高度免疫グロブリン、COVID-19入院患者への有効性を認めず/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2022/02/11

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した健康成人の血漿から精製され、一定量かつ高濃度の抗体を含有するSARS-CoV-2高度免疫グロブリン静注製剤(hIVIG)について、レムデシビルを含む標準治療との併用は、末期臓器不全のないCOVID-19入院患者に対する有効性は認められないことが示された。米国・国立衛生研究所(NIH)の出資により実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「Inpatient Treatment with Anti-Coronavirus Immunoglobulin:ITAC試験」の結果を、オーストラリア国立大学のMark N. Polizzotto氏らが報告した。hIVIGによる受動免疫療法は、COVID-19のような感染症の発生に対し、迅速に利用できる特異的治療となる可能性があったが、hIVIGの無作為化臨床試験の実施はこれまで限られていた。Lancet誌2022年2月5日号掲載の報告。

標準治療±レムデシビルへのhIVIG併用の有効性と安全性をプラセボ併用と比較

 研究グループは、発症後12日以内で、急性終末臓器不全のないCOVID-19入院患者を、レムデシビル(禁忌ではない場合)あるいは他の標準治療に加えて、hIVIGを投与する群か、同量の生理食塩水を投与するプラセボ群のいずれかに、1対1の割合で無作為に割り付けた。追跡期間は28日間である。

 有効性の主要評価項目は、7日目における患者の臨床状態で、呼吸状態および肺外合併症を考慮した7段階(症状なしまたはわずか~死亡まで)の順序尺度を評価項目とした。また、安全性の主要評価項目は、7日目までの死亡、重篤な有害事象(臓器不全、重篤な感染症を含む)、およびGrade3/4の有害事象の複合とし、28日目はGrade3/4の有害事象を除く7日目の評価項目について評価した。有効性および安全性の主要評価項目は、症状持続期間、抗スパイク中和抗体の有無、その他のベースライン因子によるサブグループ解析を行うことが事前に規定された。

 解析は、適格基準を満たし無作為割り付けされた治験薬のすべてまたは一部を投与された患者を対象とする修正intention-to-treat(mITT)法にて行った。

7日時点でhIVIG併用の臨床的な有効性は確認されず

 2020年10月8日~2021年2月10日の期間に、11ヵ国63施設で計593例(hIVIG群301例、プラセボ群292例)が登録され、579例がmITT解析に組み込まれた。

 hIVIG群はプラセボ群と比較して有効性の主要評価項目を達成しなかった(補正後オッズ比[OR]:1.06、95%信頼区間[CI]:0.77~1.45、p=0.72)。

 Infusion reactionの発現率はhIVIG群のほうが高かったが(hIVIG群18.6% vs.プラセボ群9.5%、p=0.002)、忍容性は良好であった。安全性の主要評価項目である7日目の安全性複合評価項目イベントの発現は、hIVIG群(24%)とプラセボ群(25%)で類似していた(OR:0.98、95%CI:0.66~1.46、p=0.91)。

 サブグループ解析の結果、有効性の主要評価項目(7日目における患者の臨床状態)については検討したサブグループでORに変化はみられなかったが、安全性の主要評価項目については治療効果の不均一性が認められ、抗体陽性患者ではプラセボ群と比較してhIVIG群でリスクが大きく(OR:2.21、95%CI:1.14~4.29)、抗体陰性患者では逆にhIVIG群でリスクが小さかった(OR:0.51、95%CI:0.29~0.90、相互作用のp=0.001)。

(医学ライター 吉尾 幸恵)