リハビリテーション科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:4

仲間と行う運動は認知機能低下を抑制する/筑波大学・山口県立大学

 高齢者にとって運動習慣を維持することは、フレイルやサルコペニアの予防に重要な役割を果たすとともに、認知症予防に有効であることが知られている。ただ、近年では孤立しがちな高齢者も多く、こうした高齢者が1人で運動した場合とそうでない場合では、認知機能の障害に違いはあるのであろうか。  大藏 倫博氏(筑波大学体育系 教授)らの研究グループは、高齢者4,358人を対象に「1人で行う運動や仲間と行う運動は、どの程度実践されているのか」および「どちらの運動が認知機能障害の抑制に効果があるのか」について、4年間にわたる追跡調査を行った。  その結果、高齢者の多くが実践しているのは、1人で行う運動であり、週2回以上の実践者が40%を超える一方で、仲間と行う運動の週2回以上の実践者は20%未満にとどまることがわかった。また、認知機能障害の抑制効果については、どちらの運動についても週2回以上の実践では、統計的な抑制効果が認められたが、1人で行う運動(22%のリスク減)よりも、仲間と行う運動(34%のリスク減)の方がより強い抑制効果を示すことが判明した。Archives of Gerontology and Geriatrics誌2022年12月23日号(オンライン先行)からの報告。

過体重・肥満の膝OA疼痛、食事・運動療法は有効か/JAMA

 過体重または肥満の変形性膝関節症患者では、18ヵ月間の食事療法と運動療法を組み合わせたプログラムは生活指導のみの場合と比較して、わずかだが統計学的に有意な膝痛の改善をもたらしたものの、この改善の臨床的な意義は不明であることが、米国・ウェイクフォレスト大学のStephen P. Messier氏らが実施した「WE-CAN試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年12月13日号に掲載された。  WE-CAN試験は、米国ノースカロライナ州の3つの郡(都市部1郡、農村部2郡)で行われた無作為化臨床試験であり、2016年5月~2019年8月の期間に参加者の登録が行われた(米国国立関節炎・骨格筋/皮膚疾患研究所[NIAMS]の助成を受けた)。

意思により制御できる車いすで麻痺患者が移動可能に

 重度の麻痺のある人が、脳の手術を受けなくても思い通りに車いすを動かせるようになる日が来るかもしれない。米テキサス大学オースティン校のJose del R. Millan氏らが、同氏らが開発した電極付きキャップを装着した四肢麻痺患者が、脳波により車いすを動かして病院内の“障害物コース”を進むことができたことを報告したのだ。この研究の詳細は、「iScience」11月18日号に掲載された。  この電極付きキャップは、かぶっている患者の脳信号(脳波)を捉えることができる。検出された脳波は増幅器により増幅されてコンピューターに送られ、そこでプログラムによって車いすの動きに変換される。患者は腕や手、足など、動かせなくなった体の部位を動かそうと念じるだけでよいという。Millan氏は、「手や足を動かそうという患者の意思が、実際に車いすのモーターを動かす指令に変換され、左右の車輪の回転速度を変えることで曲がることができる。例えば、左側よりも右側の車輪の回転速度が速いと左に回り、逆の場合には右に曲がる」と説明する。  研究には、3人の脊髄損傷による四肢麻痺患者が参加した。これらの患者は、2~5カ月にわたって週3回、この電極付きキャップをかぶって、車いすを動かすためのトレーニングを受けた。車椅子は、乗っている人が両手を動かすことをイメージすると左に曲がり、両足を動かすことをイメージすると右に曲がるように設定されているという。

マインドフルネス・運動は本当に認知機能に有効?/JAMA

 主観的な認知機能低下を自覚する高齢者において、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)、運動またはその併用はいずれも、エピソード記憶ならびに遂行機能を改善しなかった。米国・ワシントン大学のEric J. Lenze氏らが、米国の2施設(ワシントン大学セントルイス校、カリフォルニア大学サンディエゴ校)で実施した2×2要因無作為化臨床試験「Mindfulness, Education, and Exercise(MEDEX)試験」の結果を報告した。エピソード記憶と遂行機能は、加齢とともに低下する認知機能の本質的な側面であり、この低下は生活習慣への介入で改善する可能性が示唆されていた。著者は、「今回の知見は、主観的な認知機能低下を自覚する高齢者の認知機能改善のためにこれらの介入を行うことを支持しない」とまとめている。JAMA誌2022年12月13日号掲載の報告。

ビタミンD欠乏で筋力低下→サルコペニア発症の可能性/長寿研ほか

 ビタミンDが欠乏することで、将来的に筋力が低下してサルコペニア罹患率が上昇する可能性を、国立長寿医療研究センター運動器疾患研究部の細山 徹氏や、名古屋大学大学院医学系研究科整形外科学の水野 隆文氏らの研究グループが発表した。  先行研究において、ビタミンDは加齢性の量的変動やサルコペニアとの関連性が指摘されていたが、それらの多くが培養細胞を用いた実験や横断的な疫学研究から得られたものであり、成熟した骨格筋に対するビタミンDの作用や加齢性疾患であるサルコペニアとの関連性を示す科学的根拠は十分ではなかった。Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle誌2022年10月13日掲載の報告。

前十字靱帯損傷、リハビリより外科的再建術が有効/Lancet

 膝関節の不安定性による症状が持続している非急性期の前十字靱帯(ACL)損傷患者の管理法として、外科的再建術はリハビリテーションと比較して、臨床効果(KOOS4)が優れ費用対効果も良好であることが、英国・オックスフォード大学のDavid J. Beard氏らが実施した「ACL SNNAP試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年8月20日号で報告された。  ACL SNNAP試験は、膝関節の不安定性の症状が持続する非急性期のACL損傷患者において、再建手術と非外科的治療のどちらが最適な管理法であるかの検証を目的とする実践的な無作為化対照比較試験であり、2017年2月~2020年4月の期間に、英国の29ヵ所の国民保健サービス(NHS)セカンダリケア病院の整形外科で参加者の募集が行われた(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価計画の助成を受けた)。

末梢動脈疾患患者の歩行運動は痛みを覚えるまでやるべき?

