慢性閉塞性肺疾患(COPD)の管理では、重症増悪や入院のリスクが最も高い患者を特定して医療資源を集中的に投入するとともに、リスクの層別化に基づく管理の必要性が指摘されている。また、国際的なガイドラインは、プライマリケア医が使用できる正確かつ実用的な予後スコアの必要性を強く主張している。英国・バーミンガム大学のRachel E. Jordan氏らは、COPD患者における、2年以内の呼吸器関連の入院のリスクを予測するための予後スコア(BLISSスコア)を開発し、その有効性を検証した。研究の成果は、BMJ誌2026年3月5日号に掲載された。
外的妥当性を2つのコホートで検証
予測モデル(BLISSスコア)の開発と内的妥当性の検証には、プライマリケアにおける新規および既存のCOPD患者から成るBirmingham Lung Improvement Studies(BLISS)コホート(最終的なモデル構築の対象は1,894例、このうち253例[13.4%]が入院)のデータを用いた。
また、外的妥当性の検証には次の2つのコホートのデータを使用した。(1)Evaluation of COPD Longitudinally to Identify Predictive Surrogate Endpoints(ECLIPSE)の国際的コホート(中等症~最重症COPD患者1,749例、このうち419例[24.0%]が入院)、(2)Hospital Episode Statisticsと関連付けた英国のプライマリケアのClinical Practice Research Datalink(CPRD)Aurumデータベースに登録されたコホート(COPD患者2万7,340例、このうち3,922例[14.3%]が入院)。
主要アウトカムは、コホート登録から2年以内の急性の呼吸器関連疾患による1回以上の入院、および入院を要するCOPDの重度増悪とした。23の予測因子候補(人口統計学的因子4項目、COPD特異的リスク因子7項目、その他のリスク因子12項目)から適切な因子を選出して予測モデルを開発した。
6つの因子から成る予測スコアを確立
2年以内の呼吸器関連入院のリスクを推定するためのBLISSスコアを構成する項目として、23の候補の中から6つの予測因子(年齢、COPDアセスメントテスト[CAT]スコア、過去12ヵ月間の呼吸器関連入院の有無、BMI、糖尿病、対標準1秒量[%FEV
1])を採用した。
BLISSスコアは、内的妥当性(過剰適合[overfitting]による増分[optimism]を補正済みのC統計量0.73、95%信頼区間[CI]:0.70~0.77)および外的妥当性(ECLIPSE[C=0.73、95%CI:0.71~0.76]、CPRD[C=0.71、95%CI:0.70~0.72])において同程度の識別性能(discrimination performance)を示した。
また、このスコアの較正性能(calibration performance)は、BLISS(較正勾配[calibration slope]=0.87、95%CI:0.73~1.02)、CPRD(0.89、95%CI:0.85~0.93)、ECLIPSE(0.92、95%CI:0.79~1.05)の各コホートのいずれにおいても良好であった。
他のスコアに比べ性能が優れる
CPRDコホートにおける層別解析では、異なる集団のサブグループにおいても、BLISSスコアの頑健性が示された。さらに、net benefit分析(臨床的効用性)では、ECLIPSEコホートにおけるBLISSスコアは、Bertensスコア(重度増悪の予測)(C=0.68[95%CI:0.65~0.71]、較正勾配:0.68[95%CI:0.56~0.81])に対する優越性が示された。
著者は、「BLISSスコアは、異なる医療環境や地理的地域に属し、COPDの重症度も異なる患者を含むコホートにおいて、2年以内の呼吸器関連の入院リスクを個別に推定するうえで良好な性能を示した」「採用した6つの変数のうち、4つはプライマリケアの診療記録から容易に入手可能であり、残りの2つは部分的にしか入手できないものの収集は簡単である」「これは、入院リスクを予測するために最も精密な手法で開発された予後スコアであり、プライマリケアの現場におけるCOPD患者に広く適用可能である」としている。
(医学ライター 菅野 守)