循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:117

エンパグリフロジン、HFpEFに初の有効性を確認/EMPEROR-Preserved試験

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジンが、左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)患者を対象とした第III相EMPEROR-Preserved試験において、主要評価項目(心不全による心血管死または入院いずれかの最初のイベントまでの期間)を達成し、糖尿病の有無にかかわらず、HFpEF患者の心血管死または心不全による入院の複合リスクを有意に減少させたことを、ドイツ・べーリンガーインゲルハイムと米国・イーライリリーが、7月6日、プレスリリースで発表した。本試験の結果は、2021年8月の欧州心臓病学会(ESC)年次学術集会で発表される予定。

COVID-19ワクチンの血栓性合併症にIgGは有効なのか?(解説:後藤信哉氏)

COVID-19 pandemicは持続している。ワクチンは切り札と理解されているが、ウイルスベクターのワクチンでは血栓イベントの合併がまれとはいえ発症する。血栓性合併症に対して抗凝固療法とIgGbの併用が推奨されている。カナダではウイルスベクターワクチンChAdOx1 nCoV-19を、ワクチンによる血栓症が少ないとされた55歳以上に使用した。それでも63~72歳の症例に血栓イベントが発症した。血栓イベントは2例が下肢動脈血栓症、1例が脳静脈洞血栓症であった。3例ともヘパリンと血小板第4因子に対する抗体(いわゆるHIT抗体)を認めた。IgG投与によりHIT抗体は減少した。

COVID-19に関連した血栓症の発症メカニズムは従来の血栓症とは異なる?(解説:後藤信哉氏)

心筋梗塞のような動脈系の血栓症でも、深部静脈血栓症のような静脈系の血栓症でも、ヘパリンは血栓イベント発症予防効果を示してきた。従来、医師が治療に貢献してきた血栓症のうち、出血イベントリスクの欠点はあっても、ヘパリンの増量により制圧できない血栓症はなかったと言っていい。COVID-19の感染に起因する血栓症は従来の血栓症とは様子が異なる。まず、ICUへの入院例として予防的なヘパリン投与を全例受けているのに、高率に症候性の静脈血栓症が起きてしまう。本研究が初めてではないが、予防量より多い治療量のヘパリンを用いても血栓イベントを防げないことが示唆されている。本研究の治療量抗凝固薬としてはヘパリンのみでなく、安定している症例では選択的Xa阻害薬リバーロキサバンも用いられた。ヘパリンに限らず、選択的Xa阻害薬を静脈血栓症の治療量で用いても有効性のエンドポイントには差がなく、出血リスクは増えた。

ふるさと納税、最も高額な寄付金と返礼品は?/医師1,000人に聞きました

 2008年から始まった「ふるさと納税」。言葉としては定着しているようだが、実際に医師の間にはどの程度浸透しているのだろうか。今回、医師の1回あたりの最高寄付金額や申込みの多い返礼品についてアンケート調査を行った。その結果、利用率は83%、人気の返礼品は肉類であることが明らかになった。また、1回の寄付金額が100万円以上と回答したのは14人(利用者の1.7%)だった。一方、ふるさと納税を利用していない17%における大半の理由は“面倒くさい”だったが、「地元の税収を減らしたくない」「趣旨に賛同できない」などの意見も挙げられた。

治療抵抗性高血圧に対する超音波腎デナベーションの効果(解説:石川讓治氏)

腎デナベーションによる降圧効果を評価する臨床試験が行われてきた。ラジオ波(radiofrequency)を用いた焼灼法を用いた過去の研究においては、外来血圧を用いて評価されていたため、血圧低下度が過大評価されていたことが問題であったとされ、治療抵抗性高血圧患者を対象にラジオ波を用いた腎デナベーション群とShamコントロール群とを比較した大規模臨床試験(SYMPLICITY HTN-3)では、外来血圧や自由行動下血圧に有意な血圧低下は認められなかった。その原因として、降圧薬の服薬アドヒアランス、降圧薬の投与方法、手技の精度、エンドポイントの確認法などの問題点が指摘されていた。

