CLEAR!ジャーナル四天王|page:83

冠動脈プラーク評価におけるフッ化ナトリウムおよびFDG‐PETの比較(コメンテーター:近森 大志郎 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(170)より-

 近年の基礎研究の発展により、動脈硬化は慢性的な炎症性疾患であると理解されるようになってきた。そして、分子生物学的にはマクロファージ・血管新生・細胞アポトーシス・サイトカインなどが重要な役割を果たしており、これらの反応過程をイメージングするmolecular imagingの進歩が著しい。なかでも、活性化したマクロファージの代謝を利用してイメージングするfluorodeoxyglucose(FDG) 陽電子放射断層撮影(PET)が高リスク動脈硬化病変の検出に有用である。

患者に「歩け、歩け運動」を勧める具体的なエビデンス(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(169)より-

 糖尿病や耐糖能障害例では運動療法が推奨されているが、本研究は「運動療法が心血管イベントを減少させる」というエビデンスを世界規模のコホート研究で実証した点で価値がある。NAVIGATOR試験は、高リスクの耐糖能障害例において、1)インスリン分泌促進薬であるメチグリニド系血糖降下薬ナテグリニド と、2)ARBバルサンタン が各々心血管イベントを抑制するか否かを検討した2×2の介入試験である、いずれの薬物も心血管合併症を抑制するという結果をもたらさなかった。

胃酸分泌抑制薬によるビタミンB12欠乏症の危険性(コメンテーター:上村 直実 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(168)より-

 本論文では、米国の大手保険会社に加入している330万人のデータベースを用いて、1997年~2011年にビタミンB12欠乏症の診断を受けた2万5,956例をCase群、同疾患と診断されていない者から性・年齢および人種をマッチさせた18万4,199例をControl群として両群におけるプロトンポンプ阻害薬(PPI)とH2ブロッカー(H2RA)の処方状況を比較検討した。

脳動静脈奇形(未破裂)の予防的切除や塞栓術などの介入療法では予後を改善できない(コメンテーター:中川原 譲二 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(167)より-

 これまで未破裂脳動静脈奇形の予防的切除や塞栓術の臨床的ベネフィットは明らかになっていなかった。未破裂脳動静脈奇形を対象とした多施設共同非盲検無作為化試験「ARUBA」では、内科的管理単独(神経学的症状に応じた投薬治療)と内科的管理+介入療法(脳外科手術、塞栓術、定位放射線療法の単独または複合など)の死亡及び症候性脳卒中のリスクが比較された。その結果、内科的管理単独のほうが、内科的管理+介入療法よりも死亡及び脳卒中のリスク抑制に優れていることが明らかにされ、介入療法の限界が示された。

急性心不全治療には新たな展開が必要では?(コメンテーター:平山 篤志 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(166)より-

増加しつつある心不全患者に対して、β遮断薬やRA系抑制薬に加え、更なる予後改善のために急性期からの介入試験が行われるようになった。しかし、トルバプタンやネチリシドを用いた大規模臨床試験では、いずれの薬剤も急性期の症状改善は得られても予後改善効果は認められなかった。そこで、長期予後を最終評価とする大規模試験ではなく、予後と関連する腎機能保護効果をサロゲートエンドポイントした臨床試験が行われるようになった。

冠動脈CT:カルシウム容積スコアと密度スコア(コメンテーター:近森 大志郎 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(164)より-

 冠動脈カルシウム・スコアは従来の冠危険因子に加えて、心血管疾患イベント(心臓死・心筋梗塞・脳梗塞など)の独立したリスク因子として確立している。しかしながら、冠動脈石灰化は中膜に出現し、スタチンによる治療過程にて密度が亢進するとの基礎的報告もあることから、冠動脈プラーク病変の治癒過程を反映しているとの意見もある。このことは、冠動脈石灰化の容積と密度を合わせて評価している、従来のカルシウム・スコア(Agatston)の弱点となる可能性がある。

CORAL研究が動脈硬化性腎動脈狭窄症の診療にもたらすもの(コメンテーター:冨山 博史 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(163)より-

