医療一般|page:151

直腸がん、術前療法終了から手術までの時間と転帰

 手術適応の直腸がん患者において、術前化学(ネオアジュバント)療法から手術まで12週間以上空けた群ではそうでない群に比べ、奏効率には違いがなかったものの、再発リスクの有意な低下などが示されたという。スペイン・バルセロナ大学のYoelimar Guzman氏らによる本コホート研究の結果はJAMA Surgery誌オンライン版2023年7月12日号に掲載された。  2005年1月~2020年12月にアジュバント療法を受け、直腸間膜全切除術(TME)を受けた成人の直腸がん患者1,506例を対象とした。コホートはアジュバント療法終了から手術までの時間によって、短期(8週間以内)、中期(8週間超12週間以内)、長期(12週間超)の3群に分けられた。追跡期間の中央値は33ヵ月で、データ解析は2021年5月1日~2022年5月31日に行われた。主要評価項目は病理学的完全奏効(pCR)、副次評価項目は病理組織学的結果、周術期イベント、および生存転帰であった。

オメガ3脂肪酸で心房細動リスクは増加する?しない?/JACC

 オメガ3脂肪酸の摂取が心房細動発症リスクを高めることを示唆する研究報告があるが、依然として議論の余地がある。今回、米国・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのFrank Qian氏らが、世界的コンソーシアムにおける17の前向きコホート研究のデータを用いて、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の血中あるいは脂肪組織レベルと心房細動発症との関連を解析した結果、オメガ3脂肪酸の生体内レベルは心房細動発症リスクの増加に関連していなかった。本結果から、食事による習慣的なオメガ3脂肪酸の摂取は、心房細動発症リスクに関しては安全であることが示唆された。Journal of the American College of Cardiology誌2023年7月25日号に掲載。

紫外線量と双極性障害リスクとの関係

 太陽光には、皮膚でのビタミンD生成を促す紫外線B(UVB)が含まれている。ビタミンDは、発育中から成人の脳機能にさまざまな影響を及ぼしている。しかし、多くの人々は、冬期にビタミンD生成を行ううえで十分なUVBを受けられない地域(北緯または南緯約40度以上)で生活を行っている。ドイツ・ドレスデン工科大学のMichael Bauer氏らは、世界の大規模サンプルを用いて、双極性障害の発症年齢とビタミンD生成に十分なUVBの閾値との関連性を調査した。その結果、UVBおよびビタミンDは、双極性障害発症に重大な影響を及ぼす可能性が示唆された。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年6月22日号の報告。

亜鉛補給でコロナ死亡率低下~メタ解析

 亜鉛の補給によって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の死亡リスクが有意に低下することが、米国・Patel College of Allopathic MedicineのSpencer Z. Rheingold氏らのメタ解析によって明らかになった。Cureus誌2023年6月10日号掲載の報告。  亜鉛は必須微量元素の1つで、炎症や感染症における免疫系の重要な調節因子であるとともに、直接的な抗ウイルス作用もあることが報告されている。COVID-19患者の予後を改善するために多くの研究グループが亜鉛補給に関する試験を実施しているが、その効果には議論の余地がある。そこで研究グループは、亜鉛を補給したCOVID-19患者と補給していないCOVID-19患者の死亡率と症状の関連についてメタ解析を行った。

患者が作成に本格的に参画、『患者・市民のための膵がん診療ガイド』

 膵がんは年間の新規罹患者数4万4,500人(2022年予測)、20年間で約2倍と大きく増加しており、とくにアジア・日本での増加率が高い。がん種別にみた罹患者数は6位ながら死亡者数では4位、罹患者数と死亡者数の差が小さい、いわゆる「難治性がん」の代表とされる。  現在、乳がん、胃がん、大腸がんなどで患者向けガイドラインが刊行・改訂されているが、2023年5月には膵がんの『患者・市民のための膵がん診療ガイド 2023年版』(編集:日本膵臓学会)が刊行された。改訂は2019年以来4年ぶり、本版は第4版となる。7月には作成委員長である奥坂 拓志氏(国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科 科長)と、患者代表として作成に参画した眞島 喜幸氏(NPO法人 パンキャンジャパン 理事長)を講師に招いたメディアセミナーが開催された。

