早期妊娠糖尿病への即時治療、児と母体の予後は?/NEJM

妊娠20週以前の妊娠糖尿病女性において、即時治療は治療を延期または行わない場合と比較して、新生児の有害なアウトカムの複合の発生をある程度は抑制するものの、妊娠関連高血圧や新生児の除脂肪体重には差がないことが、オーストラリア・ウエスタンシドニー大学のDavid Simmons氏らが実施した「TOBOGM試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年5月5日号で報告された。
4ヵ国の無作為化対照比較試験
TOBOGM試験は、オーストラリア、オーストリア、スウェーデン、インドの17病院が参加した無作為化対照比較試験であり、2017年5月~2022年3月の期間に患者の登録が行われた(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]などの助成を受けた)。年齢18歳以上、高血糖のリスク因子を有し、2013年のWHO基準で妊娠糖尿病の診断を受けた妊娠4週~19週6日の女性が、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)による反復検査の妊娠24~28週時の結果に基づき、妊娠糖尿病に対する即時治療を行う群、または治療を延期あるいは行わない群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。
主要アウトカムは次の3つであった。(1)新生児の有害なアウトカム(妊娠37週未満での出生、分娩外傷、出生体重4,500g以上、呼吸窮迫、光線療法、死産/新生児死亡、肩甲難産)の複合、(2)妊娠関連高血圧(preeclampsia[妊娠高血圧腎症]、eclampsia[子癇]、妊娠高血圧)、(3)新生児の除脂肪体重。
新生児の呼吸窮迫に大きな差
793例が解析に含まれ、即時治療群に400例(平均[±SD]32.1±4.8歳)、対照群に393例(32.6±4.9歳)が割り付けられた。初回OGTTは、平均で妊娠15.6±2.5週に実施された。新生児の有害なアウトカムの複合は、即時治療群では378例中94例(24.9%)で認められ、対照群の370例中113例(30.5%)に比べて発生率が低かった(補正後群間リスク差:-5.6ポイント、95%信頼区間[CI]:-10.1~-1.2)。
妊娠関連高血圧は、即時治療群では378例中40例(10.6%)、対照群では372例中37例(9.9%)で発生した(補正後群間リスク差:0.7ポイント、95%CI:-1.6~2.9)。また、新生児の平均除脂肪体重(副次アウトカムに変更)は、即時治療群が2.86±0.34kg、対照群は2.91±0.33kgだった(補正後群間平均差:-0.04kg、95%CI:-0.09~0.02)。
新生児の呼吸窮迫は、即時治療群では376例中37例(9.8%)で発生したのに対し、対照群では365例中62例(17.0%)で発生した(補正後群間リスク差:-7ポイント、95%CI:-12~-3)。スクリーニングや治療に関連した重篤な有害事象に関しては、両群間に差はみられなかった。
著者は、「WHO基準で早期の妊娠糖尿病と診断された女性の3分の1は反復OGTTで妊娠24~28週時に妊娠糖尿病ではなかったが、この知見は先行の観察研究と一致する」としている。
(医学ライター 菅野 守)
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妊娠糖尿病への早期治療介入は時期尚早か(解説:住谷哲氏)
コメンテーター : 住谷 哲( すみたに さとる ) 氏
社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会泉尾病院 糖尿病・内分泌内科 主任部長
J-CLEAR評議員