再発難治CLL/SLL、zanubrutinib vs.イブルチニブ/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2023/01/05

 

 再発または難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療において、第2世代のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるzanubrutinibは第1世代BTK阻害薬イブルチニブと比較して、無増悪生存期間が有意に優れ、心臓の有害事象が少ないことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJennifer R. Brown氏らが実施した「ALPINE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年12月13日号で報告された。

15ヵ国の無作為化第III相試験

 ALPINE試験は、北米、欧州、アジア太平洋地域の15ヵ国113施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2018年11月~2020年12月の期間に患者の登録が行われた(BeiGeneの助成を受けた)。

 対象は、年齢18歳以上、International Workshop on CLLの基準を満たすCLLまたはSLLと確定診断され、再発または1ライン以上の治療を受けた難治性の病変を有する患者であった。

 被験者は、zanubrutinib(160mg、1日2回)またはイブルチニブ(420mg、1日1回)を投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。投与は、病勢進行または許容できない毒性の発現まで継続された。

 主要評価項目である奏効は、事前に規定された中間解析で、zanubrutinib群がイブルチニブ群よりも有意に優れることが、すでに報告されている。今回は、主な副次評価項目である無増悪生存の評価が行われた。

担当医と独立判定委員会で同程度の無増悪生存

 652例が登録され、zanubrutinib群に327例、イブルチニブ群に325例が割り付けられた。年齢中央値はそれぞれ67歳(範囲35~90)および68歳(35~89)で、女性が34.9%および28.6%であった。前治療ライン数中央値は、それぞれ1(範囲:1~6)および1(1~12)だった。

 追跡期間中央値29.6ヵ月の時点で、担当医評価による病勢進行または死亡は、zanubrutinib群が26.6%(87/327例)、イブルチニブ群は36.3%(118/325例)で発生し、無増悪生存はzanubrutinib群で有意に良好であった(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.49~0.86、p=0.002)。独立判定委員会の評価による無増悪生存も、同様の結果であった。

 また、担当医評価による24ヵ月時の無増悪生存の割合は、zanubrutinib群が78.4%、イブルチニブ群は65.9%であった。無増悪生存期間中央値は、それぞれ未到達および34.2ヵ月(95%CI:33.3~評価不能)だった。

 さらに、17p欠失またはTP53変異を伴う、あるいはこれら双方を有する患者では、zanubrutinib群はイブルチニブ群よりも無増悪生存が優れた(病勢進行または死亡の割合32.0%[24/75例]vs.48.0%[36/75例]、HR:0.53、95%CI:0.31~0.88)。これ以外の主なサブグループでも、無増悪生存は一貫してzanubrutinib群で良好であった。

 奏効割合は、zanubrutinib群がイブルチニブ群よりも高かった(83.5% vs.74.2%)。データカットオフ時の死亡の割合はzanubrutinib群で低かったが(14.7%[48/327例]vs. 18.5%[60/325例]、死亡のHR:0.76、95%CI:0.51~1.11)、両群とも全生存期間中央値には未到達だった。

 安全性プロファイルはzanubrutinib群がイブルチニブ群に比べ良好であった。重篤な有害事象の発現率はそれぞれ42.0%および50.0%で、このうち用量減量の原因となった有害事象は12.3%および17.0%、投与中止の原因となったのは15.4%および22.2%、死亡の原因となったのは10.2%および11.1%だった。

 頻度の高いGrade3以上の有害事象は、好中球数減少(zanubrutinib群16.0% vs.イブルチニブ群13.9%)と高血圧(14.8% vs.11.1%)であった。心疾患は、zanubrutinib群で21.3%に発現したのに対し、イブルチニブ群では29.6%に認められ、このうち投与中止の原因となったのはそれぞれ1例(0.3%)および14例(4.3%)だった。新たな安全性シグナルは観察されなかった。

 著者は、「生存に関する差を明らかにするには、さらに長期の追跡を要する」としている。

(医学ライター 菅野 守)