低リスク大動脈弁狭窄症にバルーン拡張型弁のTAVRは有効か/NEJM

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 手術死のリスクが低い重度の大動脈弁狭窄症患者の治療において、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は外科的大動脈弁置換術と比較して、1年時の死亡を含む複合エンドポイントが良好であることが、米国・Baylor Scott and White HealthのMichael J. Mack氏らが実施したPARTNER 3試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年3月16日号に掲載された。手術死のリスクが中等度~高度な患者では、これら2つの手技の主要アウトカムは同等とされるが、低リスク例におけるエビデンスは十分でないという。

5ヵ国71施設が参加、非劣性を検証する無作為化試験
 本研究は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、日本の71施設が参加した多施設共同無作為化試験であり、2016年3月~2017年10月に患者登録が行われた(Edwards Lifesciencesの助成による)。

 対象は、重度の石灰化大動脈弁狭窄症を有し、臨床的および解剖学的評価で手術死のリスクが低いと判定された患者であった。被験者は、経大腿動脈アプローチでバルーン拡張型大動脈弁を留置する群(TAVR群)または外科的大動脈弁置換術を行う群(手術群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは、術後1年時の死亡、脳卒中、再入院の複合とした。事前に規定された非劣性マージン(95%信頼区間[CI]の上限6ポイント)を下回っている場合に非劣性と判定された。

主要複合エンドポイント:8.5% vs.15.1%、優越性も確認
 1,000例が登録され、950例(TAVR群496例、手術群454例)がas-treated集団に含まれた。ベースラインの全体の平均年齢は73歳、69.3%が男性で、米国胸部外科学会の予測死亡リスク(STS-PROM、0~100%、スコアが高いほど術後30日以内の死亡リスクが高い)の平均スコアは1.9%だった。

 1年時の主要複合エンドポイントの発生率は、TAVR群が手術群に比べ有意に低く(8.5% vs.15.1%、絶対差:-6.6ポイント、95%CI:-10.8~-2.5)、95%CI上限が非劣性マージン6ポイントを下回ったため、TAVR群の手術群に対する非劣性が示された(非劣性:p<0.001)。ハザード比(HR)は0.54(95%CI:0.37~0.79、優越性:p=0.001)で、TAVR群の優越性も示された。

 術後30日の時点で、TAVR群は手術群に比べ、脳卒中(0.6% vs.2.4%、HR:0.25、95%CI:0.07~0.88、p=0.02)、死亡または脳卒中の複合エンドポイント(1.0% vs.3.3%、HR:0.30、95%CI:0.11~0.83、p=0.01)、心房細動の新規発症(5.0% vs.39.5%、HR:0.10、95%CI:0.06~0.16、p<0.001)が有意に低かった。

 また、TAVR群は、初回入院期間中央値が短く(3日vs.7日、p<0.001)、30日の時点の不良な治療アウトカム(死亡またはKansas City Cardiomyopathy Questionnaire[KCCQ]スコアが低値)の割合が低かった(3.9% vs.30.6%、p<0.001)。

 安全性については、両群間で、重大な血管合併症、新規の恒久的ペースメーカー植え込み、中等度~重度の弁周囲逆流の発生率に有意な差はみられなかった。また、1年時の新規左脚ブロックの発生率はTAVR群のほうが高かった(23.7% vs.8.0%、HR:3.43、95%CI:2.32~5.08)が、生命に関わる出血や大出血の発生率は低かった(3.6% vs.24.5%、HR:0.12、95%CI:0.07~0.21)。

 著者は、「今回は、1年という短い期間の結果であり、長期的な弁の構造的劣化の問題は評価していない。手術と比較したTAVRの利益と不利益に関する明確な結論を得るには長期のフォローアップを要し、本試験では少なくとも10年は臨床検査と心エコー検査を継続する予定である」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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