呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

非小細胞肺がん、術後アテゾリズマブの5年成績(IMpower010)/JCO

 切除後の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における化学療法+アテゾリズマブ術後補助療法の5年追跡結果が発表され、ベストサポーティブケア(BSC)に対する無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)の改善が示された。DFSは最終解析、OSは2回目の中間解析の結果で、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年5月30日号での報告。

COPD初の生物学的製剤デュピルマブへの期待/サノフィ

 サノフィは、2025年3月27日にデュピルマブ(商品名:デュピクセント)について、製造販売承認事項一部変更承認を取得し、「慢性閉塞性肺疾患(既存治療で効果不十分な患者に限る)」の適応が追加となった。この適応追加により、デュピルマブは慢性閉塞性肺疾患(COPD)に適応を有する初の生物学的製剤となった。  COPD治療の中心は、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)や長時間作用性β2刺激薬(LABA)といった気管支拡張薬である。LAMA+LABAで効果不十分かつ血中好酸球数高値の患者や、喘息病態を合併する患者には、吸入ステロイド薬(ICS)を追加した3剤併用療法(トリプル療法)が用いられることもあるが、それでも症状の残存や増悪を繰り返す患者が存在し、新たな治療選択肢が求められていた。

眠気の正体とは?昼間の眠気は異常?/日本抗加齢医学会

 突然襲いかかる眠気。実はこの正体、いまだに明らかになっていないらしい―。睡眠学の世界的権威である柳沢 正史氏(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 WPI-IIIS)が、日本抗加齢医学会主催のメディアセミナーにて「睡眠の謎に挑む~基礎研究から睡眠ウェルネスへ~」と題し、現時点でわかっている眠気の正体、われわれが誤解している睡眠の実態などについて解説した。

既治療のEGFR exon20挿入変異NSCLCへのzipalertinib(REZILIENT1)/ASCO2025

 EGFR exon20挿入変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対し、2024年にアミバンタマブが使用可能となった。しかし、アミバンタマブで病勢進行が認められた場合や有害事象などによって中止となった場合、アミバンタマブが使用できない場合の治療選択肢は確立していない。そこで、新規EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)のzipalertinibが開発されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Helena Alexandra Yu氏(米国・メモリアルスローンケタリングがんセンター)が、EGFR exon20挿入変異を有する既治療のNSCLC患者を対象とした国際共同第I/II相試験「REZILIENT1試験」の第IIb相の結果を報告した。本試験において、zipalertinibはプラチナ製剤を含む化学療法±アミバンタマブによる治療歴のあるNSCLC患者においても有効であることが示唆された。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年6月1日号に同時掲載された。

コロナワクチン、デマ対策より「接種開始時期」が死亡者数に大きく影響か/東大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにおいて、世界中でさまざまな誤情報が拡散した。ワクチンの有効性や安全性に関する内容も多く、これらの誤情報がワクチン忌避につながったことが多くの先行研究で報告されている。東京大学国際高等研究所新世代感染症センターの古瀬 祐気氏と東北大学大学院医学系研究科の田淵 貴大氏の研究グループは、ワクチンに関する誤情報が、日本における新型コロナワクチン接種率およびCOVID-19による死亡者数に及ぼした影響について、数理モデルを用いた反実仮想シミュレーションによって解析した。その結果、誤情報対策による接種率の変動よりも、ワクチン導入のタイミングが、死亡者数抑制により大きな影響を与えた可能性が示された。本結果はVaccine誌2025年6月20日号に掲載。

軽症~中等症COVID-19、40種の薬物療法を比較/BMJ

 非重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する40種の薬物療法のうち、ニルマトレルビル/リトナビルとレムデシビルは入院を減少させる可能性が高く、コルチコステロイド全身投与とモルヌピラビルは、この2剤ほどではないが同様の効果を有する可能性があり、アジスロマイシンなどは、症状の解消までの時間を短縮する可能性が高いことが、カナダ・McMaster UniversityのSara Ibrahim氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2025年5月29日号に掲載された。

がん患者のワクチン接種率を上げるカギは医療者からの勧め/日本がんサポーティブケア学会

 第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会において、国立がん研究センター東病院の橋本 麻子氏は「がん患者を対象としたワクチン接種に関する2年間のアンケート調査」の内容をもとに、がん患者におけるワクチン接種の実態と課題について発表した。  がん患者は、治療や疾患の進行に伴って免疫機能が低下していることが多く、感染症予防は非常に重要である。そのため、学会などでも季節性インフルエンザ、肺炎球菌、帯状疱疹、新型コロナウイルスワクチンの定期接種が推奨されている。

EGFR-TKI既治療のNSCLC、HER3-DXdの第III相試験結果(HERTHENA-Lung02)/ASCO2025

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)による治療歴を有するEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、patritumab deruxtecan(HER3-DXd)は、無増悪生存期間(PFS)を改善したものの、全生存期間(OS)を改善することはできなかった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Tony S. K. Mok氏(中国・香港中文大学)が、国際共同第III相試験「HERTHENA-Lung02試験」の結果を報告した。すでに主要評価項目のPFSが改善したことが報告されており、OSの結果が期待されていた。

ED-SCLCへのアテゾリズマブ+化学療法、維持療法にlurbinectedin上乗せでPFS・OS改善(IMforte)/ASCO2025

 PS0/1の進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)の標準治療は、プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬であり、維持療法としてPD-L1阻害薬単剤での投与を継続する。カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブによる治療の維持療法に、lurbinectedinを上乗せすることで、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が改善することが示された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Luis Paz-ares氏(スペイン・Hospital Universitario 12 de Octubre)が、海外第III相無作為化比較試験「IMforte試験」のOSの中間解析およびPFSの主解析の結果を報告した。本結果は、Lancet誌オンライン版2025年6月2日号に同時掲載された。

小細胞肺がん2次治療、タルラタマブがOS・PFS改善(DeLLPhi-304)/ASCO2025

 2ライン以上の治療歴を有する小細胞肺がん(SCLC)患者を対象とした国際共同第II相試験「DeLLphi-301試験」において、タルラタマブが良好な成績を示したことを受け、本邦では「がん化学療法後に増悪した小細胞肺癌」の適応で2025年4月16日に発売された。また、『肺癌診療ガイドライン2024年版』では、全身状態が良好(PS0~1)な再発SCLCの3次治療以降にタルラタマブを用いることを弱く推奨することが記載されている。より早期におけるタルラタマブの有用性を検討する試験として、SCLCの2次治療におけるタルラタマブの有用性を化学療法との比較により検証する国際共同第III相試験「DeLLphi-304試験」が進行中である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Charles M. Rudin氏(米国・メモリアルスローンケタリングがんセンター)が、本試験の第1回中間解析の結果を報告した。本試験において、タルラタマブは化学療法と比較して全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を改善することが示された。本結果は、NEJM誌オンライン版2025年6月2日号に同時掲載された。