AIPL1関連重度網膜ジストロフィー、アデノ随伴ウイルスベクターで視力改善/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2025/03/06

 

 AIPL1関連重度網膜ジストロフィーの幼児4例において、ヒトロドプシンキナーゼプロモーター領域によって制御されるヒトAIPL1コード配列を組み込んだ組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV8.hRKp.AIPL1)の網膜下投与は、重篤な副作用を伴うことなく視力および機能的視覚を改善し、網膜変性の進行を、ある程度抑制することが認められた。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMichel Michaelides氏らが、AIPL1関連重度網膜ジストロフィーの遺伝子治療を評価するヒト初回投与試験の結果を報告した。AIPL1欠損による網膜ジストロフィーは、出生時から重度かつ急速に進行する視力障害を引き起こすが、4歳未満の小児では中心窩の視細胞が保存されており遺伝子治療が有効である可能性が示唆されていた。Lancet誌2025年2月22日号掲載の報告。

1~3歳の患児4例に、rAAV8.hRKp.AIPL1を網膜下投与

 研究グループは、AIPL1遺伝子の両アレルに病的遺伝子変異を有する1.0~2.8歳の重度網膜ジストロフィーの幼児を対象に、非ランダム化単群臨床試験を英国で実施した。rAAV8.hRKp.AIPL1は、英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)のSpecials Licenceの下で製造され、倫理委員会の審査承認を得たうえで患児に提供された。

 各患児の片眼に、rAAV8.hRKp.AIPL1を網膜下投与するとともに、炎症による有害事象を予防するため経口プレドニゾロンを投与した。

 アウトカム評価は、視力(新たに開発されたタッチスクリーンテストによる評価)、機能的視覚(患児の視覚的行動や視覚誘導課題の遂行能力を観察・記録することにより評価)、視覚誘発電位(VEP)(白黒フリッカー刺激に対する大脳皮質の電気生理学的反応の記録により評価)、網膜構造(携帯型光干渉断層撮影[OCT]および広角眼底撮影により評価)とした。

 また、炎症や網膜剥離などの有害事象を確認するため、細隙灯顕微鏡検査と散瞳眼底検査を実施するとともに、視力検査、眼底検査、携帯型OCTおよび広角眼底撮影で安全性も評価した。

治療眼で視力が改善

 2019年7月12日~2020年3月16日に、4例が本治療の対象として選ばれた。治療前の両眼の視力は光覚弁に限られていた。

 治療後平均3.5年(範囲:3.0~4.1)において、治療眼の視力は、治療前の2.7 logMAR相当から治療後は平均0.9 logMAR(範囲:0.8~1.0)まで改善した。一方、未治療眼の視力は最終追跡調査時には測定不能となった。

 視力検査が可能であった2例の患児では、視力の客観的評価により視機能の改善が確認され、VEP測定により治療眼に特異的な視覚野の活動亢進が示された。また、3例の患児では、治療眼の網膜外層の層構造が未治療眼よりも良好に保持されており、4例全例で網膜厚の保持が未治療眼よりも治療眼のほうが良好と思われた。

 安全性については、1例で治療眼に嚢胞様黄斑浮腫が発現したが、その他の安全性に関する懸念は認められなかった。

(ケアネット)