EGFRチロシンキナーゼ阻害薬および化学療法後に病勢進行が認められた、EGFR遺伝子変異陽性局所進行または転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、sacituzumab tirumotecan(sac-TMT)はドセタキセルと比較して、奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)に関して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらし、安全性プロファイルは管理可能なものであることが、中国・中山大学がんセンターのWenfeng Fang氏らが行った第II相の多施設共同非盲検無作為化対照試験の結果で示された。sac-TMTは、栄養膜細胞表面抗原2(TROP2)を標的とする新規開発中の抗体薬物複合体。既存の抗TROP2抗体薬物複合体は、遺伝子変異の有無を問わないNSCLCで研究が行われてきたが、生存ベネフィットは示されていなかった。BMJ誌2025年6月5日号掲載の報告。
主要評価項目は、BIRC評価に基づくORR
試験は2023年9月1日~2024年12月31日に、中国の48施設で行われた。対象者は、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬およびプラチナ製剤ベースの化学療法後に病勢進行が認められた、
EGFR遺伝子変異陽性局所進行または転移のある成人(18~75歳)NSCLC患者であった。
研究グループは被験者を、sac-TMT(5mg/kg)を4週間サイクルの1日目と15日目に投与する群、またはドセタキセル(75mg/m
2)を3週間サイクルの1日目に投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けた。
ドセタキセル群の患者は、病勢進行時にsac-TMT治療への切り替えが許容されていた。
主要評価項目は、盲検下独立評価委員会(BIRC)の評価に基づくORRであった。副次評価項目は、試験担当医師の評価に基づくORR、BIRCまたは試験担当医師の評価に基づく病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DOR)、およびOS、安全性などであった。
sac-TMT群でORRが有意に改善、PFS、OSも改善
137例がsac-TMT(91例)群またはドセタキセル(46例)群に無作為化された。
EGFR変異のサブタイプを除けば、両群のベースライン特性はバランスが取れていた。137例の年齢中央値は56歳、男性が44%、98%がStageIVで20%が脳転移を有していた。37%が3ライン以上の前治療を受けており、93%が第III世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の投与を受けていた(58%が初回治療による)。
データカットオフ時点(2024年12月31日)で、割り付け治療を継続していたのはsac-TMT群で25%(23/91例)、ドセタキセル群で4%(2/46例)であった。治療薬投与中止の最も多い理由は病勢進行(sac-TMT群76%、ドセタキセル群91%)であった。ドセタキセル群44例においてsac-TMTへの切り替えを行った患者は16例(36%)であった。
追跡期間中央値12.2ヵ月において、BIRC評価に基づくORRは、sac-TMT群45%(41/91例)、ドセタキセル群16%(7/45例)であり、群間差は29%(95%信頼区間[CI]:15~43、片側のp<0.001)であった。
PFS中央値は、BIRC評価(6.9ヵ月vs.2.8ヵ月、ハザード比[HR]:0.30[95%CI:0.20~0.46]、片側のp<0.001)および試験担当医師の評価(7.9ヵ月vs.2.8ヵ月、0.23[0.15~0.36]、片側のp<0.001)いずれにおいても、sac-TMT群でドセタキセル群より有意に延長したことが示された。
12ヵ月OS率は、sac-TMT群73%、ドセタキセル群54%であった(HR:0.49、95%CI:0.27~0.88、片側のp=0.007)。RPSFTM(rank-preserving structural failure time model)を用いて治療薬の切り替えについて補正後、sac-TMT群のOS中央値は未到達、ドセタキセル群は9.3ヵ月で、sac-TMT群では死亡リスクが64%抑制されたことが示された(HR:0.36、95%CI:0.20~0.66)。
Grade3以上の治療関連有害事象は、sac-TMT群でドセタキセル群より発現頻度が少なく(56%vs.72%)、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。
(ケアネット)