COVID-19関連の超過死亡、報告されている死亡の3倍/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2022/03/30

 

 2020~21年の2年間における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行による全体的な死亡への影響は、COVID-19のみに起因する死亡よりもはるかに大きく、全年齢層における世界的な超過死亡の割合は10万人当たり平均120人であり、300人を超えた国は21ヵ国に及ぶことが、米国・ワシントン大学のHaidong Wang氏らCOVID-19 Excess Mortality Collaboratorsの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年3月10日号に掲載された。

超過死亡を系統的解析で評価

 研究グループは、2020年1月1日~2021年12月31日の期間の、191の国と領土、および252の地域におけるCOVID-19の世界的流行による超過死亡の推定を目的に、COVID-19関連死亡の報告書を系統的に解析した(ビル&メリンダ・ゲイツ財団などの助成を受けた)。

 この調査では、上記期間とその最大11年前までの期間における週ごとまたは月ごとのあらゆる原因による死亡(総死亡)の報告書が、世界74の国と領土、および266の地域(低・中所得国の31の地域を含む)から収集された。また、インドの12州から超過死亡データが得られた。

 経時的な超過死亡者数は、観測死亡者数(死亡登録の遅れや、熱波などの異常気象の影響を受けた期間のデータは除外)から予測死亡者数を差し引いた値とされた。予測死亡者数の推定には6つのモデルが用いられ、最終的な推定値はこれらを融合したモデルに基づいて算出された。

 世界的な死亡記録は不完全であるため、総死亡のデータがない地域や期間の超過死亡率を予測する統計モデルが構築された。国、地域、世界レベルでの超過死亡者数の平均値と95%不確実性区間(UI)が算出され、最終的なモデルに基づいてサンプル以外での予測妥当性の検証が行われた。

COVID-19関連の超過死亡率、報告されている死亡率の3.07倍

 2021年12月31日までの2年間に、世界で報告されたCOVID-19による死亡者数は594万人であったが、COVID-19の世界的流行による超過死亡者数は1,820万人(95%UI:1,710万~1,960万)と推定された。

 この期間の世界の全年齢層におけるCOVID-19による死亡率は人口10万人当たり39.2人で、COVID-19の世界的流行による超過死亡率は人口10万人当たり120.3人(95%UI:113.1~129.3)であり、超過死亡率の実際の死亡率に対する比は3.07(2.88~3.30)であった。超過死亡の負担の程度には各国で大きなばらつきが認められ、COVID-19の世界的流行による超過死亡率が人口10万人当たり300人を超えたのは21ヵ国であった。

 地域別でCOVID-19による超過死亡者数が多かったのは、南アジア(527万人[95%UI:471万~570万])、北アフリカ/中東(173万人[157万~199万])、東ヨーロッパ(139万人[137万~141万])の順であった。

 国別でCOVID-19による超過死亡者数が多かったのは、インド(407万人[95%UI:371万~436万])、米国(113万人[108万~118万])、ロシア(107万人[106万~108万])、メキシコ(79万8,000人[74万1,000~86万7,000])、ブラジル(79万2,000人[73万~84万7,000])、インドネシア(73万6,000人[59万4,000~95万5,000])、パキスタン(66万4,000人[49万8,000~84万7,000])の順であった。

 これらの国のうち、超過死亡率が最も高かったのは、ロシア(人口10万人当たり374.6人[95%UI:369.7~378.4])とメキシコ(325.1人[301.6~353.3])であり、ブラジル(186.9人[172.2~199.8])と米国(179.3人[170.7~187.5])は同程度であった。

 日本は、COVID-19による死亡者数が1万8,400人、COVID-19の世界的流行による超過死亡者数は11万1,000人(95%UI:10万3,000~11万6,000)であった。また、COVID-19による死亡率は10万人当たり7.3人、COVID-19の世界的流行による超過死亡率は10万人当たり44.1人(95%UI:41.0~46.4)であり、超過死亡率の実際の死亡率に対する比は6.02(5.58~6.33)だった。

 著者は、「それぞれの国・地域から実際に報告されたCOVID-19による死亡と、COVID-19関連の超過死亡との間に認められた大きな差は、COVID-19対策やモニタリング、評価の取り組みでは、超過死亡推定値の使用が重要であることを浮き彫りにするものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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