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長期介護における抗精神病薬再投与の要因

 抗精神病薬は、有害事象などが懸念されるにもかかわらず、認知症の周辺症状(BPSD)に対して一般的に用いられる。長期介護における抗精神病薬の使用中止(Halting Antipsychotic Use in Long-Term care:HALT)試験では、抗精神病薬の減量に成功したが、抗精神病薬の再使用または中止に達しなかった患者が19%でみられた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のLiesbeth Aerts氏らは、抗精神病薬の再使用の理由や現在使用中の要因と、介護スタッフの要望や行動変化との関連について調査を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2019年7月5日号の報告。

フレイルな非小細胞肺がんに対する低用量エルロチニブの有効性/日本臨床腫瘍学会

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対しては分子標的薬がスタンダードだが、フレイル患者への実臨床での至適投与量は明らかではない。そのような中、EGFR変異陽性NSCLCのフレイル患者に対する低用量エルロチニブの効果と安全性を評価する多施設第II相TORG1425試験が行われた。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会では、その最終結果が三井記念病院の青野ひろみ氏により発表された。

掌蹠膿疱症へのグセルクマブ、52週の有効性と安全性を確認

 乾癬治療における新規の生物学的製剤として2018年3月に保険収載された、ヒト型抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤のグセルクマブ(商品名:トレムフィア皮下注シリンジ)に、同年11月、「既存治療で効果不十分な掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう:PPP)」の効能追加が承認された。この根拠となった日本大学の照井 正氏らの試験結果が論文発表され、有効性エンドポイントの改善が52週間にわたり一貫して示された。昨年の著者らの研究では、PPPの発症に対するIL-23の関与が明らかになり、グセルクマブが安全かつ有用であることが16週時の評価において認められていた。結果を踏まえて著者らは「IL-23p19をターゲットとするグセルクマブは、PPPという困難を伴う疾患に対し、有効で安全な治療選択肢となりうることが示された」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年7月3日号掲載の報告。

加熱式タバコが“有害性物質90%カット”となぜ言えるのか

 加熱式タバコの一部のパンフレットには、購入者に対し、健康被害が大幅に低下するような“誤解”を与える表現で売り出している製品がある。しかし、これらの広告は規制されていない。これは一体なぜなのか。このからくりについて、2019年6月20日、日本動脈硬化学会主催のプレスセミナーで飯田 真美氏(岐阜県総合医療センター 副院長/日本動脈硬化学会 禁煙推進部会長)が解説。原 眞純氏(帝京大学医学部附属溝口病院 副院長/日本動脈硬化学会 禁煙推進部会員)は「タバコと動脈硬化」として、古くも新しい話題について講演した。

日本人の婚姻状態と不眠症状との関連

 配偶者の有無は、健康に関連する社会経済的要因の1つである。いくつかの研究では、配偶者の有無と不眠症との間に有意な関連が認められることが示唆されている。日本では、未婚者の割合が増加しており、不眠症に大きな影響を及ぼす可能性がある。順天堂大学の川田 裕美氏らは、日本における配偶者の有無と不眠症との関連について調査を行った。European Journal of Public Health誌オンライン版2019年7月6日号の報告。  対象は、2010年の国民生活基礎調査より抽出した30~59歳の3万5,288人。配偶者の有無に応じて5群(独身、家族と同居している夫婦、夫婦のみで生活、未亡人、離婚)に分類を行った。不眠症関連症状(IRS)は、「私は眠れなかった」との回答に基づき収集した。配偶者の有無によるIRSの性別多変量オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)の算出には、潜在的な交絡因子で調整されたロジスティック回帰モデルを用いた。

免疫CP阻害薬のやめ時は?最終サイクル後の30日死亡率/日本臨床腫瘍学会

 進行・難治性がん患者に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を使用する機会が増えているが、明確な中止基準は確立されていない。2011 national cancer strategy for Englandでは、回避可能な全身性抗がん剤治療(SACT)による害の臨床指標として、30日死亡率を提唱している。今回、一宮市立市民病院 龍華 朱音氏らが、ICI治療の最終サイクル後30日以内に死亡した患者について調査したところ、PS不良の患者にICI治療が選択される傾向があり、また、最終サイクルの治療費が従来の治療の約10倍となっていることが明らかになった。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で報告された。

EGFR陽性NSCLCへのエルロチニブ+ラムシルマブ、東アジア人集団でも有用性示す(RELAY)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療で、日本人を含む東アジア人症例においても、EGFR-TKIエルロチニブと抗VEGF-R2抗体ラムシルマブの併用療法がエルロチニブ単剤と比較してPFSを延長した。第III相RELAY試験における、東アジア人サブセットの中間解析結果を、がん研究会有明病院の西尾 誠人氏が第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で発表した。  RELAY試験は、活性型EGFR変異(Exon19delまたはExon21 L858R)を有し、CNS転移のない、未治療の進行NSCLC患者を対象とした第III相国際共同二重盲検無作為化試験。登録患者はラムシルマブ(10mg/kg2週ごと投与)+エルロチニブ(150mg/日)群と、プラセボ+エルロチニブ(150mg/日)群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。また、患者は性別、地域(東アジア vs.その他)、EGFR変異ステータス(Ex19del vs.L858R)、EGFR変異検査法(Therascreen/Cobas vs.その他)で層別化された。

