日本発エビデンス|page:58

日本語版スマートフォン中毒尺度の有用性

 日本におけるスマートフォン使用は、他の多くの国と同様に若者の間で蔓延しており、時と場所を選ぶことなくオンラインやソーシャルメディアに費やす時間と関連している。ときわ病院の館農 勝氏らは、日本の大学生を対象に、日本語版のスマートフォン中毒尺度短縮版(Smartphone Addiction Scale-Short Version:SAS-SV)のテストを行った。Psychiatry Investigation誌2019年2月号の報告。  日本の大学生602例を対象に、アンケートを実施した。

日本ではC. difficile感染症の多くが見過ごされている?

 Clostridioides(Clostridium) difficileは、先進国における医療関連感染性下痢症の主要な原因である。後ろ向き研究では、日本では欧州や北米よりC. difficile感染症(CDI)の発生率が低いことが示されている。CDI発生率が実際に低いのか、不適切なC. difficile検査によるものかを調べるため、国立感染症研究所の加藤はる氏らが前向き研究を実施した。その結果、臨床的に意義のある下痢症患者を積極的に検査することによって、CDI発生率はわが国における今までの報告より高かった。この結果から、著者らは「日本ではCDI診断のための細菌学的検査が不適切であるため、多くのCDI患者が見過ごされていることを示唆している」と述べている。Anaerobe誌オンライン版2019年3月11日号に掲載。

IVIG不応川崎病、シクロスポリン併用が有益/Lancet

 免疫グロブリン療法(IVIG)不応例である川崎病患者に対し、シクロスポリンの併用は、安全かつ有効であることが確認された。東京女子医科大学 八千代医療センターの濱田 洋通氏らが、日本全国22ヵ所の病院を通じて行った、第III相非盲検無作為化エンドポイントブラインド試験「KAICA trial」の結果で、Lancet誌オンライン版2019年3月7日号で発表した。遺伝学的研究で、川崎病に関与する遺伝子変異が特定され、それらがIVIG不応例患者のリスクである冠動脈異常に関与するのではないかと考えられていた。研究グループはこの所見を踏まえて、川崎病の病態生理の基礎をなすカルシウム-活性化T細胞核内因子(NFAT)経路の上方制御が、有望な治療になりうると仮定し、シクロスポリン併用の有効性と安全性を評価する試験を実施した。

日本人うつ病に対するω3脂肪酸と心理学的介入

 勤労者における軽度~中等度のうつ病に対し、心理教育とω3多価不飽和脂肪酸(PUFA)の併用療法が有用であるかについて、長崎大学の田山 淳氏らが検討を行った。Journal of Affective Disorders誌2019年2月15日号の報告。  二重盲検並行群間ランダム化比較試験として実施した。対象患者は、ω3脂肪酸を投与する介入群またはプラセボを投与する対照群に割り付けられた。介入群には、15×300mgカプセル/日を12週間投与した。ω3PUFAの1日の総投与量は、ドコサヘキサエン酸(DHA)500mg、エイコサペンタエン酸(EPA)1,000mgであった。治療後のうつ病重症度評価には、ベック抑うつ質問票(BDI-II)を用いた。

ショック非適応の院外心停止、高度気道管理で生存率改善/BMJ

 All-Japan Utstein Registryの登録患者から約31万人を対象に行われた日本発のコホート試験の結果、院外心停止患者に対する高度気道管理(advanced airway management:AAM)は、初回心電図波形でショック適応と判断した患者では生存との関連が認められなかったが、ショック非適応患者では良好な生存との関連が示されたことを、東京慈恵会医科大学麻酔科学講座の井澤 純一氏らが、BMJ誌2019年2月28日号で報告した。多くの観察研究で、院外心停止患者へのAAMとアウトカムとの関連は不良であることが報告されている。一方、最近行われた無作為化試験で、バッグバルブマスク法が気管挿管に対して非劣性であることを立証できなかった。日本で行われた本試験では、救急医療サービス(EMS)の隊員による院外心停止患者へのAAMが生存を増大するかについて、時間依存的介入や共変量を補正して検討が行われた。

日本は職業階層が高いと冠動脈疾患リスク高い?

