転移性脳腫瘍の放射線治療、認知機能を維持するには/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2016/08/08

 

 1~3個の転移性脳腫瘍を有するがん患者では、定位放射線照射(SRS)単独はSRS+全脳照射(WBRT)に比べ認知機能の悪化割合が低いことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPaul D Brown氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年7月26日号に掲載された。SRSが適応となる転移性脳腫瘍では、SRS施行後にWBRTを加えると腫瘍コントールが改善するが、認知機能の低下を招くため、脳転移の治療におけるWBRTの役割について議論が続いている。

認知機能の悪化を無作為化試験で評価
 研究グループは、転移性脳腫瘍の治療においてSRS単独とSRS+WBRTにおける認知機能の悪化を比較する無作為化試験を行った(米国国立がん研究所[NCI]の助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、全身状態(ECOG PS)が0~2で、脳転移の個数が1~3個(腫瘍径<3cm)の患者であった。

 SRSは、SRS単独群では20~24Gyを、SRS+WBRT群では18~22Gyを照射した。WBRTは総線量30Gyを12分割で照射した。

 主要評価項目は3ヵ月時の認知機能の悪化とした。7つの認知機能検査を行い、3ヵ月時にベースラインから>1SD低下した検査が1つ以上あった場合に、認知機能悪化と判定した。

 2002年2月~2013年12月までに、北米の34施設に213例が登録され、SRS単独群に111例、SRS+WBRT群には102例が割り付けられた。

単独群で認知機能とQOLが良好、OSに差はない
 全体の平均年齢は60.6歳(SD 10.5歳)で、103例(48%)が女性であった。111例(SRS単独群:63例、SRS+WBRT群:48例)が試験を完遂した。全体のフォローアップ期間中央値は7.2ヵ月であり、完遂例では11.6ヵ月だった。

 3ヵ月時に認知機能が悪化した患者の割合は、SRS単独群が63.5%(40/63例)であり、SRS+WBRT群の91.7%(44/48例)に比べ有意に良好であった(群間差:-28.2%、90%信頼区間[CI]:-41.9~-14.4%、p<0.001)。

 3ヵ月時のQOLは、総QOLを含めSRS単独群が良好であった(ベースラインからの平均変化:-0.1 vs. -12.0点、平均差:11.9、95%CI:4.8~19.0、p=0.001)。

 頭蓋内治療成功期間は、SRS単独群がSRS+WBRT群よりも短かった(ハザード比[HR]:3.6、95%CI:2.2~5.9、p<0.001)。

 機能的自立(BarthelインデックスによるADL評価)には両群間に差を認めなかった(p=0.26)。

 全生存期間(OS)中央値は、SRS単独群が10.4ヵ月、SRS+WBRT群は7.4ヵ月であった(HR:1.02、95%CI:0.75~1.38、p=0.92)。

 長期生存例(12ヵ月以上生存;SRS単独群15例、SRS+WBRT群19例)における3ヵ月時の認知機能悪化の割合は、SRS単独群が45.5%と、SRS+WBRT群の94.1%に比べ良好であり(群間差:-48.7%、95%CI:-87.6~-9.9%、p=0.007)、12ヵ月時もSRS群が低かった(60 vs. 94.4%、群間差:-34.4%、95%CI:-74.4~5.5%、p=0.04)。

 著者は、「SRS群は認知機能が良好で、OS中央値には差がなかったことから、1~3個の脳転移を有する患者ではSRS単独が好ましい戦略と考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 中川原 譲二( なかがわら じょうじ ) 氏

梅田脳・脊髄・神経クリニック 脳神経外科

J-CLEAR評議員