DPP-4阻害薬関連の心血管リスクを他剤と比較~日本人コホート

 わが国の糖尿病患者270万人のコホート研究で、DPP-4阻害薬の単剤治療に関連した、入院を要する心筋梗塞および心不全のリスクは、ビグアナイド(BG)より高く、スルホニル尿素(SU)より低く、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)と同等であったことを、医薬品医療機器総合機構の駒嶺 真希氏らが報告した。Pharmacoepidemiology and Drug Safety氏オンライン版2019年7月23日号に掲載。  本研究は、国内の糖尿病患者271万6,000例による全国規模のコホート研究で、2010年4月1日~2014年10月31日に新たに糖尿病治療薬単剤で治療された患者が対象。DPP-4阻害薬投与に関連した入院を要する心筋梗塞、心不全、脳卒中の発生を、BG、SU、α-GIと比較した。Cox比例ハザードモデルを用いて調整ハザード比(aHR)を推定し、傾向スコアによる標準化により交絡を調整した。

双極I型障害における日照量と自殺企図歴との関連

 多くの国際的な研究において、自殺や自殺企図の頻度には、春または夏にピークを迎えるといった季節的なパターンがあるといわれている。ドイツ・ドレスデン工科大学のMichael Bauer氏らは、双極I型障害患者における日照量と自殺企図歴との関連について調査を行った。Journal of Psychiatric Research誌2019年6月号の報告。  日照量は、太陽からの光エネルギーが地表に当たる量とした。北および南半球の広範囲な緯度の32ヵ国50施設より、双極I型障害患者5,536例のデータを収集した。自殺関連データは、51ヵ国310地点より3,365例のデータが利用可能であった。

帯状疱疹ワクチン、自家造血幹細胞移植後の帯状疱疹予防に有効/JAMA

 帯状疱疹の罹患は健康人においても深刻だが、とくに自家造血幹細胞移植(auHSCT)後の発症頻度が高い合併症として知られており、病的状態と関連している。移植後帯状疱疹の予防のために開発された非生アジュバント添加遺伝子組み換え帯状疱疹ワクチンの第III相臨床試験の結果が報告され、auHSCTを受けた成人患者において本ワクチンの2回接種により、追跡期間中央値21ヵ月時の帯状疱疹の発症率が有意に低下したことが示された。JAMA誌2019年7月9日号掲載の報告。

インバウンド感染症の対応に役立つサイトを公開~日本感染症学会

 2020年7月24日から東京オリンピック・パラリンピックが開催される。日本感染症学会では、海外からの持ち込み感染症への対応として、訪日外国人の受診患者の臨床症状から想起すべき感染症とその対応をコンパクトにまとめた「症状からアプローチするインバウンド感染症への対応~東京2020大会にむけて~-感染症クイック・リファレンス」 を7月23日に学会ホームページに公開した。  わが国では訪日外国人が急増し、今後外国人労働者の増加も予想されるため、日本全国どこでも臨床医がインバウンド感染症に遭遇する可能性がある。東京オリンピック・パラリンピックの期間だけでなく、その終了後も臨床医にとって有用と思われる。

毎週パクリタキセル療法の末梢神経障害、冷却療法による予防効果/日本乳癌学会

 乳がんに対する毎週パクリタキセル(PTX)療法に伴う末梢神経障害に対する予防方法として、冷却方法が有用である可能性が報告されている。今回、呉医療センター中国がんセンターの尾崎 慎治氏(4月より県立広島病院)らが無作為化比較第II相試験にて、frozen gloves/socksによる冷却療法を検証したところ、忍容性は良好であり、毎週パクリタキセル療法に伴う末梢神経障害の予防に有用と考えられた。第27回日本乳癌学会学術総会にて発表された。

最もOSが良好な乳がんのサブタイプは?

 乳がん治療について、ステージ分類に加えて腫瘍サブタイプの重要性を強調するエビデンスが報告された。現行の乳がん治療では、これまで各ステージにおける腫瘍サブタイプの寄与は明らかになっていなかったが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJose P. Leone氏らが、Surveillance Epidemiology and End Results(SEER)プログラムのデータを解析し、臨床病理学的特徴が良好であるのはホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)乳がんであること、しかしながら、ほとんどのステージで全生存(OS)が最も良好だったのはHR+/HER2+乳がんであることを報告した。乳がんの4つの各ステージにおいて、OSは腫瘍サブタイプにより有意に異なっており、多変量モデルにおいても有意なままであったことも明らかにした。American Journal of Clinical Oncology誌2019年7月号掲載の報告。

てんかん患者の日中の眠気と交通事故リスク

 愛知医科大学の松岡 絵美氏らは、てんかん患者における日中の過度な眠気や睡眠障害について、とくに抗てんかん薬に焦点を当て検討を行い、てんかん患者における睡眠関連問題が交通事故リスクと相関するかについて調査を行った。Seizure誌2019年7月号の報告。  てんかん患者325例でエプワース眠気尺度(ESS)を、322例でピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いて評価した。運転免許証を有するてんかん患者239例が、交通事故に関連する質問に回答した。

