日本発エビデンス|page:50

コロナ感染経路不明者、リスク高い行動の知識が不足/国立国際医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の変異株による感染拡大の勢いが止まらない。  感染の主役は、COVID-19ワクチン接種を終えた高齢者にとって代わり、50代以下の若年・中年層へと拡大している。  こうした働き盛り、遊び盛りのこれらの年代の陽性者が、どこで、どのように感染しているのか。「感染経路不明」とされる事例の解明は、感染の封じ込め対策で重要な要素となる。  国立国際医療研究センターの匹田 さやか氏(国際感染症センター)らの研究グループは、入院時に感染経路が不明であった事例を対象に調査を行い、その結果をGlobal Health & Medicine誌に発表した。

初発統合失調症に対する薬理学的治療アルゴリズム~日本臨床精神神経薬理学会

 初回エピソードの統合失調症に対する治療アルゴリズムは、十分ではない。さらに、すべてのアルゴリズムは、急性期治療の適応であって、維持療法には当てはまらない。慶應義塾大学の竹内 啓善氏らは、初回エピソード統合失調症のための急性期および維持期の治療アルゴリズムの作成を試みた。Human Psychopharmacology誌オンライン版2021年7月9日号の報告。  日本臨床精神神経薬理学会のアルゴリズム委員会は、初回エピソード統合失調症の急性期、興奮状態、維持期における薬理学的治療アルゴリズムを作成した。  主な結果は以下のとおり。

日本における抗うつ薬とCBT併用療法による費用対効果

 うつ病治療において認知行動療法(CBT)の併用は、最初から行うべきか、薬物治療で寛解が得られない患者に行うべきかについて、慶應義塾大学のYoshihide Yamada氏らは、費用対効果の面から検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年6月17日号の報告。  うつ病治療において、最初からCBTと薬物療法を併用したCOMBファースト戦略と、まずは薬物療法で治療を開始し、寛解が得られない場合にCBTを併用したADファースト戦略において、どちらの治療戦略の費用対効果が高いかを調査した。分析を行うため、マルコフモデルを開発した。主要アウトカムは、104週における質調整生存率(QALY)当たりの増分費用対効果(ICER)とした。臨床パラメータに関連する不確実性と結果に対するCBTコストの影響を調査するため、それぞれ確率的感度分析とシナリオ分析を実施した。

ビタミンBと認知症リスクに関する性差~日本のメモリークリニック外来患者での調査

 認知症や認知機能障害は、重大な社会的および医学的な問題の1つである。ビタミンBと認知機能低下には明確な関係が認められるが、男女間の差に関しては、十分な評価が行われていない。昭和大学の三木 綾子氏らは、性別によるビタミンB1またはB12と認知症との関連を調査した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年4月9日号の報告。  2016年3月~2019年3月に昭和大学病院のメモリークリニック外来を受診した188例を対象に、性別によるビタミンB1またはB12と認知症との関連を調査した。認知機能の評価には、ミニメンタルステート検査(MMSE)日本語版、改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)を用いた。

HBOCにおけるリスク低減乳房切除術、実施割合の高い女性は?/日本乳癌学会

 わが国では2020年4月、乳がんもしくは卵巣がんの既往歴のある遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)女性に対するリスク低減乳房切除術(RRM)とリスク低減卵巣卵管摘出術(RRSO)が保険適用された。今回、保険適用となる前のJOHBOCデータを用いて、HBOC女性のRRM実施状況を分析した結果について、国立病院機構四国がんセンターの大住 省三氏が第29回日本乳癌学会学術総会で報告した。子供がいる女性、乳房のサーベイランスを実施した女性、RRSOを実施した女性では、RRM実施割合が高かったという。

