ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:264

ACS疑いへの高感度トロポニンI定量法、カットオフ値低下で心筋梗塞再発や死亡リスクが低下

急性冠症候群(ACS)が疑われる人に対し、高感度トロポニンI定量法を行うことは、心筋壊死の診断カットオフ値を引き下げ、心筋梗塞再発や死亡リスクを低下することに結びつくことが示された。スコットランド・Edinburgh大学のNicholas L. Mills氏らが、カットオフ値引き下げ前後で各1,000人超の患者を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年3月23/30日合併号で発表した。血漿トロポニンI濃度のカットオフ値の低下が、臨床アウトカムの改善につながるかどうかについては意見が分かれていた。

心血管疾患ガイドラインの多くが、リスク因子のモニタリングに十分に言及せず

心血管疾患のガイドラインの中には、主要なリスク因子である脂質値、高血圧、喫煙に関するセクションを欠くものが多く、記述があっても十分でない場合が高率に及ぶことが、イギリス・オックスフォード大学プライマリ・ケア科のIvan Moschetti氏らによる調査で示された。心血管疾患の3つのリスク因子のモニタリングは、患者の予後、臨床的な判断、医療コストに大きな影響を及ぼす可能性がある。臨床ガイドラインの目的は、診断、患者管理、治療法の決定過程を標準化するために、最良のエビデンスに基づいてケアの質を全体的に向上させることだが、心血管疾患管理のガイドラインのほとんどがモニタリングを十分には取り扱っておらず、モニタリングの勧告について系統的になされた検討はないという。BMJ誌2011年3月19日号(オンライン版2011年3月14日号)掲載の報告。

変形性関節症患者、高い死亡リスクが明らかに

イギリスの膝および股関節の変形性関節症患者は、一般人口に比べて死亡リスクが有意に高いことが、スイス・ベルン大学のEveline Nuesch氏らの調査で示された。変形性関節症の罹患率については広範に調査されているが、死亡との関連の研究はさほど進んでいない。変形性関節症患者では死亡リスクが増大しているとする調査もあるが、これらの試験の多くは調査方法に問題が残るという。BMJ誌2011年3月19日号(オンライン版2011年3月8日号)掲載の報告。

小児の心拍数と呼吸数、エビデンスベースの新たな正常範囲を提唱

小児の心拍数と呼吸数の正常範囲は、既存のガイドラインの定義と実際とで著しく異なることが、英国・オックスフォード大学プライマリ・ケア科のSusannah Fleming氏らの調査で明らかとなった。心拍数と呼吸数は、小児の心肺蘇生中の救命介入への反応の予測において重要な因子であり、疾患急性期の標準的な臨床評価やトリアージにおいても不可欠な要素である。しかし、既存のガイドラインの正常範囲の多くは臨床的なコンセンサスに準拠しており、エビデンスに基づくものではないという。Lancet誌2011年3月19日(オンライン版2011年3月15日号)掲載の報告。

便失禁治療、安定化ヒアルロン酸ナトリウムデキストラノマー粘膜下注入が有効

 便失禁に対する低侵襲性の治療として、安定化ヒアルロン酸ナトリウムデキストラノマー(NASHA Dx)の経肛門的粘膜下注入療法が有効なことが、スウェーデン・ウプサラ大学病院(Akademiska sjukhuset)外科のWilhelm Graf氏らの検討で示された。アメリカでは20~30歳の2.6%から70歳以上の15.3%までの頻度で便失禁がみられると報告されているが、その原因は多岐にわたり完全には解明されていない。治療としては、肛門管への充填剤注入療法を施行する施設が増加しているが、その有効性を証明した対照比較試験はないという。Lancet誌2011年3月19日号掲載の報告。

都市部の小児喘息コントロール、抗IgE抗体omalizumab追加で改善

都市部に住む小児、青年、若年成人の喘息患者に対して、ガイドラインベースの治療に加えてヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体omalizumabを投与することで、喘息コントロールを改善し、増悪の季節性ピークはほとんどなくなり、喘息コントロールのためのその他薬剤の必要性が低下したことが示された。米国・ウィスコンシン大学マディソン校医学・公衆衛生部のWilliam W. Busse氏らによるプラセボ対照無作為化試験の結果による。これまでに行われた都市部に住む小児の喘息患者の調査研究で、アレルゲンへの曝露やガイドラインベースの治療の徹底で増悪を減らせることは示されているが、重症例における疾患コントロールには限界があることが示されていた。NEJM誌2011年3月17日号掲載より。

薬剤溶出性ステントを用いたPCIとCABG、術後QOLはどちらが良好か

多枝血行再建術予定患者に対する、薬剤溶出性ステントを用いたPCIと冠動脈バイパス術(CABG)の、術後QOLを比較検討が、米国・ミズーリ大学カンザスシティー校Saint Luke's Mid America Heart InstituteのDavid J. Cohen氏らにより行われた。これまでの研究ではCABGが、バルーン血管形成術やベアメタルステントを用いたPCIと比較して、狭心症発作を大幅に軽減しQOLを改善することが示されているが、薬剤溶出性ステントを用いたPCIのQOLへの影響は明らかになっていなかった。NEJM誌2011年3月17日号より。

