10日号掲載の報告。

降圧治療と認知症や認知機能障害の発症の関連―システマティックレビュー、メタ解析(解説:石川讓治氏)-1245

中年期の高血圧が晩年期の認知症の発症と関連していることがいくつかの観察研究において報告されてきた。しかし、降圧治療と認知症や認知機能障害の発症の関連を評価した過去の研究においては、降圧治療が認知症の発症を減少させる傾向は認められたものの、有意差には至っていなかった。本論文では14の無作為介入試験の結果を用いてメタ解析を行い、平均年齢69歳、女性42.2%、ベースラインの血圧154/83.3mmHgの対象者において、降圧治療によって、平均49.2ヵ月間の追跡期間で7%の認知症もしくは認知機能障害の相対的リスク減少、および平均4.1年の追跡期間の間で7%の認知機能低下の相対的リスク減少があり、これらが有意差をもって認められたことを報告した。

女性における脳心血管病対策は十分といえるのか?(解説:有馬久富氏)-1243

世界のさまざまな所得水準の27ヵ国において20万人以上の一般住民を対象に疫学調査を継続しているPURE研究から、脳心血管病の男女差に関する成績がLancet誌に報告された。その結果、脳心血管病の既往のない女性の1次予防においては、男性と同等あるいはそれ以上に、高血圧に対する降圧療法、脂質異常症に対するスタチン、糖尿病に対する血糖降下療法が実施されていた。また、女性における初発脳心血管病のリスクは、男性の約4分の3と有意に低く、この結果は、すべての所得レベルおよびすべての地域に当てはまった。一方、脳心血管病の既往がある女性の2次予防においては、男性に比べて十分な対策が行われていないことが明らかになった。

HFrEF患者の死亡率はこの20年で半分になった!(解説:絹川弘一郎氏)-1242

HFrEFの治療薬は2000年くらいにはACE阻害薬とβ遮断薬が基礎治療薬で、数年のうちにARBとMRAが出そろった。エナラプリルとカルベジロールが第1世代のHFrEF治療薬であろうか。ARBはやや遅れてスタートしたので1.5世代薬くらいの印象である。ただACE阻害薬に優るエビデンスはなく多くは咳が出たときの代替薬なので、大きなインパクトではない。MRAについては古くからスピロノラクトンがあるもののunderuseが続き、2011年により忍容性の高いエプレレノンが登場したが、現在の実臨床でもファーストラインで投与される率はまだ低い。しかし、ARNIが2014年にPARADIGM-HF試験1)でHFrEFに対しACE阻害薬を上回る効果を示し、2019年にはSGLT2阻害薬が非糖尿病HFrEFでも有効と証明してみせた。対象は限定的であるが2010年にイバブラジンも予後改善効果を示した。このように2010年代はHFrEF治療の第2世代薬(ARNI、SGLT2阻害薬、イバブラジン)が登場したまさにパラダイムシフトのdecadeであった。それを総括する論文がこのLancet誌である。

COVID-19による静脈血栓症、入院前に発症か/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者では、Dダイマーと凝固系での凝固促進変化、この感染症に関連する静脈および動脈血栓症の上昇率が報告されている。現時点でのさまざまな論文報告によると、ICUに入室したCOVID-19患者の死亡率は50%と高い。とくに動脈・静脈での血栓イベント発症の報告は多く、末梢静脈血栓塞栓症は27~69%、肺塞栓症は最大23%も発生している。  フランス・CCNのJulien Nahum氏らが観察研究を行った結果、深部静脈血栓症の発症割合は79%と高く、早期発見と抗凝固療法を迅速に開始することで予後を改善する可能性が示唆された。また、抗凝固薬を予防投与したにもかかわらず、ICU入室後わずか2日で患者の15%が深部静脈血栓症を発症したことから、COVID-19のICU患者すべてにおいて系統的に抗凝固療法を評価する必要があるとしている。JAMA Network Open 2020年5月29日号のリサーチレターに報告した。