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アリピプラゾールやハロペリドールによる神経突起病変保護作用

 ドパミンD2受容体(D2R)の機能亢進は脳の発達に変化を及ぼし、その後、統合失調症に類似した症状を引き起こす。D2RがDISC1遺伝子(Disrupted in schizophrenia 1)と相互作用を示すことが知られているが、細胞内シグナル伝達や神経突起におけるこれらの相互作用の影響は、明らかとなっていない。オーストラリア・ウーロンゴン大学のPeng Zheng氏らは、皮質ニューロンにおけるAkt-GSK3βシグナル伝達および神経突起形態に対するD2R過剰活性の影響について検討を行った。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2019年6月8日号の報告。

疼痛・疲労・精神的苦痛の支援を受けたことがない―がん患者の3~5割/JCO

 どれほどのがん患者が疼痛、疲労、精神的苦痛を有し、またそれらに対するケアは行われているのか。米国・がん協会のTenbroeck G. Smith氏らは、地域のがんセンターで治療を受けている患者を対象に、それらの有症率などを調査した。その結果、30~50%のがん患者が、疼痛、疲労および精神的苦痛について、話し合ったり、アドバイスを受けたり、期待した支援を受けたことがないと回答したという。著者は、「これら3つのがん関連症状の管理に関して改善の余地がある」と述べたうえで、それぞれの症状の有症率の高さについても「重要と思われる」と指摘している。Journal of Clinical Oncology誌2019年7月1日号掲載の報告。

前立腺がんのアンドロゲン除去療法と認知症~15万例の解析

 アンドロゲンの低下は、除脂肪体重の減少や糖尿病、心血管疾患、うつ病など、アルツハイマー病や認知症の危険因子を増大させる可能性がある。前立腺がんにおけるアンドロゲン除去療法(ADT)は認知機能に影響するのだろうか。今回、米国ペンシルバニア大学のRavishankar Jayadevappa氏らが、15万例超の高齢前立腺がん患者のデータを分析したところ、アンドロゲン除去療法を受けた後少なくとも10年間は、アルツハイマー病や認知症の診断と関連することが示された。JAMA Network Open誌2019年7月3日号に掲載。

潰瘍性大腸炎の炎症の程度を便で診断

 2019年6月26日、アルフレッサ ファーマ株式会社は、体外診断用医薬品として潰瘍性大腸炎(以下「UC」と略す)の病態把握の補助に使用されるカルプロテクチンキット「ネスコートCpオート」が、6月5日に製造販売承認を取得したことを機に、都内で「潰瘍性大腸炎の治療継続における課題とは」をテーマにプレスセミナーを開催した。  セミナーは、日比 紀文氏(北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療[IBD]センター長)の司会により進行し、同氏は「潰瘍性大腸炎は全世界で500万人の患者が推定され、わが国はアメリカについで患者数が多い国である。潰瘍性大腸炎は現在も原因不明の疾患であり、主な症状は、持続反復する下痢、血便、頻回のトイレなどがあり、活動期と寛解期を繰り返すのが特徴。治療では、5SAS製剤、JAK阻害薬などが使用されている。潰瘍性大腸炎の適切な治療では、病態の正確な把握が必要だが内視鏡検査が広く行われている。しかし、内視鏡検査は侵襲性が高く、患者負担も大きいため、非侵襲性の検査が長らく待たれていた。今回製造販売承認されたネスコートCpオートであれば10分で測定ができ、外来でも有用だと期待しているし、患者にも身体・経済面でメリットがある」と潰瘍性大腸炎の疾患概要と本診断キット開発の意義を説明した。

うつ病に対するボルチオキセチン治療と自殺リスク

 米国・BlackThorn TherapeuticsのAtul R. Mahableshwarkar氏らは、成人うつ病患者に対するボルチオキセチン治療に関連する自殺念慮や自殺行動のリスクを評価するため検討を行った。CNS Spectrums誌オンライン版2019年6月14日号の報告。  自殺関連事象は、2つの試験プール(短期[6~8週間]プール試験:10ランダム化プラセボ対照試験、長期[52週間]プール試験:3オープンラベル拡大試験)を用いて事後評価した。自殺関連事象の評価には、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)および治療下で発現した有害事象(TEAE)のデータを用いた。

日本人卵巣がんのBRCA変異保有率は欧米と同等/アストラゼネカ

 アストラゼネカ株式会社は、卵巣がんにおけるBRCA1/2(以下、BRCA)遺伝子変異の保有率に関する大規模調査 Japan CHARLOTTE study(以下、CHARLOTTE)を国内63の医療施設で実施した。日本人症例における初の大規模な調査であり、婦人科領域のがんゲノム医療を推進する貴重なデータとなる。なお、CHARLOTTEの結果は、2019年7月1日付でInternational Journal of Gynecological Cancer電子版に掲載されている。

