リハビリテーション科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:5

手首の骨折の実態が明らかに―好発年齢は性別により顕著な差

 手首の骨折〔橈骨遠位端骨折(DRF)〕の国内での発生状況などの詳細が明らかになった。自治医科大学整形外科の安藤治朗氏、同大学地域医療学センター公衆衛生学部門の阿江竜介氏、石橋総合病院整形外科の高橋恒存氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Musculoskeletal Disorders」に6月13日掲載された。  DRFは転倒時に手をついた際に発生しやすく、発生頻度の高い骨折として知られており、高齢化を背景に増加傾向にあるとされている。ただし日本国内でのDRFに関する疫学データは、主として骨粗鬆症の高齢者を対象とする研究から得られたものに限られていて全体像が不明。これを背景として安藤氏らは、北海道北部の苫前郡にある北海道立羽幌病院の患者データを用いて、全年齢層を対象としたDRFの疫学調査を行った。なお、北海道立羽幌病院は苫前郡で唯一、整形外科診療を行っている医療機関であり、同地域の骨折患者はほぼ全て同院で治療を受けている。そのため、著者によると、「単施設の患者データの解析ではあるが、骨折に関しては、地域全体の疫学研究に近似した結果を得られる」という。

椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛にはパルス高周波とステロイド注射の併用が有効

 腰椎椎間板ヘルニアにより坐骨神経痛を来した患者の疼痛緩和と障害改善において、パルス高周波(PRF)と経椎間孔ステロイド注射(TFESI)の併用療法は、TFESI単独よりも優れていることが、「Radiology」に3月28日報告された。  ローマ・ラ・サピエンツァ大学付属ポリクリニコ・ウンベルト・プリモ病院(イタリア)のAlessandro Napoli氏らは、12週間以上続く腰椎椎間板ヘルニアにより坐骨神経痛を来し、保存治療に反応しない患者を、CTガイド下でのPRFとTFESIの併用療法1回を受ける群(174人)と、TFESI単独療法1回を受ける群(177人)にランダムに割り付けた。治療後1週目と52週目に、下肢痛の重症度を数値評価スケール(NRS)で測定した。

筋肉痛はタンパク質摂取で抑えられない

 レジスタンス運動(筋肉に繰り返し負荷をかける運動)の前後にタンパク質を摂取することは、運動後の回復とトレーニング効果を高める一般的な戦略である。一方、タンパク質摂取が運動誘発性筋損傷(EIMD:いわゆる筋肉痛)を抑制できるのかについて調査した、英国・ダーラム大学のAlice G. Pearson氏らによるシステマティックレビューの結果が、European Journal of Clinical Nutrition誌2023年8月号に掲載された。  研究者らはPubMed、SPORTDiscus、Web of Scienceで2021年3月までの関連論文を検索し、運動後の各時点(24時間未満、24時間、48時間、72時間、96時間)におけるタンパク質摂取の効果と、EIMDを計る間接的マーカーのヘッジズ効果量(ES)を算出した。

筋トレは方法次第で1日3秒、週3日で効果あり!?

 「筋力トレーニングはつらいので嫌い」という人は、少なくないだろう。しかし1日3秒、週3日で効果があるとしたらどうだろうか。新潟医療福祉大学とオーストラリア・Edith Cowan Universityの研究グループは、1日3秒、週3日の全力の伸張性収縮(重りをゆっくりと降ろすなどの運動)を4週間実施することで、筋力が増加することを明らかにした。本研究結果は、吉田 麗玖氏(間庭整形外科医院)らによってEuropean Journal of Applied Physiology誌オンライン版2023年7月28日号で報告された。  健康な大学生26人を対象として、全力の伸張性収縮を1日3秒、週2日実施する群(週2日群)と1日3秒、週3日実施する群(週3日群)に均等に割り付け、4週間のトレーニングを実施した。4週間のトレーニング前後における短縮性収縮、等尺性収縮、伸張性収縮時の随時最大筋力の変化を群間比較した。また、上腕二頭筋、上腕筋の筋厚の変化も比較した。これらの結果は、先行研究において1日3秒、週5日のトレーニングを4週間実施した群(週5日群)とも比較した。

全ての指を1本ずつ動かせる義手の開発が前進

 腕の切断を余儀なくされた患者にとって、大きな進歩となる研究成果が報告された。米国、スウェーデン、オーストラリア、イタリアのエンジニアと外科医から成る国際共同研究グループが、生体工学の技術を用いて、1本1本の指を動かせる機能性の高い義手(バイオニックハンド)を開発したことを、「Science Translational Medicine」7月12日号に発表した。  失われた手足に代わるものとして最も広く使用されているのが義肢(義手、義足)である。しかし、義肢はコントロールが難しい場合が多く、動きも限定的になることがある。義肢のうち、生物学的な原理(筋肉の発する信号)を電子工学系の技術(センサー)で読み取ることで手の機能を再現しようとするバイオニックハンドでは、切断した腕に残された筋肉を使って義手をコントロールすることが選択肢として考えられる。患者は、残された筋肉を自在に収縮させられるため、収縮により電気信号を発生させることで、手を広げたり握ったりなどの指令を義手に伝えることができるからだ。しかし、肘より上からの切断など切断範囲が広い場合には、それを行うための十分な筋肉を得ることができない。