高齢者の慢性疾患診断頻度と疾患数別致死率、逆相関であることが明らかに:米国

高齢者への慢性疾患診断の頻度は全米各地で差があり、同頻度が高い地域ほど、疾患同数別にみた致死率は低くなるという逆相関の関連があることが明らかになった。米国・バーモント州退役軍人メディカルセンターのH. Gilbert Welch氏らが、米国高齢者向け公的医療保険のメディケアの受給者515万人超について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年3月16日号で発表した。

薬剤性溶出ステント挿入PCI後のクロピドグレル高用量投与の検討:GRAVITAS

安定冠動脈疾患などで薬剤性溶出ステントを挿入後、血小板反応性が高い患者に対し、クロピドグレル(商品名:プラビックス)を標準の2倍量投与しても、6ヵ月間の心血管イベントリスクは減少せず、標準量投与と同等であることが示された。米国・Scripps ClinicのMatthew J. Price氏らによる多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験「Gauging Responsiveness With A VerifyNow assay―Impact on Thrombosis and Safety」(GRAVITAS)の結果による。JAMA誌2011年3月16日号で発表された。これまでの研究により、クロピドグレル服用者で血小板反応性が高い人は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の心血管疾患イベントリスクが増大する可能性が示されている。しかしこうした患者への治療方針は確立されておらず、高用量投与とすることで効果が示されるかが検討された。

プライマリ・ケア研究の国際比較、イギリス、オランダが最上位に

世界のプラマリ・ケア研究においては、イギリスとオランダの研究が関連論文の量、質ともに最上位に位置づけられることが、イギリス・ヨーク大学のJulie Glanville氏らの調査で示された。2008年のイギリスの高等教育研究評価(Research Assessment Exercise)では、イギリスのプライマリ・ケア研究の50%は世界水準にあり、国際的に「優良」と評価されているが、各国の研究を直接的に比較した調査はないという。BMJ誌2011年3月12日号(オンライン版2011年3月8日号)掲載の報告。

医学生の学業成績、医師の臨床能力、民族間で差:イギリス

イギリスで研修を受けた医師や医学生においては、非白人は白人に比べ学業成績や臨床能力が劣るという民族間差がみられることが、ロンドン大学ユニヴァーシティ・カレッジのKatherine Woolf氏らによる調査で明らかとなった。イギリスの医学生や研修医の3分の1は少数民族の出身者だという。2002年に報告された医学部合格の関連因子に関するレビューでは、少数民族出身の受験生は標準よりも成績が劣ることが示されているが、この解析に含まれたイギリスの報告は1編のみであった。イギリスの大学や国民保健サービス(NHS)は、学生の入学状況や学業成績の向上、職員の採用状況や職能向上につき民族別にモニターすることが法的に義務づけられている。BMJ誌2011年3月12日号(オンライン版2011年3月8日号)掲載の報告。

50歳以上の乳がんリスク、喫煙者で有意に増大、間接喫煙者でも増大示唆

閉経後女性における喫煙と侵襲性乳がんリスクとの関連について、直接喫煙者では有意なリスク増大が認められ、間接喫煙者でも増大が示唆されることが、米国・ウエスト・バージニア大学Mary Babb RandolphがんセンターのJuhua Luo氏らによる前向きコホート試験「Women's Health Initiative Observational Study」の結果、明らかにされた。BMJ誌2011年3月5日号(オンライン版2011年3月1日号)掲載より。

国を挙げての急性期脳卒中ケアサービス提供の改善施策は功を奏したか?:英国

英国では、ロンドン南部における1995~2000年の脳卒中患者に対する急性期ケア提供の社会人口統計学的格差の報告を受け、その後、急性期ケアサービス改善に特に重点を置いた施策が次々と打ち出された。それらが効果をもたらし、改善が認められているのか。キングズ・カレッジ・ロンドンの健康・社会的ケア調査部門のJuliet Addo氏らが、ロンドン南部におけるその後の変化動向について調査を行った。BMJ誌2011年3月5日号(オンライン版2011年2月24日号)掲載より。

男性の発がん性HPV感染率は30%、パートナー数と密接に関連

 男性の発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)感染率は30%に及び、性交パートナー数が多いほど感染率が高く、かつウイルス消失率が低いことが、アメリカ・H Lee MoffittがんセンターのAnna R Giuliano氏らの検討で示された。HPVは男性の陰部疣贅やがんの原因となるが、男性におけるHPVの自然経過はほとんど知られていないという。HPVは男性から女性に感染することで女性の疾患リスクに大きな影響を及ぼし、男性の性行動は女性パートナーのHPV感染率や関連疾患にも影響することから、男性におけるHPV感染状況の解明が急がれている。Lancet誌2011年3月12日号(オンライン版2011年3月1日号)掲載の報告。

