医療一般|page:272

飲酒と喫煙に対する健康政策はがん死を減らせるのか

 長期の飲酒と喫煙はがんの危険因子として認識されているが、飲酒と喫煙に対する公衆衛生政策ががんの死亡率に与える影響は検討されていない。今回、オーストラリア・メルボルン大学のHeng Jiang氏らが、オーストラリアにおける1950年代~2013年の飲酒および喫煙に関する政策とがん死亡率の変化との関連を検討した結果、いくつかの政策変更が飲酒・喫煙の変化とその後20年間のがん死亡率の変化に関連することが示された。BMC Medicine誌2019年11月号に掲載。

プライマリケアにおけるベンゾジアゼピン減量戦略

 ベンゾジアゼピンは一般的な医療用医薬品であり、成人の約10%において、過去1年間で使用されている。これらの薬剤は依存性があり、多くの患者に対し長期間使用され、長期的な副作用も認められている。英国・NHS Greater Glasgow & ClydeのStephen Davidson氏らは、ジアゼパムを繰り返し使用している患者の処方を見直し、必要に応じて減量および中止が可能か、また、それらの変化が24ヵ月継続するかについて調査を行った。Korean Journal of Family Medicine誌オンライン版2019年11月6日号の報告。

AI活用、24時間顧客問い合わせ対応のシステム導入/塩野義製薬

 塩野義製薬株式会社は、人工知能(AI)を活用した自動会話プログラムで製品に関する問合わせに回答するAIチャットボット「DI chat (Drug Information Chatbot)」を導入し、2019年12月2日より運用を開始したと発表した。  今回導入したDI chatは、木村情報技術株式会社が、IBM Watson日本語版を活用したAIチャットボットに、塩野義製薬が作成したQ&Aを学習させることで、一問一答形式での回答を実現したAI顧客問い合わせ対応システムである。医療関係者からの問い合わせをAIが理解し、最も質問の意図に近い回答を自動的に提示する。

デュピルマブ、中等症~重症の思春期アトピー性皮膚炎への第III相試験結果

 アトピー性皮膚炎(AD)に対する初の生物学的製剤であるデュピルマブについて、コントロール不良で中等症~重症の思春期(中央値14.5歳)AD患者に対する第III相の無作為化二重盲検並行群間比較試験の結果が報告された。米国・オレゴン健康科学大学のEric L. Simpson氏らによる検討で、16週間の治療により、プラセボと比較して症状やQOLの面で有意な改善がみられ、安全面でも忍容性が認められたという。著者は、「プラセボ調整後のデュピルマブの有効性と安全性は、思春期と成人で同等であった」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年11月6日号掲載の報告。

うつ症状に対するポリフェノールの影響~システマティックレビュー

 うつ病は、世界中で3億5,000万人が罹患している気分障害である。最近の研究では、うつ病に対して食事が保護的な役割を果たすことが示唆されている。いくつかのシステマティックレビューでは、うつ症状の軽減に地中海スタイルの食事パターンが有望であることが報告されている。これは、食事の中に一般的に含まれるポリフェノールの含有量が多いことが要因であると推測されている。オーストラリア・シドニー工科大学のJessica Bayes氏らは、うつ症状に対する地中海スタイルの食事に含まれるポリフェノールの影響について評価を行った。Advances in Nutrition誌オンライン版2019年11月5日号の報告。

出産歴による乳がん検診開始年齢を検討/Eur J Cancer

 乳がんリスクに出産歴が影響することは認識されているが、現在の乳がん検診ガイドラインはこの因子によるリスクの違いが考慮されていない。乳がんリスクが高い女性は早期の検診が必要であることから、ドイツ・German Cancer Research CenterのTrasias Mukama氏らは、生殖プロファイルに基づくリスクに合った検診開始年齢を検討した。European Journal of Cancer誌オンライン版2019年11月21日号に掲載。  本研究は、1931年以降に生まれた509万9,172人のスウェーデン人女性の全国コホート研究。参加者におけるSwedish Cancer Registry、Multi-generation Register、Cause of Death Register、および国勢調査(1958~2015)の記録をリンクさせた。

再発・難治性慢性リンパ性白血病、小リンパ球性リンパ腫治療薬、ベネトクラクス発売/アッヴィ

 アッヴィ合同会社は、2019年11月22日、再発/難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)および小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療薬として、経口BCL-2阻害薬ベネトクラクス(商品名:ベネクレクスタ)を発売した。  ベネトクラクスはファーストインクラスの経口BCL-2阻害薬で、がん細胞で失われたアポトーシスの過程を回復させる作用がある。

ゾフルーザ耐性ウイルスの特性を解明、小児で高頻度に出現

 東京大学医科学研究所の河岡 義浩氏ら研究チームが、2018/2019シーズンに採取したA型インフルエンザ検体の遺伝子を解析したところ、バロキサビル(商品名:ゾフルーザ)を服用した12歳未満のA型インフルエンザ患者において、ゾフルーザ耐性ウイルスが高頻度で出現することが明らかになった。また、患者から分離した耐性ウイルスを動物に感染させ、感受性ウイルスと比較したところ、耐性ウイルスの増殖性および病原性は、感受性ウイルスと同等であることもわかった。Nature Microbiology誌オンライン版2019年11月25日号に掲載。