男性機能の維持にも、テストステロン増加に最適な運動/日本抗加齢医学会

 いくつになっても男性機能を維持させたい、死亡リスクを減らしたい、というのは多くの男性の願いではないだろうか―。「老若男女の抗加齢 from womb to tomb」をテーマに掲げ、第23回日本抗加齢医学会総会が6月9~11日に開催された。そのシンポジウムにて前田 清司氏(早稲田大学 スポーツ科学学術院 教授)が『有酸素運動とテストステロン』と題し、肥満者のテストステロン増加につながる方法、男性機能を維持するのに適した運動について紹介した。  近年、国内の死因別死亡数では心血管疾患や脳血管疾患が上位に上っているが、肥満者(BMI≧25)が増加することでこの死因が押し上げられることが示唆されている1)。そのため、肥満者を減らせば心・脳血管疾患も減少傾向に転じる可能性がある。

間質性肺疾患の緩和ケア、日本の呼吸器専門医の現状を調査

 間質性肺疾患(ILD)は症状が重く、予後不良の進行性の経過を示すことがある。そのため、ILD患者のQOLを維持するためには、最適な緩和ケアが必要であるが、ILDの緩和ケアに関する全国調査はほとんど行われていない。そこで、びまん性肺疾患に関する調査研究班は、日本呼吸器学会が認定する呼吸器専門医を対象とした調査を実施した。その結果、呼吸器専門医はILD患者に対する緩和ケアの提供に困難を感じていることが明らかになった。本研究結果は、浜松医科大学の藤澤 朋幸氏らによってRespirology誌オンライン版2023年3月22日号で報告された。

介護施設入所のリスク因子は?

 高齢者の要支援・要介護度に応じた老人ホーム入所のリスク因子が信州大学医学部保健学科 佐賀里 昭氏らの研究で明らかとなった。PLoS One誌2023年1月27日号の報告。  高齢者の介護施設入所リスクを基本動作と日常生活動作(ADL)の観点から明らかにすることを目的とし、レトロスペクティブ研究が行われた。  A市における2016~18年の介護保険認定調査の要介護認定者のうちデータにアクセス可能であった1万6,865例の性別、年齢、世帯構成、要介護度などのデータを取得し、グループタイプを従属変数、基本動作得点とADL得点を独立変数として、多変量二項ロジスティック回帰分析を行った。

「骨転移診療ガイドライン」-新たな課題を認識しつつ改訂

 『骨転移診療ガイドライン』の改訂第2版が2022年12月に発刊された。2015年に初版発刊後、骨修飾薬の使用方法や骨関連事象のマネジメントなどの医学的エビデンスが蓄積されてきたことを踏まえ、7年ぶりの改訂となる。今回、本ガイドライン作成ワーキンググループのリーダーを務めた柴田 浩行氏(秋田大学大学院医学系研究科臨床腫瘍学講座)に、改訂ポイントや疫学的データの収集などの課題について話を聞いた。  がん治療で病巣を取り除けたとしても身体機能の低下によって生活の質(QOL)が低下してしまっては、患者の生きがいまでも損なわれてしまうかもしれない。骨転移はすべてのがんで遭遇する可能性があり1)柴田氏らはがん患者の骨転移がもたらす身体機能の低下をいかにして防ぐことができるのかを念頭に置いてガイドライン(GL)を作成した。「骨転移が生じる患者の多くはStageIVではあるが、外科的介入に対するエビデンスが蓄積されつつあることから、今回の改訂には多くの整形外科医にご参加いただき、外科領域のClinical Questionを増やした」と話し、「作成メンバーが、診断・外科・放射線・緩和・リハビリテーションと看護の5領域に分かれて取り組んだ点も成果に良く反映されている」と作成時の体制について説明した。

マインドフルネスも運動も認知機能に影響を与えないというネガティブデータをどう読み解くか(解説:岡村毅氏)

自覚的な物忘れがある地域在住高齢者で、Short Blessed Testというスクリーニング検査で認知症相当ではない人、つまり軽度認知障害なども含まれる地域の人々を、[1]マインドフルネス、[2]運動、[3]マインドフルネスと運動、[4]健康学習(対照群)の4群に分けて介入したが、[1]~[4]まですべてエピソード記憶や遂行機能に差が出ないという結果であった。脳画像においても差が出ていない。惨憺たる結果である。この領域で研究をしている者としては二重に残念な結果であった。まずはFINGER研究(フィンランドからやってきた食事・運動・認知・生活習慣の複合介入で認知機能を改善するというもの)がいつも再現されるわけではなさそうだということ。FINGER研究はなぜかわが国ではファンが多く、多くの似たような研究が行われていると聞くので、悲しい気持ちでこの結果を読む人がいるであろうことを考えると、なかなかつらい。