日本人高齢者の認知症発症とソーシャルサポートとの関連

 認知症患者数は、増加を続けており、日本においても2025年には700万人に達するといわれている。認知症の発症予防やマネジメントにおいて、個人レベルの支援に加え、コミュニティレベルのソーシャルサポートが注目されている。日本福祉大学の宮國 康弘氏らは、マルチレベルの生存分析を用いて、コミュニティレベルのソーシャルサポートと認知症発症との関連を調査した。BMJ Open誌2021年6月3日号の報告。  2003年に設立された日本老年学的評価研究のプロスペクティブコホート研究を用いて、コミュニティレベルのソーシャルサポートと認知症発症との関連を調査した。対象は、公的介護保険の給付を受けていない愛知県(7市町村)在住の65歳以上の高齢者1万5,313人(男性:7,381人、女性:7,932人)。認知症発症は、ベースラインから3,436日間にわたる公的介護保険データを用いて評価した。

軽度~中等度コロナ治療薬「ロナプリーブ」を特例承認/厚労省

 厚生労働省は7月19日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として、「ロナプリーブ点滴静注セット300」「同1332」(一般名:カシリビマブ[遺伝子組換え]/イムデビマブ[遺伝子組換え])の国内における製造販売を承認した。COVID-19患者を対象とした海外臨床第III相試験(REGN-COV 2067)の成績と、日本人における安全性・忍容性、薬物動態の評価を目的とした国内第I相臨床試験の成績に基づき、国内開発権および独占的販売権を取得した中外製薬が特例承認の適用を求め、申請していた。国内における新型コロナ治療薬としては、レムデシビル、デキサメタゾン、バリシチニブに続き、4例目となり、軽度~中等度のCOVID-19治療薬では初となる。

日本において複数のADHD治療薬を投与された小児患者の特徴

 注意欠如多動症(ADHD)は、多動性、衝動性および/または不注意の症状を呈す疾患である。日本で使用可能なADHD治療薬は、欧米諸国に比べ限られている。また、日本の臨床現場では、処方状況の評価が十分に行われていない。東京医科歯科大学の佐々木 祥乃氏らは、日本の臨床現場におけるADHD治療薬の現在の使用状況と複数のADHD治療薬を投与された患者の特徴について、調査を行った。PLOS ONE誌2021年6月3日号の報告。  対象は、2015年4月~2020年3月に国立国際医療研究センター国府台病院の児童精神科を受診した患者。メチルフェニデート徐放剤、アトモキセチン、グアンファシンを投与した患者を調査した。複数のADHD治療薬を投与された患者の特徴を評価するため、レトロスペクティブケースコントロールデザインを用いた。3つのADHD治療薬を投与された患者は、症例群として定義した。ADHDと診断された患者と年齢、性別が一致するランダムサンプリング患者を対照群として用いた。子供から親への暴力、反社会的行動、自殺企図または自傷行為、虐待歴、登校拒否、2つの心理的評価尺度(ADHD評価尺度、東京自閉行動尺度)のデータを比較した。

温水洗浄便座が院内感染を媒介する可能性?

 いまや、日本の世帯の8割超が使用していると見られる温水洗浄便座。患者の清潔にも有用であるため、医療機関でも多く導入されているが、便座のウォータージェットノズルを介して多剤耐性菌が院内感染を広がるリスクを示唆する新たな研究結果が明らかになった。これは、東京医科大学病院感染制御部・感染症科准教授の中村 造氏らの研究チームが、今月、オンライン開催された第31回欧州臨床微生物学・感染症学会(ECCMID)で報告したもの。著者らは、「温水洗浄便座に関連した院内感染の報告は初めてで、感染制御に大きな影響を与える可能性がある」と述べている。

治療抵抗性統合失調症の遺伝的研究~COMTおよびGAD1遺伝子

 前頭前野におけるドパミン作動性ニューロンからガンマアミノ酪酸(GABA)介在ニューロンへの投射は、統合失調症の病因と関連している。統合失調症の臨床像に対するドパミンシグナルとGABA発現との相互作用の影響は、これまで研究されていなかった。これらの相互作用は、前頭前野の機能と密接に関連している可能性があり、関連分子との特定の対立遺伝子(遺伝的機能の低下または脆弱)を有する患者では、治療抵抗性へ移行する可能性がある。千葉大学の小暮 正信氏らは、治療抵抗性統合失調症に特有の対立遺伝子の組み合わせを調査するため、COMTおよびGAD1遺伝子に焦点を当て、遺伝子関連研究を実施した。Journal of Molecular Neuroscience誌オンライン版2021年6月14日号の報告。  対象は、治療抵抗性統合失調症群171例、非治療抵抗性統合失調症群592例、健康対照群447例。

