疫学(危険因子)|page:6

視機能喪失の訴えは、うつ病のリスク!?

 自己申告に基づく視機能喪失は、客観的な評価に基づく視力喪失よりも、うつ病との関連が有意であることが、米国・NIHのXinzhi Zhang氏らによる全米成人サンプル調査からのエビデンスとして示された。結果を踏まえて著者は「医療者は、視機能喪失を訴える人のうつ病リスクを認識しなければならない」と結論している。これまで、うつ病と視力喪失の関連について、全米成人サンプルにおける検討はされておらず、特異的なコホート、主に高齢者を対象としたものに限られていた。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2013年3月7日号の掲載報告。

抗精神病薬によるプロラクチン濃度上昇と関連する鉄欠乏状態

 小児および思春期患者への使用が増加している非定型抗精神病薬は、脳内ドーパミンを修飾する。ドーパミン作動性シグナル伝達において、鉄は重要な役割を果たしている。米国・アイオワ大学のChadi Albert Calarge氏らは、体内の鉄含量が精神症状の重症度、治療反応性、引き続き行われる抗精神病薬療法の忍容性と関連するか否かについて検討を行った。その結果、対象の45%が鉄枯渇、14%が鉄欠乏状態にあること、また鉄欠乏症を認める患者では血清プロラクチン濃度の上昇が強まることを報告した。Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology誌オンライン版2013年3月12日号の掲載報告。

乳がん予防には体重コントロールと運動が重要~日本人女性でのリスクの検討

 日本人女性において、エストロゲン受容体/プロゲステロン受容体(ER/PgR)の状態からみた乳がんリスク、身体計測因子、身体活動の関連はまだ明らかではない。東北大学の河合賢朗氏らはケースコントロール研究により、女性全体および閉経後女性でBMIが高いとER+/PgR+のがんリスクが高いこと、身体活動がどのタイプの乳がんのリスクも減少させる可能性を報告した。この結果から、乳がん予防には体重コントロールと身体活動が重要であるとしている。Cancer causes & control誌オンライン版2013年3月14日号に掲載。

抗精神病薬と抗コリン薬の併用、心機能に及ぼす影響

 国立台湾大学病院のWei-Lieh Huang氏らは、抗精神病薬が心機能に及ぼす影響を、ムスカリン受容体に対する親和性および抗コリン薬併用の影響という観点から検討した。その結果、抗精神病薬のムスカリン受容体に対する親和性は、交感神経と副交感神経の両方の調節に影響し、抗精神病薬と抗コリン薬の併用は心拍変動に影響を及ぼすことが示唆された。これまで、抗精神病薬が心血管リスクと関連することは知られていたが、その抗コリン作用と心機能との関連は不明であった。Journal of clinical psychopharmacology誌オンライン版2013年2月14日号の掲載報告。

仕事のストレスが大きいほど、うつ病発症リスクは高い:獨協医科大学

 日々の仕事で深刻な悩みやストレスを抱えている日本人就労者の割合は60%を超え、仕事への義務感による精神的重圧から、精神障害および自殺を起こす頻度が増加している。そこで獨協医科大学の和田佳子氏らは、職業性ストレス簡易調査票(BJSQ)で測定・評価したストレス反応から、うつ病のリスクを識別しうるか否かを明らかにすることを目的としたコホート研究を行った。PLoS One誌オンライン版2013年2月12日号の掲載報告。

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の長期曝露、ミツバチの生態行動に影響

 過去20年間に多くの国でミツバチやその他の受粉行動をする昆虫が急激に減少した。背景には、寄生ダニ駆除を目的とした、コリン作動性シグナル伝達に作用する有機リン酸系の農薬(殺虫剤)の影響が言われている。英国・ニューキャッスル大学のSally M. Williamson氏らは、それら殺虫剤の長期曝露がミツバチの行動にどのような影響を及ぼすのか、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬を用いた検証試験を行った。その結果、AChE阻害薬の長期曝露により毛づくろい行動(働かなくなる)や排便回数が増えるなど、ミツバチの生理機能や行動に変化がもたらされたことが確認されたという。Frontiers in Physiology誌オンライン版2013年2月5日号の掲載報告。

抗精神病薬や気分安定薬を服薬中の女性、妊娠・出産のリスクはどの程度?

 女性に対する抗精神病薬や気分安定薬の処方は、妊娠や出産へのリスクを十分に考慮する必要がある。イタリア・ヴェローナ大学のC. Barbui氏らは、抗精神病薬服薬中の妊娠可能年齢女性における、妊娠転帰に関するデータをまとめ、発表した。Epidemiology and psychiatric sciences誌オンライン版2013年2月1日号の報告。

抗精神病薬多剤併用による代謝関連への影響は?

 統合失調症患者の治療において、2剤以上の抗精神病薬を併用することは少なくない。しかし、多剤併用による治療は単剤治療と比較し、副作用発現率の上昇などデメリットも大きい。このデメリットには、耐糖能異常やインスリン抵抗性などの薬剤性代謝関連の副作用も多く含まれるが、その生理メカニズムは十分に解明されていない。Heidi N. Boyda氏らは、抗精神病薬の多剤併用と代謝関連副作用との関係を検討するにあたり、動物実験での結果が実臨床に結び付くかを検証した。Experimental and clinical psychopharmacology誌オンライン版2013年1月28日号の報告。

空中浮遊微粒子濃度は自殺企図・統合失調症増悪に影響を及ぼす

 イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学のNaomy S. Yackerson氏らは、空中浮遊微粒子の濃度が自殺企図および統合失調症の増悪に及ぼす影響について検討を行った。その結果、風の方向による空中浮遊微粒子濃度の相違が、自殺企図や統合失調症の増悪に影響を及ぼすことを報告し、天候を考慮した対処が精神への有害な影響を予防あるいは緩和しうることを示唆した。International journal of biometeorology誌オンライン版2013年1月16日号の掲載報告。

SSRI、インスリン抵抗性から糖尿病への移行を加速!