 欧米では、職業階層が高い(専門職や管理職)ほど、冠動脈疾患(CHD)や脳卒中を含む心血管疾患リスクが低いと報告されているが、日本では明らかになっていない。今回、東京大学/Harvard T.H. Chan School of Public Healthの財津 將嘉氏らが実施した病院ベースの症例対照研究の結果、日本では職業階層が高いほどCHDリスクが高く、脳卒中リスクは低いことが報告された。

認知症の7つの危険因子、発生リスクへの影響は

 認知症発生の主要な危険因子として、糖尿病、高血圧、肥満、身体不活動、重度の精神的苦痛、喫煙、低学歴がある。東北大学の小瀧 由美香氏らは、大崎コホート2006研究において、これら認知症の7つの危険因子の総数で人口寄与割合(PAF)を推定した。その結果、危険因子総数を減らすことが認知症発生リスクの減少に有意に寄与することが示唆された。Journal of Neurology誌オンライン版2019年3月2日号に掲載。  本研究は65歳以上の8,563人の地域在住者が対象のコホート研究である。ベースライン調査(2006年)では、認知症の7つの主要な危険因子(糖尿病、高血圧、肥満、身体不活動、重度の精神的苦痛、喫煙、低学歴)に関するデータを収集した。危険因子の総数を曝露変数とし、危険因子の総数(0、1、2、3以上)により参加者を4群に分類した。認知症発生に関するデータは、介護保険データベースを参照した。ハザード比(HR)および95%信頼区間(95%CI)は、Cox比例ハザードモデルを使用して推定した。さらに、HRとコホートデータにおけるリスク保有割合からPAFを計算した。

血液1滴で13がん種を同時診断、日本発miRNA測定技術

 血液中に含まれるマイクロRNA(miRNA)をマーカーとして、13種類のがんを同時診断する検査システムの開発が進み、実用化が近づいている。2019年3月1日、都内で「1滴の血液や尿で、がんが分かる時代へ」と題したメディアセミナーが開催された(共催:日本臨床検査薬協会、米国医療機器・IVD工業会)。落谷 孝広氏(国立がん研究センター研究所分子細胞治療研究分野)が登壇し、自身が開発のプロジェクトリーダーを務めるmiRNAによるリキッドバイオプシーの精度や、実用化に向けた動きなどについて解説した。

糖尿病・脂肪性肝炎の新たな発症機序の解明~国立国際医療研究センター

 肝臓での代謝は絶食時と摂食時で大きく変化するが、その生理的意義や調節機構、またその破綻がどのように種々の疾患の病態形成に寄与するのか、これまで十分解明されていなかった。今回、東京大学大学院医学系研究科分子糖尿病科学講座 特任助教 笹子 敬洋氏、同糖尿病・生活習慣病予防講座 特任教授 門脇 孝氏、国立国際医療研究センター研究所糖尿病研究センター センター長 植木 浩二郎氏らのグループは、絶食・摂食で大きく変化する肝臓での小胞体ストレスとそれに対する応答に注目し、食事で発現誘導されるSdf2l1(stromal cell-derived factor 2 like 1)の発現低下が、糖尿病や脂肪性肝炎の発症や進行に関わることを明らかにした。2月27日、国立国際医療研究センターが発表した。Nature Communications誌に掲載予定。

日本におけるレビー小体型認知症の診断、治療に関する調査

 レビー小体型認知症(DLB)は、認知症患者の行動と心理症状(BPSD)を伴う進行性の認知症である。横浜市立大学の小田原 俊成氏らは、日本におけるDLB治療に関して、現在の臨床診断の状況調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2019年2月5日号の報告。  日本で認知症臨床に携わっている医師を対象に調査を行った。対象医師は、精神科医(P群)と神経内科・脳神経外科医(NS群)の2群に分けられた。DLBの診断と治療、とくにBPSD治療に関するアンケートを実施し、両群間の比較分析を行った。