抗精神病薬の多剤併用と有害事象リスク

 抗精神病薬の多剤併用療法は、精神科入院患者において高頻度に認められており、このことが薬物有害事象のリスク因子であると考えられる。しかし、この関連性は、十分に調査されていない。京都府立医科大学の綾仁 信貴氏らは、日本の精神科入院患者における抗精神病薬の多剤併用と薬物有害事象との関係を明らかにするため、検討を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2021年7・8月号の報告。  薬物有害事象に関する多施設コホート研究Japan Adverse Drug Events study(JADE study)より、精神科入院患者448例(累積入院日数:2万2,733患者日)を対象とし、レトロスペクティブに検討を行った。多剤併用(2剤以上の抗精神病薬の使用)と薬物有害事象との関連を調査した。また、抗精神病薬による薬物有害事象の潜在的なリスク因子との関係を評価した。

日本のワクチン忌避者は11%、若年女性は高齢男性の3倍に

 2021年6月25日、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、日本初の新型コロナワクチン忌避に関する大規模オンライン調査の結果を発表した。  この調査は、NCNPトランスレーショナル・メディカルセンター大久保 亮氏、福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター吉岡 貴史氏、大阪市立大学大学院公衆衛生学大藤 さとこ氏、聖路加国際病院松尾 貴公氏、大阪国際がん研究センター田淵 貴大氏らの合同研究チームが行ったもので、結果はVaccines誌2021年6月号に掲載された。  研究チームは、2021年2月8〜26日に日本全国から2万6,000人を対象にワクチン接種の意向に関するオンライン調査を実施した(有効回答数は2万3,142人)。

日本人反復性片頭痛患者に対するガルカネズマブの治療満足度~第II相試験

 京都・立岡神経内科の立岡 良久氏らは、反復性片頭痛の予防に対しガルカネズマブ(GMB)を投与された日本人患者の治療満足度(4~14ヵ月間の1ヵ月当たりの片頭痛日数)について、評価を行った。Neurology and Therapy誌2021年6月号の報告。  この第II相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、日本の医療機関40施設において、18~65歳の片頭痛患者が登録された。対象患者は、プラセボ群230例、GMB皮下注120mg(GMB120群)115例、GMB皮下注240mg(GMB240群)114例にランダムに割り付けられ、6ヵ月間の投与を行った。治療に対する印象は、患者による重症度の改善度(PGI-S)、患者による全般印象度の改善度(PGI-I)、薬剤に対する患者の満足度質問票(PSMQ-M)を用いて評価した。PGI-Sはベースライン時および1~6ヵ月、PGI-Iは1~6ヵ月、PSMQ-Mは1および6ヵ月目に評価を行った。GMB群とプラセボ群におけるPGI-Iスコアの違い、PGI-Sスコアのベースラインからの変化、PGI-IとPSMQ-Mのポジティブな反応を評価するため、分析を行った。

抗精神病薬で治療された統合失調症患者における非アルコール性脂肪性肝疾患リスク

 統合失調症患者のメタボリックシンドローム有病率は、一般集団よりも高いことはよく知られているが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の有病率については、あまり知られていない。下総精神医療センターの是木 明宏氏らは、抗精神病薬で治療された統合失調症患者におけるNAFLDリスクについて、調査を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2021年6月4日号の報告。  腹部エコー検査を実施した統合失調症および統合失調感情障害患者253例の医療記録を分析した。

