小児科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:35

産後7日以内のオピオイド処方は乳児の短期予後に悪影響なし(解説:前田裕斗氏)

産後の疼痛に対するオピオイド利用は、母乳に移行することで乳児に鎮静や呼吸抑制などの有害事象を及ぼす可能性があり、これまでにいくつかの報告がなされていた。一方、母乳に移行する量はごく少量であることがわかっており、本当に母体のオピオイド利用が乳児に対して有害事象をもたらすのか、短期的影響について確かめたのが本論文である。出産後7日以内のオピオイド処方と、乳児の30日以内の有害事象の関係が検討された。結果として、主要アウトカムである再入院率に差は認められず、オピオイド処方群で救急受診は有意に高かったものの、乳児への有害事象はいずれについても両群で差を認めなかったことから、母体へのオピオイド処方は乳児に明らかな有害事象をもたらさないと結論付けられた。

大卒の社会人、ADHD特性レベルが高いのは?

 これまで、成人の注意欠如多動症(ADHD)と社会人口学的特徴を検討した研究の多くは、ADHDと診断された患者を対象としており、一般集団におけるADHD特性について調査した研究は、ほとんどなかった。また、大学在学中には問題がみられず、就職した後にADHD特性を発現するケースが少なくない。国際医療福祉大学の鈴木 知子氏らは、大卒の日本人労働者におけるADHD特性と社会人口学的特徴との関連について、調査を行った。その結果、大学を無事に卒業したにもかかわらず、大卒労働者ではADHD特性レベルは高いことから、ADHD特性レベルを適切に評価し、健康の悪化や予防をサポートする必要性が示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年4月5日号の報告。

小児喘息の罹患率や症状、居住環境が影響/JAMA

 米国都市部の貧困地域に居住する子供たちにおける、不釣り合いに高い喘息罹患率には、構造的人種主義が関与しているとされる。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のCraig Evan Pollack氏らは、MAP研究において、住宅券(housing voucher)と低貧困地域への移住支援を提供する住宅移動プログラムへの参加が、小児の喘息罹患率や症状日数の低下をもたらすことを示した。研究の成果は、JAMA誌2023年5月16日号で報告された。  MAP研究は、2016~20年に家族がBaltimore Regional Housing Partnership(BRHP)の住宅移動プログラムに参加した、持続型喘息を有する5~17歳の小児123例を対象とする前向きコホート研究である(米国国立環境健康科学研究所[NIEHS]の助成を受けた)。

学校でのコロナ感染対策、マスクの効果が明らかに

 本邦では、2023年5月8日に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染症法上の分類が5類に引き下げられ、文部科学省は、5類移行後の学校でのマスクの着用や検温報告を原則不要とする方針を、各教育委員会に通知している。しかし、スイスの中学校で実施された研究において、マスク着用の義務化はウイルス感染に重要な役割を果たすとされるエアロゾルの濃度を低下させ、SARS-CoV-2感染リスクを大幅に低減させたことが報告された。本研究結果は、スイス・ベルン大学のNicolas Banholzer氏らによってPLOS Medicine誌2023年5月18日号で報告された。

青少年トランスジェンダーへの医療ケア、どうあるべき?

 米国を中心に、トランスジェンダー(出生時点の身体と自認の性別が一致していない人)をはじめとした性的マイノリティーに対する社会制度・配慮がどうあるべきかという議論が高まっている。トランスジェンダーを肯定した医療や制度整備を進めることを目的に、医学・法学などの専門家で構成される国際的非営利組織「世界トランスジェンダー保健専門家協会(World Professional Association for Transgender Health:WPATH)は、独自に「トランスジェンダーとジェンダー多様な人々の健康のためのケア基準」を作成している。10年ぶりの更新となる第8版(SOC-8)が2022年9月に発表され、JAMA誌2023年5月18日号にそのサマリーが公開された。

1~3歳のピーナッツアレルギー児、パッチ療法の有用性を検証/NEJM

 ピーナッツアレルギーの1~3歳児において、12ヵ月間にわたるピーナッツパッチを用いた経皮免疫療法はプラセボと比べて、脱感作の児の増加、症状を引き起こすピーナッツ量の増量という点で優れていたことが示された。米国・コロラド大学のMatthew Greenhawt氏らが第III相の多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。ピーナッツアレルギーの4歳未満児に対する承認された治療法はなく、これまでピーナッツアレルギー幼児へのピーナッツパッチによる経皮免疫療法の有効性と安全性は確認されていなかった。NEJM誌2023年5月11日号掲載の報告。

乳児期のRSV感染が小児喘息発症に関連/Lancet

 正期産の健常児で、生後1年目(乳児期)に重症呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に感染していない場合は感染した場合と比較して、5歳時点の小児喘息の発生割合が大幅に低く、乳児期のRSV感染と小児喘息には年齢依存的な関連があることが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのChristian Rosas-Salazar氏らが実施した「INSPIRE試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年4月19日号で報告された。  INSPIRE試験は、2012年6月~12月または2013年6月~12月に正期産で生まれた非低出生体重の健常児を対象とする大規模な住民ベースの出生コホート研究であり、米国テネシー州中部地域の11の小児科診療所で参加者の募集が行われた(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。

小児への抗菌薬処方、多面的介入で減らせるか/BMJ

 急性咳嗽および呼吸器感染症(通常はウイルス性疾患)の小児は、プライマリケアにおいて最大の患者集団であり、半数近くが抗菌薬治療を受けている。そのような現状を背景に、英国・ブリストル大学のPeter S. Blair氏らは、抗菌薬適正使用支援の多面的介入の効果を無作為化試験で検証した。小児への無分別な抗菌薬使用の重大要因として、予後不良に関する不確実性があることなどを踏まえて介入効果を検証したが、全体的な抗菌薬投与を減らしたり、呼吸器感染症関連の入院を増やしたりすることもなかったことを報告した。BMJ誌2023年4月26日号掲載の報告。

ADHD患者の不安症やうつ病の併発、その影響はどの程度か

 注意欠如多動症(ADHD)患者では精神医学的疾患の併発が多く、診断に難渋したり、治療のアウトカムおよびコストに影響を及ぼしたりする可能性がある。米国・大塚ファーマシューティカルD&CのJeff Schein氏らは、同国におけるADHDおよび不安症やうつ病を併発した患者の治療パターンとコストを調査した。その結果、不安症やうつ病を併発したADHD患者では、これらの併存疾患がない患者と比較し、治療変更が行われる可能性が有意に高く、治療変更の追加によるコスト増加が発生することが明らかとなった。Advances in Therapy誌オンライン版2023年3月13日号の報告。

KMT2A-r ALL乳児、化学療法+ブリナツモマブでDFS改善/NEJM

 新規に診断されたKMT2A再構成陽性急性リンパ芽球性白血病(KMT2A-r ALL)の乳児において、Interfant-06試験の化学療法へのブリナツモマブ追加投与は、Interfant-06試験のヒストリカルコントロールと比較し安全で有効性も高いことが確認された。オランダ・Princess Maxima Center for Pediatric OncologyのInge M. van der Sluis氏らが、多施設共同前向き単群第II相試験の結果を報告した。乳児のKMT2A-r ALLは、3年無イベント生存率が40%未満の進行性疾患で、多くが治療中に再発する。その再発率は、診断後1年以内で3分の2、2年以内では90%である。化学療法が強化されたにもかかわらず、この20数年、アウトカムは改善されていなかった。NEJM誌2023年4月27日号掲載の報告。