甲状腺がん、術後放射性ヨウ素内用療法vs.経過観察/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2022/03/18

 

 甲状腺全摘術後の低リスク甲状腺がん患者において、放射性ヨウ素内用療法を行わないフォローアップ戦略は、3年時の機能的、構造的および生物学的異常の発生に関して、放射性ヨウ素内用療法によるアブレーション戦略に対し非劣性であることが、フランス・パリサクレー大学のSophie Leboulleux氏らが実施した前向き無作為化第III相試験「Essai Stimulation Ablation 2 trial:ESTIMABL2試験」の結果、示された。甲状腺切除術を受けた低リスク分化型甲状腺がん患者において、術後の放射性ヨウ素(ヨウ素131)の投与は有益性が実証されておらず議論の的であった。NEJM誌2022年3月10日号掲載の報告。

術後低リスク分化型甲状腺がん患者776例を対象に

 研究グループは2013年5月~2017年3月にフランスの35施設において、甲状腺全摘術を受けた低リスク分化型甲状腺がん患者776例を、術後放射性ヨウ素内用療法群(遺伝子組み換えヒト型甲状腺刺激ホルモン[ヒトチロトロピン アルファとして0.9mg]を24時間間隔で2回筋肉内投与し、最終投与24時間後に1.1GBq[30mCi]の放射性ヨウ素を投与)、または経過観察群(放射性ヨウ素内用療法を行わない)に、施設およびリンパ節転移の有無(N0またはNx)で層別化して無作為に割り付けた。

 主要評価項目は、3年後の機能的、構造的および生物学的異常の複合エンドポイントである。複合エンドポイントの発生がないことに関する経過観察群の放射性ヨウ素内用療法群に対する非劣性の検証が主要目的であった。非劣性マージンは、複合エンドポイントのイベント(その後の治療を要する放射性ヨウ素取り込みを認める病巣の全身スキャンによる検出[放射性ヨウ素内用療法群のみ]、頸部超音波検査での異常所見、サイログロブリンまたはサイログロブリン抗体の上昇)が発生しなかった患者の割合の群間差が5ポイント未満とした。

 副次評価項目は、イベントの予後因子および分子学的特性などであった。

3年時の無イベント率に差はなく、経過観察群の非劣性を確認

 無作為化後3年時に評価することができた患者は730例(放射性ヨウ素内用療法群363例、経過観察群367例)で、このうち主要評価項目のイベントが発生しなかった患者の割合は、経過観察群95.6%(95%信頼区間[CI]:93.0~97.5)、放射性ヨウ素内用療法群95.9%(95%CI:93.3~97.7)であった。群間差は-0.3ポイント(両側90%CI:-2.7~2.2)であり、結果は非劣性基準を満たすものであった。

 イベントの発生は、構造的または機能的異常が8例、生物学的異常が23例に25件認められた。イベントの発生頻度は、術後甲状腺ホルモン療法中に血清サイログロブリン値が1ng/mL超の患者で高かった。分子生物学的異常は、イベントの有無で差はなかった。治療関連有害事象は報告されなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)