早産児の鼠径ヘルニア手術の重篤AE、NICU退室前vs.退室後/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2024/04/05

 

 早産児の鼠径ヘルニア修復術を、新生児集中治療室(NICU)退室後に行うことで、重篤な有害事象(AE)を発現した乳児が減少したことが示された。米国・テキサス大学健康科学センターのMartin L. Blakely氏らHIP Trial Investigatorsが、同国の39施設で実施した多施設共同無作為化臨床試験の結果を報告した。早産児は鼠径ヘルニアの罹患率が高く、修復術は一般的に行われるが、手術をNICU退室前にすべきか退室後にすべきかについては議論の余地があった。著者は、「今回の結果は、NICUからの初回退室まで鼠径ヘルニア修復術を遅らせることを支持するものである」とまとめている。JAMA誌2024年3月26日号掲載の報告。

NICU退室前vs.退室後で、10ヵ月間の重篤AEの発現リスクを比較

 研究グループは2013年9月~2021年4月に、初回入院中に鼠径ヘルニアと診断された早産児を、NICU退室前に鼠径ヘルニア修復術を施行する早期修復群と、NICU退室後に乳児が最終月経後年齢(postmenstrual age)55週を超えた時点で修復術を行う後期修復群に無作為に割り付けた。最終追跡調査日は2023年1月3日である。

 主要アウトカムは、10ヵ月の観察期間中における事前に規定された重篤AEの発現(盲検下判定委員会による評価)、副次アウトカムは、同期間中の総入院日数などであった。

重篤AE発現率、退室前(早期修復群)28%、退室後(後期修復群)18%

 無作為化された早産児338例(早期修復群172例、後期修復群166例)のうち、320例が外科的修復術を受けた。患児背景は、男児が86%で、アジア系2%、黒人30%、ヒスパニック系16%、白人59%、人種不明9%、民族不明4%であった。また、出生時の平均在胎週数は26.6週(SD 2.8)、登録時の平均出生後週数は12週(5)であった。

 338例中完全なデータが得られたのは308例(91%)(早期修復群159例、後期修復群149例)で、このうち1件以上の重篤AEが発現したのは早期修復群44例(28%)、後期修復群27例(18%)であった。群間リスク差は-7.9%(95%信頼区間:-16.9~0)であり、ベイズ事後確率97%で後期修復が有益であることが示された。

 10ヵ月の観察期間中の総入院日数中央値は、早期修復群19.0日(四分位範囲[IQR]:9.8~35.0)だったのに対し、後期修復群では16.0日(7.0~38.0)であった(後期修復術の有益性のベイズ事後確率82%)。

 事前に規定されたサブグループ解析では、後期修復により1件以上の重篤AEが発現する乳児の数が減少する確率は、在胎週数28週未満の乳児および気管支肺異形成症の乳児で高かった(各サブグループの有益性の確率は99%)。

(医学ライター 吉尾 幸恵)