ダビガトランの中和薬としてidarucizumabが有望/Lancet

ヒト化モノクローナル抗体フラグメントidarucizumabは、用量依存的にダビガトラン(商品名:プラザキサ)の抗凝固作用を、迅速かつ完全にリバースすることが明らかになった。薬剤関連の有害事象についても、重篤なものは認められなかった。ドイツ・ベーリンガーインゲルハイム社のStephan Glund氏らが健康な男性47例について行った第I相プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、示された。ダビガトランは心房細動後の脳卒中予防に、また静脈血栓塞栓症の治療および予防に関して、ワルファリンに代わる効果があることが示されている。Lancet誌オンライン版2015年6月15日号で発表した。
idarucizumabを1g~7.5g投与、安全性、忍容性、有効性を検討
試験は、2013年2月23日~11月29日にかけてベルギーのSGS Life Sciences Clinical Research Servicesで、18~45歳の健康なボランティア男性47例を対象に行われた。被験者のBMIは18.5~29.9だった。同グループは被験者全員に対し、ダビガトランエテキシラート220mg、1日2回を3日間、4日目には1回量を投与した。また被験者を無作為に分け、ダビガトラン最終投与2時間後に、idarucizumabを1g、2g、4gをいずれも5分静注投与、または5gと2.5gを1時間間隔で5分静注投与、またはプラセボ投与を、それぞれの群に行った。
主要評価項目は、薬剤関連有害事象だった。副次評価項目は、希釈トロンビン時間(dTT)、エカリン凝固時間(ECT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、トロンビン時間のリバースなどで、2~12時間の効果曲線下面積(AUEC2-12)で評価した。
用量依存的に、抗凝固作用は迅速かつ完全にリバース
結果、薬剤関連有害事象は7例報告されたが、注射部位紅斑や鼻出血など、全員が軽症だった。idarucizumabは、投与量に応じて、ダビガトランによる抗凝固作用を、迅速かつ完全にリバースした。ダビガトラン投与4日目の同3日目に対するAUEC2-12の平均比率は、dTTはプラセボ群が1.01に対し、idarucizumab 1g群が0.26(74%抑制)、2g群 0.06(94%抑制)、4g群 0.02(98%抑制)、5g+2.5g群が0.01(99%抑制)だった。
重篤または重度の有害事象は報告されなかった。治療中断となった有害事象はなく、治療群間で有害事象発生の臨床的に重大な差はみられなかった。
なお本剤に関する臨床試験はさらに継続中である。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)
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コメンテーター : 後藤 信哉( ごとう しんや ) 氏
東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授
J-CLEAR理事