術前血栓溶解、tenecteplase vs.アルテプラーゼ/NEJM

虚血性脳卒中の患者に対し、発症後4.5時間以内の血栓除去術前のtenecteplase投与は、アルテプラーゼ投与より再灌流率が高くアウトカムが良好であることが示された。オーストラリア・王立メルボルン病院のB.C.V. Campbell氏らが、202例の患者を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2018年4月26日号で発表した。虚血性脳卒中に対する血管内血栓除去術前の血栓溶解にはアルテプラーゼの静脈内投与が行われている。tenecteplaseは、アルテプラーゼと比べてフィブリン特異性が高く、作用時間が長く、ボーラス投与ができ、血管再灌流率が上昇する可能性が示唆されていた。
tenecteplase 0.25mg/kgまたはアルテプラーゼ0.9mg/kgを投与
研究グループは、内頸動脈、脳底動脈または中大脳動脈に閉塞があり、血栓除去術の適応がある虚血性脳卒中の患者202例を無作為に2群に分け、発症後4.5時間以内に、一方にはtenecteplase(0.25mg/kg体重、上限25mg)、もう一方にはアルテプラーゼ(0.9mg/kg体重、上限90mg)を、それぞれ投与した。主要アウトカムは、虚血性病変部位の50%超の再灌流、または初回血管造影時に回収可能な血栓がないことだった。tenecteplaseの非劣性を検証し、その後に優越性を検証した。
副次的アウトカムは、90日時点の修正Rankinスケールスコア。安全性に関するアウトカムは、死亡と症候性脳内出血だった。
tenecteplase群、90日機能的アウトカムも良好
主要アウトカムの発生率は、アルテプラーゼ群10%に対し、tenecteplase群は22%だった(発生率差:12ポイント、95%信頼区間[CI]:2~21、発生率比:2.2、95%CI:1.1~4.4、非劣性p=0.002、優越性p=0.03)。90日修正Rankinスケールスコアの中央値は、アルテプラーゼ群が3に対し、tenecteplase群は2で機能的アウトカムも有意に良好だった(共通オッズ比:1.7、95%CI:1.0~2.8、p=0.04)。
なお、症候性脳内出血は両群とも1%の発生だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)
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コメンテーター : 後藤 信哉( ごとう しんや ) 氏
東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授
J-CLEAR理事