 CORAL研究は、重症動脈硬化性腎動脈狭窄(血管造影で80%以上狭窄あるいは60~80%未満狭窄で圧格差20mmHg以上と定義)で、高血圧(2剤以上の降圧薬服用だが収縮期血圧[SBP]155mmHg以上と定義)あるいは慢性腎臓病(eGFR 60mL/分/1.73m2未満と定義)を有する症例に対する腎動脈形成術・ステント留置術(renal revasculalization stenting: RRVS)の効果を検討した多施設共同前向き研究である。

ピーナッツを食べると長生き(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(162)より-

 アーモンド、ピーナッツ、栗、クルミ、落花生などのナッツ類は、不飽和脂肪が豊富で、かつカリウム、マグネシウム、カルシウムといったミネラル、それにビタミンも多く含まれる栄養価の高い食べ物であることが知られている。事実、内皮機能の改善やインスリン抵抗性を改善するという報告もある。本論文はナースヘルス追跡研究という約7万6,000人の女性を対象とした追跡調査と、ヘルスプロフェッショナル研究という約4万2,000人の男性を対象とした追跡研究という2つの大規模な疫学研究をまとめた結果で、ナッツ消費量多いほど死亡率が少ないという結論を示した。

われわれはOPIMIZE試験の結果を日本の実臨床にオプティマイズできるか?(コメンテーター:中川 義久 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(161)より-

 2013年10月末に米サンフランシスコで開催されたTCTで、OPIMIZE試験の結果が発表された。さらにJAMA誌にも結果が掲載された。このOPIMIZE試験は、ゾタロリムス溶出ステント(ZES)留置術後患者3,119例を対象として、留置後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の至適期間を検討することを目的とした臨床研究である。

急性咽頭炎に対する抗菌薬の適応はどのように判断するか?(コメンテーター:小金丸 博 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(160)より-

 プライマリケアの現場では、いまだに多くの急性咽頭炎の患者に抗菌薬が投与されている。急性咽頭炎の原因の多くはウイルス性であり、抗菌薬が不要なことが多い。しかしながら、A群溶連菌による咽頭炎に対しては、主に扁桃周囲膿瘍などの化膿性合併症の予防と急性リウマチ熱の予防のために、抗菌薬の投与が必要となる。抗菌薬投与の適応を決定するために、臨床症状を用いたスコア(Centor criteria)や迅速抗原検査が使用されているが、これらの有用性を支持する強いエビデンスはほとんど存在しなかった。

遺伝子型を用いた個別化医療は可能か不可能か?―ワルファリンの場合―(コメンテーター:後藤 信哉 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(159)より-

 ワルファリンの薬効には個人差がある。個人差を規定する因子は遺伝子型と生活習慣の差異であろう。遺伝子型が血液型と同じように医療基盤として確立された場合に、ワルファリン治療の質は向上できるだろうか?同じ臨床的疑問にチャレンジした2本の論文がNEJM誌に掲載された。2つの論文は全く別の結論を導きだしている。

論文公表率はそんなに低くなかったが、やはり100%を目指してもらいたい。(コメンテーター:折笠 秀樹 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(158)より-

 ClinicalTrials.govへ登録済みである585件の臨床試験の中で、29%が論文として公表されていなかった。また、試験完了から出版までの期間はおよそ30ヵ月であった。500症例以上の大規模試験に限った調査ではあるが、思ったほど悪くないというのが率直な感想である。

糖尿病患者の腎保護作用を期待できる降圧薬は?(コメンテーター:浦 信行 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(157)より-

 まず、在来の臨床研究では尿蛋白低減効果をエンドポイントとしたものが多いが、このメタ解析のエンドポイントをハードエンドポイントである血清クレアチニン濃度の倍化、末期腎不全、死亡としたことに意義がある。われわれの最終目標は腎障害進展抑制、生命予後改善だからである。

消化管手術の創合併症発症率は真皮縫合とステープラーで同等である(コメンテーター:中澤 達 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(156)より-