 末梢動脈疾患(PAD)患者には「痛みなくして得るものなし(no pain, no gain)」というフレーズがそのまま当てはまりそうだ。米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部教授のMary McDermott氏らの研究から、PAD患者が歩行運動療法を行う場合、足に不快感や痛みを感じるペースで歩行した方が、歩行機能の改善につながりやすいことが明らかになった。この研究結果は、「Journal of the American Heart Association」で7月27日発表された。  McDermott氏は、「足の痛みをもたらす運動は、困難ではあるが有益だ。われわれは現在、PAD患者のために、高強度の運動療法の有益性を保ちつつより簡単にできるような介入方法の特定に取り組んでいるところだ」と話す。  PADは、心臓から全身に血液を運ぶ動脈が狭くなって血液と酸素の流れが悪くなることで生じる。PADの症状としては、歩行時の足のしびれや脱力、疲れ、痛みなどが挙げられる。こうした症状は約10分間休むと消失する。研究者らの間では、トレッドミルでのウォーキングによってPAD患者の歩行が改善し、歩行距離も延長することが知られていた。しかし、歩行ペースによる影響については明らかにされていなかった。

運動後のサウナで健康メリットがさらに拡大

 次に運動するときからは、心臓の健康へのメリットのために、運動後に15分間、サウナに入ると良いかもしれない。ユヴァスキュラ大学(フィンランド)のEarric Lee氏らが行った研究から、運動のみでも心血管系の健康上のメリットを得られるが、サウナに入るとさらに効果が上乗せされることが分かった。詳細は「American Journal of Physiology―Regulatory, Integrative and Comparative Physiology」に7月4日掲載された。  この研究では、サウナが心血管系の健康をどのように高めるのかというメカニズムは調査されていないが、サウナに確かにメリットがあることはこれまでの研究で明らかになっている。Lee氏は、「サウナ入浴に伴う急性の心血管反応は、少なくとも中強度の運動に匹敵することが示されている」と解説。また、「サウナはフィンランド文化の不可欠な要素であり、フィンランドでは車の台数よりもサウナの方が多い」と語っている。  Lee氏らの研究は、運動時間が週に30分未満で座業中心の生活を送っている、30〜64歳の成人ボランティア47人を対象に実施された。参加者の主な特徴は、平均年齢49±9歳、女性87%、BMI31.3±4.1、最大酸素摂取量(VO2max)28.3±5.6mL/kg/分で、全員が何らかの心血管疾患リスク因子(高コレステロール血症、高血圧、肥満、喫煙、冠動脈性心疾患の家族歴など)を有していた。

慢性腰痛の介入、段階的感覚運動リハビリvs.シャム/JAMA

 慢性腰痛患者に対する単施設で行った無作為化試験において、段階的感覚運動リハビリテーション(graded sensorimotor retraining)はシャム・注意制御介入と比較して、18週時点の疼痛強度を有意に改善したことが、オーストラリア・Neuroscience Research AustraliaのMatthew K. Bagg氏らによる検討で示された。慢性疼痛への、痛みと機能の感知に関する神経ネットワークの変化の影響は明らかにされていない。今回の結果について著者は、「疼痛強度の改善は小さく、所見が標準化可能なものかを明らかにするためには、さらなる検討が必要である」としている。JAMA誌2022年8月2日号掲載の報告。  研究グループは、慢性腰痛患者において、段階的感覚運動リハビリテーション(RESOLVE)の疼痛強度への効果を明らかにするため、プライマリケアおよび地域住民から非特異的な慢性(3ヵ月以上)腰痛を有する参加者を集めて並行2群無作為化試験を行った。  合計276例の成人が、オーストラリアのメディカルリサーチ研究所1施設で臨床医による介入またはシャム・注意制御介入を受ける(対照)群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。無作為化は2015年12月10日~2019年7月25日に行われ、フォローアップが完了したのは2020年2月3日であった。

肩関節鏡視、術後90日以内の有害事象は1.2%/BMJ

 肩関節鏡視下手術は、英国で一般的に行われるようになっているが、有害事象のデータはほとんどないという。同国オックスフォード大学のJonathan L. Rees氏らは、待機的な肩関節鏡視下手術に伴う有害事象について調査し、90日以内の重篤な有害事象のリスクは低いものの、再手術(1年以内に26例に1例の割合)などの重篤な合併症のリスクがあることを示した。研究の詳細は、BMJ誌2022年7月6日号に掲載された。  研究グループは、待機的な肩関節鏡視下手術における重篤な有害事象の正確なリスクを推定し、医師および患者に情報を提供する目的で、地域住民ベースのコホート研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]オックスフォード生物医学研究センター[BRC]の助成による)。