心房細動患者に対するイルベサルタンの効果の検討

提供元:ケアネット

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公開日:2011/03/23

 



心房細動患者に対するARB・イルベサルタン(商品名:アバプロ、イルベタン)の効果について、カナダ・マクマスター大学のYusuf S氏ら「ACTIVE I」研究チームによる無作為化プラセボ対照試験の結果が報告された。心房細動患者では心血管疾患イベントリスクが高い。イルベサルタンが同リスクを抑制するかどうかが検討された。NEJM誌2011年3月10日号掲載より。

9,016例をイルベサルタンかプラセボに無作為化、平均4.1年追跡




ACTIVE I(Atrial Fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for Prevention of Vascular Events I)は、脳卒中の危険因子既往があり収縮期血圧110mmHg以上の患者を、イルベサルタン300mg/日目標用量群か二重盲検でプラセボ群に投与する群に無作為に割り付け行われた。被験者はすでに、2試験のうちの1つ〔クロピドグレル(商品名:プラビックス)+アスピリン対アスピリン単独試験または経口抗凝固薬試験〕に登録されていた。

第一主要複合アウトカムは、脳卒中・心筋梗塞・血管系が原因の死亡で、第二主要複合アウトカムは、これらに心不全による入院を加えたものとされた。

9,016例が登録され、平均4.1年追跡された。

第一主要複合アウトカムの発生率、両群とも100人・年当たり5.4%




結果、イルベサルタン群がプラセボ群よりも収縮期血圧の平均低下が2.9mmHg大きかった。また拡張期血圧の平均低下は1.9mmHg大きかった。

第一主要複合アウトカムの発生率は、両群とも100人・年当たり5.4%だった(イルベサルタンのハザード比:0.99、95%信頼区間:0.91~1.08、P=0.85)。

第二主要複合アウトカムの発生率は、100人・年当たりイルベサルタン群7.3%、プラセボ群7.7%だった(同:0.94、0.87~1.02、P=0.12)。心不全による初回入院率(事前に副次アウトカムとして規定)は、イルベサルタン群2.7%、プラセボ群3.2%だった(同:0.86、0.76~0.98、P=0.02)。

基線で洞調律だった患者では、心不全による入院、12誘導心電図上の心房細動の予防におけるイルベサルタンのベネフィットは認められなかった。また電話モニタリングを受けたサブグループにおいてもベネフィットは認められなかった。一方イルベサルタン群は、プラセボ群と比較して症候性低血圧(127例対64例)、腎機能障害(43例対24例)がより多く認められた。

研究グループは、「心房細動患者に対するイルベサルタンは、心血管疾患イベントを抑制しなかった」と結論している。

(武藤まき:医療ライター)