日本人進行乳がん患者でのアベマシクリブの安全性(MONARCH2、3)/日本乳癌学会

 ホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳がんに対するアベマシクリブの国際共同第III相試験であるMONARCH2試験(内分泌療法既治療例におけるフルベストラントとの併用)とMONARCH3試験(1次治療における非ステロイド性アロマターゼ阻害薬との併用)で、日本人集団で多く発現した有害事象を詳細に検討した結果について、国立病院機構大阪医療センターの増田 慎三氏が第29回日本乳癌学会学術総会で発表した。  2つの試験における日本人の割合は、MONARCH2試験では14.2%(669例中95例)、MONARCH3試験では10.8%(493例中53例)であった。アベマシクリブ群でみられた有害事象において、日本人集団では下痢、好中球減少症、ALT上昇、AST上昇が比較的多く観察されている。増田氏らは、実地診療でアベマシクリブを使用する際の毒性管理に有用な情報を見いだすために、これらの有害事象について詳細に検討した。

日本における婚姻状況と認知機能との関連~富山県認知症高齢者実態調査

 敦賀市立看護大学の中堀 伸枝氏らは、日本における婚姻状況と認知症との関連について検討を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2021年5月25日号の報告。  分析には、富山県認知症高齢者実態調査のデータを用いた。富山県在住の65歳以上の高齢者より1,171人(サンプリング率:0.5%)をランダムに選択し、分析を行った。対象者の婚姻状況、社会経済的状況、ライフスタイル要因、生活習慣病について評価を行った。各ライフスタイル要因と病歴に対する婚姻状況のオッズ比(OR)は、ロジスティック回帰分析を用いて算出した。認知症に対する婚姻状況のORも、ロジスティック回帰分析を用いて算出した。

PTSDの悪夢やフラッシュバックに対するトリヘキシフェニジル治療の有効性

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、悪夢やフラッシュバックを特徴とする、外傷性イベント後に発症する可能性のある不安障害である。この悪夢やフラッシュバックの根底にあるメカニズムは解明されておらず、抗うつ薬や抗精神病薬を含むいくつかの薬剤が治療に用いられている。そごうPTSD研究所の十河 勝正氏らは、抗コリン薬ブチルスコポラミン臭化物によるケーススタディに続いて、PTSD関連の悪夢やフラッシュバックに対する中枢性抗コリン薬の効果について、検討を行った。Brain and Behavior誌2021年6月号の報告。

日本のトラック運転手の不眠症に関連する因子

 トラック運転手の不眠症は、交通事故リスクの増加につながる重大な問題である。秋田大学の宮地 貴士氏らは、日本のトラック運転手における不眠症の有病率を調査し、不眠症に関連する因子を特定するため、検討を行った。Nature and Science of Sleep誌2021年5月18日号の報告。  対象は、65歳未満の男性トラック運転手2,927人。自己記入式質問票を用いて、不眠症状、状態-特性不安尺度(State-Trait Anxiety Inventory:STAI)、飲酒・喫煙習慣、BMI、カフェイン摂取量、毎日の運転時間、連続して自宅から離れた日数、走行距離に関する情報を収集した。不眠症状には、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒を含め、これらいずれかの症状が毎日観察された場合を不眠症と定義した。

東洋人のうつ病関連因子~日本での調査

 地域コミュニティにおけるうつ病に対する効果的な対策を検討するうえで、国や文化圏において、うつ病に関連する個人的および社会経済的要因を包括的に特定する必要がある。しかし、日本および東洋諸国の中年住民を対象とした研究は、十分ではない。慶應義塾大学の吹田 晋氏らは、東洋の日本における中年住民のうつ病に関連する要因を特定するため、横断研究を行った。Medicine誌2021年5月14日号の報告。  西日本の地方自治体で生活する40~59歳のすべての地域住民を対象に、アンケート調査を実施した。アンケートには、人口統計学的特徴、心理的要因、健康関連行動、社会経済的要因に関する項目を含めた。まず、うつ病と各因子との関連を分析するため、カイ二乗検定またはフィッシャーの正確確率検定を行った。次に、うつ病と関連因子の包括的な関連を特定するため、ロジスティック回帰分析を実施した。