世界の喫煙率減少も、人口増で喫煙者数は増加:GBD 2019/Lancet

 世界的な15歳以上の喫煙率は、1990年以降、男女とも大幅に減少したが、国によって減少の程度やタバコ対策への取り組みにかなりの違いがあり、喫煙者の総数は人口の増加に伴って1990年以降大きく上昇したことが、米国・ワシントン大学のEmmanuela Gakidou氏らGBD 2019 Tobacco Collaboratorsの調査で明らかとなった。研究の詳細は、Lancet誌2021年6月19日号で報告された。  研究グループは、世界の疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study[GBD])の一環として、1990~2019年の期間に204の国と地域で、年齢別、性別の喫煙率と喫煙に起因する疾病負担について検討を行った(Bloomberg PhilanthropiesとBill & Melinda Gates財団の助成を受けた)。

AZ製ワクチン接種後の血栓症の診療の手引き・第2版/日本脳卒中学会・日本血栓止血学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が始まり、全国で一般市民に対しても接種が急速に進んでいる。その一方で、2021年3月以降、アストラゼネカ社アデノウイルスベクターワクチン(商品名:バキスゼブリア)接種後に、異常な血栓性イベントおよび血小板減少症を来すことが報道され、4月に欧州医薬品庁(EMA)は「非常にまれな副反応」として記載すべき病態とした。また、ドイツとノルウェー、イギリスなどからもバキスゼブリア接種後に生じた血栓症のケースシリーズが相次いで報告され、ワクチン接種後の副反応として血小板減少を伴う血栓症が問題となった。この血栓症は、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と類似した病態と捉えられ、VITTやVIPITという名称が用いられた(本手引きでは血小板減少症を伴う血栓症[TTS]を用いる)が、本症の医学的に適切な名称についてはいまだ議論があるところである。

HIV陽性者の突然死発生率は?院外心停止の死亡例を全例調査/NEJM

 米国・カリフォルニア大学のZian H. Tseng氏らは、「Postmortem Systematic Investigation of Sudden Cardiac Death study:POST SCD研究」において、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)陽性者はHIV感染の非判明者と比べて、心臓突然死(推定)および心筋線維症の発生率が高いこと、また、HIV陽性者の心臓突然死(推定)の3分の1は潜在的な薬物過剰摂取に起因していたことを明らかにした。これまで、HIV感染者における心臓突然死および不整脈による突然死の発生率について、詳細は明らかになっていなかった。NEJM誌2021年6月17日号掲載の報告。

臓器移植患者、ワクチン3回接種で抗体価が大幅上昇/NEJM

 固形臓器移植を受けた患者は、新型コロナワクチンを2回接種しても免疫応答が弱いことが報告されている。そして、移植患者はワクチン2回接種後であっても感染後の重症化リスクが高いことが報告されている。これらを受け、フランス公衆衛生庁は、免疫抑制状態の患者に3回目の接種を行うことを推奨している。NEJM誌オンライン版2021年6月23日号「CORRESPONDENCE」では、3回接種した臓器移植患者の抗体価が報告された。

心筋梗塞非責任病変治療においてFFRは有用なガイドか?(解説:上田恭敬氏)

責任病変のPCIに成功したSTEMI症例で、狭窄度50%以上の非責任病変を有する症例を対象として、非責任病変に対するPCIをアンジオガイドで行うかFFRガイドで行うかの2群に無作為に割り付け、1年間の全死亡、心筋梗塞、入院を伴う緊急血行再建術施行の複合エンドポイントを主要評価項目として、フランスの41病院で実施された多施設研究であるFLOWER-MI試験の結果が報告された。アンジオガイド群に581症例、FFRガイド群に590症例が割り付けられた。主要評価項目の発生は、アンジオガイド群で4.2%、FFRガイド群で5.5%に認められ、群間に差を認めなかった。全死亡は、アンジオガイド群で1.7%、FFRガイド群で1.5%に認めた。心筋梗塞は、アンジオガイド群で1.7%、FFRガイド群で3.1%に認めた。入院を伴う緊急血行再建術施行は、アンジオガイド群で1.9%、FFRガイド群で2.6%に認めた。