乳がんへのパルボシクリブの効果、PPI併用で損なわれる

 抗がん剤による消化器症状を緩和するためにプロトンポンプ阻害薬(PPI)が使用されているが、PPIの酸分泌抑制作用は経口抗がん剤のバイオアベイラビリティや臨床効果に悪影響を及ぼす。今回、韓国・Sungkyunkwan UniversityのJu-Eun Lee氏らによる進行乳がん患者を対象としたコホート研究の結果、パルボシクリブにPPIを併用した群では非併用群よりも無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が短いことが示された。この結果から、パルボシクリブにPPIを併用するとパルボシクリブの治療効果が損なわれる可能性が示唆された。JAMA Network Open誌2023年7月21日号に掲載。

抗精神病薬誘発性メタボリックシンドローム~ナラティブレビュー

 重篤な精神疾患である統合失調症は、世界の障害の主な原因トップ10の1つであり、人口の約1%に影響を及ぼす。統合失調症に対する最良の治療選択肢として、抗精神病薬治療が挙げられるが、抗精神病薬治療では脂質異常症を含むメタボリックシンドロームリスクが増加する。実際に、統合失調症患者は、一般集団と比較し、メタボリックシンドロームリスクが高いといわれている。カナダ・マニトバ大学のPelumi Samuel Akinola氏らは、抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームの有病率、メカニズムおよび対処法について、まとめて報告した。Metabolic Syndrome and Related Disorders誌オンライン版2023年6月22日号の報告。

コロナ再感染、高齢者よりも若年層で増加

 新型コロナウイルス感染症の流行が長期にわたり、再感染者も増えている。再感染は基礎体力が劣り、基礎疾患を持つ人が多い高齢者に多いのではと考えられるが、実際には若年・中年層の増加率が高齢者よりも高いことが明らかになった。米国疾病管理予防センター(CDC)が実施した研究結果は、Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)誌2023年6月23日号に掲載された。  CDCは2021年9月5日~2022年12月31日に、米国の18の管轄区域から報告された18歳以上の成人のCOVID-19全症例、入院、死亡に占める再感染の割合を調査し、5つの期間(デルタおよびオミクロン[BA.1、BA.2、BA.4/BA.5、BQ.1/BQ.1.1]がそれぞれ優勢だった期間)と年齢層別に解析した。

XBB/XBB.1.5、ほかの変異株より再感染リスク高い

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の多様な変異の出現は、ワクチンと感染の両方による集団免疫を回避する能力の向上と関連している。米国・カリフォルニア大学バークレー校のJoseph A. Lewnard氏らの研究によると、現在主流となっているオミクロン株XBB/XBB.1.5系統は、ワクチン由来の免疫と感染由来の免疫とで回避傾向が異なり、同時期に流行しているほかの変異体と比較して、ワクチン接種回数が多い人ほど感染リスクや感染時の入院リスクが低減する一方で、過去に感染既往がある人はXBB/XBB.1.5への感染リスクが高いことが示された。Nature Communications誌2023年6月29日号に掲載の報告。  XBB/XBB.1.5系統は2023年1月下旬までに、ほかの変異体を追い抜き米国内で主流となった。本研究では、南カリフォルニアにおいて2022年12月1日~2023年2月23日の期間に、外来でSARS-CoV-2陽性と判定された3万1,739例のデータを解析した。これらの被験者において、XBB/XBB.1.5に感染した人と、ほかのBA.4/BA.5などに感染した人について、ワクチン接種歴と過去のSARS-CoV-2感染既往、および臨床転帰を比較した。

ポジティブ思考トレーニングでうつ病リスクは軽減するか

 過去の記憶、未来の想像、今の状態と違う状態を考えるマインドワンダリング。とくにその頻度は、心理的ウェルビーイングに重要な役割を果たすといわれている。また、反復的なネガティブ思考は、うつ病の発症や持続のリスクと関連している。オランダ・フローニンゲン大学のMarlijn E. Besten氏らは、認知科学および実験臨床心理学の手法を組み合わせたマインドワンダリングによる反復的なネガティブ思考に対する影響を調査した。その結果、うつ病に対する脆弱性の根底にあるストレス誘発性のネガティブ思考は、ポジティブ空想により部分的に改善できる可能性があり、うつ病だけでなく不適応思考の特徴を有する疾患の治療に役立つ可能性があることを報告した。Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry誌オンライン版2023年6月16日号の報告。

アルコール摂取、大腸がんリスクが上がる量・頻度は?