 ステープラーによる皮膚縫合は消化器外科での開腹手術後に広く行われている反面、もう一つの手段である真皮縫合の潜在的な利点については評価されていない。本研究はオープンラベル多施設ランダム化比較試験として、24施設が参加して行われた。適応基準は、20歳以上、臓器機能異常なし、上部消化管または下部消化管の開腹外科手術を施行された患者。手術前に真皮縫合とステープラー群に1:1で割り付けられた。

薬剤溶出性ステントの優劣は1年の短期成績によって決めてよいか?(コメンテーター:上田 恭敬 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(155)より-

 DUTCH PEERSは、臨床で使用される頻度が高い2つの第三世代ステントであるコバルトクロム製のゾタロリムス溶出ステント(米国メドトロニック社製「リゾリュートインテグリティ」)、あるいはプラチナクロム製のエベロリムス溶出ステント(米国ボストン・サイエンティフィック社製「プロマス・エレメント」)の留置を受けた全患者を対象に、安全性と有効性を評価することを目的とした無作為化単盲検多施設共同非劣性試験である。

ENGAGE-TIMI48:負けない賭けは成功か?(コメンテーター:後藤 信哉 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(154)より-

 新規経口抗凝固薬が相次いで開発された。非弁膜症性心房細動に対して、脳卒中予防に使うべきだという。過去のエビデンスがPT-INR 2-3を標的としたワルファリンの優れた効果を示しているので、新薬は「PT-INR 2-3を標的としたワルファリン治療」と比較して論じられる。ENGAGE-TIMI48では、日本の第一三共が開発したエドキサバンと「PT-INR 2-3を標的としたワルファリン治療」の有効性、安全性が検証された。しかし、莫大な開発費を投じて、万一認可承認を得られなければ会社は存続できない。ランダム化比較試験は企業にとって死活をかけた「賭け」である。

自動停止機能付きインスリンポンプ治療は無自覚性低血糖がある1型糖尿病患者の重症低血糖を減らす(コメンテーター:荒木 厚 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(153)より-

 DCCT研究により、1型糖尿病患者の厳格な血糖コントロールは糖尿病細小血管症を減らすが、頻回インスリン注射やインスリンポンプで治療した強化治療群では重症低血糖が多くなることが指摘された。この重症低血糖の原因の一つとして、無自覚性低血糖があり、1型糖尿病患者の約3分の1に見られる。無自覚性低血糖は、血糖値が60~70mg/dL以下になっても低血糖症状が消失するため、その対処がうまくいかず重症低血糖につながりやすい。無自覚性低血糖に対する対策としては、血糖認識トレーニングやリアルタイム持続ブドウ糖モニター(CGM)による警告などがあるが、重症低血糖を防ぐには未だ十分ではない。

乳酸桿菌やビフィズス菌による抗菌薬関連下痢症の予防効果―長い論争に結論は見えるのか―(コメンテーター:吉田 敦 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(152)より-

 抗菌薬投与後に生じる抗菌薬関連下痢症(Antibiotic-associated diarrhea:AAD)、およびその多くを占めるクロストリジウム・ディフィシル感染症(Clostridium difficile infection:CDI)の予防や治療に、微生物製剤(整腸薬、プロバイオティクス)が有効であるかについては、長く研究が行われてきた。微生物製剤も乳酸桿菌Lactobacillus、ビフィズス菌Bifidobacterium、腸球菌Enterococcus、非病原性酵母であるサッカロミセスSaccharomycesなど多菌種にわたっており、成績はさまざまで、有効性については意見が分かれていた。

ACE阻害薬とARBの併用は危険!(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(151)より-

 NEPHRON-Dは、ARB(ニューロタン)を1ヵ月以上服用している糖尿病腎症の症例を、ACE阻害薬(リシノプリル)併用群とプラセボ併用群にランダマイズして追跡したトライアルであるが、併用療法群に高度な高カリウム血症と急性腎障害という生命を脅かす重篤な有害事象が多くみられたため、試験開始から2.2年で安全性の観点から中止された。この結果は、これまでのレニン・アンジオテンシン系抑制薬(ACE阻害薬)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、直接的レニン阻害薬(DRI)の2剤併用は有害事象を増加させるという、これまでの臨床試験ONTARGET、ALTITUDEの結果を確認する結果となった。