ピロリ菌除菌効果、ビスマス製剤を含む4剤併用が標準治療を凌駕

 ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori:以下、ピロリ菌)の除菌効果は、プロトンポンプ阻害薬オメプラゾールと次クエン酸ビスマス+メトロニダゾール+テトラサイクリンの4剤併用レジメンが、標準的な3剤併用療法よりも優れることが、ドイツ・Otto-von-Guericke大学のPeter Malfertheiner氏らの検討で示された。ピロリ菌は、消化性潰瘍、胃がん、胃MALTリンパ腫など上部消化管の良性/悪性疾患を引き起こすが、先進国では国民の20~50%が、開発途上国では最大で80%が感染しているとされる。日本を含め国際的なガイドラインでは、標準的な1次治療としてオメプラゾールにアモキシシリンとクラリスロマイシンを併用する方法が推奨されるが、最近の耐性菌の増加に伴い新たなレジメンの開発が求められているという。Lancet誌2011年3月12日号(オンライン版2011年2月22日号)掲載の報告。

慢性疲労症候群、認知行動療法や段階的運動療法の併用が有効:PACE試験

慢性疲労症候群の治療では、専門医による治療(SMC)に加え認知行動療法(CBT)あるいは段階的運動療法(GET)を併用すると、SMC単独に比べ中等度の予後改善効果が得られるが、適応ペーシング療法(APT)を併用しても相加効果は認めないことが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のP D White氏らが行ったPACE試験で示された。慢性疲労症候群は「生活が著しく損なわれるような強い疲労」で特徴付けられ、筋痛性脳脊髄炎と同一疾患とする見解のほかに、別の診断基準に基づく異なる疾患と捉える考え方もある。CBTやGETの有効性を示す知見がある一方で、患者団体による調査ではAPTやSMCのほうが有効な可能性があると報告されている。Lancet誌2011年3月5日号(オンライン版2011年2月18日号)掲載の報告。

エベロリムスベースの免疫抑制療法、腎移植におけるカルシニューリン阻害薬回避戦略として有望:ZEUS試験

 腎移植患者に対する免疫抑制療法として、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害薬エベロリムス(商品名:サーティカン)をベースとするレジメンは、標準治療であるカルシニューリン阻害薬と同等の有効性および安全性を維持しつつ、12ヵ月後の腎機能を有意に改善し、長期予後の改善をさらに促進する可能性があることが、ドイツ・Charite大学のKlemens Budde氏らが実施したZEUS試験で示された。腎移植では、免疫抑制療法による予後の改善が示されているが、標準的な免疫抑制薬であるカルシニューリン阻害薬には急性/慢性の腎毒性がみられ、心血管リスク因子の増悪という長期予後に悪影響を及ぼす有害事象も認められる。そのため、腎毒性を伴わない免疫抑制療法として、カルシニューリン阻害薬と同等の有効性と安全性を維持しつつ、その使用を回避する治療戦略の開発が求められているという。Lancet誌2011年3月5日号(オンライン版2011年2月21日号)掲載の報告。

心房細動患者に対するイルベサルタンの効果の検討

心房細動患者に対するARB・イルベサルタン(商品名:アバプロ、イルベタン)の効果について、カナダ・マクマスター大学のYusuf S氏ら「ACTIVE I」研究チームによる無作為化プラセボ対照試験の結果が報告された。心房細動患者では心血管疾患イベントリスクが高い。イルベサルタンが同リスクを抑制するかどうかが検討された。NEJM誌2011年3月10日号掲載より。

2008年のサルモネラ症集団発生、原因はトマトや青唐辛子の生食:米国

米国疾病予防管理センター(CDC)サルモネラ症発生調査チームが、2008年に全国規模で発生したサルモネラ症の集団感染について疫学的調査等の結果、トマトや青唐辛子の生食が原因であったことが報告された。サルモネラ症の発生要因として近年、食品の生食が徐々に認識されるようになっている。そうした背景で行われた本調査の結果について調査チームは「生食による汚染防止の重要性を強調するものだ」と結論している。NEJM誌2011年3月10日号(オンライン版2011年2月23日号)掲載より。

糖尿病は独立リスク因子として血管疾患以外にも、がん、感染症などの早期死亡に関連する

糖尿病や高血糖が、がんやその他非血管系の疾患による死亡リスクと、どの程度関連しているのか明らかではなく、たとえば米国糖尿病学会、米国がん学会の共同コンセンサス・ステートメントでも不明であるとしている。英国ケンブリッジ大学のSeshasai SR氏らThe Emerging Risk Factors Collaboration(ERFC)は、糖尿病、空腹時血糖値と特異的死亡との関連について信頼たり得る評価を提供することを目的とした研究グループで、成人における糖尿病の寿命に対する影響を前向きに調査した結果を報告した。NEJM誌2011年3月3日号掲載より。