抗凝固薬服用のまま可能な大腸ポリープ新治療法が有用~大阪国際がんセンター

 大阪国際がんセンター(大阪市中央区)の竹内洋司氏(消化管内科副部長)らの研究グループが、10mm未満の大腸ポリープに対し、電気を使わずにポリープを切除する「コールドスネアポリペクトミー」が、抗凝固薬を服用したままでも従来の治療法より出血が少なく、入院が不要で、治療時間が短いことを、多施設研究において世界で初めて証明した。この研究結果は、Annals of Internal Medicine誌2019年6月16日号に掲載。  大腸ポリープの多くは、将来的に大腸がんの原因となり得るため、一般的に内視鏡切除が行われる。その際、通電して焼灼し、血液を凝固させながら切除する方法が従来は一般的であった。

TN乳がん1次治療でのアテゾリズマブ+nab-PTX、日本人サブ解析(IMpassion130)/日本臨床腫瘍学会

 局所進行/転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療におけるアテゾリズマブとnab-パクリタキセル(nab-PTX)併用療法が、日本人においても有用であることが示された。国際共同無作為化二重盲検第III相試験(IMpassion130)の日本人65例のサブグループ解析結果について、埼玉県立がんセンターの井上 賢一氏が、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で発表した。  本試験では、局所進行または転移を有するTNBC患者を、アテゾリズマブ併用群(28日を1サイクルとして、アテゾリズマブ840mgを1日目と15日目に投与+nab-PTX 100mg/m2を1日目、8日目、15日目に投与)と非併用群(プラセボ+nab-PTX)に1:1に無作為化し、有効性と安全性を評価した。主要評価項目は、ITT解析集団およびPD-L1陽性患者における無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、副次評価項目は、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性などであった。

統合失調症患者の再入院までの期間、持効性抗精神病薬vs.経口抗精神病薬

 統合失調症患者の再入院までの期間に、退院後の持効性抗精神病薬(LAI)治療または経口抗精神病薬治療によって違いがあるのか、台湾・高雄医学大学のChing-Hua Lin氏らが比較検討を行った。さらに、LAI処方率の傾向についても併せて調査を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2019年7月1日号の報告。  2006~17年に試験の実施施設から退院した統合失調症患者1万3,087例を対象に、退院後、自然主義的な条件下でフォローアップを行った。主要アウトカムは、再入院までの期間とした。LAIと経口抗精神病薬および第1世代LAIと第2世代LAIの比較において、生存分析を用いて評価した。LAIの処方率に関する時間的傾向の存在は、単純線形回帰およびコクラン・アーミテージ傾向検定を用いて評価した。

HR+/HER2-進行乳がんへのPI3K阻害薬alpelisib、日本人解析結果(SOLAR-1)/日本臨床腫瘍学会

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対する、α特異的PI3K阻害薬alpelisibとフルベストラント併用療法の有効性を評価する第III相SOLAR-1試験の日本人解析結果を、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で、愛知県がんセンターの岩田 広治氏が発表した。なお、同患者に対するalpelisib併用療法は、SOLAR-1試験の結果に基づき、2019年5月にPI3K阻害薬として初めてFDAの承認を受けている。

AIによる認知症診療は実現なるか、順大が日本IBMらと共同研究

 認知症の早期発見や診療において、AIは医師の強力な助っ人となるかもしれない。2019年7月10日、都内で記者説明会が開催され、AIによる新たな認知症診療システム開発と、食品介入などの臨床研究実施を目的とした産学連携プロジェクトの開始が発表された。参加企業は日本IBM、キリンホールディングス、三菱UFJリース、グローリー、日本生命、三菱UFJ信託銀行の6社。中心となる順天堂大学医学研究科神経学講座教授の服部 信孝氏をはじめ、各社の代表者が登壇し、本プロジェクトにおける役割と展望を語った。

ソーシャルメディア使用時間とうつ病や大量飲酒との関連

 思春期のソーシャルメディアの使用は、さまざまな否定的なアウトカムにつながっているが、この関連性については明らかとなっていない。ノルウェー・Norwegian Institute of Public HealthのGeir Scott Brunborg氏らは、ソーシャルメディアに費やされた時間の変化が、思春期のうつ病、問題行動、一過性の大量飲酒と関連しているかを、一階差分(first-differencing:FD)モデルを用いて検討を行った。Journal of Adolescence誌7月号の報告。  ノルウェーの青年763人(男性の割合:45.1%、平均年齢:15.22±1.44歳)を対象に、6ヵ月間隔で2つのアンケートを実施した。ソーシャルメディアに費やされた時間の変化とうつ症状、問題行動、一過性の大量飲酒との関連性は、すべての時系列の要因を効果的にコントロールする統計手法であるFDモデルを用いて推定した。また、スポーツの頻度、教師不在でのレジャーの頻度、友人関係の問題の3つを経時的推定交絡因子として検討を行った。