抗うつ薬の違いによる自殺リスクを検討/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2015/03/06

 

 うつ病患者の抗うつ薬使用と自殺、自殺企図・自傷行為リスクは、SSRIと三環系薬では有意な差はないことが、英国・ノッティンガム大学のCarol Coupland氏らによるコホート研究の結果、明らかにされた。また、服用開始後28日間および中止後の28日間にリスクが最も高いことも判明し、研究グループは、「同期間は注意深いモニタリングが必要である」と指摘している。うつ病患者における自殺・自殺企図について、これまで抗うつ薬の違いにより発生率にばらつきがあるのかどうかは不明であった。BMJ誌オンライン版2015年2月18日号掲載の報告より。

抗うつ薬の違いによる自殺、自殺企図・自傷行為の発生について調査
 検討は、英国一般医(GP)が関与するQResearchデータベースに登録され、2000年1月1日~2011年7月31日に初発のうつ病と診断された20~64歳の23万8,963例を対象に行われた。被験者は2012年8月1日まで追跡を受けた。

 被験者が処方された抗うつ薬の種類(三環系薬、SSRI、その他)、用量、服用期間および指示投薬量、処方錠剤数を調べ、Cox比例ハザードモデルを用いて潜在的交絡因子で補正後、自殺、自殺企図・自傷行為の発生ハザード比を算出して評価した。

 追跡期間中、コホートの87.7%(20万9,476例)が1つ以上の抗うつ薬の処方を受けており、治療期間の中央値は221日(四分位範囲:79~590日)であった。

SSRIと三環系薬の有意差みられない
 追跡開始5年間で、自殺198件、自殺企図または自傷行為5,243件が発生した。

 SSRI使用者との比較において、三環系薬使用者の自殺発生率に有意な差はみられなかった(補正後ハザード比:0.84、95%信頼区間[CI]:0.47~1.50、p=0.6)。しかし、その他の抗うつ薬使用者では有意な増大が認められた(同:2.64、1.74~3.99、p<0.001)。また自殺発生率は、SSRIのシタロプラムとの比較において、その他抗うつ薬のミルタザピン(レメロン、リフレックス)で有意な増大がみられた(同:3.70、2.00~6.84、p<0.001)。薬剤別にみた1年間の自殺絶対リスクのばらつき範囲は、アミトリプチリン(トリプタノールほか)の0.02%からミルタザピンの0.19%であった。

 同様に自殺企図・自傷行為発生率も、SSRI使用者との比較において三環系薬使用者に有意差はみられなかったが(同:0.96、0.87~1.08、p=0.5)、その他の抗うつ薬使用者では有意な増大が認められた(同:1.80、1.61~2.00、p<0.001)。また、SSRIのシタロプラムとの比較において、ベンラファキシン(国内未承認、同:1.85、1.61~2.13、p<0.001)、トラゾドン(レスリンほか、1.73、1.26~2.37、p=0.001)、ミルタザピン(1.70、1.44~2.02、p<0.001)で同発生率の有意な増大が認められた。一方、アミトリプチリンでは有意な減少が認められた(0.71、0.59~0.85、p<0.001)。薬剤別にみた1年間の自殺企図・自傷行為絶対リスクのばらつき範囲は、アミトリプチリンの1.02%からベンラファキシンの2.96%であった。

 自殺、自殺企図・自傷行為の発生率は、治療開始後の28日間および治療中止後の28日間で最も高かった。

 著者は、「自殺、自殺企図、自傷行為の発生率は、SSRIと三環系薬で同等であった。ミルタザピン、ベンラファキシン、トラゾドンで、同発生との高い関連が示されたが、自殺数はわずかで明言はできるものではなかった。また、本検討は観察研究であり、所見は処方バイアスやうつ病重症度からの残余交絡、処方を受けた患者特性などが反映されている可能性があった」と述べたうえで、「抗うつ薬の開始および中止後の28日間における発生率増大は、この期間は患者のモニタリングを注意深く行う必要性があることを強調するものである」と指摘している。

(武藤まき:医療ライター)

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コメンテーター : 岡村 毅( おかむら つよし ) 氏

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