 過度なアルコール摂取は大腸がん発症のリスクを増加させる可能性があることが示唆されているが、摂取量や腫瘍部位による差を検討した韓国の試験結果がJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年6月14日号に掲載された。  この研究では、若年で発症する大腸がん(50歳未満で診断)のリスク要因を特定するため、1日のアルコール摂取量と早期発症大腸がんの関連性を調査した。2009年1月1日~2019年12月31日の韓国の国民健康保険サービスのデータを使用し、20~49歳の566万6,576例を対象に分析を行った。

コロナ禍において、5歳児に4ヵ月の発達遅れ/京大ほか

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、学校や保育施設が閉鎖され、多くの乳幼児・子供が影響を受けた。これまで手薄だった未就学児を対象として、コロナ禍の影響を調査した京都大学医学研究科助教・佐藤 豪竜氏らによる研究結果が、JAMA Pediatrics誌オンライン版2023年7月10日号に掲載された。  研究者らは新型コロナ流行前から行っていた研究対象を再調査することで、コロナの影響を調べた。首都圏のある自治体の全認可保育所(小規模含む)に通う1歳または3歳の乳幼児887例に対し、2017~19年に1回目の調査、2年後に2回目の調査を行った。データは2022年12月8日~2023年5月6日に解析された。

食習慣と片頭痛リスクとの関係

 片頭痛発症に対する食事の影響は知られているものの、大規模サンプルにおける片頭痛リスクと食習慣との潜在的な因果関係については、よくわかっていない。中国・山東大学のXinhui Liu氏らは、食習慣と片頭痛発症リスクとの潜在的な因果関係および片頭痛リスク因子のメディエーターの役割を明らかにするため、本研究を行った。その結果、食習慣と片頭痛リスクとの関連が認められ、一部の食物は不眠症やうつ病にも影響している可能性が示唆された。Frontiers in Nutrition誌2023年6月7日号の報告。

心肺持久力が大腸がん・肺がん・前立腺がんの発症と死亡リスクに関連

 約18万人のスウェーデン人男性を平均9.6年間追跡調査したコホート研究の結果、心肺持久力(CRF)が高いと大腸がん罹患リスクが低く、また肺がんおよび前立腺がんによる死亡リスクが低いことが示された。この結果から、これらのがんの罹患リスクおよび死亡リスクの低減に、CRFが潜在的に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。スウェーデン・The Swedish School of Sport and Health SciencesのElin Ekblom-Bak氏らが、JAMA Network Open誌2023年6月29日号に報告。  本研究は、スウェーデンにおいて1982年10月~2019年12月に労働衛生健康プロファイル評価を完了した男性を対象とした前向きコホート研究。CRFは最大下サイクルエルゴメーター試験を用いて推定した最大酸素消費量(mL/分/kg)として評価した。また、がんの罹患率および死亡率のデータは全国登録から取得した。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)はCox比例ハザード回帰を用いて算出した。さらにCRFを4群(非常に低い:25以下、低:25~35、中等度:35~45、高:45超)に層別化し、非常に低い群を基準としてHRと95%CIを算出した。

スタチン、ゾコーバなど、重大な副作用追加で添付文書改訂/厚労省

 厚生労働省は7月20日、HMG-CoA還元酵素阻害薬を含有する医薬品(スタチン)、エンシトレルビルなどの添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。  国内副作用症例において、スタチンと重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が認められた。また、公表文献において、スタチンの再投与で重症筋無力症の症状が再発した症例、スタチンの中止で重症筋無力症の症状が消失した症例など、スタチンと重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が報告されていることを踏まえ、改訂が適切と判断された。

