統合失調症患者の認知機能や副作用に影響を及ぼす?「遊離トリヨードサイロニン」

提供元:ケアネット

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公開日:2012/10/16

 

慢性期統合失調症入院患者は、持続的な精神症状と抗精神病薬による副作用に悩まされている。これら精神症状や副作用にはプロラクチン、甲状腺ホルモン、脳由来神経栄養因子(BDNF)など、いくつかのバイオマーカーが関連しているといわれているが、明らかにはなっていない。大分大学 市岡氏らは慢性期統合失調症患者における、精神症状や錐体外路系副作用とホルモン、BDNFとの関係を調査した。Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry誌2012年10月号の報告。

 対象は、慢性期統合失調症入院患者93例。対象患者の精神疾患や錐体外路系副作用とプロラクチン、甲状腺ホルモン(遊離トリヨードサイロニン[T3]、遊離サイロキシン[T4]、甲状腺刺激ホルモン)、コルチゾール、BDNFとの関係を調べた。精神症状はPANSS、認知機能はMMSE、錐体外路症状はDIEPSSにより、それぞれ評価した。分析には、重回帰分析を用いた。

主な結果は以下のとおり。

・抗精神病薬の用量は、PANSS陽性サブスケールスコアの有意な差異を予測する唯一の変数であった。
・BDNFおよびT3はMMSEスコアの有意な差異を予測した。
・プロラクチンおよびT3はDIEPSSスコアの有意な差異を予測した。

本研究では、慢性期統合失調症患者の認知機能や錐体外路系副作用にはBDNF、T3、プロラクチンが関与している可能性が示唆され、中でも著者らはT3が重要な予測因子となることを強調した。

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(ケアネット 鷹野 敦夫)