世界各国受刑者における過体重・肥満の有病率と身体活動度

提供元:ケアネット

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公開日:2012/06/07

 



英国・オックスフォード大学のKatharine Herbert氏らは、これまで行われていなかった刑務所に収監されている受刑者について、栄養的に貧しい食事や不十分な運動がもたらす過体重や肥満の有病率についてシステマティックレビューで評価を行った。Herbert氏らは本研究の目的について「肥満などの非感染性疾患(NCD)は、低・中所得国や受刑者といった社会的不利な条件にある階層に偏って負荷がかかっている。受刑者についての評価は行われたことがなく、現在のエビデンスを総合し、今後の研究活動・領域を明らかにするため」としている。Lancet誌2012年5月26日号掲載報告より。

システマティックレビューで15ヵ国6万人以上の受刑者について評価




Herbert氏らは、PubMed、EMBASEなどオンライン・データベース上にある1948年から2011年5月までに発表された研究についてシステマティックに検索し、2人の著者が事前に決めた形式に則り独立的にデータを抽出するスクリーニングにより適格試験を選定した。バイアスリスクについては各々の研究について領域ベースで評価した。

29の出版物から31の研究報告が選定され、15ヵ国884施設の受刑者6万人以上が解析に含まれた。試験は、オーストラリア、バングラディッシュ、カメルーン、東アフリカ、ドイツ、コートジボアール、日本、ナイジェリア、パキスタン、ルーマニア、ロシア、台湾、英国、米国、西アフリカで行われたものだった。

結果、過体重・肥満の有病率の解析の結果(13試験・4万6,711例)、男性受刑者は一般男性集団と比べて過体重という傾向は認められなかった。評価をした10試験の有病率比は、1試験で1.02(95%信頼区間:0.92~1.07)を示したものがあったが、それを除くと0.33~0.87の範囲であった。

一方、女性受刑者については、米国(解析対象は1試験、有病率比:1.18、95%信頼区間:1.08~1.30)とオーストラリア(同3試験、有病率比は1.15~1.20にわたった)で、非収監女性と比べて過体重の傾向が認められた。
女性受刑者の平均エネルギー摂取量は過度




オーストラリアの受刑者は英国の受刑者と比べると、一般集団との比較で活動レベルが有意に十分なレベルに達している傾向が認められた。両国の結果を男女別試験実施年別にみると、女性については2009年にそれぞれの国で行われた試験の結果(有病率比)は英国0.32(95%信頼区間:0.21~0.47)に対して、オーストラリアは1.19(同:1.04~1.37)だった。男性については試験年が一致しなかったが、英国(1994年実施)の0.71(同:0.34~0.78)に対して、オーストラリア(1997、2001、2009年実施の3試験の結果)は1.37~1.59の範囲を示した。

女性の平均エネルギー摂取量は推奨レベルを上回っており、特にナトリウム摂取量は全受刑者の推奨摂取量の約2~3倍だった。

Herbert氏は、「この脆弱集団の健康を促進するには刑事司法制度と接触することである。これらの重要な公衆衛生問題に言及しないことによる個人および社会にかかるコストは相当なものとなるだろう」と述べ、「適切なターゲッティングによる公衆衛生介入を知らしめるモニタリングの改善とさらなる研究が必須だ」と結論。またその際に、オーストラリアと日本の研究が描出する刑事司法制度はNCDリスク改善につながるものかもしれないことについて言及している。