整形外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

膝OA患者のアウトカム改善、筋トレvs.ヨガ

 変形性膝関節症(膝OA)の運動療法として、ヨガと筋力増強トレーニングの有効性を比較検討した結果、両群ともに有意に膝関節痛を軽減し、ヨガ群では筋力増強トレーニング群よりも機能や硬直、健康関連QOLなどが良好であったことを、オーストラリア・タスマニア大学のBedru J. Abafita氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2025年4月8日号掲載の報告。  運動療法は、膝OAの疼痛、身体機能、日常生活機能の改善のために推奨されているが、異なる種類の運動の有用性を比較した試験は限られているため、最も効果的な運動の種類は明確ではない。また、ヨガはマインドフルネスや柔軟性、ウェルビーイングを高めることで疼痛の軽減が期待できるが、膝OAに対するヨガの有用性を示す質の高いエビデンスは少ない。そこで研究グループは、ヨガは筋力増強トレーニングよりも膝OA患者の膝関節痛を緩和し、身体機能やQOLを改善する運動として有用であるという仮説を立て、評価者盲検無作為化優越性試験を実施した。

転倒リスクの高い2型糖尿病治療薬は?/筑波大

 骨格筋量の低下によって転倒リスクが増大することが知られており、一部の2型糖尿病治療薬は体重減少作用が強く、骨格筋量の減少を引き起こすことで転倒リスクを増大させる可能性が示唆されている。この課題について筑波大学システム情報系知能機能工学域の鈴木 康裕氏らの研究グループは、筑波大学附属病院に入院中の2型糖尿病患者を対象に転倒調査を5年間行った。その結果、SGLT2阻害薬は転倒の危険因子であることが示唆された。この結果はScientific Reports誌2025年3月17日号に掲載された。

高脂血症は術後せん妄のリスク因子か~メタ解析

 術後せん妄のリスク因子としての高脂血症の潜在的役割について、中国・Zigong Fourth People's HospitalのLi-Quan Qiu氏らがメタ解析で検討した。その結果、高脂血症患者は術後せん妄リスクが有意に高く、術後せん妄患者では総コレステロール、トリグリセライド、LDLコレステロールが有意に高いことが示され、術後せん妄リスク因子としての高脂血症の潜在的役割が示唆された。Frontiers in Aging Neuroscience誌2025年3月18日号に掲載。

鼻の軟骨で膝の損傷を修復できる可能性

 ランニングやスキーなどスポーツをしているときの転倒により生じた膝の損傷は、選手が一線から退かざるを得なくするだけでなく、将来的に関節炎のリスクを高める可能性がある。しかし新たな研究で、そのような転倒で損傷することはほとんどない鼻が、膝修復の鍵になる可能性を示唆する研究結果が報告された。研究グループは、鼻の中で左右の気道を隔てる壁となっている鼻中隔軟骨から作られた人工軟骨を、最も複雑な膝の損傷の修復にも使用できるとしている。バーゼル大学(スイス)生物医学部長のIvan Martin氏らによるこの研究の詳細は、「Science Translational Medicine」に3月5日掲載された。

PADを有する2型DM、セマグルチドは歩行距離を改善/Lancet

 症候性末梢動脈疾患(PAD)を有する2型糖尿病(DM)患者において、セマグルチドはプラセボと比較して歩行距離の改善が大きかったことが示された。米国・コロラド大学のMarc P. Bonaca氏らSTRIDE Trial Investigatorsが、第IIIb相二重盲検無作為化プラセボ対照試験「STRIDE試験」の結果を報告した。PADは世界中で2億3,000万人超が罹患しており、有病率は高齢化により上昇していて、2型DMを含む心代謝性疾患の負担を増している。PAD患者に最も早期に発現し、最も多くみられ、最も支障を来す症状は機能低下と身体的障害であるが、機能や健康関連QOLを改善する治療法はほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2025年3月29日号掲載の報告。

