パーキンソン病の患者数は、2050年には2021年の2.1倍となる2,520万人に達し、この増加傾向は世界疾病負担研究(Global Burden of Disease:GBD)の地域分類で規定する東アジア地域の、社会人口統計学的指数(SDI)が中程度の国の男性でより顕著になると予測されることを、中国・首都医科大学のDongning Su氏らがGBD 2021のデータを解析し報告した。著者は、「パーキンソン病は、2050年までに患者とその家族、介護者、地域、そして社会にとって大きな公衆衛生上の課題となると予測され、今回の結果はヘルスリサーチの推進、政策決定への情報提供およびリソース配分の一助となるだろう」とまとめている。BMJ誌2025年3月5日号掲載の報告。
1990~2021年の195の国・地域のデータを解析
研究グループは、GBD 2021から1990~2021年の195の国と地域におけるパーキンソン病の年齢、性別、暦年および地域別の有病率データを用い、2022~50年のパーキンソン病の年齢・性別有病率を推計した。予測有病率の時間的傾向を調べるため平均年間変化率を算出し、2021~50年の間の人口増、高齢化、有病率の変化がパーキンソン病患者数の変化に与える相対的な影響を分解分析で評価した。また、曝露レベルと有病率比を用い、パーキンソン病の修正可能なリスク因子に関する人口寄与割合(PAF)と潜在的影響割合(PIF)を推定した。
GBD 2021では、パーキンソン病は安静時振戦、無動、筋強剛および姿勢反射障害の4つの主要症状のうち2つ以上を有することと定義された。
2021年から112%増加、寄与要因は高齢化が89%
2050年には、世界のパーキンソン病患者数は2,520万人(95%不確実性区間[UI]:2,170万~3,010万)となり、2021年から112%(95%UI:71~152)増加すると予測された。患者数増加に最も寄与する要因は高齢化(89%)であり、次いで人口増(20%)、有病率の変化(3%)と予測された。
2050年におけるパーキンソン病の有病率は、2021年から76%(95%UI:56~125)増加し10万人当たり267例(95%UI:230~320)、年齢標準化有病率は2021年から55%(50~60)増加し10万人当たり216例(168~281)になると予測された。
最も大きな増加を示すと予測されたのはSDI分類で中程度(五分位の中央)の国で、全年齢有病率が144%(95%UI:87~183)増加、年齢標準化有病率が91%(82~101)増加すると予測された。
GBDの地域分類では、2050年のパーキンソン病患者数は東アジアが1,090万人(95%UI:900万~1,330万)で最も多く、2021年からの増加率が最も高いのはサハラ以南のアフリカ西部で292%(95%UI:266~362)増加すると予測された。
年齢層では、80歳以上で最も増加する(196%、95%UI:143~235)と予測された。また、パーキンソン病の年齢標準化有病率の男女比は、世界全体で2021年の1.46から2050年には1.64に増すと予測された。
(ケアネット)