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の長期使用では、肥満症および糖尿病のリスク増大が知られているが、これまで、SSRIがインスリン抵抗性の直接的な誘発因子であるのかといった病態生理学的意義については、ほとんど明らかとなっていなかった。今回、イスラエル・ワイツマン科学研究所のRoi Isaac氏らによるマウス試験の結果、SSRIが膵臓のβ細胞におけるインスリン・シグナル伝達を直接的に阻害している所見が示された。著者は、「SSRIはインスリン抵抗性の状態から顕性糖尿病への移行を加速している可能性がある」と結論している。

双極性障害患者の長期健康状態の独立予測因子は肥満!

 双極性障害において、肥満が内科的、精神科的負担を増大させるというエビデンスが横断的研究で多く示されている。しかし、双極性障害と肥満の関係を検証する縦断的研究はほとんど行われていなかった。カナダ・トロント大学のBenjamin I Goldstein氏らは、肥満と双極性障害との関連を3年間にわたり検討した。その結果、肥満は双極性障害患者の長期的な健康状態を予測する独立した因子であり、肥満の治療は双極性障害患者の内科的、精神科的負担の軽減につながる可能性が示唆されたことを報告した。Bipolar Disorders誌オンライン版2013年1月3日号の掲載報告。

第二世代抗精神病薬によるインスリン分泌障害の独立した予測因子は・・・

 第二世代抗精神病薬(SGA)は2型糖尿病リスクを増大する。そのメカニズムは、薬剤による体重増加を中心に、インスリン抵抗性の代謝異常カスケードが始まり、インスリン産生の増大と膵β細胞の機能障害によるものだと考えられている。米国・ザッカーヒルサイド病院のPeter Manu氏らは、SGAであるクロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンについて、インスリン分泌への影響を検討した。Schizophrenia Research誌オンライン版2012年12月8日号の掲載報告。

統合失調症患者の体重増加、遺伝子との関連を検証!

 いくつかの抗精神病薬による体重増加には、遺伝的要因が関与していると言われている。一般人における肥満に関連する遺伝子にFTO遺伝子がある。イギリス・クイーンズ大学ベルファストのGavin P. Reynolds氏らは、このFTO遺伝子における共通のリスク多型(rs9939609)が抗精神病薬誘発性の体重増加や肥満と関連があるかどうかを検討した。The international journal of neuropsychopharmacology / official scientific journal of the Collegium Internationale Neuropsychopharmacologicum (CINP).誌オンライン版2012年12月14日号の報告。

いち早く欧米化が進んだ沖縄県。今、脳卒中発生率は増加?減少?日本の未来を暗示!?:宮古島研究

 沖縄県宮古島において、2002~2005年の血圧値が1988~1991年より有意に低値であったにもかかわらず、初発脳卒中およびすべての脳卒中病型の発生率に有意な変化を認めなかったことが、琉球大学大学院 洲鎌 千賀子氏らにより報告された。また、脳梗塞発生率の上昇傾向には、代謝異常が関連していると推測した。Journal of stroke and cerebrovascular diseases誌オンライン版2012年11月2日付の報告。

家族性のがんリスクに関する検討/BMJ

 がんの家族性リスクが早期発症例に限定されるかどうかを判断するため、ドイツがん研究センターのE Kharazmi氏らは、全国規模のSwedish Family-Cancer Databaseを用いて前向きコホート研究を実施した。その結果、「子」のがんリスクが最も高くなるのは「親」が若い年齢で同一がんが診断された場合だが、「親」が高齢で診断された場合においてもリスクが増加することが認められた。著者は、「家族性のがんは、高齢でがんに罹患した家族を持つ人々における早期発症をいうのではなく、早期発症と遅発性発症という別個の構成要素があるのかもしれない」と考察している。BMJ誌2012年12月20日号に掲載。

低緯度地域では発揚気質が増強される可能性あり:大分大学

 日光を浴びる時間は気分や気分障害に影響を与える。大分大学の河野 健太郎氏らは、最近の研究で、昼間の高照度は発揚気質と関連づけられ、一方、昼間の低照度は循環気質と関連づけられることを実証した。しかしながら、発揚気質または循環気質が向日性ないし非向日性を有するために、より高い照度またはより低い照度を求めるのか、またはその逆であるのかに関しては明らかになっていなかった。著者らはこの疑問を解決するため、日照時間の異なる地域の住民を対象に、双極性気質を比較した。Journal of affective disorders誌2012年12月号の報告。

乳がんのリスクにおけるアルコールと葉酸の影響は?~日本人での研究

 葉酸は、アルコールとの相互作用により、多くのがんのリスクに影響を及ぼすことが示唆されているが、これらの因子がアジア人の乳がんリスクに及ぼす影響については十分に検討されていない。今回、閉経前および閉経後の日本人女性の乳がん患者1,754例とコントロール3,508例におけるケースコントロール研究の結果が、European journal of cancer prevention誌オンライン版2012年11月20日号に報告された。