重症外傷患者への即時全身CTは有用か/Lancet

重症外傷患者に対する即時の全身CTスキャン診断は、標準放射線精密検査を行った場合と比較して、院内死亡の低下には結び付かないことが、オランダ・アムステルダム大学医療センターのJoanne C Sierink氏らによる無作為化試験の結果、示された。先行研究において、外傷患者の初期評価における、全身CTスキャンの生存へのベネフィットが示唆されていた。ただし、レベル1のエビデンス報告はなかった。Lancet誌オンライン版2016年6月28日号掲載の報告。
標準精密検査との比較で院内死亡の差を評価
検討は、オランダの4病院とスイスの1病院で行われた。被験者は、18歳以上、易感染性バイタルパラメーターを有し、臨床的に生命の危険が伴うまたは重症の外傷患者であった。被験者を、即時全身CTスキャンを行う群と標準精密検査を行う群(従来画像診断のうえで選択的CTスキャンを施行)に、1対1の割合でALEA法を用いて無作為に割り付けた。割り付けについて医師も患者もマスキングはされなかった。主要エンドポイントは、院内死亡率で、intention-to-treat集団での解析、およびサブグループ解析として多発性外傷患者群と外傷性脳損傷(TBI)群について分析した。死亡率の差はχ2検定で評価した。
有意差なし、サブグループの多発性外傷群やTBI群の解析でも
2011年4月22日~2014年1月1日の間に、5,475例が試験適格の評価を受け、1,403例が無作為化を受けた(即時全身CTスキャン群702例、標準精密検査群701例)。主要解析には、即時全身CTスキャン群541例、標準精密検査群542例が組み込まれた。解析の結果、院内死亡は、即時全身CTスキャン群86例(16%)、標準精密検査群85例(16%)で群間差はみられなかった(p=0.92)。
サブグループ解析の結果も同様だった。多発性外傷患者群(解析対象はそれぞれ362例、331例)については、81例(22%) vs.82例(25%)で有意差はみられず(p=0.46)、TBI群(178例、151例)についても、68例(38%) vs.66例(44%)で有意差はみられなかった(p=0.31)。
重篤有害事象は、即時全身CTスキャン群3例(1%)、標準精密検査群1例(<1%)の報告であった(p=0.37)。そのほかに無作為化後に除外された被験者1例でも報告されている。死亡は全体で5例であった。
著者は、「即時全身CTスキャン診断を受けた患者の院内死亡は、標準放射線精密検査を受けた患者と比較して抑制されない」と結論し、「放射線照射量の増大を考慮し、さらなる検討は患者を絞り込んで、即時全身CTによるベネフィットがあるかを調べるべきであろう」とまとめている。
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