中高年の歩数にポケモンGOが影響

 『Pokemon GO(ポケモンGO)』は、位置情報機能を利用し、現実世界のさまざまな場所でポケモンを捕まえて楽しむ、スマートフォン向けゲームアプリである。2016年夏の発売以降、いまだに根強い人気のあるこのゲームの意外な効果が、東京大学の樋野 公宏氏らの研究で明らかになった。  現在、スマートフォンは健康アウトカム改善ツールとしての役割が期待され、とくに身体活動(PA)を増加させる可能性への関心が寄せられている。ポケモンGOに関するいくつかの研究ではゲーム発売前後の歩数が比較されているが、試験期間が短く、若者だけが対象となっている。今回、研究者らは、ポケモンGOの発売前後における、中高年の利用者と非利用者の歩数の差を確認し、歩数は発売後7ヵ月までの期間で多いことを明らかにした。Journal of Medical Internet Research誌2019年2月5日号掲載の報告。

日本人学生のスマートフォン使用とうつ病リスク

 椙山女学園大学の西田 友子氏らは、高校生の男女ごとのスマートフォン使用とうつ病との関連性について評価を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2019年1月26日号の報告。  日本の15~19歳の高校生295人を対象に、自己管理質問票を用いて、横断的研究を実施した。うつ病は、CES-Dうつ病自己評価尺度を用いて評価した。  主な結果は以下のとおり。 ・女性は、男性と比較し、1日のスマートフォン使用時間が長かった。

日本人の雇用形態と教育水準、LDL-Cに関連

 食事によるコレステロール摂取と血清コレステロールにおける良好な関係は、最近の一連のコホート研究によって疑問視されている。滋賀医科大学アジア疫学研究センターの岡見 雪子氏らは横断研究(INTERLIPID)を実施し、日本人における雇用形態と教育年数が、食事によるコレステロール摂取と血清低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)濃度との関係に、どのように関連するかを調査した。その結果、被雇用者ではなく教育水準の低い男性で、食事によるコレステロール摂取量の増加が血清LDL-C濃度の上昇と関連していた。また、雇用されている男性、教育水準の高い男性では逆相関が見られたことが明らかになった。Journal of Atherosclerosis and Thrombosis誌2019年2月1日号掲載の報告。

血圧レベル別の脳卒中・冠動脈疾患死亡の生涯リスク~EPOCH-JAPAN

 生涯リスク(lifetime risk、以下LTR)は、生涯に対象疾患を罹患する確率であり、長期的な絶対リスクを示す。アジア人集団において、詳細な血圧分類別の脳卒中死亡および冠動脈疾患(coronary heart disease、以下CHD)死亡のLTRを算出した研究は存在しない。今回、日本の主要な循環器疫学コホート研究の個人レベルのデータを統合した大規模統合データベースEPOCH-JAPANを用いたことにより、血圧レベル別の脳卒中死亡およびCHD死亡のLTRが明らかになったことを、東北医科薬科大学の佐藤 倫広氏らが報告した。本研究で算出されたLTRは、とくに10年間の循環器疾患死亡率が低い若年の高血圧患者に対して、早期の生活習慣是正と降圧治療開始の動機付けに役立つだろう、と結論している。Hypertension誌2019年1月号に掲載。

統合失調症患者におけるプラセボ効果~RCT複合分析

 慶應義塾大学の久保 馨彦氏らは、統合失調症患者におけるプラセボ効果を予測するため、プラセボ反応患者の特徴を調査し、プラセボによる早期改善の最適基準について探索を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌2019年2月号の報告。  抗精神病薬の二重盲検試験9件において、プラセボ群にランダム化された統合失調症患者672例のデータを分析した。6週目のプラセボ効果(PANSSスコア25%以上低下)と年齢、性別、学歴、ベースライン時のPANSS合計スコアまたはMarder 5項目スコア、1週目のPANSSスコア減少率との関連を調査するため、多重ロジスティック回帰分析を行った。また、プラセボ効果に対する1週目改善の予測力を調査した。