非左脚ブロックに対するCRT-Dの効果【Dr.河田pick up】

 非左脚ブロックに対する心臓再同期療法(CRT)の有効性については、賛否両論があり、いまだ結論が出ていない。本研究では、米国のナショナルデータベースである、全米心血管データ登録(NCDR)の植込み型除細動器(ICD)レジストリを用いて、非左脚ブロック患者を右脚ブロック群と非特異的心室内伝導障害群に分け、除細動器を伴った心臓再同期ペースメーカー(CRT-D)の有効性を評価した。   この論文は、私(Hiro Kawata)とJonathan Hsu氏らがJournal of the American College of Cardiology誌6月号に発表した。

高齢者のうつ病と近隣の緑地との関係

 近隣に緑地や植物があることは、健康やウェルビーイングの指標と関連しているが、高齢者のうつ病との関連は、あまり研究されていない。うつ病における環境要因を明らかにすることは、予防および治療の両面において、これまでのうつ病介入を補完する可能性がある。米国・マイアミ大学のTatiana Perrino氏らは、フロリダ州マイアミ・デイド郡の高齢者を対象に、近隣の緑地とうつ病診断との関連について調査を行った。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2019年6月13日号の報告。

高齢進行胃がん患者への化学療法、低用量でベネフィット得られる可能性(GO2)/ASCO2019

 高齢でフレイルのある、進行胃・食道胃接合部がん患者において、2剤併用化学療法の用量を減らしても、高用量の場合と同等のベネフィットが得られる可能性が示唆された。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、オキサリプラチン+カペシタビン2剤併用療法の適正用量を検討した第III相GO2試験の結果を、英国・エジンバラ大学のPeter S Hall氏が発表した。  進行胃・食道胃接合部がんと診断される患者の中央値は75歳超で、多くがフレイルを有している。しかし、化学療法の標準的な用法用量の多くがフレイルのない、65歳未満の患者を対象とした臨床試験によって定められている。

持続する疲労感は成長ホルモン不全症(AGHD)のせい?

 ノボ ノルディスク ファーマ株式会社は、都内で成人の成長ホルモン分泌不全症(AGHD)に関するプレスセミナーを開催した。  セミナーでは「成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)とは」をテーマに、亀田 亘氏(山形大学医学部付属病院 第三内科 糖尿病・代謝・内分泌内科)を講師に迎え、なかなか診療まで結びつかない本症に関し、症状、診断と治療、患者へのフォローなどが紹介された。

抗精神病薬使用と胃がんリスクとの関係

 台湾・桃園長庚紀念病院のYi-Hsuan Hsieh氏らは、抗精神病薬使用と胃がんの発症率との関連を明らかにするため、検討を行った。これまで、抗精神病薬の使用と胃がんリスクとの関連は、明らかとなっていなかった。Cancer Medicine誌オンライン版2019年6月10日号の報告。  ネステッド・ケース・コントロール研究を用いて、1997~2013年の台湾全民健康保険研究データベースより、胃がん患者3万4,470例および非胃がん患者16万3,430例を抽出した。交絡因子の可能性を調整するため、条件付きロジスティック回帰モデルを用いてデータ分析を行った。

今シーズンのハチ毒被害に備える方策

 第68回 日本アレルギー学会学術大会(会長:相良 博典氏[昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門])が、6月13~15日まで都内で開催された。大会期間中、喘息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎など多彩なセッションが開催された。  これからのシーズン、ハチ刺されによるアナフィラキシーショックの事例も増えることから、本稿では教育講演で行われた「ハチアレルギーの現状」の概要をお届けする。  講演では、平田 博国氏(獨協医科大学埼玉医療センター 准教授)を講師に迎え、ハチ毒による症状、治療、アレルゲン免疫療法(予防)について説明が行われた。

高齢者進行非小細胞肺がん、膵がん患者に対する早期運動・栄養介入の多施設共同ランダム化第II相試験(NEXTAC-TWO)

 高齢の進行期がん患者の多くは、がん悪液質による疲労、食欲不振、および身体機能の低下を有しているが、効果的な介入が確立されていない。静岡県立静岡がんセンターの内藤 立暁氏らは進行期がんに対する栄養療法および運動療法を組み合わせた早期介入プログラムNEXTAC(The Nutrition and Exercise Treatment for Advanced Cancer program)の第I相試験(NEXTAC-ONE)を実施し、がん悪液質高リスクの高齢患者におけるNEXTACの実現可能性を報告した(Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle, 2018)。この結果に基づきNEXTACによる早期の運動・栄養介入の有効性を評価する多施設共同無作為化第II相NEXTAC-TWO試験が開始された。NEXTAC-TWO試験の実施の背景、設計などについて新潟県立がんセンター新潟病院 三浦 理氏らがBMC Cancer誌オンライン版2019年5月31日号で発表した。

