非ST上昇型ACSの侵襲治療、適切なタイミングは?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2017/08/10

 

 非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)の患者に対し、早期侵襲治療は待機的侵襲治療と比べて全死因死亡リスクを有意に低下しなかった。ただし、糖尿病患者や75歳以上の患者などハイリスク患者については、早期侵襲治療が待機的侵襲治療に比べ有益である可能性が示された。ドイツ・リューベック大学心臓センターのAlexander Jobs氏らが、8件の無作為化試験をメタ解析した結果で、Lancet誌オンライン版2017年8月1日号で発表された。NSTE-ACSの患者に対しては、臨床ガイドラインでルーチンの侵襲治療を推奨しているものの、その最適なタイミングについては明確に定義されていない。これまでに行われた臨床試験では、治療のタイミングが及ぼす死亡への影響を検出する力が不足しており、研究グループはメタ解析にて評価を行った。

無作為化試験8試験をメタ解析し30日以降の全死因死亡率を比較
 検討は、MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Embaseから、NSTE-ACSに対する侵襲治療のタイミングに関して、早期戦略と待機的戦略を比較していた無作為化試験を検索して行われた。また、院内無作為化から30日以上経過後の全死因死亡率を報告しており、試験研究者の了解(個々の患者データや標準化した一覧データの提供など)を得られた試験を包含した。

 ランダム効果モデルを用いてプール解析を行い、ハザード比(HR)を求めた。

75歳以上では早期侵襲治療群で死亡リスクが35%減
 メタ解析に包含されたのは無作為化試験8件(被験者総数5,324例)で、追跡期間の中央値は180日(IQR:180~360)だった。

 早期侵襲治療群は待機的侵襲治療群と比較し、有意な全死因死亡率の低下はみられなかった(HR:0.81、95%信頼区間[CI]:0.64~1.03、p=0.0879)。

 しかしながら事前規定のハイリスク患者グループの解析で、早期侵襲治療群の全死因死亡率が待機的侵襲治療群に比べ、より低率であったグループが認められた。具体的には、ベースラインで心臓バイオマーカー上昇が認められた患者グループで、ハザード比は0.761(95%CI:0.581~0.996)、また、糖尿病患者群で0.67(同:0.45~0.99)、 GRACEリスクスコア140以上群で0.70(同:0.52~0.95)、75歳以上の患者群では0.65(同:0.46~0.93)だった。ただしいずれのサブグループでも、交互作用検定で有意差は確認できなかった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 上田 恭敬( うえだ やすのり ) 氏

国立病院機構大阪医療センター 循環器内科 科長

J-CLEAR評議員