ISCHEMIA試験、狭心症関連の健康状態の比較/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/04/10

 

 中等度〜重度の虚血を認める安定虚血性心疾患を有する進行性慢性腎臓病(CKD)患者において、初期の侵襲的治療戦略(血管造影+血行再建術+ガイドラインに基づく薬物療法)は、保存的治療戦略(ガイドラインに基づく薬物療法)と比較し、狭心症関連の健康状態に対して実質的または持続的な有益性を示さなかった。米国・ミズーリ大学カンザスシティー校のJohn A. Spertus氏らが、「ISCHEMIA-CKD試験」の副次目的である狭心症関連の健康状態の評価に関する解析結果を報告した。ISCHEMIA-CKD試験の主要目的である予後(死亡または心筋梗塞)への影響についても、侵襲的治療戦略は保存的治療戦略と比較して、イベントの有意なリスク低下は確認されていなかった。NEJM誌オンライン版2020年3月30日号掲載の報告。

約700例で狭心症関連の健康状態を評価

 研究グループは、中等度〜重度の虚血を認める安定虚血性心疾患を有し、推定糸球体濾過率<30mL/分/1.73m3または透析中の進行性CKD患者を、侵襲的治療戦略群または保存的治療戦略群に無作為に割り付け、無作為化前、1.5ヵ月、3ヵ月、6ヵ月時、その後は6ヵ月ごとにシアトル狭心症質問票(Seattle Angina Questionnaire:SAQ)を用いて健康状態を評価した。

 本副次解析の主要評価項目は、SAQサマリースコア(スコア範囲:0~100、高得点ほど狭心症の頻度が低く機能とQOLが良好)であった。侵襲的治療戦略の効果の推定には、ベイズ理論の混合効果累積確率モデルを使用し、intention-to-treat解析を行った。

保存的治療戦略と侵襲的治療戦略で健康状態の予後に有意差なし

 ISCHEMIA-CKD試験では777例が無作為化を受け、そのうち705例について健康状態の評価が行われた。

 被験者の約半数(49%)は、無作為化前に狭心症を発症していなかった。

 3ヵ月時における、侵襲的治療戦略群と保存的治療戦略群との間のSAQサマリースコア推定平均差は2.1ポイント(95%確信区間[CrI]:-0.4~4.6)で、侵襲的治療戦略群のほうが好ましいことが示された。同推定平均差は、ベースラインにおける狭心症の頻度が毎日または毎週の患者で最大(10.1ポイント、95%CrI:0.0~19.9)、同頻度が毎月の患者で最小であり(2.2ポイント、95%CrI:-2.0~6.2)、狭心症がない患者ではほとんど差はなかった(0.6ポイント、95%CrI:-1.9~3.3)。

 6ヵ月時では、全例における両群の差は減少していた(0.5ポイント、95%CrI:-2.2~3.4)。

 なお、著者は研究の限界として、血管造影前に無作為化されたものの侵襲的治療戦略が必要と予測される患者は除外されていた可能性があること、左冠動脈主幹部病変や心不全を有する患者などは除外されていることなどを挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 上田 恭敬( うえだ やすのり ) 氏

国立病院機構大阪医療センター 循環器内科 科長

J-CLEAR評議員

コメンテーター : 中野 明彦( なかの あきひこ ) 氏

群馬県済生会前橋病院 循環器内科 代表部長

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