25年度専攻医、増えた診療科・減った診療科/専門医機構

 日本専門医機構(理事長:渡辺 毅氏)は、3月24日に2025年度の専攻医採用数を発表した。「専攻医」とは、同機構が定める「専門医制度」の下、各診療科の「専門研修プログラム」を受けている医師の総称であり、臨床研修(初期研修)を修めた後、「専門医」を取得するまでの医師のことである。以前は「後期研修医」と呼ばれていたが、2018年から名称が改められた。  2025年度に採用された専攻医は9,762人で24年度に比べ308人増員した。とくに外科、耳鼻咽喉科などが大幅な伸びを示した一方で、精神科、産婦人科、放射線科などは減少した。

老後を健康に過ごすには足の健康から始めよう/科研・楽天

 科研製薬は、足に関わる生活習慣の改善を目的に、楽天モバイルとの共同プロジェクト「満足プロジェクト」で業務提携契約を締結した。このプロジェクトは、楽天モバイルの健康寿命延伸サポートサービス「楽天シニア」(現在300万ダウンロード/約7割が50代以上)を通じ、足のお悩みを把握すると同時に、足の健康に関する正しい情報を提供することで、健康満足度の向上に貢献することを目指すものである。両社は、このプロジェクト発足について、3月14日に都内でメディアセミナーを開催し、高齢者の運動器障害の観点からロコモティブシンドローム(以下「ロコモ」と略す)についての概要と足の悩みの観点から巻爪、白癬などの診療と満足プロジェクトの概要が紹介された。また、科研製薬では、2025年3月27日に医療従事者向けのウェブサイト「KAKEN Medical Pro」を開設し、各製品情報に加え、足の健康を守るための「足」の疾患に関連する情報も発信し、医療従事者をサポートする。

手術中の強オピオイド鎮痛薬の使用は手術後の疼痛と関連

 手術中に強オピオイド鎮痛薬のレミフェンタニルとスフェンタニルを使用することは、手術後の望ましくない「疼痛経験」と独立して関連することが示された。「疼痛経験」とは、単なる痛みの強度だけでなく、感情的・精神的・認知的な側面を含めた包括的な概念である。ニース・パスツール病院大学病院センター(フランス)のAxel Maurice-Szamburski氏らによるこの研究は、「Regional Anesthesia & Pain Medicine」に2月25日掲載された。  Maurice-Szamburski氏は、「オピオイド鎮痛薬は手術後の疼痛軽減に役立つことがあるが、手術中の使用、特に、強オピオイド鎮痛薬のレミフェンタニルやスフェンタニルの使用は、逆に疼痛を増大させる可能性がある」と述べている。

非がん性慢性疼痛へのオピオイド、副作用対策と適切な使用のポイント~ガイドライン改訂

 慢性疼痛はQOLを大きく左右する重要な問題であり、オピオイド鎮痛薬はその改善に重要な役割を果たす。一方、不適切な使用により乱用や依存、副作用が生じる可能性があるため、適切な使用が求められている。そこで、2024年5月に改訂された『非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン改訂第3版』の作成ワーキンググループ長を務める井関 雅子氏(順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座 教授)に、本ガイドラインのポイントを中心として、オピオイド鎮痛薬の副作用対策と適切な使用法について話を聞いた。

炎症性関節炎患者に対するメンタルヘルスケアには課題あり

 乾癬性関節炎や関節リウマチなどの炎症性関節炎患者は、うつ病や不安障害などの気分障害のリスクが大幅に高いにもかかわらず、こうしたメンタルヘルス上の懸念に対する医師の対応は十分ではないことが、新たな研究により明らかになった。ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)のMary De Vera氏らによるこの研究結果は、「Arthritis Research & Therapy」に1月21日掲載された。  この研究でDe Vera氏らは、ブリティッシュコロンビア州の行政保険データ(2000年1月2日〜2018年3月31日)を用いて、うつ病と不安障害のいずれかまたは両方を発症した炎症性関節炎(強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ)患者に対する最小限の適切な薬物療法や心理療法の実施について評価した。最小限の適切な薬物療法は「84日分以上の抗うつ薬の処方」、最小限の適切な心理療法は「4回以上のカウンセリング/心理療法サービスの実施」と定義された。