降圧薬と認知症リスク~メタ解析

 認知症は、予防や治療戦略が難しい健康問題である。認知症を予防するうえで、特定の降圧薬使用が、認知症リスクを低下させるともいわれている。米国・国立衛生研究所のJie Ding氏らは、特定の降圧薬による血圧低下が認知症リスクに及ぼす影響について検討を行った。The Lancet. Neurology誌オンライン版2019年11月6日号の報告。  1980年1月1日~2019年1月1日までに公表された適格な観察研究より参加者データを収集し、メタ解析を実施した。適格基準は、コミュニティーの成人を対象としたプロスペクティブコホート研究、参加者2,000人超、5年以上の認知症イベントデータの収集、血圧測定および降圧薬の使用、認知症イベントに関する追加データを収集するための対面試験、死亡率のフォローアップを含む研究とした。ベースライン時の高血圧(SBP140mmHg以上またはDBP90mmHg以上)および正常血圧において、5つの降圧薬クラスを用いて、認知症やアルツハイマー病との関連を評価した。降圧薬服用確率に関連する交絡因子を制御するため、傾向スコアを用いた。研究固有の効果推定値は、変量効果のメタ解析を用いてプールした。

アテゾリズマブ 840mgを発売、トリプルネガティブ乳がん適応に対し/中外

 中外製薬株式会社は、抗PD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)840mg製剤が、2019年11月27日、薬価収載および発売となった旨を発表。アテゾリズマブ840 mg製剤は、本年9月20日に承認を取得したPD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌の適応に対する用法・用量となる2週間間隔投与に対する至適用量製剤である。

ダメージは不可逆、頭痛の裏に失明リスクのある眼疾患/日本頭痛学会

 眼の痛みがあったとしても診断時にその訴えがあるとは限らず、併存疾患の多い高齢者ではとくに鑑別が困難だが、頭痛診療で頭に留めておきたい眼疾患がある。第47回日本頭痛学会(11月15~16日)の「頭痛診療のクロストーク・連携」と題したワークショップで、川崎医科大学附属病院眼科の家木 良彰氏が頭痛診療と眼疾患について講演した。  はじめに家木氏は、突然の嘔吐と頭痛を訴え受診した80代女性の症例を紹介した。精査加療のため入院し、他疾患による頭痛として退院。退院後も吐き気、頭痛、眼痛が持続するため、10日以上経過後に初めて眼科を受診した。眼圧を測定したところ右眼圧60mmHgで、急性閉塞隅角緑内障と診断。同日中に白内障手術が施行された。

血液1滴で13種のがん検出、2時間以内に99%の精度で―東芝

 東芝は11月25日、血液中のマイクロRNAを使ったがん検出技術を開発したと発表した。同社によると、独自のマイクロRNA検出技術を使った健康診断などの血液検査により、生存率の高いStage 0の段階でがんの有無を識別することが期待できるという。早期の社会実装に向け、来年から実証試験を進めていく。  リキッドバイオプシーの解析対象となるマイクロRNAを巡っては、2014年に「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」が始動。国立がん研究センターや国立長寿医療研究センターが保有するバイオバンクを活用し、膨大な患者血清などの検体を臨床情報と紐づけて解析。血中マイクロRNAをマーカーとした検査システムの開発が進んでいる。この研究成果をベースに、国内メーカー4社が、日本人に多い13種のがんについて、血液検体から全自動で検出するための機器や検査用試薬、測定器キットなどの開発に取り組んでいる最中だ。

PD-L1高発現NSCLC、ペムブロリズマブ単剤の5年生存率は25%以上(KEYNOTE-001)/JCO

 PD-L1陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブ単剤療法の長期5年の追跡結果が示された。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のEdward B. Garon氏らは、第Ib相KEYNOTE-001試験の結果で、未治療および既治療の進行NSCLC患者におけるペムブロリズマブ単剤療法による5年全生存率は高く、とくにPD-L1高発現患者(TPS≧50%)では25%以上で、長期安全性プロファイルは良好であることを明らかにした。ペムブロリズマブ単剤療法は、PD-L1陽性進行NSCLCに対し持続的な抗腫瘍活性を発揮することが示されていた。Journal of Clinical Oncology誌2019年10月号掲載の報告。

青年期うつ病の治療中および治療後の軌跡

 英国・ケンブリッジ大学のSian Emma Davies氏らは、UK IMPACT試験に参加した青年期うつ病患者を症状変化の軌跡によって分類し、その予測因子および治療反応の定義との比較を行った。Journal of Child Psychology and Psychiatry誌オンライン版2019年10月24日号の報告。  本研究は、成長混合モデリング(GMM)を用いた2次データ分析である。欠損データは補完された。対象患者465例について、86週間の6つの時点におけるスコアを用いて、自己報告された抑うつ症状の軌跡を作図した。