喫煙で子宮頸がんリスクが2倍~日本人女性

 喫煙による子宮頸がんのリスク上昇を示唆するエビデンスは多いが、日本人女性における関連の強さを調べた研究はない。今回、東北大学の菅原 由美氏らは「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」において、日本人女性における喫煙と子宮頸がんリスクとの関連を系統的レビューにより評価した。その結果から、喫煙が日本人女性における子宮頸がんリスクを高めるエビデンスは確実であると結論している。Japanese Journal of Clinical Oncology誌2019年1月号に掲載。

脳梗塞急性期:早期積極降圧による転帰改善は認められないが検討の余地あり ENCHANTED試験

 現在、米国脳卒中協会ガイドライン、日本高血圧学会ガイドラインはいずれも、tPA静注が考慮される脳梗塞例の急性期血圧が「185/110mmHg」を超える場合、「180/105mmHg未満」への降圧を推奨している。しかしこの推奨はランダム化試験に基づくものではなく、至適降圧目標値は明らかでない。2019年2月6~8日に米国・ハワイで開催された国際脳卒中会議(ISC)では、この点を検討するランダム化試験が報告された。収縮期血圧(SBP)降圧目標を「1時間以内に130~140mmHg」とする早期積極降圧と、ガイドライン推奨の「180mmHg未満」を比較したENCHANTED試験である。その結果、早期積極降圧による「90日後の機能的自立度有意改善」は認められなかった。ただし、本試験の結果をもって「早期積極降圧」の有用性が完全に否定されたわけではないようだ。7日のLate Breaking Clinical Trialsセッションにて、Craig Anderson氏(ニューサウスウェールズ大学、オーストラリア)とTom Robinson氏(レスター大学、英国)が報告した。

脳卒中後の至適降圧目標は「130/80mmHg未満」か:日本発RESPECT試験・メタ解析

 脳卒中後の血圧管理は、PROGRESS研究後付解析から「低いほど再発リスクが減る」との報告がある一方、PRoFESS試験の後付解析は「Jカーブ」の存在を指摘しており、至適降圧目標は明らかでない。  この点を解明すべく欧州では中国と共同でESH-CHL-SHOT試験が行われているが、それに先駆け、2019年2月6~8日に米国・ハワイで開催された国際脳卒中会議(ISC)のLate Breaking Clinical Trialsセッション(7日)において、わが国で行われたRESPECT試験が、北川 一夫氏(東京女子医科大学・教授)によって報告された。

急激な空腹時血糖の増加、心血管リスク高い~吹田研究

 心血管疾患(CVD)発生率との関連において、空腹時血糖(FPG)の変動を検討した研究はこれまでほとんどなかった。今回、国立循環器病研究センター/藤田医科大学の尾形 宗士郎氏らは、吹田研究でCVD発生とFPGの変動によるサブグループを評価した。本研究の結果から、著者らは「FPGが急激に増加した人は、CVD予防のために危険因子の管理が重要かもしれない」としている。Journal of the American Heart Association誌2019年2月5日号に掲載。

正常眼圧緑内障、未治療のままだと5年で進行

らかにした。Ophthalmology誌オンライン版2018年12月31日号掲載の報告。  研究グループは、正常眼圧緑内障(NGT)の自然進行の特徴と進行に関与する危険因子を特定する目的で、未治療の日本人NGT患者に対して5年間の前向きコホート研究を行った。  対象患者は、ベースライン時点で未治療、IOPが15mmHg以下のNTG患者であった。視野(VF)検査を3ヵ月ごと、視神経乳頭/乳頭周囲網膜の写真撮影を6ヵ月ごとに行い、未治療のまま追跡調査した。