強迫症患者における双極性障害合併率

 強迫症(OCD)患者は、主に不安障害や情動障害などの併存疾患を有することが多く、このことがOCDの経過や援助要請、治療反応に影響を及ぼす。これまで、OCD患者における双極性障害(BD)の併存についての研究が行われているが、多くは小規模サンプルで実施されていた。ブラジル・パウリスタ大学のMariana S. Domingues-Castro氏らは、大規模サンプルを用いて、OCD患者のBD生涯有病率を推定し、BD併存の有無における人口統計学的および臨床的特徴について比較を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2019年6月7日号の報告。

統合失調症治療における多剤併用療法の単剤療法への切り替え~メタ解析

 統合失調症における抗精神病薬の多剤併用療法は、単剤療法よりも優位性があることが最近のメタ解析で報告されているが、単剤療法への切り替えは、副作用に関して有益である。東京女子医科大学の松井 健太郎氏らは、抗精神病薬の多剤併用療法を受けている患者に対し、単剤療法への切り替えを行うべきか、多剤併用療法を継続すべきかについて、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2019年6月7日号の報告。

全粒穀物、食物繊維の摂取が肝がんリスクを低下?/JAMA Oncol

 がん治療薬の開発が進んでいるが、一方で予防に対する研究も活発である。中国・安徽医科大学のWanshui Yang氏らは、全粒穀物や食物繊維の摂取量増加が、肝細胞がん(HCC)の素因として知られるインスリン抵抗性、高インスリン血症および炎症のリスク低下と関連していることから、これらの長期摂取によりHCCのリスクが低下するのではないかと仮定し、その関連性を米国の2つのコホート研究を基に解析した。その結果、全粒穀物および、おそらくシリアル繊維とふすまの摂取量増加は、米国成人のHCCのリスク低下と関連していることが示されたという。著者は、「今回の知見を再現し、他の人種・民族あるいは高リスク集団におけるこれらの関連性を調べ、根本的なメカニズムを解明するためには、今後、B型およびC型肝炎ウイルス感染を考慮したさらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA Oncology誌オンライン版2019年2月21日号掲載の報告。

ダパグリフロジン、糖尿病患者の腎保護示す-DECLARE‐TIMI 58サブ解析

 近年、SGLT2阻害剤はアテローム性動脈硬化症患者の腎アウトカムに対し、有益な効果を示すことが明らかになりつつある。今回、イスラエル・Hadassah Hebrew University Hospital のOfri Mosenzon氏らがDECLARE-TIMI 58のサブ解析を実施。ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が、腎機能を保持している2型糖尿病患者において、アテローム性動脈硬化症の有無にかかわらず、プラセボと比較して腎疾患の予防および進展抑制を示す結果が得られた。Lancet Diabetes & Endocrinology誌オンライン版2019年6月10日号に掲載された。

デュルバルマブ、進展型小細胞肺がんのOSを有意に延長(CASPIAN)/AstraZeneca

 AstraZenecaは、2019年6月27日、進展型小細胞肺がん(SCLC)の1次治療を対象としたデュルバルマブの第III相CASPIAN試験で、主要評価項目である全生存率(OS)を達成したと発表。  CASPIAN試験は、進展型SCLC患者の1次治療における無作為化オープンラベル多施設共同国際第III相試験。この試験では、化学療法単独とデュルバルマブ+化学療法(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン)およびデュルバルマブ+トレメリムマブ+化学療法(上記と同様)とを比較しており、米国、欧州、南米、アジア、中東を含む22ヵ国、200以上の施設で実施されている。

乳がん患者への予後情報の開示は効果的か/Cancer

 がん患者へ明確な予後を知らせる効果に関する知見が示された。聖隷三方原病院 緩和ケアチームの森 雅紀氏らは、日本人乳がん女性患者に対して、予後の明確な開示の有無という点で異なる2つのビデオ(患者と医師のコミュニケーション場面を撮影したもの)を見せ、患者が抱く不確実性や不安、満足感などに変化が認められるかを無作為化試験により調べた。その結果、明確な予後の開示はそれらのアウトカムを改善することが示されたという。結果を踏まえて著者は、「がん患者に予後について質問をされたら、医療従事者は、その要望を尊重すべきであり、適切であれば明快に話し合うことが推奨されるだろう」と述べている。Cancer誌オンライン版2019年6月17日号掲載の報告。

血圧と認知症サブタイプ別リスク~260万人を長期観察

 血圧上昇と認知症リスクの関連は、期間や認知症のサブタイプにより異なるのだろうか。今回、英国・London School of Hygiene & Tropical MedicineのJohn Gregson氏らによる約260万人の後ろ向きコホート研究から、血圧上昇は認知症リスク低下と短期的には関連するが、長期的な関連はあまり大きくないことがわかった。また、長期的な関連は、アルツハイマー型認知症と血管性認知症では逆であったことが報告された。European Journal of Neurology誌オンライン版2019年6月24日号に掲載。