新規作用機序のimeglimin、インスリン併用下の有効性・安全性

 2型糖尿病の新規治療薬候補として期待されるimegliminは、ミトコンドリアの機能障害改善という新しいメカニズムを持つ。現在、本剤の開発を手掛けるフランスのバイオ医薬品企業Poxel SA(以下、Poxel社)は、大日本住友製薬と共同で、日本人1,100例以上を対象とした3つの第III相臨床試験で構成される「TIMES試験」(Trials of IMeglimin for Efficacy and Safety)を実施中だ。  2019年11月26日、Poxel社は、2型糖尿病を対象とし、わが国で実施されたimegliminとインスリンの併用療法を評価するTIMES3試験の、非盲検下36週間継続投与試験における結果を公表した。

切除不能肝細胞がんへのアテゾリズマブ+ベバシズマブ、全死亡リスクが42%低下(IMbrave150)/ESMO Asia 2019

 全身薬物療法を受けていない切除不能の肝細胞がん(HCC)患者に対して、アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)とベバシズマブ(同:アバスチン)の併用をソラフェニブ単剤と比較した第III相IMbrave150試験において、主要評価項目である全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)のいずれにおいても統計学的に有意な改善が示された。11月23日、欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia)2019にて発表された。  IMbrave150試験は、全身薬物療法を受けていない切除不能なHCC患者を対象とした多施設共同オープンラベル無作為化第III相試験。501例をアテゾリズマブ(1日目に1,200mg静脈内投与、3週ごと)とベバシズマブ(1日目に15mg/kg静脈内投与、3週ごと)の併用群、ソラフェニブ(1〜21日目に400mg/回を1日2回経口投与、3週ごと)単剤群に2:1で割り付け、両群とも主治医判定で病勢進行もしくは忍容できない毒性出現のいずれかまで継続した。主要評価項目は OSとRECIST v1.1 に基づく中央判定によるPFSで、副次評価項目は、RECIST v1.1および HCCmRECISTに基づく主治医判定による奏効率、無増悪期間、奏効期間、患者報告アウトカム、安全性、薬物動態であった。

赤肉摂取減らしても心血管代謝・がん死亡に効果なし?

 赤肉の摂取量を減らした場合、臨床的に重篤なアウトカムに効果があるかどうかを検討した無作為化研究はほとんどない。今回、カナダ・McMaster大学のDena Zeraatkar氏らの無作為化研究の系統的レビューから、エビデンスの確実性は低いが、赤肉を制限した食事が主な心血管代謝アウトカムとがん死亡および発症に対して、ほとんどまたはまったく影響しない可能性が示唆された。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2019年10月1日号に掲載。

プライマリケアにおけるセルトラリンの臨床的有効性~PANDA研究

 うつ病のケアは、プライマリケアで行われることが多い。しかし、ほとんどの抗うつ薬の試験では、うつ症状の診断と重症度に基づいた適格基準を有する2次医療圏の精神保健サービスの患者を対象としている。抗うつ薬は、これまでの臨床試験の対象患者よりもはるかに幅広い患者に用いられている。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのGemma Lewis氏らは、軽度~重度のうつ症状を伴うプライマリケア患者を対象に、セルトラリンの臨床効果を調査し、治療反応に対する重症度と期間との関連について検討を行った。The Lancet. Psychiatry誌2019年11月号の報告。

EGFR変異NSCLC、ゲフィチニブ+化学療法併用(NEJ-009)/JCO

 EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療について、標準療法のEGFR-TKI単独療法 vs.EGFR-TKI+化学療法を比較した、日本発の検討結果が発表された。がん・感染症センター東京都立駒込病院の細見幸生氏らによる、未治療のEGFR遺伝子変異陽性進行NSCLC患者を対象とした第III相臨床試験「NEJ009試験」の結果で、ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法はゲフィチニブ単独療法群と比較して、毒性プロファイルは許容でき、無増悪生存期間(PFS)および全生存(OS)期間が延長することが示されたという。ただし、著者は、「OSの有益性についてはさらなる検証が必要である」とまとめている。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年11月4日掲載の報告。

全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019、本邦で初めて発刊

 2019年10月、日本初の『全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019』が発刊された。全身性エリテマトーデス(SLE)はさまざまな全身性疾患を伴うため、治療の標準化が困難であったことからガイドラインの作成着手までに時間を要してきた。全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019は専門医を対象とし、SLEの臨床的多様性に対応する総合的なガイドラインとして作成されている。  サノフィ株式会社は2019年10月30日、メディアラウンドテーブル「本邦初の全身性エリテマトーデス(SLE)診療ガイドライン発行~SLE診療の現在 医師と患者の立場から~」を開催。全身性エリテマトーデス診療ガイドライン統括委員会の委員長を務めた渥美 達也氏(北海道大学大学院医学研究院免疫・代謝内科学教室 教授)が「SLE診療の標準化~全身性エリテマトーデス(SLE)診療ガイドライン~」について講演した。会の後半では患者代表の後藤 眞理子氏(全国膠原病友の会神奈川県支部 支部長)を交えてトークセッションが行われた。