SGLT2阻害薬、DM有無問わずCKD進行と心血管死を抑制/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2022/11/28

 

 SGLT2阻害薬は、心血管リスクの高い2型糖尿病患者のみならず慢性腎臓病または心不全を有する患者においても、糖尿病の状態、原発性腎疾患または腎機能にかかわらず、腎臓病進行および急性腎障害のリスクを低下させることが、英国・オックスフォード大学のNatalie Staplin氏らSGLT2 inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists' Consortium(SMART-C)による解析の結果、報告された。Lancet誌2022年11月19日号掲載の報告。

大規模二重盲検プラセボ対照試験15試験の約9万例についてメタ解析

 研究グループは、MEDLINEおよびEmbaseを用い、2022年9月5日までに発表されたSGLT2阻害薬の臨床試験(SGLT1/2阻害薬の併用を含む、年齢18歳以上の成人を対象とした二重盲検プラセボ対照試験[クロスオーバー試験は除く]、各群500例以上、試験期間6ヵ月以上)を検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。

 2人の研究者が独立して、各試験の要約データを査読付き論文から抽出するか、または結果が公表されていない試験については治験責任医師よりデータの提供を受け、コクランバイアスリスクツール(バージョン2)を用いてバイアスリスクを評価した。また、逆分散重み付けによるメタ解析を行い、治療効果を推定した。

 主な有効性の評価項目は、腎臓病進行(無作為化時からの推定糸球体濾過量[eGFR]50%以上の持続的低下、持続的なeGFR低値、末期腎不全、または腎不全による死亡)、急性腎障害、ならびに心血管死または心不全による入院の複合であった。その他の評価項目は、心血管死および非心血管死、主な安全性評価項目はケトアシドーシスおよび下肢切断とした。

 文献検索の結果、15試験が特定され、このうち追跡期間が6ヵ月未満の2試験(inTandem3、DARE-19)を除外した13試験(DECLARE-TIMI 58、CANVAS Program、VERTIS CV、EMPA-REG OUTCOME、DAPA-HF、EMPEROR- REDUCED、EMPEROR- PRESERVED、DELIVER、SOLOIST-WHF、CREDENCE、SCORED、DAPA-CKD、EMPA-KIDNEY)が解析対象となった。無作為化を受けた患者は計9万413例で、このうち糖尿病の状態が不明であった4例を除く9万409例(糖尿病患者7万4,804例[82.7%]、非糖尿病患者1万5,605例[17.3%]、各試験のベースラインの平均eGFRの範囲37~85mL/min/1.73m2)が解析に組み込まれた。

対プラセボで腎臓病進行リスクを37%低下、心血管死リスクを14%低下

 SGLT2阻害薬はプラセボと比較して、腎臓病進行リスクを37%低下させた(相対リスク[RR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.58~0.69)。その低下の程度は、糖尿病患者(RR:0.62)と非糖尿病患者(0.69)でほぼ同じであった。慢性腎臓病を有する患者を対象とした4件の試験(CREDENCE、SCORED、DAPA-CKD、EMPA-KIDNEY)では、原発性腎疾患の診断にかかわらず腎臓病進行リスクのRRは類似していた。

 また、SGLT2阻害薬はプラセボと比較して、急性腎障害のリスクを23%(RR:0.77、95%CI:0.70~0.84)、心血管死または心不全による入院のリスクを23%(0.77、0.74~0.81)低下させ、いずれも糖尿病の有無にかかわらず同様の効果がみられた。

 SGLT2阻害薬は、心血管死リスクも低下させたが(RR:0.86、95%CI:0.81~0.92)、非心血管死リスクの有意な低下は認められなかった(0.94、0.88~1.02)。これら死亡の評価項目に関するRRは、糖尿病患者と非糖尿病患者で類似していた。

 すべての評価項目において、各試験のベースラインの平均eGFRに関係なく、結果はほぼ同様であった。絶対効果の推定に基づくと、SGLT2阻害薬の絶対利益は、ケトアシドーシスや切断の重篤な危険性を上回った。

(ケアネット)

専門家はこう見る

コメンテーター : 栗山 哲( くりやま さとる ) 氏

東京慈恵会医科大学客員教授