双極性障害女性患者における抗精神病薬使用後の乳がんリスク

 統合失調症女性患者における抗精神病薬使用と乳がんリスクとの関連は、さまざまな疫学データより報告されている。しかし、双極性障害女性患者を対象とした研究は、これまであまり行われていなかった。香港大学のRachel Yui Ki Chu氏らは、双極性障害女性患者における抗精神病薬使用と乳がんリスクとの関連を調査し、統合失調症との比較を行った。その結果、統合失調症女性患者では、第1世代抗精神病薬と乳がんリスクとの関連が認められ、双極性障害女性患者では、第1世代および第2世代抗精神病薬のいずれにおいても、乳がんリスクとの関連が認められた。Psychiatry Research誌8月号の報告。

サプリメント摂取の最大目的は「健康増進」/アイスタット

 サプリメントは私たちの生活に欠かせないアイテムとなっている。ちょっとした栄養補給や健康の増進、体質改善などに摂取されているが、一般的なサプリメントの摂取について、摂取する目的やその理由、効果や安全面などで何か傾向はあるのであろうか。株式会社アイスタットは6月22日に「サプリメント」に関するアンケートを行った。  アンケート調査は、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の会員20~69歳の300人が対象。

TTP診療ガイド2023改訂のポイント~Minds方式の診療ガイドラインを視野に

 「血液凝固異常症等に関する研究班」TTPグループの専門家によるコンセンサスとして2017年に作成され、2020年に部分改訂された、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の診療ガイドライン、『血栓性血小板減少性紫斑病診療ガイド2023』が7月に公開された。2023年版では、Minds方式の診療ガイドラインを視野に、リツキシマブに対してclinical question(CQ)が設定され、エビデンスや推奨が掲載された。 ・リツキシマブの推奨内容の追加・変更とCQの掲載 ・カプラシズマブが後天性TTP治療の第一選択に ・抗血小板薬、FFP輸注に関する記述を追加 ・FrenchスコアとPLASMICスコアに関する記述を追加 ・増悪因子に関する記述を追加

日本人統合失調症患者の再入院予防に対する長時間作用型注射剤のベネフィット

 統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬のベネフィットに関するリアルワールドでのエビデンスは、とくに日本の就労人口において限られている。ヤンセンファーマのMami Kasahara-Kiritani氏らは、雇用されている患者を含む統合失調症患者の再入院予防に対するLAI抗精神病薬の影響を評価した。その結果、日本人統合失調症患者の入院予防に対するLAI抗精神病薬のベネフィットが示唆された。LAI抗精神病薬による治療を受けた患者は、フォローアップ期間中の入院期間および再入院リスクが有意に低下することが明らかとなった。Asian Journal of Psychiatry誌オンライン版2023年6月7日号の報告。  日本医療データセンター(JMDS)の健康保険レセプトデータベースを用いて、レトロスペクティブ観察的集団ベース研究を実施した。対象は、2012年4月~2019年12月にLAI抗精神病薬を処方された就労者または被扶養者の統合失調症患者。LAI処方日をインデックス日とし、ベースライン時の(インデックス日の365日前)1年間のフォローアップ期間中におけるすべての原因による入院、精神医学的入院、統合失調症関連の入院を評価した。

ウイルス感染時の発熱による重症化抑制、腸内細菌叢が関係か/東大ほか

 これまで、ウイルスに感染した場合に外気温や体温が重症度に及ぼす影響は明らかになっていない。そこで、東京大学医科学研究所の一戸 猛志准教授らの研究グループは、さまざまな温度条件で飼育したマウスに対し、ウイルスを感染させた場合の重症度を解析した。その結果、体温の上昇によりウイルスに対する抵抗性が高まり、血中胆汁酸レベルが上昇した。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の血液についても解析した結果、軽症患者は中等症患者と比較して血中胆汁酸レベルが高かった。これらのことから、発熱により腸内細菌叢が活性化し、2次胆汁酸産生を介してウイルス感染症の重症化が予防されることが示唆された。本研究結果は、Nature Communications誌2023年6月30日号に掲載された。